敢えて言うわ、マスターはきっと何でも屋をやってたに違いないのよ。
「…………。」
無言でチェーンソウを振るい、倒木からベンチを切り出している。
咥え煙草の紫煙がなんとも渋い事になっているが、まだ27である。
服装も黒いシャツにスラックスと見まごうばかりに濃い色のジーンズ。
「チャンピオンルームを公園にでもするつもり?」
足元は床すらも撤去し、出入り口以外の壁も取り払った。
代わりに周囲を大きく囲う高いフェンスがつく事になっている。
「……いや、空気清浄機が小さくて。」
……どういう理屈よ……。
本当に何を考えているか判らない。
近い内に殿堂入りの為の部屋も移築し、半径2kmもある広いフィールドにするらしい。
「少しは常識ってものを考えたりは……」
「……宿舎だと他のやつらが邪魔なんだ。」
年末年始を除き基本的にリーグは年中無休である。
さすがに遅い時間や早い時間の受付はしていないので、
四天王や私達が寝泊りする専用の宿舎で生活する。
「……私がこの前ワタルに声掛けられてたのがそんなに不満だったのね……。」
宿舎では食事をバイキング形式にし、関係者も共に食事をする。
何気に人数も多い、よって毎日が社交場の様な賑わいを見せている。
あれやこれやと言っている間にも、何故かログハウスが出来つつある。
切り出していたのはどうやらログハウスの柱だったらしい。
「もしかしてここに住むとか言わないわよね?」
……ぴた。
動きを止めるマスター、紫煙やチェーンソウのエンジンまで止まる。
「ガスや水道、まして電気なんてどう……やって……」
紫煙が指差し棒のようにたなびく先にはなんと出入り口からつながるケーブルなどの束。
水道やガス、下水まである。
「……3km距離がある、だからバイクも用意した。」
サイドカーのついた赤いバイクも真横に設置されている。
「それだって買い物とか……」
無言でマスターが顔を向ける先には……、
おそらくこれも計算のうちであろうニビシティが見える。
東側のフェンスの出入り口の先がニビシティのすぐ西につながっている。
「……見学希望者用の出入り口だが買出しにもつかえる。」
4時間でログハウスを組み終わる化け物を尻目に、
この暴挙すらも簡単に押し通す実力を目の当たりにしたキュウコンは、
地面にぺたんと座り込みまるで混乱するかの様に尻尾を揺らしているのだった。
―――
後書き
お腹すいた。
最終更新:2007年12月21日 00:14