『ただの日常』
どこかの草原で、トレーナー同士のもえもんバトルが終った。
勝ったほうは、負けたほうから賞金をもらい、バトルに勝利をもたらしたもえもんへと近づいていく。
「お疲れさん、よくやったお前たち」
そう言って、レアコイルの頭を撫でていく。
「うん」「私たち」「がんばった!」
撫でられて嬉しそうなレアコイルは、一つの文章を順に喋っていく。
この喋り方に始めは戸惑ったトレーナーだが、一緒に過ごし始めて一年以上経った今では、
慣れて当たり前のこととして受け入れている。
「マスター」「お話が」「あるの」
「なんだ?」
「いまの戦いで」「レベルが」「上がった」「でんじほうっていう」「新しい技」「覚えられる」
「そうなのか……でんじほう」
トレーナーは、下ろしていたリュックをごそごそと漁り、一冊の本を取り出す。
表紙には、もえもん技辞典と書かれている。
「えっと、でんじほうでんじほうっと……あった」
みつけたでんじほうのページを読んでいく。
「威力は強いけど、命中が不安だな。それとPPも少ない。
ロックオン覚えておけばよかったか?」
「後悔」「先に」「たたず~」
「わかってるよ。
んーちょっとおしいけど、覚えなくていっか」
「「「いいの~?」」」
レアコイルは、首をかしげてトレーナーに聞く。
それに頷いて返すトレーナー。
「それじゃ」「ポイッ」「するね~」
レアコイルは、実際に何かを捨てる仕草で、でんじほうを覚えることをやめた。
「スパークに威力不足を感じたら、10まんボルト覚えればいいしな。
スロットの景品で、たしか取れたはずだよな?」
記憶に自信がなく、レアコイルに聞いてみる。
「あった」「でもマスター」「スロット」「「「へた」」」
「やかまし!」
「きゃー」「マスターが」「怒ったー♪」
レアコイルは、楽しそうに三方向へと逃げていく。
「まったく」
リュックに技辞典を戻して、背負う。
そして、レアコイルを呼ぶ。
「出発するぞー」
遠くに逃げたわけじゃないので、レアコイルたちはすぐに戻ってくる。
「これから」「どこに」「行くのー?」
「こっからだとタマムシシティが近いから、タマムシシティだな」
「マスター」「ミックスオレ」「飲みたーい」
きゃっきゃと騒ぎ出すレアコイルに、苦笑しながら頷いてトレーナーは歩き出した。
レアコイルは、それぞれトレーナーの肩や頭につかまって、ついていく。
どこにでもある、もえもんとトレーナーの日常。
最終更新:2007年12月22日 23:06