マスターの煙草の本数が減った。
昨日からいる子のせい、おかげというべきかしらねぇ。
荷物の半分が煙草のカートンなんだから、少しは減らしてくれて助かるわ。
……私も尻尾もこもこなのよ? なんで私はだめなのかしらね。
それはそれだったわね。
今私たちはクリスマス寸前だってのに、バトルフロンティアなんかに向かってるわ。
あの戦闘マニアの修行癖が発揮されるんだとは思うけどね。
甲板に向かったハピナスもさすがにこれには機嫌を悪くしてた。
せっかくできた大きな休みなのに修行、まぁ怒るのも判る。
……それよりこの子どうするのかしらね。
―――
「……あの、ガーディちゃん、離してくれるかしら?」
「気持ちいいからだめ~」
……あんただってもこもこでしょ、とツッコミを入れたくなるわね。
ハピナスが甲板に向かってすぐ、この小さいガーディは目を覚ましたわ。
私達が負けたあの隻腕のボウヤが寄こしたみたいね。
何の礼か知らないけど、手紙には礼だって書いてあった。
で、今その子は私の尻尾に噛み付いてるわけ。
まだ小さいから痛くないんだけど……よだれがね……。
「人の尻尾に噛み付いて気持ちいいだなんて……そうよ、あなたもされればいいわ。」
……躾って大事だと思っただけよ?
ガーディの小さなもこもこの尻尾を摘み上げるようにしてやったら……。
「わふ~……」
小さいって罪ね……。
尻尾でぶら下がるようにだら~んと、力なくダレるガーディ。
こんなに可愛いとかちょっと変な気分に……。
「今戻ったんだが何をしている。」
座り込んで尻尾を摘み上げてまるで苛めている様にでも見えたかしら。
「何でもないわ、この子が尻尾に噛み付くからちょっと剥がしただけよ。」
少しだけ慌てちゃったじゃないの……あの子には後で……。
「……いや、狐の顔が緩んでいたのが何をしていてそうなったかと聞いた。」
そっちの事ね……。
「これ可愛いと思わない?」
尻尾を摘んだままマスターの顔の前にガーディを突きつける。
「わふぅ~……」
あ、ハピナスが隅っこでしゃがみ込んでる。
肩が震えてるし随分笑いを堪えてるみたい、あの子は判ってる、いい趣味してるわ。
「…………」
顔がいつになく硬直してるわね。
……これで笑ってたのなら、いつかの変態マスターに握手くらいさせてやってもいいわね。
「……貸してみろ。」
言うとマスターにしては随分優しく(私にはした事ないほど優しく――嫉妬くらいするわ)抱え上げ。
「犬ってのはこうするもんだ。」
…………。
ハピナスも私も……その光景を目にし優に5分以上思考が停止した。
―――
「高いよー」
“その場所”ではしゃぐガーディは状況を判っていない、いるはずがないです。
“この”マスターがこんなことを……。
180cmもの高さの視点なんて初めてなんだと思う、ガーディは随分嬉しそう。
「…………。」
無言で立ち何故か少し胸を張り腕を組むご主人様……。
そのご主人様の……頭の上ではしゃぎまわっているのです。
「……マスター、ちょっといいかしら。」
目を丸くして思考が長い間止まっていた狐さんも復活しました。
「……どうした?」
腕を組んだまま妙に嬉しそうなのは何故ですか……ご主人様。
「ちょっと退いて。」
ガーディを抱え上げ私に寄こす狐さん。
一体どうしたのでしょうか。
「よいしょ……。」「何をしている。」
……秀逸でした。
「ぷっ……くっ……。」
さすがの私も声が……。
「何かおかしいかしら……。」「…………。」
――背後からご主人様によじ登るようにし、頭の上に胸部を乗せてガーディの真似をする狐さん。
……なんでこの二人って微妙に世間とずれてるんでしょうか……あ、また笑いが……。
―――
後書きでいいんですよね。
はい、ぶっちゃけテンション大暴走★CAPRI
最終更新:2007年12月26日 20:02