2スレ>>401


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「行け!! ペルシアン、みだれひっかきだ!」

「りょ~かいよんっ♪」

ご主人様が私への命令を伝え終わると同時に、私の体が動いた。

阿吽の呼吸・・・なんて言い方は少し持ち上げすぎかもしれないが、ご主人様の仲間の内では私が一番長い付き合いだ、
このくらいは-ご主人様がこの戦闘のトリを私に任せ、乱れ引っ掻きの技を選ぶ事 はなんとなく予想がついていた。

これも、私の愛のなせる業というやつかしら?


ご主人様との年季は仲間達とも比べて飛びぬけている。

私が"今の"ご主人様のものになってから数えて五つ目の春を迎えたとき、私とご主人様は旅を始めた。

「この世界の全てのもえっこもんすたぁをオレが記録してやるんだ」

とご主人様が楽しそうに笑っていたのを覚えている。




最初のご主人様は、一言で言えば悪人だった。

「もえっこもんすたぁを使ってあらゆる悪事を働いてやる」

とと豪語するような方。今の優しいご主人様とは対極の位置にいる方だった。

それでも、不思議なカリスマにあふれ、彼は多くの人に慕われていた。

分別もつかないニャースだった私は、彼に褒めてもらいたい一心で言われるままに彼の悪事に加担した。

いや、もし私が未だ彼の飼い猫だったら、今でも私は彼のために尽くしていたであろう。

・・・・・・そんな仮定は無意味だが。

ともかく、以前の私は"悪のカリスマともいえる我がご主人様”に誠心誠意仕えていたのだった。

自分の犯していく悪で、ニャースの小さな心が侵されていくことにも気づかぬまま。


あるとき、私は捨てられた。

たった一度だけ彼の命令に背いたことが原因で。

「―殺せ」


僅かに残っていた良心の痛みに制されて、どうしても命を奪えという命令に従えなかった私は、即座に彼に捨てられた。


飼い慣らされていた私は、すぐに野性に返ることもできず、しかし彼の影響が強い都市部に居ることもできない宙ぶらりんな状態で放り出された。

そして私はただ死にたくないがために、彼の元に居たときとまた同じ道を歩んでいた。

違いは命令されるか否か。自分の意思である分余程たちの悪い。

結局私を止めたあの小さな良心は、本当に本当にちっぽけなものだったと気づかされる。

同時に、汚いものもたくさん見た。

それと同じくらい、私も薄汚れた。



空腹と悪意でどんどん心がすさんでいくさなか、トキワの森に雪が降利出す頃、薄汚れた姿で食べ物を探す私の前に、ある日一人の子供が私の前に現れた。

「ねぇ?お腹が空いてるんだったら、僕んちに来ない? あと、お風呂も入れてあげるよっ」

そう全く邪気なく笑う子供。

ぶっちゃけると、この子供こそが私の今のご主人様なのだが、そのときの私には絶好の獲物でしかなかった。

この子供の好意を悪意ある形で大いに利用させてもらうつもりだった。死なないために。


子供の家に連れて行かれた私は、温かい食事と風呂を与えられ、やわらかい床に寝かされた。

子供の家は母子家庭だった。

「だからお姉ちゃんができたみたいでうれしいな、もえもんさんだけどね」

と終始うれしそうに笑っていた。

その夜はなぜか寝付けなかった。久々に暖かい床で眠れるので興奮しているのだ、と自分に言い聞かせて目を閉じた。

翌日の朝、出て行こうとする私に子供の母親が「良かったらずっとここに居てもいいんですよ?」

なんてお人よしな母子だろう! 行く当ての無かった私はと同時に思った。ならとことんまで利用させてもらおう。



それから30の日が沈み月が昇った。私はその子供の遊び相手をしている。彼らの態度は変わらない。むずがゆい。


夏が過ぎる頃、彼らは私を家族として扱っている事に気がついた。お人よしな彼らを騙していることに私は罪悪感を覚えるようになった。


最初の冬を迎える頃、彼らの優しさに耐え切れなくなって私は全てをぶちまけた。最初から彼らを利用するつもりだった事、自分は薄汚れた存在だという事。
そう言って私は彼らの家から出て行こうとした。全て伝えれば、彼らも私を追い出すであろうと。
だがそれを知ってですら、彼らは私を追い出そうとはしなかった。さらにあろう事か涙を流し私に謝りだしたのだ、

「ごめんなさい、私たちの態度があなたを追い詰めてしまっていて、本当にごめんなさい」
「どうか僕たちの事、キライになんないで」

なぜか私も涙が溢れ、止まらなかった。

私にも、また居場所ができた。


次の春を過ごすときには、彼らの「おかえりなさい」の言葉に私は違和感も照れも感じなくなっていた。


三度目の初夏、私はその子供のことを”ご主人様”と呼ぶようになった。ご主人様はそう呼ばれるたびに照れくさがっていたが、秋に差し掛かる頃にはすっかり慣れ親しんでいた。


翌年には、ご主人様と私はマサラタウンでは敵無しのパートナーに成長していた。


そして私がご主人様に出会ってちょうど五年が経つ頃、私たちは旅立った。 中身の真白な、ご主人様の名前と同じ赤い図鑑と共に・・・・・・




「行け!! ペルシアン、みだれひっかきだ!」

「りょ~かいよんっ♪」

ご主人様が私への命令を伝え終わると同時に、私の体が動いた。

おそらく敵にはこう感じただろう、瞬きする間に私がぐんぐん接近し痛みと同時に・・・暗転。

五撃目までを入れることも無く、敵は気絶した。

止めは、刺さない。



「ペルシアン、大丈夫かっ」

戦闘を終えた私のもとへ、ご主人様が駆け寄ってくる。

「ふふっ、こんなの楽勝よ」

「そうだよな、うん、よくやった!」

そう変わらぬ笑みを私に向けてくれる。

そんな彼に私は-

「ねぇご主人さまぁ、私ごほうびがほしいわぁ」

しなをつくって寄りかかる。 あはは、と照れたように苦笑するその顔がとても愛おしい。

「せっかく戦いもひと段落着いたところですし・・・あっちの草むらにでも・・・」

そう言って彼の頬に指と唇を添え

「こ、こらあぁぁーっっ!! この淫乱猫女!! 私のマスターにいったい何をするつもりよっ!!」

邪魔が入った。文字通りにメラメラと髪を逆立てて私達の間に入り込んできたのは、火の馬娘、ギャロップだ。

「何って・・・ お嬢様のギャロップさんには言葉に出さなきゃ分からないかしらぁ?のしかかりよ、追加効果麻痺なしの。あ、一部はあるかもねぇ、むろん私が上でもご主人様が上でも可よん」

「な・・・な・・・」

挑発するような(実際しているのだけど)私の言葉にみるみるギャロップの怒りのボルテージが上がっていく。本当に分かりやすい子だ。

「怒髪点を抜く」というのをまるで体現しているかのようだ。

「いいじゃないご主人様、ねっ♪」

「あ? え?え? わっ」

ご主人様の手をとって、私は駆け出す。怒りの炎の渦でも巻きだしそうなギャロップはもちろん置いておいてだ。

「ったく、しょうがないなぁ。後でギャロップに怒られるのオレなんだぜ?」

そう苦笑しながらも、ご主人様はすぐに笑みを浮かべ、私と一緒に一生懸命走り出す。

「ご主人様っ」

「うん?」

なんだい?といいたげに彼が小首をかしげる。無論、走りながらで。

「私、ご主人様に仕えられてっ、とっても優しくしていただいて幸せよんっ」

「そう言ってくれるのは嬉しいんだけど・・・ここんとこずっとその言葉聞いてるなあ。嬉しいけど」

そんなふうに困った顔を見せる様子すら愛おしい。

「いいのいいの♪」

後方からギャロップの怒声が聞こえる。あの子は足が速いから、きっとすぐに追いついてしまうだろう。それなら、

「だって、幸せは何度もかみ締めてるときが一番幸せなんだからっ!」

もう少し、この人を独占している幸せをかみ締めていたい。
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