「やっと……着いたな」
船に揺られて4時間弱。憔悴した顔で主人が降りてくる。
どうやら船の揺れに負けて酔ったらしい。
私の名はキングラー。主人と一緒に旅をしている。
「大丈夫ですか? 主人」
「……あー、何とか」
「さてと、兎にも角にも到着したのう……」
「そうね。どうするのかしら? 青年……と言っても無理みたいね」
少しふら付きながら私の主人は答える。
そんな主人を見ないかの様にサンダーとフリーザーが船から降りる。
「……とりあえず、最寄のセンターで休憩しましょう」
「それがいいかの」
「そうね」
私の提案に乗ってくれたのでふら付いている主人を支えつつ、
萌えもんセンターがある場所へと向かって行く。
「人間、お前はココでしばらく休んで居るが良い」
「え? あ、どうして?」
主人を長椅子に寝かせカウンターで借りたタオルで主人の額を冷やす。
そうしているとサンダーとフリーザーがおもむろに立ち上がった。
「ワタクシ達は情報収集に行って来るわ」
「ならば、私も―――」
「貴女はココで青年の看病」
私が立とうとするとフリーザーに言われてしまった。
「……判りました」
「何か判ったら帰ってくるわ」
「それまでは人間は大人しく寝てるが良い」
そう言ってサンダーとフリーザーはセンターの外へと出て行ってしまった。
私は主人の額に乗っているタオルを変えながら見送った。
「…ふぅ。落ち着いた。迷惑を掛けた」
「いえ。大した事ではありません」
数分して起き上がる主人。顔色は少しだけ良くなった。
別段我慢している訳でもない様子なので起き上がるのを抑えない。
「ただいま帰ったぞ」
「あら、もうよろしいので?」
「ああ、迷惑を掛けた」
そうしている内にサンダーとフリーザーが帰ってきた。
どうやら周辺の萌えもんと話をしてきたらしい。
「―――の結果、この島の北側にある灯火山と呼ばれる場所に居るらしい」
「ファイヤーはカントーから引越ししたみたいね。
引越ししてきた時は萌えもんの中で、相当話題となったらしいから楽だったわ」
「そうか、ありがとう」
「出発しますか?」
主人は『あぁ』と短く返事をして主人は腰を上げる。
私とサンダーとフリーザーは主人の後に続く。
「灯火山…か」
「はい。ここにファイヤーが……」
灯火山の麓で主人と私が頂上の方を見て居る。
後ろで『温泉が湧いて居るのう』とか『帰りにでも入って行く?』とか聞こえない。
聞こえないんだったら。
灯火山に登り始めて数時間。
然したる障害も無く頂上に近づいて来た。
「どうした青年。元気がなくなって居るぞ?」
「軟弱じゃのう、人間よ?」
「……」
「そりゃそうでしょう…、貴女達は飛んでいるから…」
頂上に到着すると飛行組みがそう言う。
疲れでぐったりとしつつ突っ込む。主人は……その気力も無い様子である。
船酔いと山登りのダブルパンチは流石にキツいらしい。
数分、その場に座り回復をする。
「はぁ……、少しは回復した。行こうか」
数分して主人が立ち上がる。
主人に従って立ち上がる。
「……騒がしいと思えば急に目の前で休憩したり、何を考えてるのか」
……目の前に居た炎を纏った鳥に突っ込まれてしまった。
「久しぶりじゃ、相変わらずの様じゃの」
「久しぶりね、ファイヤー」
伝説級の萌えもん達が挨拶をする。
「誰かと思えば、サンダーにフリーザーか。
10年ぶり…だったかな」
「えぇ、そうね。ワタクシ達の一生に比べては短い間ではあったけど……」
「やはり、会うと違うのぅ」
勿論、主人と私は蚊帳の外。伝説級の萌えもん達が話しているだけである。
流石に無視され続けるのも何だか悔しいので……。
「……あのー」
「人間? お主等?」
「いや、捕まった訳では無い」
「えぇ。長きに渡る『本来の目的』を果たす為に」
「……アレを? 何の為に?」
「伝説の鳥が住む山へと行きたいそうよ」
「目的は……人助けじゃな」
「ふむ……、それで資格は?」
「我は十分だと」
「ワタクシも及第点かと。聞くとこの旅で1度も戦った事は無いそうよ」
「その様よの。我の前に同行した者がそう申しておる。
我が同行した後もその態度を崩さなかった」
「そうか……」
声を掛けてみたものの何やら勝手に話が進んでいる様子である。
主人の方を見ると何やら諦めた感じで見返してきた。
「あのー…、一体、何のお話でしょう……?
出来れば私達に理解出来る様に話してくれると嬉しいのですが?」
「あぁ、済まんのう。古い付き合いだ。相手が何を言わんとするのかが理解できての。
お主等が居る事をすっかりと忘れておった」
「早い話が『薬草』の話よ。」
悔しいのでもう一度話しかけてみると、今度は反応が帰ってきた。
主人は『薬草』の話が出た為に興味の目で伝説の萌えもんを見る。
「そして、それはどこに?」
「ココには無い」
主人の質問をばっさりとファイヤーのありがたいお言葉。
少し涙ぐみそうなダブルパンチ+αで気力が尽きた主人。
「……だが、私達の協議の結果。お前は資格を得る」
「資格……?」
「そうよ、ワタクシ達は『カギ』なの。『あのお方』に繋がる」
「『あのお方』……?」
「伝説の鳥『ホウオウ』様じゃ」
「伝説の鳥……!! 主人は正しい道を歩んでいたのですね!!」
思わず私も声を上げてしまう。
この旅で捜し求めて来た目標、『伝説の鳥が住む山に生える薬草』が目の前にある事に気がついて。
「私、ファイヤーが認めし者へ」
「我、サンダーが認めし者へ」
「ワタクシ、フリーザーが認めし者へ」
『世界の中心へのカギを今ここに』
ファイヤー、サンダー、フリーザーが1枚だけ自分の羽を抜き、目の前にかざしながら詞を唱える。
3枚の羽は光へと還元されながら四角く形を変えてゆく。
「受け取れ。貴方ならその資格がある」
「え、あぁ」
主人が光に手をかざすと光はパッと散って1枚の紙が現れた。
『神秘のチケット』
虹色に輝くその不思議なチケットは主人の手に落ち着いた。
「特別に世界の中心『へその岩』へと入る事を許可する。
人間が入るのは……初めてだな。光栄に思え」
「あ、あぁ……」
「あぁ、それと――」
主人が返事をするとファイヤーが思い出した様に声を上げる。
サンダーとフリーザーも横でニヤついている。
私は妙な……と言うか、変な感じがした。
「ん……?」
「興味が沸いた。―――――連れて行け」
「……やっぱりですか」
案の定、ファイヤーが旅の同行を求めて来た。
主人は『私やサンダーとフリーザーの同行を認めてファイヤーだけを拒否するのも変だ』との事で、
『構いません、どうぞ』と一言で了承。
それを聞いた伝説系の方々は主人の周りへと飛んで来る。
ファイヤーだけが私と挟む様に主人の横へと周り主人の腕を取り、
ニコリと主人へと笑い掛けた後――――――
「そうだな、呼び方は…………ご主人様とでもしておくか」
最後の最後に言葉の爆弾を落とした。
灯火山の火の鳥-Fin-
最終更新:2007年12月21日 00:21