えー、みなさんこんにちは。へタレトレーナー(♀)でございます。
今回、自分たちは現・萌えもんリーグチャンピオンさんの試合を観戦しに来ました。
隻腕の戦士として大変有名なあの方です。
そう、チャンピオンさんの試合を観戦しに、来た・・・のですが
・・・前日に興奮しすぎて、うまく眠れなかったのが駄目だったのでしょうか神様?
『ヘタレの奮闘記。隻腕のチャンピオンとすったもんだ編』
「あ、ごめ…さい……ター、寝ちゃって……」
「…………」
「マスター!早く……と迷惑…るっつうの!」
あー、なんか声が聞こえる…でも、起きる気力が湧いてこない…
「ん、にゃ……あと15分だけ……」
「はぁ、……この人数……るか?」
「…のも…と思うぜ」
「だよな……」
うー…聞いたことない声…?
ん? なんか…ひゅうう、って掃除機のうなる音っぽいのが…聞こえて
「 W A I T !!」
核弾頭が落ちてきたのかと思いました(言い過ぎだ)。
「「「「うわぁぁ!?」」」」
「……兄弟、なんで『待て』なんだい」
「ガーディ達に叫ぶ命令じゃこれが一番いい慣れてるからな。音量が大事」
「なるほど……」
核弾頭から逃げようと(本当に核弾頭だったら音が聞こえた時点で死んでます)
慌てて起き上がると、目の前には背の大きな男の人と…えーと……
カラスの人がいました(酷)。
「え、あ、へ?」
「よく眠れたか?」
「え、あ、はい……へ?え!?ここどこ!?」
「リーグ決勝戦のグランド兼チャンピオンの住居」
「えっと……チャンピオン戦を見学に来て……えっと……」
「そのまま最終戦が終わっても眠ったまんまで係員が気付かずにゲートを閉めた。
君ら全員連れて空飛べる子はいるかい?」
「む、無茶いうなよ!マスター一人でも飛ぶのはかなりきついって!」
「だそうだ。生憎俺も手持ちに君ら運べるのがいないんだ。
セキエイ高原のほうのゲートは開けられるけど、チャンピオンロードを
この夜に抜けるのは無理だろうから泊まってきな」
…えっとえっとえっと、確かチャンピオンの試合をみんなで見に来て、
確かに途中まではこの目で見ていたのに……ああ、そうだ。
あの目。
バトルをしている、チャンピオンのあの目を見たとき
なんだか、一瞬だけ視線があった気がして
すごく『 ぞわぞわっ 』てきて、憧れるような痺れるような怖いような
今まで感じたことの無い感覚に呑まれて
ふっ と、意識が遠のいたんだ。
それで・・・ってちょっと待った。
今目の前にいるこの男の人、チャンピオンそっくり・・・
ていうかチャンピオンその人だああああああああ!!!?
「∑え、えぇぇぇぇぇぇぇうわぁ!?」
目が覚めたら本物のチャンピオンが目の前にいたなんて。
誰が想像できますか?
しかも自分ヘタレトレーナーですよチャンピオンから最も遠い位置に存在する生き物ですよ??
……気がついたらベンチからひっくり返っていましたよ。そりゃあもう盛大に。
―――――
―――
―
「ほ、ほんとにすみませんでした……ご飯までいただいて……」
「礼なら作ったラプラスに言ってくれ。まぁそっちの子が片付け変わってくれたからよかったけど」
「片付けまでやらされたら明日は休みをもらうところよ」
「す、すみません……」
「明日の朝一にゲートあけるよう手配しといたから、それまではゆっくりしてきなよ」
「あ、ありがとうございます……」
そういってそそくさと自分の萌えもんたちの下に走る。
「アンタが起きないからこんなことになっちゃったじゃない!どうしてくれるのよ!」
「まぁまぁ。でも戦い方を参考にしたいって見学にきて、肝心の戦いの中眠ってたらだめよね」
「久々においしいご飯食べれたから私は……ってそういう問題じゃない!
とにかくなんで寝てた、もといいきなり気絶しちまったのさ!」
「面識もない人に迷惑かけるのはよくないの」
「あうあうあう、ご、ごめんなさいごめんなさい……ひえぇ……」
あうあああ、いつものこととはいえ皆の視線とツッコミが痛い。
そしてチャンピオンさんたちの視線も痛い痛い。
チャンピオンともなると、こんな一般人以下のトレーナーなんかとは
縁が無いだろうし、きっと見てて腹立つんだろうなあ…orz
なんだかとても申し訳なくなってきて、チャンピオンからあわてて背を向けた。
こんなちっぽけな自分が、チャンピオンと同じ空間にいることが
本当に申し訳なくて、背を向けたまましゃがみこんでみた。
と、しゃがみこんだ瞬間いきなり頭部に走る衝撃&もふもふ感。
「わ、え、何!?」
「あ~そぼ!」
あわてて上を見ると、そこにはもっふもふの毛皮を身にまとった
ちっちゃいガーディの姿が。
いやそんな、いきなり遊ぼう、と言われましても…
なんてアワアワしていたら、フシギソウがこっちにやって来て
「じゃあ、なにしてあそぶー?」と、ガーディ君に話しかけてきました。
新しい遊び相手を見つけた嬉しさからか、何だか顔がきらきら輝いて見えます。
タイプがくさ と ほのお なので、大丈夫かなとハラハラしましたが
全く問題は無いみたいです。
ふたり仲良く、私の周りをぐるぐる走り始めました。
どうやら遊びは追いかけっこに決定したようです。
「ねえねえ、このワンコくん、チャンピオンのところの子よね?」
「うん、そうみたいだね」
「…この際開き直って、この子貰っちゃわない?」
「∑うえええええええっ!!?
ちょ、スピアーさん何恐ろしいこと言って」
「だってこのガーディ、よくみたら他にも沢山いるのよ?
それにこのくらい小さかったら、まだまだ里親募集中の年頃よ」
「いやでも、そうかもしれないけど、チャンピオンがこんなヘタレなんかに」
「ヘタレだからこそ、よ!
あの人アンタのこと女とは気づいてないみたいだし、
どうかこのひ弱なトレーナーにお情けをー ってな感じで泣き落とせばイケるわよ!
強い男は弱い男を嫌うけど、ソイツに対して優越感を持つのも真実!
その辺をうまいことくすぐれば、絶対大丈夫だって♪」
…なーんてスピアー姉さんが言うもんだから、何だか本当に土下座すれば
貰えるような気がしてきたよ…
「どーする?交渉してみる?」
「…とりあえず、今日はやめとこう。向こうも疲れてるみたいだし。
…明日、聞いてみるよ。アドバイスありがと、スピアー」
「ん。そうこなくっちゃ♪」
スピアーの言葉が終わったと同時に、フシギソウと追いかけっこをしていた
ガーディ君が私の膝の上にダイブしてきました。
ものすごくびっくりしたけれど、膝の上ではもふもふの仔ガーディ君が
機嫌よさげにころころと笑っていました。
―――――
―――
―
「あ、昨日は本当にありがとうございました!」
音がするぐらい頭を下げる。
いや本当、ものすっっっごくお世話になってしまったのだし
これじゃ足りないくらいだ。土下座しても足りないくらい。
でも、土下座はこのあとの交渉に取っておきたいから、今はこれで
最大限の感謝を自分なりに表そう。
「気にしなくていいよ、ガーディの相手してもらったしね」
「あ、そのことなんですが……あの……その」
「ん?」
ほら、言え!逝ってしまえ ああちがう違う!逝くにはまだ早い自分!
夕べ決意したんだろ!? 旅の恥は掻き捨てって言うし、言っちまえ自分!!!
「あの!……この子もらってもいいでひゅっ!?……くぅ……!!」
∑ぎゃあああああ! このクソ大事な場面で舌噛んだぁ!!
うあああ、チャンピオンの顔が凄く凄く怖い表情に変わっていくー!!
「この子……っつうとガーディ?」
「あ、ひゃいそうです……」
「ガーディ?だそうだがどうするよ」
頭の上で舟をこいでいるガーディに、チャンピオンがたずねる。
「んー?……」
「牧場でまったりしてるかその子と一緒に旅するかどっちがいいよ」
「マスターの頭の上がいい……」
「人が提示した選択肢から選べっつに」
「むー……じゃあこの子と一緒にいく~」
「ひゃゎ!?」
心臓がパンクしそうになりながらも、いつでも出来るように
土下座の準備をしていたら、仔ガーディ君はチャンピオンの頭から
私の頭へと飛び移ってきた。
自分もされて初めてわかりました。
チャンピオンさん、バランス感覚も一流なのですね。
自分は見事にひっくり返りましたよ…
そして仔ガーディ君もすごいですね。
私が盛大にひっくり返っても、頭の上からビクともしませんでしたよ。
「だそうだ、そいつよろしく頼むよ」
「え、あ……はい!ありがとうございます」
「じゃあね!ますたーまたそのうち会いに来るから!」
「おう、次は挑戦者ゲートからこいよ」
「え、そんな自分がチャンピオンリーグになんて……えぇあう」
「さ、悪いけどそろそろこっちも準備があるんでこれで」
「あ、本当にありがとうございました!!」
「おう」
―――――
―――
―
「―――というわけでガーディくん!」
「これからよろしくねー!」
「よろしくな~」
「よろしくね…」
「うはー、毛皮もっふもふ気持ち良い~~~!!」
「ほんとほんと、肌触り最高~~~♪」
「ちょっとちょっとピカチュウにプリン、ガーディはおもちゃじゃないのよ。
もっと丁重に扱いなさーい?」
「そーいや名前はどーすんだよマスター?」
「せっかくチャンピオンさんから譲ってもらったんだし」
「名前、付けたほうがいいわよね?」
「まあ、私たちは今までどおり名無しでいいけどね~」
「っていうか、今更名前付けられるってのも、ねえ?」
「私たち全員、名前がないのが当たり前の世界で生きてきたもんね~」
「うえええ、名前かあ・・・うーん、どーしたらいいんだろ・・・」
ふと振り向くと、スピアーがガーディの方を見て微笑んでいるのが見えた。
それは、いつも通りの笑顔にも見えたし
どこか、寂しそうな笑顔にも見えて
「・・・スピアー、どうかした?」
「ん? ううん、何でも~?
ただ、頼りになりそうな子だなあって、そう思っただけよ♪」
その深い深い、安心しきったような微笑みに
心が、すごくざわざわした。
彼女の、その笑顔の真意を知ったのは
この日から、少し経った後。
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※時間軸的に、このお話は「スピアーさん語る」に続きます。
ていうか無理矢理繋げさせて下さい orz
SD氏、仔ガーディ君と素晴らしいSSをありがとうございました。
仔ガーディ君はちゃんとレギュラーになりますのでご安心を。
あと、ドンカラスさんとスピアー姉さんの二人は曲者同士仲良くなれそうだなと勝手に思いました。
最終更新:2007年12月26日 20:08