12月もすでに中盤に差し掛かり、夕方の異様な切なさと北風の寒さで身も心も震える今日この頃。
俺はいつものように仕事を終わらせて帰路につく。
遠くからはどこぞのガッコからの元気な部活のかけ声
「俺にもあんな時期があったもんだ」などと心の中で思いつつポッケの中のカイロをいじる
不思議な物だがカイロというものはただ少しの間ポッケに入れておくだけで「暖かい」を通り越して「熱い」の域にまで達する
一度、あんまり熱くなりすぎたんで低温火傷もしたことがあった。なんてことも今では良い思い出
俺は文明が生んだこのちっぽけな利器(?)に対してしみじみとありがたみを感じながら、最愛の嫁の待つ我が家へ一歩また一歩と歩みを進めた
「ただいまー」
「お帰りなさい、あなた。晩ご飯の用意できてますよ。それとも先にお風呂になさいます?」
「んー、風呂も捨てがたいけどやっぱりココは晩飯で。」
「あら、いつもは「じゃあ先に風呂で」っておっしゃるのに、珍しいですのね」
「いや、今日はほら、今年一番の冷え込みだったろ?だから風呂にはいるよりもまずお前の心のこもった料理で身も心も温まりたい気分なんだよ♪」
「まぁ、あなたったら///じゃあすぐに支度するんでテーブルで待ってて下さいね。今日は腕によりをかけて作ったんですから。」
そういって我が最愛の嫁、ラプラスはおれのコートと背広を持ってクローゼットにしまいに行く
俺は言われたとおりにテーブルについて広間のTVのスイッチを入れた。
はっきり言おう。俺の嫁の料理は絶品だ。
結婚して間もない頃はそれはひどいものだった。なにせ相手は会社の上司のお嬢さんで未だに電車にすら乗ったことがないという正真正銘の箱入り娘だったのだ。
そんな彼女が料理をしたことなどあるはずもなく。お米を自分が使ってるシャンプーで洗い出す有様だった。あのご飯は本当にキミの味がしたよ・・・
だが、そんな彼女もいい加減に俺が無理して食べてることが分かって、一週間ほどショックで口も聞いてくれなかった。あのときは離婚も覚悟したな。
だが、芯は並大抵の強さじゃなかったのでそこから一念発起。毎日電車を使ってお料理教室に通い出したのだ。
元々筋は良かったのだろう。彼女はめきめきと腕を上げて。たった一ヶ月足らずで俺がこうやって嫁の料理を楽しみに帰ってこれるくらいにまで上達した。
そんな彼女が腕によりをかけて作った料理・・・あぁ・・・楽しみだなぁ・・・
なんて妄想にふけってると
「お待たせしました~。私ことラプラスの料理の師匠がイチ押しの絶品料理ですよ~!」
「おお!それは楽しみだな!しかしでかい鍋だな・・・なんだろ?カレーか?シチューかな?もしかしておでんか?」
「フフフ・・・」
「?」
ラプラスの今まで見たことのない異様な含み笑いにハテナマークの俺。
だがしかし、次の瞬間。俺はとんでもないもんを目の当たりにした。
「では、あけますよ~♪」
ラプラスがふたを開けるとそこにあったのは・・・・・・・・
「・・・カレー?」
いや、ただのカレーではない。
なんだこのカレーのにおいの中に潜む甘い香りは!!
しかもなんだかミカンの香りまでするぞコレ・・・
・・・はっきりいって食いたくない・・・
「なぁ、ラプラス」
「はい?」ニコニコ
「味見はしたのか・・・?」
「はい、もちろんしてみましたとも!」
「どうだったんだ?」
「味見をしたら妙な甘さにコーンの風味がしたんだ、でもカレーは辛さ以外の要素がなくなってるんだ。」
「・・・なんか急に口調が変わってないか・・・しかもどっかで聞いたことのある台詞なんだが・・・」
「乙女の秘密ですwクスッ」
「・・・ところでコレは一体なんて名前の料理なんだ??」
「あはwよくぞ聞いてくれました!!この料理こそ某萌えもんスレから派生したチャットルームで一世を風靡した料理・・・その名はC3Sです!!」
「おk、とりあえず今日は先に風呂に入る方向で・・・(カキーン・・・」
なんだか危ない電波を出し始めた嫁に若干引きつつ俺は先に風呂に入って心を落ち着けようとしたところ
「・・・逃げちゃ嫌ですよ~。 あ な た ♪」
あ、ラプラスさん、何をなさるんです。
私の両手両足をぜったいれいどで凍らせるなんて、これじゃあ動けないじゃないですか。
しかもマウントポジションだなんて・・・まるで夜の方みたいじゃないですか。いつもはあなたそこまで積極的じゃないでしょう
しかも何です、その右手に持ってるお玉は。
百歩譲ってそのC3何とかがカレーの部類にはいるとしても、カレーはご飯にかけて食べるもんじゃないのですか??
あ、ちょ、左手で口開けないで!!
しかも「大丈夫ですよ。私もコレを食べて生まれ変わったんですから・・・あなたも一緒に最高にハイになりましょう・・・」とか、危ないこと言わないで!!
あ、あ、お玉が近づいてくるよぉ
ちょ、やめて、らめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!
「あはははははははははははははははははははは!!!!!!C3S!C3S!C3S!C3S!C3S!シーエス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・バタ」
その後、嫁のラプラスは運ばれた先の病院のベッドで二週間眠り続けてようやく目を覚ました。
目を覚ましての第一声はこうだった
「あら、あなた。C3Sのお味はどうでした??」
・・・すごく・・・カオスでした・・・・
-完-
最終更新:2007年12月21日 01:25