2スレ>>320


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※この話は1スレ307氏のプリンのSS『月の歌姫』の設定をお借りして書いたものです。
 307氏、申し訳ありません orz

 先に>>180のURLにある1スレ307氏を読破してからのほうが、話が分かりやすいかと思われます。






今日もオツキミ山に挑んだものの、出口を見つけることが出来ず
皆と一緒にボロボロになって帰ってきた。これで何度目だろう。

結局その日も、オツキミ山ふもとの萌えもんセンターに泊めてもらうことになった。

疲れで夕食ものどを通らず、着替えも忘れて簡易ベッドに潜りこんで
泥のように自分は眠っていたのだけど
辺りが真っ暗になって、誰もが寝静まっている時間にふと目が覚めてしまった。

とりあえずお手洗いに行き、ふたたび眠りにつこうと
ベッドのある場所に戻ろうとして、気がついた。

遠くから聞こえてくる、声に。


外に出てみると、その声は歌声だということがわかった。

その歌は、とても綺麗なメロディだった。
でも、なんて悲しい歌なんだろう とも思った。


その歌に歌詞はなかった。

でもその歌には、歌っているヒトの中のありったけの悲しみが
詰まっているように、自分には聴こえた。



(なかないで なかないで
 
 私までつられて泣いてしまいそう)



気がついたら、歌詞の無い歌にあわせて自分も歌い始めていた。

ありったけの悲しさと切なさをこめて、歌詞の無い歌を自分も紡ぐ。

歌声の主は突然の乱入者に驚いてしまったようで、歌を中断してしまった。

それでも自分は歌うのをやめなかった。
歌声の主が紡いでいたメロディを必死に思い出しながら
歌詞の全くない歌を、歌った。



(なきましょう なきましょう

 心の底から思い切り 一緒に泣いてしまいましょう

 明日になったら 笑えますようにと

 悲しみで曇る心が いつか晴れますようにと)



こちらに敵意がないことが分かったのか、ここではないどこかから
再び歌声が聞こえてきた。

合唱なんて上等なものではなかったけれど、
誰のものかも分からない歌声に導かれるようにして、自分は歌った。






そうして歌っている内に、真っ暗だった空が白んできた。

どうやら自分は、夜明け前に目を覚まてしまったらしい。


少しずつ少しずつ空に登っていく朝日は、とてもまぶしくて

その光は、ゆるぎない強さを感じさせるものだった。


夜が終わりを迎えたことを、否応なく知らしめるように太陽が輝く。

朝焼けに輝く世界は、ひたすら綺麗としか言いようが無くて。

なんだかとてつもなく大きな衝動が、自分の中に芽生えてきた。


それは、思うままに叫びたい という、動物みたいな衝動。


さっきまでの悲しい気持ちを振り払うように、
燃えるような激しい感情に任せ、小高い丘の上を駆け上る。

すこしでも、あの歌声の主に届きますようにと
高いところを目指して駆け上る。




祈りを込めて、もういちど歌う。
今度は、自分の大好きな歌を歌う。


いや、歌うというより叫び声になっていたかもしれない。

私の好きなその歌は、聞いていて元気があふれてくるけれど、

それぐらい激しい歌でもあったから。

心のままに、歌詞に思いを込めて。

祈りを、込めて。



丘の上で、歌った。









大好きな歌を歌いきった頃には、遠くから聞こえていた歌は終わってしまっていた。

少々名残惜しかったけれど、いつまでもそこにいるわけにはいかなかったので
萌えもんセンターに戻ると、眠りから覚めた皆に出迎えられてしまった。

ピカチュウ曰く、


「あんなデカイ声で延々歌われたら、嫌でも起きるわよっ!」


だそうで。流石に今は反省している。


・・・ていうか物凄くこっ恥ずかしいです今更ですが。
何であんなことしたんだろう、自分の馬鹿。

あの歌っていた人に、声が届く保障なんて、どこにもなかったのに。

自分の歌が、誰かの心に届くはずなんて、なかったのに。




++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++




ああ、向こうから聞こえてきた歌声が、終わってしまった。

長い間ひとりぼっちだった私にとって、姿は見えずとも、誰かと時間をともに出来たのは
とても嬉しいことだった。


私は、生まれつき歌が歌えないプリンだった。
原因は今でも分からない。

ただ、そのせいで随分長い時間をひとりで過ごさなくてはならなかった。
仲間たちからは異端児扱いを受け、私を仲間にしてくれたはずの人も
私が歌えないことにしびれを切らして、ふたたび私をひとりぼっちにして行ってしまった。

とめどなく溢れる寂しさを、悲しみを声にしていくうちに
いつの間にかそれは、歌になっていた。

皮肉なことに、私は捨てられたことで、やっと歌えるようになったのだ。


あの人に聞いてもらいたくて、私は毎晩毎晩歌い続けた。届くはずなんて無いのに。

それでも、もしかしたら、ひょっとしたら・・・と
私はいつまでも、未練がましく歌っていた。


そんな時、遠くから誰かの声が聞こえてきた。
知らないひとの声だった。

それは、とてもたどたどしいものだったけれど
なんとなく気持ちが伝わってくるような、そんな声だった。

一緒に歌っていて、とても楽しかった。


そして夜明けとともに始まった、向こう側からの歌は

なんていうかその・・・狼の遠吠えに似た感じの声だった。



でも、その声で紡がれる歌は
胸の奥が かぁっと熱くなるような、素敵なものだった。



自分もあの歌を、歌ってみたい。

知りたい。

あの歌のメロディを。


・・・あの歌を歌っていた人を。



また傷つくかもしれない。その可能性は充分ある。




「・・・ ・・・

 せーんのかくご、みにまといー・・・」
 



それでも




「きみよ おおしく 

 はぁーばぁーたーけぇーーーーー」



うろ覚えの歌詞をくちずさみながら、私は歩きはじめた。









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