「ここが……薬草がある場所か」
伝説のお三方(もうこの名でいいや)曰く、俺が人間では初めてこの島へと到達したらしい。
天にそびえる程高く山が突き出しているその島は何故か物々しい雰囲気を醸し出していた。
俺はキングラーと伝説のお三方と共に洞窟の目の前へと立つ。
しかし、洞窟は岩の扉でしっかりと封印されていた。
扉には中央上部に黄色と赤色と白色の玉が埋め込まれと3箇所の羽の形に窪んだ穴があった。
「お、おい…」
「人間」
「何だ? フリーザー?」
「…ワタクシ達の羽を抜く事を許可する」
「どう言う事だ…?」
「言っただろう? 我らは『カギ』だと。そのままの意味よ」
「……羽がカギなのか?」
「流石は私達の認めた者だ。頭の回転が速くて助かる」
「……そうか。少し痛いかもしれんが……」
俺は伝説のお三方から1本づつ羽を取り扉の羽の形に窪んだ穴へと入れる。
左には黄色い玉が埋め込まれているのでサンダーの羽を。
中央には赤い玉が埋め込まれているのでファイヤーの羽を。
右には白い玉が埋め込まれているのでフリーザーの羽を。
埋め込んで1,2秒。洞窟入り口の扉は光に消えるように無くなった。
「……ついに」
静かに洞窟へと入って行く俺達。
入った時直ぐに左のハシゴと右のハシゴが見えた。
「上に行くハシゴだな……?」
「そうね。常識的に考えればそうなるわね」
俺はまた冷静に迅速にハシゴを登る。
ハシゴから顔を出すと目の前に太陽が見える。
眩しくて手で太陽を隠し目が慣れるのを待つ。
「な!?」
「どうしまして!」
「敵か?!」
「こんな場所で!?」
「――――無い」
「え……」
急いで俺達はハシゴを上り切る。そこには薬草どころか……
見る限り岩だからけの地面。
「草1本生えてねぇ…! 何でだ!? 何でなんだ!!」
「主人! 落ち着いて!」
ここまでの旅の苦労が報われたと思った瞬間、旅はスタートへと戻された思い。
まるでタチの悪いスゴロクである…。
「何でねぇんだ! 何で…。何か…何か間違えてたか!? 間違えてたのなら何を!?」
「煩いなぁ…、勘弁してよ…。人の寝床にズカズカと入ってきて喚き散らして…」
『…!!』
その声に俺以外の萌えもん達は膝を付き頭を垂れる。
「ボクの寝床に何か用事!? 人間! ……? 人間? な、何でこんな場所に人間が居るのさ!?」
「…………誰?」
空から飛んできた萌えもん。
こちらの混乱振りがうつったのか逆に俺が冷静になってしまった。
周りを見ると何故か判らないが全員、肩を震わせて居る。
……伝説の萌えもんが肩を震わせる程、強いのか? コイツ…?
「ボクに向かって『誰?』とは失礼な! 萌えもん『ホウオウ』さっ!」
「あ……そう」
「な! 何その質素で逆にボクが驚いちゃうような反応!?」
「いや、『ホウオウ』さんとやら、寝床で騒いだのは悪かったが……。
特に君に用事は無いんだ。探し物が見つかったら即帰るからちょっとお邪魔するよ」
「……」
何故かホウオウとやらはボー然とした様子でこっちを見ていた。
頭を垂らした全員も肩の震えが大きくなっている。
―――ひょっとして、俺、地雷踏んだ?
「ぷ…、ぷぷ……、ははははははは!!!」
最初に噴出したのはフリーザーだった。
それに釣られたのか、サンダーもファイヤーもあまつさえキングラーまで笑い出していた。
……何? この状況は?
地雷は地雷でも笑いの地雷だったらしい。
「ひー…、危うく笑いで窒息される所だったわー。
ちょっとだけ期待してたけど、盛大に笑わせてくれるとは恐れ入ったわ」
笑い出してから数分後、笑いの涙を浮かべて片手で腹を抱えつつ俺に言ってくる。
くそう、コイツらシーギャロップでの事を根に持ってやがったか…。
妙に一部を強調した口調で。
「あの方『伝説の萌えもん』ホウオウ様」
「……あー? 何か? ……それは失礼しました」
俺は頭を下げるも『もう遅いよ…』とか言って空でいじけてたり。
「…それで人間なんかがボクの棲家に何か用事?」
「真面目なお話、この人間『薬草』を求めているんじゃ」
「『薬草』を?」
「えぇ、そうですわ」
「……お前達の事だから、性格面と能力面ではいいんだろ?」
「あぁ、そっちはもう既に私達は満足だ」
「ならいいと思うよ。ボクも君達と長い付き合いだしね」
「どう言う……事だ?」
萌えもん達には全て話が通っている如き感じである。
思わず口を挟んでしまったが……。
「伝説は本当だって事だよ。ボクのこの棲家に草はある」
「で、でも…、一面、岩だらけだぜ…?」
「うん、そう。草は『まだ』無い」
「…まだ?」
「君は3鳥に試された様にボクとその相方、そしてもう1人に試されるって事だよ。
……そして、試練の乗り越えた君は無事に草を手に取る」
「そのお前の試練ってのは…?」
俺はホウオウに聞く。
「…うん。もう終わってる。気に入った」
「はぁ?」
「ボクの試練はここに来るまで。伝説の3鳥の機嫌を取るなんて凄いよね! 人間!」
「機嫌を取られた記憶は無いのだがな…」
「そう言って~。ホントは気に入ってるんだろ、ご主人様の事」
「そんな事は無い」
どうやら俺はホウオウの試練とやらに自動的に合格していた様子である。
「それでホウオウ様、相方とやらはどこに?」
「うん。下」
「下? 下の階の下ハシゴの先?」
「うん、そう」
伝説の3鳥とは違って偉い近くですね。
思っても言わない事にした。
「あぁ、そうだ。ボクも行くよ」
「……やっぱりそう来たか」
半分以上予想付いて居たがホウオウは一緒に来るらしい。
もう……好きにしてください。
ほうおうさま、こうりん!-Fin-
最終更新:2007年12月21日 02:18