3スレ>>754


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「ますたー」
「ますたー」
「ますたー」

 ウチのレアコイルはやかましい。
 おまけに、俺の腕が悪いのかどうにもへたっていて弱い。
 もう一つおまけに、落ち着きがないのかよくモンスターボールの中から勝手に出てくる有様。
 そんなレアコイルがある日ふと消えて失せた。
 腕の悪いトレーナーに辟易したか、外の自由の世界が好きなのか、逃げ出したようだ。
 いつまでも同じクチバにいても仕様がないし・・・さて、どうしようか。

                ★

「アイ、やっぱりますたーにだまってでてきたのはマズいよぉ」
「いちにちくらいだいじょうぶよレコ。ほら、ルゥだってはりきってるわ」
「がんばるぞー、おー」

 レコとアイとルゥ。
 レアコイル三姉妹はクチバ近郊の草むらで輪になって座り込んでいた。

「でもさ、でもさ、わたしたちだけでぼうけんなんてあぶないって」
「わかってるわよ。でも『じしゃく』をみつけるまでぜったいにかえれないわ」
「?? なんでさー?」

 アイは頭に?マークを浮かべるレコを見てため息を吐き出して見せた。

「レコ……あなたわかってるの? さいきんわたしたちまけっぱなしなのよ?」
「うっ……たしかにぃ」

 最近の彼女達の戦績は目を覆いたくなるものがある。
 5戦5敗。しかも内一敗は弱点を突けるはずのピジョン相手という始末。
 相手のトレーナーにマスターが馬鹿にされている姿を見て、レコは酷く申し訳ない気持ちになったものだ。

「あなた、ますたーにすてられてもいいの?」
「いや! ぜったいにいや!」

 レコは頭を強く左右に振って答える。

「でしょ? わたしもよ。ルゥだってそうでしょ?」
「ぜーったいいやー」
「だから、わたしたちには『じしゃく』がひつようなのよ!」

 『じしゃく』は持っていると電気系の技の威力を強化してくれる不思議なアイテムだ。
 レアコイルたる彼女達には非常に有り難いアイテムなのだ。

「『じしゃく』さえあればれんせんれんしょう! ますたーだって、もっとわたしたちをかわいがってくれるはずよ!」
「いっ、いっしょにねさせてくれるかなっ?」
「もちろん!」
「ルゥはいっしょにおふろにはいってほしー」
「よゆうよ! よゆう! もーまんたい!」
「「おおー……」」

 レコ、アイ、ルゥ。しばし妄想に浸る。

「レコ、ルゥ、やるわよ!」
「「おーーっ!」」

 気持ちを一つにして小さい手を高々と掲げる三姉妹。
 と、その背後に一匹の萌えもん。

「あなたたちうるさい」

 ロコンである。鋼属性持ちの彼女達レアコイルの天敵。炎技に長けた萌えもんだ。
 既に彼女の周囲の温度は俄かに上がり、『ひのこ』の準備は万端といった感じ。

「アイ、アイ、やばいかんじだよぉ」
「わ、わかってるわよ。ルゥもほら、どうしたらいいかかんがえなさいよ!」
「えー……えーっとー……」

 次の瞬間、ロコンが吼えた。

「あっちいけっ!」
「「「にげろーーーーっ!」」」

                ★

 レアコイルが出て行って翌日。
 未だ帰ってくる気配もなければ、他の萌えもん達も彼女らが何処に行ったか知らないと言う。
 どうしたものかと萌えもんセンターにて思案していた所、顔見知りのジョーイさんに声を掛けられた。

「ねぇ、どうかしたの?」
「いえ、まぁ、育てていた萌えもんに逃げられてしまいまして」
「貴方、最近連敗続きですものね。愛想つかされちゃったのかしら?」

 痛いお言葉ではあるが、否定できないのが悲しい所。
 この身の不徳を恨む他なしなのである。

「まー、腕が悪いとは前から危惧していましたが、自分の萌えもんに愛想つかされる程とはいよいよマズいですよねぇ」
「修行よ修行! 一に修行、二に修行なんだからこの世の中!」
「為になる言葉です」
「で、修行ついでに一つ頼まれてくれないかしら?」

 ジョーイさんは一つの小包を取り出して俺に見せた。
 小さな小包。これを俺にどうしろというのか。

「トキワシティの萌えもんセンターで働いている私の姉妹まで届けて欲しいの。届け屋さんのピジョットが出払ってるみたいで…」
「なるほど、ディグダの穴ですか」
「そ。近道だけどディグダが一杯出てきてトレーナーじゃないと危険でしょ?」
「そこで俺の出番って訳ですか。うーん……」
「あら? 何か不都合でも?」

 ディグダの穴を通る事は別にいい。修行には確かにもってこいだろう。
 トキワシティに関しても問題はない。トキワの森には一度行ってみたかったし、マサラ、グレンに足を伸ばすのも悪くないだろう。
 ただ……レアコイルの事が気にならないと言えば嘘になる。
 このままクチバを去っていいものか。
 当然、レアコイルが俺に愛想をつかせたのならクチバに留まる行為は愚行である。
 訪れぬ待ち人を待つ行為は、死人の復活を願うのと同じ。
 しかも現状、愛想をつかされた可能性の方が高いという………。

「……いいわ」

 しばし悩み返答に詰まる俺を見て、ジョーイさんは小包を引っ込めた。

「ま、急ぎの用事でもないから。明日返事を聞かせてちょうだい」
「そうさせて下さい」

 解決しない悩みを抱えて、俺はキャンプに戻った。

                ★

 クチバ近郊の森の中。
 姉妹達はあっちをふわふわ、こっちをふわふわ。
 しかし一向に目当ての物は見つからず。

「ねぇ、アイ……ホントに『じしゃく』このあたりにあるの?」
「あたりまえじゃない」
「こんきょはー?」
「いい、レコ、ルゥ? このあたりのつよいとれーなーはでんきたいぷのもえもんをつかっているのよ」
「わたしたちとおなじだー」
「そう! つまりそのひとのでんきもえもんは『じしゃく』をもっているからつよいのよ!」
「おー」
「つまりつまり! それすなわち、このあたりに『じしゃく』がおちているってことなのよ!」
「「おおーっ!」」

 思わず拍手するレコとルゥ。
 得意気にその音を浴びるアイ。

「やっぱりアイはてんさいだねっ!」
「あったりまえよレコ。さー、はりきって『じしゃく』をさがすわよー!」
「「「そんなのここにはないよっ」」」

 声は三姉妹の頭上から。
 ふわふわふわふわと空から円盤が降りてきたかと思えば、円盤に乗っていたのはは三姉妹そっくりの萌えもんの姿。
 彼女らレアコイルの進化系、ジバコイルである。

「「「へーんなのー、『じしゃく』さがしてるなんてへーんなのー」」」
「なによ! あなたたちこそへんなのにのって!」

 思わず食って掛かるアイ。
 しかしジバコイルは揃って胸を張る。

「「「へんじゃないよっ、おやまでコレをひろったら、すーぱーぱわーあっぷでしんかかんりょー」」」

 くるくる回りながら帯電して見せるジバコイル。
 その身に纏う電気は明らかに三姉妹達のそれより強力なものだった。

「「「どうー? よかったら、そのおやままでつれていってあげるよっ」」」

 思わぬジバコイルからの提案に、三姉妹は驚いてそして悩んだ。

「アイ、ルゥ、どうするっ? どうするっ?」
「あれだけのぱわーがあったら、れんせんれんしょうどころじゃないわね……」
「つよくなったらますたーもっとかわいがってくれるねー」
「じゃあ……いく?」
「でもー、ますたーが……いないよー?」
「……………」
「……………」

 しばしの沈黙。
 それを耐えかねたのはジバコイルの方だった。

「「「どーするのー? いく? いかないっ?」」」

 姉妹は顔を合わせて頷いて、

「「「いかない」」」

 揃って首を横に振った。

「ますたーいないからいかないっ」
「ますたーにだまってしんかなんかしたら、きらわれてしまうわ」
「ますたーといっしょのほうが、しんかよりずっとたのしいのー」

 ジバコイルはキョトンとして、それから少し馬鹿にしたような目を三姉妹に向けた。

「「「なーんだ。ヒトにかわれてるのかー、キミたち。ばかだねっ、ヒトなんかといっしょにいてさー」」」

 姉妹は再び揃って首を横に振る。

「ますたーいいヒト。やさしいよっ」
「わたしたちがきずついたときはくすりをくれて、びょうきになったらかんびょうしてくれるわ」
「それにねー、ますたーがつくってくれるごはんはおいしいんだよー」

 三姉妹はちょっとムッとした表情でジバコイルを睨む。
 バツが悪くなったジバコイルは、円盤の中から『ある物』を取り出して三姉妹に渡した。

「「「わかったよっ。これあげるからゆるしてね。わたしたちはこれでたいさんー」」」

 ふわふわふわふわとジバコイルは浮かんで、どこかへと飛んでいった。
 残されたのはレアコイル三姉妹と……

「「「『じしゃく』だ!」」」

                ★

 森の中のキャンプ。
 ふと目覚めると朝だった。
 あまり寝た気がしないのは何故だろうか。何となく頭が重い。
 しかし、ジョーイさんに返事をしなくてはならない。
 日はまだ早いが、萌えもんセンターはとっくに開いている時間だ。
 待って貰っているのはこちらなのだから、返事はなるべく急ぐのが礼儀だろう。

「すぅーー……はぁーーーーっ……!」

 新鮮な空気を肺一杯に吸い込んで吐き出す。
 木々の香りの中に、潮の香りを含んだ港町の空気だ。頭をクリアにしてくれる。女々しい悩みと共に。

「……レアコイルだってこんなトレーナーじゃあ嫌になって当然だ」

 大きく伸びをして、「よし」と掛け声一つ。気持ちを新たにする。
 寝袋の他、出していた用具や食器、食料をマウンテンバッグに詰め込む。
 キレイさっぱり、ゴミ一つ残さないのがマナーである。
 荷物を担ぎ、そのまま萌えもんセンターへ。
 カウンターにいるのは当然、ジョーイさん。

「おはよ。その様子だと頼まれてくれるみたいね」
「いい機会ですから、トキワから南に足を伸ばしてみますよ」

 俺は彼女から小包を受け取り、ディグダの穴へと足を向けた。

                ★

「ますたー!」
「ますたー!」
「ますたー!」

 レアコイル三姉妹はマスターの元へ急いだ。
 ふわふわ浮いている彼女達。決して早くはないが、それでも彼女達は急いだのだ。
 手に持つ『じしゃく』と共に。
 だが、

「ますたー……?」

 彼のキャンプはもぬけの殻だった。
 いや、もぬけの殻どころか本当にキャンプがあったかどうかも怪しい程に、そこには何もなかった。

「あれ……?」
「レコ……あなた、みちまちがえた?」
「ますたー、いないよー……」

 そこには彼女達だけ。
 姉妹達は周囲をふわふわするが、マスターの姿はない。

「わたしたち……おいてかれちゃった……?」
「そ、そんなことないわよ! そんなこと……そんな……」
「ますたー、ますたぁー……」

 静かな森。
 急に心細くなっていく三姉妹。

「ア、アイがますたーにだまっていこうっていうからっ……!」
「なによレコ! あなただって……あなただって……」
「ま……すたー……ひっく」

 森の中に響く音は彼女達の嗚咽のみ。
 だが、それを掻き消す音を三姉妹の背後で立てる者がいた。
 その音は草を掻き分ける音。
 三姉妹は弾かれたように振り返った。

「「「ますたー?!」」」

 確かに人だった。
 しかし、彼女らが望んだ人物とは、真逆の人間だった。
 全身黒ずくめに赤で染め抜いた『R』の文字。
 レアコイル三姉妹を見るその目は冷たく、物を見る目そのものであった。
 ロケット団。
 営利目的に萌えもんを乱獲、強奪、売買などをする世界的な組織である。
 彼女らもマスターからその存在を知らされていた。

「レアコイルか、愛玩用に売れるな。アーボ、そいつらを痛めつけろ。死なないほどに、あまり傷跡は残すな」

 団員はアーボを繰り出し、三姉妹ににじり寄る。

「レ、レコ! レコ! 『じしゃく』!」
「えっ、えっとえっと……あのあのあの……」
「なにやってるのよレコ!」
「レコ、はやくはやくー」
「そんなこといったって、わっわっわっ……あっ!」

 緊張のあまり、レコは『じしゃく』を取り落としてしまう。

「ああっ!」
「ちょっとレコ!」
「レコー、アイー……」

 彼女らの目の前に立つ団員。
 その冷たい目で見下ろされ、三姉妹は震え上がってしまった。

「アーボ、やれ」

 無慈悲なその言葉。
 しかし三姉妹は動けない。
 絶体絶命の彼女達の想いは一つだった。

(((たすけて、ますたー!!)))

 ガサッ、と草を掻き分ける音と共に、その声は三姉妹の耳朶を打った。
 それは彼女達が一番望んだ声。一番望んだ人。

「その子らに何か用?」

 団員に背後から声を掛けた青年。
 レアコイル三姉妹のマスターだった。

「「「ますたー!!」」」

 不意を突かれた団員は焦り、

「?!?! アーボ! こいつを始末……!」

 しかしその言葉を言い終わる前に、青年の握り拳の底が団員の脳天に吸い込まれていた。
 鈍い音がして、団員は一瞬で意識を手放す。
 団員が地面に前のめりに突っ伏すまで、そう時間のかかる話ではなかった。
 残されたアーボは主人を打ち倒されて怒り、今にも青年に飛び掛らんとしたが、

「お前はこっちに入ってろ」

 瞬間、アーボを包む赤い光。
 青年が団員の腰から奪ったモンスターボールの収納光である。
 どんな萌えもんであろうとも、自分を捕獲したボールが放つこの光の前には無力である。
 青年はアーボを納めたボールを団員の傍に置くと、レアコイル三姉妹にゆっくりと歩み寄った。

「大丈夫か?」

 安心できる声、顔、姿。

「「「ますたぁー………!!」」」

 レコ、アイ、ルゥ。
 三姉妹はマスターの胸に勢い良く飛び込んで行った。

                ★

 いざ、ディグダの穴に潜ろうとした時、

「ロケット団がうろうろしてる」

 と言われて来てみれば、思わぬ誤算があった。
 ジュンサーさんが不在とは街の治安としてどうなのかとも愚痴ったが、この時ばかりは不在のジュンサーさんに感謝しなければなるまい。
 まさか、レアコイルと再会できるとは思ってもみなかった。

「「「ますたぁー………!!」」」

 俺をまだマスターと呼んで抱きついてきてくれる辺り、どうやら愛想はつかされていなかったようだ。
 いや、しかし、ホントに良かった………。
 だが、ならば一つ疑問が出てくる。
 どうしてレアコイルは勝手に何処かへと消えたのか、だ。

「レコ! レコ!」
「うん! うん!」
「はやくーはやくー!」

 俺から離れると、レアコイルはふわふわしながら地面に落ちている『何か』を拾って俺に手渡してきた。
 俺の手のひらに乗っかっている物は『じしゃく』。

「これを探しにいってたのか?」

 レアコイルは揃って頷いて見せる。
 また褒めてほしそうなオーラをよくもまぁ……。

「……そんな顔されたら怒るに怒れないじゃないか」

 その後、俺はレアコイル皆の頭を撫でてやり、それから『黙って何処かに行かない事』をキツく言ってきかせて、彼女らの好物のごはんを作った。
 
「『じしゃく』ね……」

 ……とりあえず、アイテムあたりから勉強してみるか。






あとがき

初です。皆さんのを読んでいたら自分も電波もとい電磁波を受信したので一筆。
文法、用法、誤字脱字は未熟と思ってご容赦を。
萌えもんセリフがひらがなで読みにくいのもご容赦を。
俺の中ではちっちゃい萌えもんはこうなんです(爆
ツールボックス

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