3スレ>>748(2)


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晴れやかな日差しの中、洗濯物を干していくエプロン姿の女の人が、ひとり。


「…ふー、よしっ!終わり!」


干し終わった洗濯物が、横にずらーーーっと並んでいる光景に気分を良くし、
とことこと家の中に戻っていくのは


旅立ったあの日から随分経ち、子供から大人に成長したへタレトレーナーでした。





『 やさしい光景 』





旅に出て、一応は萌えもんマスターを目指したものの。
やはりそこは素質と言うかなんというか、頂点には今一歩及ばなかった私たち。

でも、旅はとても楽しかった。
辛いことも苦しいことも悲しいこともあったけれど、それだけ充実した日々だったと今でも思う。


それで、旅を終えることを決めた私たちは、故郷であるマサラタウンに戻り
新たな道を探し始めた。


「旅には出なくなったとしても、萌えもんに関する仕事ならいくらでもあるさ」


というオーキド博士のアドバイスに従い、私は大好きな萌えもんたちの
役に立てるような仕事を、オーキド博士の手伝いをしながら探した。

そして、数年かけてやっと自分に合っている仕事を見つけることが出来た。

その仕事 というのは…




「おかあさん、おかあさん!お鍋の火つけっぱなしだったから消しといたよ~!」

「∑あわわ、ありがとねヒトカゲちゃん!」

「おかーさん、テーブル拭き終わったよ~」

「ありがとうゼニガメちゃん、もうお外に遊びに行ってもいいよ」

「は~い!」

「おかあさーん、郵便とってきたー!」

「ああ、いつもありがとうね、フシギダネちゃん」



みんな私のことを「おかあさん」と呼んでいるけれど、名前からも分かるように
この子たちはみんな萌えもんで、本当の私の子供ではない。

それでも「おかあさん」と呼んで慕ってくれるのは、
みんなここで育ったから…なのかもしれない。


簡単に言うと、今の私の仕事は「ブリーダー」というもの。

人間の手に渡る前に、人間のことを少しでも好きになってくれるようにと
愛情いっぱいに育てる仕事です。
盲導犬のブリーダーさんの仕事と、似たようなものだと思ってください。

いつか、オーキド研究所から若いトレーナーたちへと手渡される萌えもんを
ここで育てるのが私の役目なのです。



「おーいマスター!」

「ん? どーしたのリュカ?」


以前、とある縁で隻腕のチャンピオンから貰い受けたガーディのリュカが
けっこうな速さで私の元まで駆け寄ってきた。

この家の中には、私や未来の萌えもんトレーナーのパートナーとなる萌えもんたちだけでなく、
私のパートナーとして旅について来てくれた皆もいっしょに住んでいた。

ちなみにピカチュウとプリンの二人は、やっと見つけることの出来た旦那さまと
新婚旅行に出かけてしまっていて。オニドリルとスピアー、二ドリーナの三人は
既にいる旦那さまと森の中でひっそりと暮らしている。
(時々は遊びに来てくれるけどね)

フシギソウとリュカは、今の時間は外で仔萌えもんたちと遊んでいる時間帯だった。



「あのねあのね、マスターの旦那さん、もーすぐ帰ってくるって!」

「え、本当!?」

「うん! 伝書ポッポが言うにはね、今回の調査はスムーズに終えることが出来たから
 今日中には帰ってこれるよーって」

「そっかー、ごめんねリュカ。わざわざ教えに来ててくれて」

「んーん。マスター喜ぶだろうなって思ってたから、いいの!」


それじゃ、またあとでねー!と 来た道を駆け戻っていくリュカ。
その後姿は、もうすっかりお兄ちゃんの風格を備えていて
まだまだ若いながらも、頼りになる男の子の雰囲気をかもし出すまでに成長していた。


そう、リュカの言ったように、この家には私の旦那様も暮らしている。
一緒に暮らすようになったのは、この仕事をやり始めた頃だろうか。


それは、ある日突然のことだった。

いきなり何の前触れもなしに「結婚しよう!」なんて言われて、
そりゃあもう天地がひっくり返りそうになるほど驚きました。

だってその、今はそりゃあ夫婦になっているけれど、まさかそんな関係にまでなるとは
思いもよらなかった人…だったから。


それに…私は、赤ちゃんができにくい体質だと、お医者さんに言われていたから。

(その理由も手伝って、私はこのブリーダーの仕事を選んだのです)



…だからまさか、そんな女を嫁にしたいなんて言い出すとは、思わなかった。



自身の体質のこともきちんと話しても、それでも彼は引き下がらなかった。



「構うもんか。子供ができにくいからって何だ!
 そんなもん、結婚の申し出を断る理由になってねーぞ!」



そう、きっぱりと言い放った あの人の言葉が嬉しくて、涙が出てきてしまいました。


世の中には、赤ちゃんができにくい体質を治す治療もあるらしいので
それに励んできっといつか産んでみせるね、と言ったら
その治療の大変さや、その治療のおかげで破滅した人もたくさんいるんだぞ!?と
小一時間ほどお説教を喰らってしまいました。



そんなこんながあって、私はその人の求婚を受け入れ

――― めでたく夫婦となったのです。





と、思い出にふけっていたらいつの間にかご到着の時間になってしまったようです。

ばっさばっさ、という大型鳥萌えもんの羽ばたく音が庭から聞こえてきました。


慌てて庭に駆け寄ってみると、そこには…予想通り、あの人の姿が。



「おかえりなさーい!」

「おう、今戻ったぞ」


ぶっきらぼうにそう言い放つその姿も、この数日間ずーっと見ていなかったからか
もの凄く愛しく思えてしまう。


…でも、今はそれだけでは無いような気がする。

なぜなら、それは……




「ん? どうした、急に黙って」

「…うん、あのね、その、ね…」




ちょっとだけ俯いて、まっしろなエプロンに包まれたお腹を、右手でやさしく撫でる。

流石勘のいい旦那様。その仕草だけで分かってしまったみたい。

みるみるうちに、大きく開かれていくその両目。


彼が何か言い出す前に、小走りで傍に寄って、耳元でこっそり自分から伝える。






「 あのね … … … 」










それは、いつかある日の、やさしい光景。
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