2スレ>>785


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~理由~

「マスター、今から晩御飯の準備をしますからちょっと待っていて下さい」
 ニーナが荷物の中から調理道具と材料を広げていた。
 ついさっきまでトレーナーと戦っていたと言うのに。
 だから僕は、代わりに作ろうか、という目でニーナを見る。
「……大丈夫です。マスターはのんびり休んでいてください」
 断られた。
 二人旅を始める時に、エプロンをプレゼントしてしまったのが悪かったのかもしれない。
 しかし、
『疲れているかどうかと言うなら、さっきまで戦ってたニーナの方が疲れてる』
 ノートに書いて抗議。
 意地っ張りな彼女を止めたければ、ひたすら回数を重ねるのが一番効果的である。
「……いえ、大丈夫ですから。料理は私がやります」
 まだ諦めない。何か理由でもあるのだろうか。
 どうして? 僕は視線で尋ねる。
 僕も疲れてないから料理するよ?
「……どうして、ですか? それは、その……そうです、料理が好きだから」
 目が泳いでいる。
 というか凄く挙動不審。
 今思いつきましたみたいな喋り方だったし。
 僕はそのまま彼女を見つめ続ける。
「……あの……えぇと……」
 もう少し。
「その、マスター? 言わないと……ダメ、なんですか?」
 なにやらモジモジし始めた。
 いつも背筋を伸ばしてしゃんと立っているのがデフォな彼女にしては珍しい。
 だから僕は、彼女の目が潤んでいることに気がつかなかった。
 じっと黙っていると、観念したのかニーナは息を吐いた。
「だって、マスターの作ったご飯……」
 そこで彼女は言葉を切り、
「私のご飯より美味しいじゃないですかぁ!!」
 そういい残してニーナは向こうの方に走っていってしまった。
 ……何か悪いことしたのかな?
 僕は分からない気持ちを、?のフラッグを振ることで表現していた。



~違い~

「マスター、ご飯は何が食べたいですか?」
 ニーナに料理を作る理由を聞いて以来、一週間ぶりの台詞だった。
 その間は自分で何とかしていた。
 だけど、料理を作って食べるのは申し訳ない気がした。
 だから僕は滅多に買わないカップ麺なんかで食事を済ませていたのだ。
 ……カップ麺って作るの難しいなぁ。
「マスター?」
 返事をしないのを不審に思ったのか、ニーナが再び僕を呼んだ。
 なんでもないよ、というような手振りをして僕は、
『ニーナの手料理』
 と書いたノートを見せた。
 するとニーナは満足した表情で元気に、
「分かりました!」
 なんて答えるものだから、少し反省。
 今度からはその話題に触れないようにしよう。
 ……しかし。
 最近料理をしていないし、腕が落ちてるかもしれないな。
 もう数ヶ月彼女に任せてきたから、まともに包丁を握れるかも心配だった。
 ……確かめてみるか。
 包丁を使いたくなった。
 もしこれで彼女が機嫌を損ねても、買いすぎたカップ麺が荷物に腐るほどあった。
 僕はノートに、
『ちょっと、手伝いをさせて』
 と書いて、ニーナに見せた。
「……」
 反応は無言、沈黙。
 ……また一週間はカップ麺……。
 一週間の食事風景を思い出す。
 二人とも始終無言。お湯を沸かしてカップに注ぎ、時間が経ったら食べる。
 ……カップ麺、買いすぎなければ良かったなぁ。
「――いいですよ」
 買いすぎなければ、外食で済ませるくらいのことは出来るんだけど……。
 あれ? ニーナ、何か言った?
「ですから、手伝いくらいはいいですよ、って言ったんです」
 え、いいの?
 ちょっと嬉しい。
「で、でも、調理をしたらだめですからね。あくまで材料を切るだけなら……」
 明後日の方を向きながら言い放つニーナだった。



~食材~

「マスター、そろそろお昼にしましょう」
 ちょっと材料を切っているうちに包丁の使い方を思い出したから。
 それ以降はまた彼女に料理を任せっきりにしていた。
 手伝った方がいいような気もしたが、彼女にしては任せられた方がいいらしい。
 ちょっと僕には理解できないけれど。
 女の子だもんね、と勝手に性別のせいにして悩みを事故解決した。
 僕は、コクリと頷いて了解。
 今後の進路について、地図とにらめっこをすることにした。
 そして一分後、
「ま、マスター!!」
 なんだろう、もう出来たのかな? でも、様子がおかしいな。
 どうしたの? と、?のフラッグを風に泳がせる。
「しょ、食材がこれっぽっちも残っていません!!」
 ……それは困った。というよりおかしい。
 ちゃんと三日前に一週間分くらいは買い込んだはずなんだけど……。
 うーん。
「マスター、心当たりは……」
 ありますか? とは繋がらなかった。
 途中で何かを思い出したのか、瞬間で目の表情が変わった。
「……ない、とは言わせませんよ?」
 そう言われても僕は摘み食いもしないし、かといって袋に穴が開いてたとかいうこともないし。
 ……僕、何かした?
 目で尋ねてみた。
「マスターがやせいの萌えもん達に考えもなく配ったじゃないですか!」
 あれ? そうだっけ? でも待てよ。確かにそんな記憶も。
 だけど……
『それで、四日分も使っちゃうかな?』
 ノートに書いて聞いてみる。
「使いました。会うたび会うたび必要以上に渡していたじゃないですか」
 困ります、とニーナは嘆息した。
「マスターが使う分を余分に買っておいたのにこうなってしまうなんて」
 それじゃあ……まさか僕、四日分なんて目じゃないほど使っちゃった? 具体的に何日分くらい?
 というような目でニーナを見た。
「マスター、視線一つで何とかなるレベルの情報量じゃないですよ?」
 言われたのでノートに書いた。
「……喋る、という選択肢はマスターにはないんでしょうね……」
 そんなことはない。失敬な。
 ちゃんと、他の話では喋ってるじゃないか。
「ともかく、萌えもんに食べ物をあげるのは結構ですが、ちゃんと考えて渡してくださいね?」
 分かった。
 僕は一度真剣な目で頷いた。
 お腹が空くのは非常に危険だから。
 そして、話は終わったものだとばかり思っていた僕は、最後にニーナが呟いた言葉を聞き逃していた。
「それに……やせいの萌えもんばっかりじゃなくて、私のことも気にかけて欲しいです……」
 進路は食材確保で決定した。
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