2スレ>>537


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第二作です。
一応続き者です、が、前作を見る必要は全くないのですよw
↓では本編どーぞ↓


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手乗り文鳥……をご存知だろうか?
手紙を鳥に持たせて、遠くの人と文通ができるというシステムだ。
一時はこれを稼業にして莫大な富を築き上げた者もいるが、
データ通信が一般となっている昨今、
こんな時代遅れは俄に騒がれるだけで全く流行らなかった。
それでも好評をいただいているのは通信線の張れない地域。
もえもんと共に旅をする人々にとって、町外れからの通信に対して信頼を得ている。
そんな我らもえもん文通システムサービス『文鳥屋』
本日も全身全霊のサービス精神で皆様に提供させていただきます!!


~あなたのお手紙届けます!とりもえもんの文鳥屋!~


「こねぇ」
頬杖をつきながらため息をつく男が一人カウンターに腰掛けている。
少し古い感じの木のテーブルからは建物の歴史を感じる。
そしてアナログな壁掛け時計。三つの針が時間を刻んでいる。
デジタルな時計が主流の今では考えられない。もはやオーパーツである。
こんなものを持っているのはアンティーク集めを趣味にしているような人間である。
全体的に清潔な店構えで、さまざまな観葉植物が置かれている。
入りづらい雰囲気は決してない。古きよき時代を髣髴とさせる店内はむしろ好印象であろう。
だが、それでも客は来ない。立地条件が悪いわけでもない。
最寄のもえもんセンターから歩いて5分、向かいにはフレンドリィショップもある。
建造物が密集した市街地と比べれば少し閑散としてはいるものの人通りは多い。
「はぁ~ぁ…今更文鳥なんて誰が使うねん…。」
そう、ここはとりもえもんを使った文通システムを提供する店。
客が来ない理由は単に”需要がない”からであった。
「はいはい、愚痴をこぼさないのですよ。お茶ですよ。」
「サンキュ、すず」
一向にテンションが上がらない店番にお茶を差し入れたのはオニドリルのすずだった。
しかしそこは文鳥屋、ただのオニドリルではない。
しなやかな肉体に広げた大ぶりな翼、飛ぶ姿はおそらく万人を魅了するであろう。
実のところとりもえもんは通常、長距離の飛行には向いていない。
人を乗せて飛ぶとなれば、せいぜい隣の隣の街へ飛ぶので精一杯だろう。
何故なら彼女らは気候の変化に耐えられる体と
地上でも生きていける知恵を身につけているからだ。
それが災いしてか翼は退化し――とはいっても制空権で優位に戦うバトルスタイル
のためこれ以上の退化はしないであろうと大木戸博士は云う――長距離飛行を行う
文鳥などには当面不向きなのである。
しかしながらここ文鳥屋では独特の育成法に基づくとりもえもんの長距離飛行術に関する
長年の研究成果により、とりもえもんを文鳥として使えるような調教法を確立することに成功している。
これはとりもえもんを使うトレーナーにとっては魅力的であり脅威でもあるわけだが
この育成法については機密保持のため外部に情報が公開されておらず即ち、未だにほとんどのトレーナーは
これについて、ましてや文鳥屋などというマイナーな稼業についてなど知る由もない。
「すず…」
「なんでしょう?」
「茶が温い。」
「………。」
そんなわけでなんとも平和なやり取りを交わす店主と従業員。
暇すぎて何をすることもなく、何を話すこともなく時間が過ぎるくらいなら
このような他愛ない会話であってもつい口を割って出るものである。
「あのですね!私はマスターに昨日入れた茶が熱くて飲めないと言われたから
お湯を少し冷ましてからお茶を煎れた訳ですよ!何なんですか」
自分の煎れた茶が温いと指摘され、にわかに不服を申し立てるすず。
「お茶が少し温くてもいいじゃないですか!のめるだけ幸せなのですよ!ぷりぷり!」
「まぁあれだな。昨日煎れた茶と今日煎れた茶を混ぜればちょ~どいい温度なんだがなぁ。」
「昨日飲んだ茶は二度と出てこないのですよ!その日その日でお茶にも”こんでぃしょん”
というものがあってですね、毎日味や適温が変わって大変なのです。…あ~、あれですね!
私のお茶の煎れ方についてダメ出ししつつ苛めてるんですね!パワーハラスメントですよ!」
わけのわからない議論になるのは日常茶飯事。まさに茶がもたらす出来事である。
「あのなぁ、パワーハラスメントってのは上司が部下に対してやることじゃねぇか。
俺らの関係は違うだろうが。」
「じゃぁ何だって言うんです?」
考え込む。
「う~ん…まぁ店主と従業員なんだが…お茶の入れ方にダメだし入れるのは……嫁?」
そして、沈黙。
「……んな、なっ、な、何をいいいいい言ってるんですかもう!!」
「あっははははははは!顔真っ赤じゃねぇか。」
そんなやり取りも仕事が暇であるからこそである。
…しかし、このようなやり取りも仕事が入れば彼らもその手のプロなわけで…

カランカランカラ~ン

唐突に扉につけてある鐘の音がなる。これも懐かしい響きで歴史を掘り起こす。
この音が店に響いたということはそう――客の来店である。
「ヨシキさん。」
「よぉいらっしゃい…お、カスミじゃねぇか珍しい。」
店を訪ねてきたのはハナダのジムリーダー、おてんばとして定評(?)のあるカスミであった。
「いらっしゃいませ!」
接客態度まで仕込まれているのか、どんな客にも丁寧な挨拶で迎えるすずである。
少し顔が紅潮しているのは気のせいではないが。
「仕事を頼みたいの。いいですか。」
「ああいいぜ。もう暇で暇でしょうがなかったんだ。大歓迎だぜ。」
早速、カスミは鞄を漁り始めたかと思うと、おもむろに七つの電子筒――暗号化されたデータの入った
簡易型データ格納デバイス――を取り出し、カウンターに並べて置いた。
「これらを各ジムに届けてほしいの。」
「ジムに……?」
どんな仕事でも来いと言ったヨシキではあったが、これは異例である。
おそらくジム間での連絡網だと思ったが、それにしては少々おかしい。
というのも、ジム間での連絡であったらデータ通信を使えばいいのだから。
文鳥屋の出る幕では無いようにヨシキは感じたのだが…
「わかった。重要機密なんだな。」
「……はい。」
このようなケースの場合、データ通信によるログの残留を危惧している場合が多い。
つまりはこの連絡事項を第三者に知られたくない、という意味を示唆している。
そう考えたヨシキは敢えて何も言わなかった。
カスミが危険な橋を渡っているのではないか。ヨシキが心配するところは寧ろそこである。
「あ、あとこれを……」
カスミはそういうと、あるものを7つの電子筒のうちひとつのサブケースに入れた。
「これはニビジムのタケシに届けて頂戴。」
「ああ……てかおい、今入れたやつってまさか――」
「そう、ジムバッジよ。」
これにはヨシキも驚きを隠せない。なぜそのようなことをするのだろうか。
「おまえ…何があった?」
ちょっとしたことがあって長年の付き合いである。ヨシキはカスミの異変にすぐ気付いた。
よく考えればいつものような元気さが足りない気がする。
少しの沈黙の後、カスミは重い口を開いた。
「少しの間…アタシ、ジムを空けるわ。」
「――!!?」
本日何度目の驚愕であろうか。ヨシキはついに腰掛けていた椅子を蹴り出した。





「なるほどな……そんなことがあったか。」
事の顛末を把握したヨシキはすずの煎れた――正確には煎れ直した――茶を一口啜った。
「悔しかったのよ……私のステラもアズリアも、ずっと今まで一緒だったけど。」
告白を終えたカスミは目じりに雫を浮かべて堪えている。
「そりゃ、いままで強いやつはいっぱいいたわ。なんだかんだで後にリーグチャンピオンに
なったやつとも戦ったし、それでも負けるたびに強くなっていったつもりだった。」
正直な話、カスミにはもえもんトレーナーとしての才能があった。
ヨシキがハナダのジムリーダーを勤めていたころ――5、6年程前の話だが――
ジムの扉を叩いてきたやつがいた。それがカスミである。
一度は彼女の挑戦を退けたヨシキであったが、たった一週間後、再び挑戦してきた彼女に負けた。
驚くべき成長の早さであった。もえもんが強くなったわけではなく、トレーナー自体がである。
その後もえもんリーグの準々決勝で敗退したカスミをハナダのジムリーダーにスカウトしたのはヨシキだ。
「でも、あんな強烈な敗北感は…初めて味わったわ。
もえもんリーグで負けたときもこんな感じなかったわ。」
ヨシキは不思議なものだと思った。過去に味わった敗北感。
その敗北をもたらした当の本人がまさか自分と同じようになることになろうとは。
――いや、きっとなっていただろう。それを俺が知ったか知らないかの違いだ。
しかしカスミは幸いなことにヨシキに告白することができた。
同じ道を辿ろうとしているのなら、彼女のほうがより巨大な壁を破れるだろう。
ヨシキは彼女にわずかな嫉妬と大きな期待を抱いて語りかけた。
「おまえはそいつと戦って、そして負けたのは正解だったな。」
異な事を言われ、カスミは理解できないと言いたげな顔を向けた。
「おまえは確かに強いかもしれない。そういうやつほど
もえもんと人間の未来を担う架け橋になるもんだ。だがほとんどのやつは
それに気付かないまま終わっちまうんだ。何でかわかるか?」
わからないという顔をするカスミに、ヨシキは苦笑しながら言う。
「強いから誰にも負けないんだよ。逆境に弱くなっちまうんだ。
おまえなんかどうなんだ?そいつにおもっくそ負けて強くなりたいと思ったろ?」
「……思った。」
「それが正しいんだ。何度も負ければ、自分自身がもっと強くなるべきだ、
純粋に力を蓄えるような決意が生まれるからだ。もし強いまま勝ち続けてみろ、
もえもんたちは屈強だが、トレーナー自身は脆弱で、それは歪んだ強さになっちまう。」
つまりもえもんと共に、トレーナー自身も強くなる必要がある。とくに精神力においては。
「おまえが若いうちに無様に負けるのは変でも悪いことでもない。
おまえが内に秘めたものが歪な形にならないように起こした自然なものだと思え。」
強く言い放つヨシキの眼は、どこか熱いものを感じ取れる。
それをカスミは真摯に受け止めたようだ。彼女の瞳には新たな魂が宿っている。
「…なんだ。そっか。自然なことだったんだ。だったら……」
力強く椅子から立ち上がるカスミ。
「次は勝つ!!」
暗示かもしれない。次も負けるかもしれない。
それでもカスミはもう挫けないであろう。
その先の勝利を掴みとるのだから。
「……がんばれよ。仕事はちゃんとこなしておくからな。」
ヨシキはカスミを羨ましく思った。
同時に彼女に、一筋の光を見たような気がした。





「さってっと!!仕事をこなしますか。すずー」
「はい!」
久々の大仕事だからか、すずのモチベーションは高い。
「翼はなまってないだろうな?今日はカントー一周だ!頼むぞ!」
「了解なのです!…ところでマスター?」
「…何だ?」
「さっきの…話なんですけど、そ、その、っよ、よっよよよ」
「さてと、俺もやることやっちまいますかな。」
「ちょぉっとぉぉぉ!!話聞いてくださいよぉぉぉぉぉ!!」
……今日も文鳥屋は、忙しくもないのに大騒ぎである。
そんな店内の棚には、控えめに飾られている栄光があった。

<< 第××回 カントー地区もえもんリーグ
優勝 マスター・ヨシキ >>


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【設定集】
SS風ですがこれでも続編です。一応前作見てなくても読めるようにしました。

◇登場人物
ヨシキ これでも昔は強かったんだ、昔はな。名前も適当な完全オリキャラ
すず ヨシキの古女房(?)まぁオニスズメ時代から親しみのある愛称ですね
カスミ なんか彼女キーパーソンになりつつありますねw
ステラ カスミのスターミー。今回登場せず。
アズリア カスミのアズマオウ。これも登場せず。
大木戸博士 最初にプレーヤーにもえもんをくれるすべての元凶。
そのうち彼のストーリーも書きたいなぁ。未登場。
タケシ プレーヤーの最初の壁となって立ちはだかる男。
最初に選ぶもえもんによってだいぶ難易度が変わる。未登場。

◇カスミとヨシキについての産業
ジムリーダーのヨシキ 当時20くらい?

カスミにフルボッコにされる(5~6年前?)

もえもんリーグに出場したカスミをたまらずスカウトするヨシキ(4~5年前?)

◇文鳥屋
とりもえもんを使った中距離~長距離文通システム。
当時は既にデータ通信網が完成してはいたものの、一時の流行を呼ぶ。
その後一発屋のお笑い芸人のごとく急減衰。
が、一部の需要はあって、これを利用する人もいる上利用者には好評なので
歴史あるヨシキの家系はこれを続けている。現在ではこのシステムを知る者は少ない。

文鳥屋なんて…ねぇ?
ネットワークで支配された世界でなぜこんなサービス始めようと思ったのでしょうかwww
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