3スレ>>683


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 シロガネ山。
 未だ人の手が入っていない、並大抵の者では踏み入る事すらできない萌えもん達の居城。
 リーグチャンピオンですら立ち入るのは難しいとされるこの場所の奥深くにて、今二人の人間が戦っている。
 ジョウトリーグチャンピオンと、盲目のトレーナーが。
 いや、戦っていると言うのは語弊があるかも知れない。
 何故なら、ほぼ一方的なバトルだからだ。

――嘘だろ? こんな、こんな事になるなんて。
 強力な萌えもんが出ると言うから、万全の準備をしてこの山に入った。
 もちろん、このバトルの前にはみんなを休憩させて、万全の状態で望んだのに。
 なのに、こんな……。
 こんな一方的に負けるなんて。

 アイツは未だ一人目の萌えもん。
 なのに、こちらは既に最後の一人。
 手持ちの萌えもん達は悉く、あのフーディンに沈められた。
 大した傷も与えられずに殆ど一撃で、だ。
 強い、強すぎる。

「ギャラドス、はかいこうせんだ!」
――だが、負けられない。負けたくない!

 ギャラドスの口から放たれた“はかいこうせん”がフーディンに向かう。

「ケィ」
『はぁ!』

 フーディンが目を見開き何かをする。
 直後、ぐにゃりと景色が歪んで“はかいこうせん”が掻き消えた。

「そんな!」
「嘘、でしょう……?」

 アレを消すなんて……そんな馬鹿な!
 自分の目が信じられない。悪い夢を見ているようだった。

「もう、眠らせておあげ。ケィ」
『じゃあね』

 景色を歪ませる程の強力な念力がギャラドスを襲う。
 避けられない。

「ギャラドス!」
「きゃあああああああああ」

 その一撃で今まで耐えていたギャラドスが倒れる。
 あのフーディンは一体どれ程の力を秘めているのか。

「ごめん……駄目だったみたい」
「もういい、早く戻れ!」

 これで手持ちの萌えもんは全滅。

「コレで六人全員倒したはずだね。君の負けだよ、ジョウトリーグチャンピオン」
「ああ……俺の負けだ」

――たった一人に、こうも、あっさり負けるなんて……。
 強い。今まで戦った誰よりも、強かった。
 悔しいと、同時に、絶対に勝ってやるという思いがこみ上げる。

「まだまだ修行が足りないね。それと、もう少し絆を深くすると良い。そうすれば君たちは強くなるよ、さぁ一度街にお帰り。ケィ。送っておあげ」
『さようなら。また会いましょう』

 フワリと体が浮く。

「次こそは絶対に勝つ!」
「待っているよ……」


 挑戦者が街に飛んだのを見届け、ケィ――フーディン――に労いの言葉を掛ける。
 彼女にはいつもお世話になりっぱなしだ。
 未だ、彼女を打ち倒した挑戦者は居ない。

「お疲れさま。ケィ」
『ううん。ボクは大丈夫。みんなも大丈夫みたい。ちょっと不機嫌みたいだけど……鬱憤が堪ってるみたい。構ってあげなよ』
「ああ、いつも助かる。感覚でわかるとはいえ、目が見えないと肝心な所は確かめられないからね……」
『もう殆どボクを介してないじゃない……』

 それは光を失ったばかりの頃と比べれば、の話だ。
 今も彼女の力を必要としている。

「いやいや。君のお世話になりっぱなしだよ……さて、うちに帰ろうか」
『うん。今日の晩ご飯はリン姉が作るって言ってたから、きっと美味しいよ』
「ああ、アイツの料理は美味い……」

 ぐにゃりと視界が歪んでテレポートで家の前まで飛ぶ。
 もう何百と経験したがやはりこの感覚は慣れない。

『はい。ついたよ』
「ああ、ありがとう。ただいま帰ったよ」
「あら、お帰り。マスターにケィ。今日はどうだった?」

 家の奥からエプロンを付けているであろうリン――ウインディ――が出てくる。
 良い匂いだ……今日はビーフシチューかな?

「チャンピオンが来たよ。あの子はきっと強くなる」
「嬉しそうね」
「ああ、嬉しいよ。優秀なトレーナーが育つのを見るのはいつでも楽しいし、嬉しい。あの子はボクみたいに間違ったりはしないだろうし」
『まだ、気にしているの?』
「ずっと、生きている限りは忘れないさ」

 ボクが光を失った原因。永遠に消えないボクの罪だ。
 忘れることなんて出来ない。
 今でも目を瞑れば甦る。
 炎に包まれた村。響き渡る悲鳴。苦しそうな鳴き声と、母を捜す子らの声。
 その光景を笑うボクと彼女。憎しみに染まった目でこちらを見る小さな少年。
 裏切った彼女。瞳を焼く美しい光。
 あの日、ボクは光を失った。

「まあ、マスターの過去話は放っておいて今日はビーフシチューよ」
『わぉ。なに? 今日って何か特別な日だっけ?』
「さぁ、何の日でしょうね……」
 楽しそうに会話しながら、家の奥へと向かうケィとリン。
 なんとなく位置を把握しながら、腰のボールに手を伸ばす。
「ふぅ……さ、出ておいで」
 ボールから相棒達を出す。
「けっ、また居ただけかよ。アタシたちって居る意味あるの?」
 大凡女性とは思えないほど股を広げ悪態をついたのがヘルガーのエナ。
 黙っていれば美しい令嬢を騙れるのに、性格で損をしている気がする。
「ケィが強すぎるのも、また問題ではある……私達の出番が無い」
 そう言いながら自身の爪を見せびらかしてきたのがハッサムの瞬。
 名前とは違い余り素早くは無いが、その攻撃能力は折り紙付き。
 古風というか、なんというか、不思議な性格の持ち主だ。
「私達だって戦いたいよー……ケィ無双も程々にして?」
 駄々をこねるように文句を言ってきたのがスターミーのスミレ。
 ヒーロー願望があり、よくテレビの影響を受けてヒーローチックな事をしている。
 未だに子供っぽいが、時折見せる大人の顔が恐い。
「わかったわかった。次に誰か来たら、お前達を使うから」
「「「ぶーぶー」」」
 臍を曲げてしまっている。
 これは、機嫌を取るのが大変そうだ。
「わかった、わかった。明日から三日かけて一人ずつ相手するから」
「YES!!!」「やったー!」「ふむ、久しぶりの主人との修行、楽しみだ」
 ふぅ、これでよ……。
「これでよし、なんて思ってないよねマスター」
「誤魔化しはいけねぇな」
「私はコレで十分だがな」
「……わかった。二人にはまた別に何かやろう。考えておいてくれ」
「YESYESYES!!! 何させようかな」
「マスターとデート♪ デート♪」
 デート……ね。
 はてさて、面倒な事になりそうだ。



続く?
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