3スレ>>822


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ミュウを捕まえた際に拾った虹色の羽根と銀色の羽根。
陽光に煌めく羽は金と銀に見えたが、片方は虹色のようだ。
しげしげと眺めていると、ふいに二つの羽根が光線を放つ。
同じく覗き込んでいたミュウツーとミュウも、驚いたように目を見張った。
光線は常に一定の方向に向かって放たれる。
虹色と銀色の螺旋が俺に何かを暗示しているように思った。
俺は、オーキド博士に助けを請おうとマサラタウンへと舵を向けた。


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マサラタウンに戻った俺は、母さんとナナミさんへの挨拶もそこそこにオーキド博士の元に向かった。
オーキド博士に二つの羽を見せると、文字通り飛び上がって驚いた。
ちょっと待て、と言い残してオーキド博士は研究室へと駆けていく。
書物の匂いが鼻を刺激するオーキド博士の研究所。
懐かしいという感慨に浸りつつ、博士を待つ。
しばらくして、オーキド博士は一つの文献を持ってきた。
そこには虹の麓に現れるといわれる天空の守護者ホウオウと、
海を守護する深層海流の主ルギアの名があった。
で?
「で? ではないわ! その羽の主はこの伝説の萌えもんなのかも知れんぞ!」
ひどく興奮しているのだろう。
飛び散るつばが遠慮もなしに俺に降りかかる。
とりあえず落ち着いてください、博士。
そもそも、ルギアやホウオウを含めた伝説の萌えもんは、一種の御伽噺だ。
虹の麓――そもそも存在しないもの――に現れるホウオウ。
嵐の晩に空を疾駆するといわれるルギア。
どちらも眉唾だ。
疑わしげにオーキド博士を眺めていると、そんな俺にオーキド博士が怒鳴ってくる。
「その伝説を手中に納めとるお主がそんな目をするでないわ」
確かに、俺は伝説の三鳥を発見して捕獲した。
伝説が実在するとかなってくると、それを狙って密猟者が現れかねないから使用はしてないが。
ミュウツーなんかは存在自体知られていない萌えもんだから、使われた方も、何だアレ、で済ましてくれるが……。
「じゃあ仮に居るとしましょう――でも、居場所までは分かりませんよ」
俺の言った事は極々正論だ。
俺の言葉を聞いた博士はフッフッフと笑ってビシッと羽根を指差した。
その指に従い、俺は羽根を見る。羽根は依然として光を放っている。
「これは常に一定の方向を指しておる――すなわちぃ!」
カッと目を見開き光の方向に指を指す。いい具合にテンションも上がっているようだ。
ムフゥ、と鼻息も荒くなり、鼻がヒクヒクしている。
「光の先に伝説ありじゃぁ!」
どどーん、と大波のエフェクトでも背負いそうな感じでオーキド博士が宣言する。
天空の城の見すぎじゃなかろうか、という感想は心の中にしまっておく。
俺が内心冷ややかな感想を送っていることに気付かずに、オーキド博士はカントー地方の地図を広げた。
そして、現在光が示している方向にマサラから直線を引く。
その直線は、四の島と五の島の間の孤島を指し示していた。
その島はへそのいわ、と呼ばれている。古くより、伝説が降り立つ場所として知られている。
きな臭い場所がヒットしたものだ。俺の溜息をよそに、オーキド博士は大盛り上がりだ。
「場所としても完璧じゃ。さぁ今すぐ行くのじゃ! ほれ! ほれ!」
そんな感じでオーキド博士に押されている中、一言。
「で、へそのいわまでどうやって行くんですか?」
「あ!」
どうやら盲点だったらしい。


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ナナシマの一帯に存在するって事は波乗りではいけないよなぁ。
ナナシマの急流を思い出し考え込む。
とりあえず、餅は餅屋だろということで同じ伝説の萌えもんである三人娘に聞くことにした。
トキワシティの萌えもんセンターから預かりサービスに接続して、三人娘とコンタクトを取る。
「何か用?」
ムスッとしたフリーザーが画面に出てくる。出てきて急にそれかよ。
「いや、へそのいわに行きたいんだけどどうしようかなぁって」
「知らない」
相変わらずのぶっきらぼうな返事で取り付く島も無い。フリーザーじゃ話にならなさそうだ。
「じゃあ、サンダーかファイヤーに代わってくれ」
この要望を受けて更に不機嫌になるフリーザー。
「何よ、私とは話す価値もないって事?」
「いや、話さないのはそっちじゃないか」
うっ、と言葉に詰まるフリーザー。自覚はあるのか。
困ったなぁ、と俺はぼりぼりと頭を掻く。
バツの悪い表情を浮かべながら、俺を伺うフリーザー。
そして、はぁと溜息を吐いて、
「分かったわよ……」
そう言ってフリーザーはパソコンの奥に渋々引っ込んでいった。
待つ事数分。
「今回は主殿との会見を独り占めするのではなかったのか?」
顔に笑みを張り付かせたファイアーが、
「そんなに虐めちゃ可哀想だろ。普段イジり甲斐が無いからって、そこまでイジる事も無いだろ?」
呆れたようなサンダーと共に、
「あ、あ、あああんたら! 余計なことをいうな!」
興奮して真っ赤になっているフリーザーに引き摺られてやってきた。
なんというか、研究者なら卒倒しかねない状況なんだろうなぁ、と苦笑をもらす。
「ふむ、お久しぶりですな、主殿」
ああ、久しぶりだなファイヤー。
「久しぶりだな、ご主人」
おお、息災そうで何よりだサンダー。
この一連の挨拶をヤキモキした表情で見つめているフリーザー。ヤキモキ?
「折角二人っきりだったのに……」
フリーザーの呟きは二人と談笑する俺には聞こえなかった。
さて、用事用事。
「いや、実はへそのいわとかっていう島に行きたいんだけど」
この言葉を聞いた瞬間、二人の顔の色が変わった。
「迂闊……。まさか主殿からその単語を聞くとは」
「これを聞いて顔色変えなかったのかよ……アイツ。素直じゃないと思ってたけど、案外素直なのな」
サンダーの言葉に、思わずフリーザーを見やると、彼女は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
なるほど、へそのいわは触れてはいけないタブーだったのか。
それにも関わらず、平静を保ってくれたフリーザー。
俺はフリーザーに感謝をした。
「しかして主殿。何用ですかな?」
動揺していた感情を治め、ファイヤーが俺に問いをぶつけてきた。流石だ。感情の制御が巧い。
俺は素直にホウオウとルギアのことを話した。
「徒労だよ」
と、それをバッサリと切って捨てたのはサンダーだ。
彼女はそこら辺に関して遠慮が無い。俺としてはそういうサバサバした所は好感が持てる。
何故? という俺の視線にファイヤーは憮然と答えた。心なしか機嫌が悪い。
「大方、伝説の舞い降りる地というフレーズに心惹かれたのだろう。
 だが、そんなものは噂話でしかない。そんなものに踊らされるとは……。
 所詮、主殿もその程度の人間だったという事か……」
ファイヤーの声には大きな失望の色が浮かんでいた。
あなたなら……、という呟きも聞こえたが、俺には理解できなかった。
「らしくないなぁ、ご主人。アンタ、そんな俗っぽい人間だったっけ?」
サンダーの瞳に浮かぶのは侮蔑。
成る程、結局俺はオーキド博士に踊らされた挙句に伝説の三鳥にも愛想を尽かれてしまったというわけか。
ああ、今日は厄日だ。
「何でよ」
俺の思考を引き戻したのはフリーザーの声だった。
「アンタがそんな人間じゃないのは私たちもそうだし、他の萌えもんも認めている。
 なのに……」
つまり、俺が伝説を追い求める三流者に成り下がったと思っているのか。
まぁ、三鳥やミュウツー、ミュウも追い求めていたわけではないからなぁ。
流れに身を任せ、自分のすべき事を成しているうちに出会ったのだ。
確かに、今の考え方は俺らしくない。
ここまで叱咤されたんだ。探索は打ち切りだな。
「悪かったな、くだらない事を聞いて」
皆は不機嫌そうに顔を背けたままだ。
溜息を吐き、どうしたものかと思案する俺の手に、二枚の羽根が触れた。
「にしても、それじゃぁこれは一体何なんだろうな?」
懐から虹色と銀色の羽根を出して、繁々と眺める。
相変わらず光線を放つ羽根は嫌でも目立つ。
自宅に預けるかぁと考えていると、皆の焦った声が俺の耳に飛び込んできた。
「ああああ、アンタ! 一体どこでそれを拾ったのよ」
それって、この羽根の事か?
フリーザーがあまりにも捲し立てるので思わず硬直してしまった。
そして、空から二枚の羽根が落ちてきた事を言うと、皆の態度が一変した。
「主殿、何故それを先に出してくださらぬ。ああ、ご無礼をお許しくだされ」
普段の冷静さが吹っ飛んで土下座までしようとするファイヤー。
ちょ、ちょっと落ち着け。
「ご主人……。アタシ達、もうご主人の傍には居られないのかい?」
かなり思い詰めているサンダー。
いや、だから平静になれと。
「いや、まぁ元々愛想を尽かれるようなことを言った俺が悪いんだし、な。
 お互い謝ってこの話はおしまいにしよう」
すまなかった、と頭を下げる俺。
皆もだいぶ落ち着いたようだ。
三人も俺に頭を下げて、話を本筋に戻す。
「羽根を持っているから、資格はあるんだよ。問題は――」
「どのようにしてへそのいわを訪れるか、ですな」
「たしか、へそのいわに行った人間って居たはずよねぇ」
三人娘の寄り合い。
それは如何にして俺をへそのいわまで連れて行くかということ。
何としてでも彼女達は俺と伝説を引き合わせたいらしい。
しかし、唸っても案が出る訳でもなく、結局この日はお開きになったのであった。


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ナナシマを訪れるときに使うのは船だよなぁ。
そんな思考を携えてやって来たのはハナダの岬。
目的地はそこに住む萌えもんマニアであるマサキさんだ。
サントアンヌ号のチケットといい、トライパスといい、
妙に萌えもんマニアというより、チケットをくれる人という印象が俺の中では強い。
だからだろうか、俺は迷いも無くマサキさんの家を目指したのだ。
ドアを軽くトントンとノック。了承の返事を聞き、俺は挨拶と共にマサキ宅にお邪魔した。
「なんや自分。珍しい萌えもんでも見っけたんか?」
俺を認めて嬉しそうに話しかけてくるマサキさん。
マサキさんとしても、珍しい萌えもんを多数記録している俺の図鑑は、とてもそそられるのだとか。
首を振った俺を見て、明らかにテンションの下がるマサキさん。悪いことしたな。
とはいえ、罪悪感に浸る趣味など持ち合わせていない俺は、とっとと本題に入る。
「へそのいわ、ってご存知ですか?」
俺の言葉に訝しげに眉を寄せるマサキさん。
「そりゃぁ、アレやん。伝説の舞い降りる島として有名な島やろ?」
そこがどうかしたん? というマサキさんの視線に俺はきっぱりと言った。
「いえ、その伝説に会いに行こうと思いまして」
俺の言葉を聞いて、目を点にするマサキさん。
目が言っている。オマエアホやろと。
心外ですね、とこちらも目線で応じる。
しばらく視線での応酬が続く。
痺れを切らしたのかマサキさんが口を開いた。
「ホウオウやルギアは己が認めた奴の前にしか姿を現さんのや。
 ただへそのいわに行くなら時間の無駄やで」
それは三人娘に聞いた。
またとない機会だから絶対行け、と釘も刺されている。
だから、ホウオウやルギアに会えるとは思う。
「なんか、証拠見してみぃ。伝説に繋がる証拠をや」
それならある。
懐から虹色の羽根と銀色の羽根を取り出す。
眩い光は未だに一定の方向を指し続ける。
「こ、これは……!」
さしものマサキさんも眼の色が変わる。
そして光の方向を見て、納得したように頷いた。
「確かにこの方角は四の島と五の島との中間らへんや。線引きゃぁ、へそのいわにぶち当たるな。
 伝説に名高い羽根も持っとるし……。
 ――自分、凄いなぁ!」
態度が一変して、羽根を触らせてくれ、と頼むマサキさんに、どうぞと渡すと、
マサキさんは割れ物でも扱うかのように触りだした。
それと同時に輝きを失う、二枚の羽根。マサキさんは目に見えて落ち込んだ。
「なんや、ワイじゃ資格なしかいな」
俺を恨めしげに見てくるマサキさん。いや、俺に言われても。
「いや、わあっとる。わあっとるわい」
さて、と俺に羽根を返したマサキさんは気を取り直して言う。
「へそのいわに行く便は無い事も無い。明日――はちょっと急やな。
 明後日に出発できるように手を回しといたる」
ナナシマに行く際に本来の航路から外れたグレン島に寄らせられるマサキさんだ。
彼が出来るというなら、出来るのだろう。
「ああ、それでやな――」
口をモゴモゴさせるマサキさん。珍しい。
何ですか? と視線を投げかけると、照れたような笑いを浮かべた。
「捕まえたら、図鑑でもえいから見せてくれへん?
 ワイかて、マニアの端くれや。それぐらいのギャラは欲しいやねんけど」
「本人さえ了承すればいいですよ。他になんか無いですか?」
「んん? 特にはないわぁ。いつも通り珍しい萌えもん見せてくれんねやったら、それでええ」
詳しい事は明日、ハナダの萌えもんセンターに連絡をくれるらしい。
「じゃぁ、会社のほうに行って話つけてくるわ」

ここで俺はマサキさんと別れの挨拶もそこそこにハナダの萌えもんセンターに戻った。
メンバーの選定をするためだ。
フシギバナ、キュウコン、グレイシア、カイリュー、ピジョット、ピカチュウ。
とりあえず、基本のこの六人の構成で行くか。
そう思っていたが、皆が目を見合わせて、フシギバナが代表するかのように俺に異見を唱えてきた。
「私たちをはじめ、ボックスにいる多くの萌えもんは、ご主人様と旅をする事を知っています。
 ですが、そのあまりにも有名だからという理由で使用を控えている三人と経験の少ないミュウツーさん。
 この四人で行く事をお勧めしたいんです」
へそのいわには人が居ないから、伝説三鳥も惜しげも無く空を飛べる。
皆の提案にはこういう意図があった。
たしかに、俺に捕まえられて以来、外界との接触は俺との会話だけだ。
羽を伸ばすにも丁度かもしれない。
あれ? でもミュウは?
――私はボックスで皆さんのお世話をしています。
  私には闘争より、こちらの方が向いていますから
俺の思考を読んで、ニッコリと笑いながらテレパシーを送ってきたミュウ。
「ありがとうな」
一時的にパソコンから取り出すと、思いもがけずぎゅっと抱きしめていた。
――ああ、もっとこのまま
一瞬、ノイズのように思考が俺に飛んできた。
だが、俺が認識するには短すぎた。
慌てて接続を切ったのかどうかは分からないが、俺の頭は言葉の羅列としか認識できなかった。
顔を真っ赤にしたミュウはパソコンに引っ込む。
どうやら中では一騒ぎ起きているようだ。
まぁ大丈夫だろう。聞こえてきた声も、羨ましいだとか、代わってくれとかだったから、大丈夫だ。多分。

そんな訳で四人を引き出して、軽く作戦会議。
「主殿、準備だけはしっかりされた方がよい」
寛ごうとしていた俺をファイヤーが嗜める。何で?
「ミュウツーも本来の実力が出せるほど調子は戻ってないし、
 アタシ達に至っては捕まってから戦闘らしい戦闘をしてないからね。
 感が鈍っているところもあるし――」
「それに――」
それに、とフリーザーが続く。
「あの島はホウオウやルギアの本拠地よ。
 あそこに居る限り、ただでさえ強力な二人の力はさらに増幅されるわ。
 ……アンタがどうなったって知ったこっちゃないけど、アンタがやられちゃ私たちまでおじゃんなんだから」
最後のほうは照れくさそうにそっぽを向いて言うフリーザー。
捕まえた頃からの癖だ。こういう時は深く突っ込まずに流してやるのがいい。
「そう……ありがとうな」
で、とどめの一言。
「でも、おじゃんって言い方、結構古いよ――」
な、と発音できないまま、俺の意識は凍りついた。
いや、文字通り凍りついたのだろう。
余計な一言を言った自分を呪いつつ、俺は慌てたファイヤーに救出されるまで凍ったままだった。
こんな俺が何で伝説と出会おうとしているんだろう。
自分の行動に疑問を持ちつつ、俺は出立の日を迎えるのだろう。


――続――
ツールボックス

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