3スレ>>95


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「……ん? やべ、寝てたか」

息抜きにやってきた一の島、ともしび温泉。
その入り口裏手にある砂浜で、穏やかに照り映える太陽に目を細める。
どうやらうららかな陽気についついまどろんでしまったらしい。
ふぁ、とあくびをしながら体を伸ばし、軽く周囲を見渡して気づく。

「――あれ? ブースター?」

そう相棒の名を呼ぶも、答えは返ってこない。
俺が寝ている間にどこかへ行ってしまったようだ。

「弱ったな……」

己のアホさ加減に呆れ果てる。
せっかく相棒をくつろがせるために連れてきてやったのに、相棒ではなく自分がくつろいでどうする。
さてどうする、と頭をかきつつ思案し始めた、そのとき。

「ふふん、ふっふふん、ふふふふ~んふふ~ん……♪」

……どうやら、探す手間は省けたようだ。
不意に流れてきた聞き覚えのある鼻歌が聞こえる方向へ足を向かわせると、案の定。

「……お前は何をやってるんだ?」

「あなほりっ!」

もう、これでもかというくらいご機嫌で砂浜に穴を掘るブースターの姿があった。
だいぶ前から掘りつづけていたようで、掘り出した砂で出来た山は、結構な規模になっている。
……あなをほる、は、覚えさせてないはずなんだがな。

「楽しい……か?」

ブースターの背中から穴を覗き込むようにして、そう尋ねる。
すると。

「うんっ! すっごく!」

――さよか。
まぁなんというか……犬っぽいからなぁブースター。
見た目とか雰囲気とか、あと人懐っこいとことか。
他のイーブイの進化種と比べて犬っぽさがずば抜けて強いよなぁ。

「んしょっ、んしょんしょっ、えへへへへっ」

そんな俺のくだらない感想などお構いなしに、ブースターはひたすら穴を掘り続ける。
あーあー、熱中しすぎて腕からどんどん穴の中にハマってっちゃってるよ……って。

「……ん? んん?!」

無邪気なブースターの様子に肩をすくめた次の瞬間、俺は素っ頓狂な声を上げてもう一度ブースターを凝視する。
皆さん、想像してもらいたい。
砂浜にしゃがみます。
それもいわゆる女の子座りという奴で。
穴を掘ります。
どんどん掘ります。
穴が深くなります。
背筋を伸ばしたままでは底まで手が届きません、どうしますか?
背中を曲げて、かがみますね?
そしてまた掘ります、掘り進めます。
かがんでも手が届かなくなりました、どうしますか?
――おしりが、上がりますね?

「ふん、ふふんふ~ん♪」

俺の心中など皆目気にすることなく、ブースターは穴を掘り続ける。
その鼻歌にあわせるように、大きくてもふもふな尻尾が左右に、ふりふりふりふり。
ご機嫌ボルテージがマックスなのか、尻尾に合わせてかわいいおしりも、ふりふりふりふりふりふりふり。

「…………!」

声が出ない、言葉にできない。
わかってくれるだろうか、この胸にふつふつと湧き上がる途方もない熱量を伴う感情を。
目の前で、ずっと一緒に旅をしてきたパートナーともいえる女の子が――萌えもんだということはこの際関係ない――無防備に、おしりを、こちらにむけて、ふりふりふりふり。

「――い、いかん、いかんぞ俺! 落ち着け……素数を数えて落ち着くんだ……ッ!」

飛びかけた理性を間一髪掴み取り、自己嫌悪に頭を抱えつつ必死で冷静さを取り戻そうとする。
が、しかし。

「――できたぁ! ますたー、見て見てぇっ!」

――その、声に、顔を上げる。
そこには。

「――――ッ!」

「えへへぇ、すごいでしょお? がんばったんだよぉ!」

自分の掘った穴を崩さぬよう腕を伸ばして四つんばいになり、愛らしいおしりを高く掲げ、うれしそうに大きな白い尻尾を振ってこちらを振り返る、ブースターの姿が。
……そして、俺は、考えるのを、やめた。

「ぶ……ブースタァァァァァァァァァァ!!!」

「ふぇえっ!? ま、ますたー、どうし……ひゃああああああああああんっ!」



――後日、ブースターと仲睦まじく帰宅した俺の元に、ともしび温泉から一通の手紙が届いた。
文面にいわく――『せんじつはおたのしみでしたね』と。
……存分に楽しませていただきました、ありがとうございました。
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