2スレ>>960


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― 登場人物 ―
マスター :主人公
ドククラゲ:ドクピン(普通に喋るが変なところで無口系)
ハクリュー:端役その1(CV:くじら)
ラプラス :端役その2(CV:立木)



― ともだち ―



 萌えもんますたぁ? なりたいけど俺とてまだ学生だ。毎日「萌えもんゲットだぜ!」と遊んでいるわけにはいかん。と、言うことで俺は数時間前から勉学に勤しんでいるのだが、唯一の懸案事項は――。

「…………」
「…………」

「……あのー、ドククラゲさん? ちょっとそこどいてくれませんかね」
「…………」

「僕は今勉強しているのです。お願いですからそこから降りてください」
「…………」

 普段使わないような丁寧語でお願いしても一向に彼女はどこうとしなかった。
 現状を説明すると、参考書やら教科書やらが散乱している机に、彼女のすべすべの足と何とも言えないふにゃふにゃで柔らかそうな触手が机上に舞い降りているのだ。つまり机の上に乗っている。そして彼女は体育座り(強調)をしてじーと俺の方を見ているのだ。
 対する俺も必死の抵抗(机を揺らしたり、彼女の嫌いな「すもぉくちぃず」を近づけたり、降りろという念を込めたウィンクをしたり)したのだが、うーんどうしたことか……。

「ドクピン、今一度言おう。そこをどいてくれ。勉強ができないじゃないか」
「…………」

「俺、頭良い方じゃねえんだから今度の試験はマジでヤバイんだって」
「…………」

「おい、いい加減にし――」
「……遊ぼう?」

 ……はい? 今なんて言いましたこの娘さんは。

「……遊ぼう?」

 態々ご丁寧に復唱してくれてありがとう。
 そして俺は机上で座敷稿市と化しているドクピンを軽く小突いてやった。勉強のしすぎでイライラしていたのかもしれんが、無生に腹が立ってしまったのだ。いけないことしたかな……?
 罪悪感に苛まれたが昂ぶる気持ちを抑えつつ、俺は出来るだけ顔に笑顔を貼り付けながら、

「分かった。終わったら遊んであげるから、そこから降りて待ってなさい」

 そう言ってドクピンの体を持ち上げようとした。しかし、ドクピンは首を横に振ってそれを拒んだ。
 そしてドクピンの目下には涙が浮かんでいた。

「お、おい、ドクピン涙が――」
「……っ」

 決して強く叩いたわけじゃない。ひとたび萌えもんバトルとなれば雑魚だろうと全力でなぎ倒し、無類の強さを発揮する彼女にとって俺のような人間ごときの一閃ならば痛くも痒くもなかったはずだ。なのに何故……。
 おどおどする俺は、とりあえずハンカチを手に取りドクピンの双眸から流れ落ちようとする涙を拭いてやろうとした。するとドクピンが口を開いて――。

「……最近全然遊んでくれない。新しく捕まえたハクリューやラプラスばかり相手してる。寂しい」
「えっ?」
「わたし、もういらない……?」
「あっ……」
「一緒にいたくない? もう、ともだちじゃない?」
「……っ!?」

 くっ、頭が痛ぇ……。
 すると脳裏に俺がドクピンと世界中を旅する前の景色が浮かんできた――。



 まだあどけなさを残した幼き日の俺は、友達になりたくても自分から何も言えず、ただ寂しかった。
 いつも近くの海辺で座り込んで潮騒の音を聴いていただけの俺、そんな時だった。野生だったメノクラゲのお前と出逢ったのは。

『萌え……もん? 僕を襲うの? いいよ。僕、この世界じゃいらない人みたいだから』
『…………』

『僕に友達なんかできるわけないもん。ずっと独りなんだ……うぅ、うぅ、えぇーん」
『…………』

 泣き出してしまった俺に、無表情のお前は小さな手と俺の小さい手を合わせてこう言ったんだ――。



『……ともだち。わたしがなってあげる』



 ――あれから数年が経ち、俺も少しは成長して大人になったつもりだ。でも、本当の俺はあの頃から何も変わってなかったのだろう。友情を、愛情をただ享受するだけで自分からは何もできない、ちっぽけな糞餓鬼のままだったのかもしれない。

「ごめん、ドクピン。俺が悪かった。お前は俺にとって一番の友達なんだ。他の誰にでも代わりは利かないたった一人の親友だ。いつまでも友達でいてくれるか?」
「……あなたが嫌と言っても、わたしはいつまでもあなたの“ともだち”でいたい」
「そっか……ありがとう」

 先程まで悲しみの色を見せていたドクピンの瞳に涙は消えていて、満ち足りた笑顔がそこにあった。そして俺は、この萌えもんとなら一生を一人の人間として、マスターとして、そして何より“ともだち”として付き合っていくことを心に誓った――。

「ところでハクリューたちはどうした? 姿が見えないんだが……」
「ハクリューたち、どくばり撃ったからしばらく動けない。今が“ちゃんす”。たくさん遊ぶ」
 そう言って、ドクピンは小悪魔のようにニヤリを口を歪めて笑った。満面の笑みとはまた違う、たまに見せる独特の笑顔だが、こっちも悪くない。

 …………って、どくばり?

「ちょ! ちょっと何やってんの!」
「ふふん」としてやったりな表情を浮かべるドクピン。
「なに誇らしげな顔してんの!? 大切な仲間になんてことを!」
「大丈夫。痺れてる程度。すぐ治る」
「そういう問題じゃねえ! 早く萌えもんセンターに連れて行かないと……」

 全くやれやれだぜ……。まあ、こいつの寂しさに気付いてやれなかった俺が悪いんだ。これからはどんな時でも一緒にいてやるからな、覚悟しておけよ。
 ズビシッと人差し指をドクピンに向け、俺は言った。

「ドクピン! 帰ってきたら一緒に思いっきり遊ぶぞ!」
「……うん。待ってる」

 結局、勉強は中止にして一日中ドクピンと遊んでいましたとさ。
 試験?なにそれおいしいの?



― Fin ―
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