3スレ>>840


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<<前回のあらすじ>>

サントアンヌ号に乗り込んだら いじめっこDQN三人組がいて

ヘタレトレーナー(♀)のトラウマスイッチ全開 バーサーカーソウル発動

何とか撃退したものの パラセクトのきのこのほうしで

ヘタレトレーナーも撃沈








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「…大丈夫か?」


ぶっきらぼうだけど、こちらのことを案じてくれている声が、耳に届く。


「… … …」


こくん。

自分はうなずくことしか出来ない。

言葉を紡いだら、泣き出してしまいそうだったから。


仏頂面の私を、ぶっきらぼうな声の人が手を引いて起こしてくれた。



「あいつら――恥ずかしくねぇのか、寄ってたかって女相手に」


クソッタレ、と忌々しげに吐き捨てて、私に背中をむけてしゃがみこむ。



「……膝。 擦り剥いてんだろ。 家まで送ってってやる」


すこし戸惑ったけれど、膝がじくじく痛くて歩くのもおっくうなのは
確かだったから、お言葉に甘えておんぶしてもらうことにした。


あったかい背中。

これが、さっきまで私のことを馬鹿にしてきた連中と、同じ性別の人の背中だとは
思えないくらい、優しくて大きな背中。



「……お前な。 いじめられるほうが悪いなんて言いたくねぇけどよ、ちったぁ助け呼ぶ努力くらいしたらどうだ」

「…?」

「いや、『?』じゃねぇだろ。 ……あんだけの目に合わされて、なんでずっと黙りっぱなしになってんだよ。
 助けてほしいとか、思ったことねぇのか? そんなわけ――」

「…… ない」

「――は?」

「だって、だれもたすけてくれないもん。」

「な……」

「おんなじ学校の子は、みんな知らんぷりしてる。
 大人のひとは、ひとがたくさんいる時は、助けてくれるけど
 いつも、めんどくさそうな顔してる」

「… …」

「だから、いい。だれも、助けてくれなくても、いい。
 いじめられたって、私、しなないもん」



あんな馬鹿どもにやる命なんて、ない。

耐えてみせる。


この地獄が終わるまで。





「ざっ……けんな!」


私をおぶったまま、顔だけをこっちにねじまげて叫ぶ。

その顔は怒っていたから、怖く見えた。



「誰にも助けてもらえねぇ? ふざけんな――上等だ、だったら俺が助けてやる!

 アホ共に笑われて、貶されて、我慢できなくなったら、いつでもいい、俺を呼べ!

 名前だろうが苗字だろうが、お前の好きなように呼びゃあいい!

 お前がどう呼ぼうが、すぐに助けに行ってやるから――」



だから と、言葉を一度区切って

私の目を しっかり見て





「だから、だから……そんな、泣けなくなるまで、我慢なんざしてんじゃねぇ!」







熱く濡れた 黒曜石みたいな 目


私を 守ると いってくれた


今でも わすれられない


私の おもいで




いまはもう お礼すらいえない とおくのひと









(…にい、さん…!)








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「…あ、お目覚めになられましたか?」


まぶたを開けたら、見知らぬひと…否、メイド姿の萌えもんがいて

うやうやしく、そんな風に声をかけられてしまった。



「え…あ、は、はい。お目覚めに、なられました…」

「良かった。お連れの方々が心配してらっしゃいましたよ?」



お連れの…ああ、みんなのことかな?

みんな……そうだ。私、あの時のバトルで結局眠っちゃって…!



「ああぁぁああわわわわわ! 大変大変大変…だ……?」



慌ててベッドから飛び降りて、早くみんなのところに行こうとわたわたして、ふと気が付く。

部屋の窓から見えるのは、真っ青なキレイな海。

…いや、ここは船内なんだから、それは問題ない。ないはず、なんだけど……



ざっぱーん ざっぱあーーん


船体が波を掻き分けている音が聞こえる。

窓に近づいてよく見てみると、船は猛スピードで海の上を進んでいた。



…ええと、ここはクチバの港に止まってたサントアンヌ号で、

私は私で、みんなといっしょにこの船にお邪魔して…

でもサントアンヌ号は海の上を走っていて…



つまり サントアンヌ号 は

出港しちゃった ということ で






「 ――― ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」







血の気が、一気にどこかにいってしまう音が、聞こえた気がしました。









『 ヘタレの奮闘記。サントアンヌ号生活編 』










「おう、嬢ちゃん! 若いのに頑張ってるねえ!」

「は、はいっ! だって、あと一週間くらいはここでお世話になってしまうんですし、
 これくらいのお手伝いはさせていただかないと…」

「かーっ! 今時健気だねえ、おじちゃん泣けてくるわ…」

「よし、おっちゃんはコックだから、今夜は張り切っておいしいご飯を作るぞ!
 期待しててくれよお嬢ちゃん!」

「は、はいっ! あ、ありがとうございますっ!!」


活気に溢れている海の男…船のクルーさんたちに声をかけられ、ちょっとびっくりしながらも
精一杯元気な声で答える。

クルーさんたちが行ってしまったら、また甲板をデッキブラシでごしごし磨く作業に戻る。


…えー、何故自分がサントアンヌ号で清掃作業をしているのかと申しますと。

ようするに、自分が眠りこけてしまったせいで、サントアンヌ号の皆さんにご迷惑をかけてしまうことになりまして。

なので、せめてもの罪滅ぼしとして、船が目的地まで行ってクチバに戻るまでの約一週間
この船でバイトみたいなことをさせてもらうことになったのです。



「ふふふ。精が出ますわね、お嬢さん」

「あ、アヤメさん。そりゃあそうですよ、働かざるもの食うべからず っていうじゃないですか!
 これぐらいのことはしないと、船員さんたちに顔向けできませんよ…」

「まあ。今時の貧弱な若者に聞かせてやりたいですわね」



鈴の音が鳴るような、凛とした笑い声が甲板に響く。

このお姉さんは、アヤメさん。
今はお仕事でこの船に乗っているのだそうです。

あ、ちなみに私が寝過ごして船から降り忘れてしまったことを、船長さんにいち早く教えてくれたのがこの人です。
お陰で船長さんとスムーズに連絡がとれて、これからのこともご相談することができました。

私が昏倒してしまったあと、萌えもんのメイドさん…
ツチニンさんをつけてくれたのも、アヤメさんのご厚意だったそうです。

いやはや、他の人にお世話と迷惑をかけっぱなしだなあと、自分で自分に呆れています…。



「…ところで、貴女何か武術でも習ってますの?
 あの時のギャラドスの牙を止めた動き、只ならぬものを感じたのですけれど…」

「うえぇ!? … あはははは、やだなあアヤメさん、私武術なんて習ってませんよー。
 あの時はただ必死だったから、無我夢中であんなことやっただけで…」

「そうでしたの…何にせよ、あの時は久々に良いものを見せてもらいましたわ。」



ありがとう。と妖艶な目を煌かせてつぶやくアヤメさん。

ううー、やっぱり美人だよなあ…とその笑みに思わず見とれてしまいました。

そのあとメイドのツチニンさんがやってきて、何やらアヤメさんに耳打ちをすると
二人とも船内に戻っていってしまいました。どうやらお仕事関係のお話だそうです。

きゃりあうーまん、ていうものなのでしょうか。
やっぱり働く女のひとは大変そうだけど、格好いいなあと憧れてしまいます。



「おおおおーーい、ダーンナぁーーーーー!」


甲板掃除を再開していると、フシギソウがこっちに向かって駆け寄ってきました。
萌えもんのみんなは、今は各自休暇を楽しんでいるはずなのですが…


「ダンナ、ダンナ、オーキド博士と連絡がつながったよ!」

「∑ええ! それ本当!?」

「本当、本当! はやくはやくダンナ! オーキド博士とお話しなくちゃって言ってたでしょ!?
 船長室においでってクルーさんが言ってたよー!」

「う、うん!」


バケツをひっくり返さないように、慎重にデッキブラシを床に置いて
慌てて船長室に移動する私たちなのでした。




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「あうう゛う゛ううあああ゛あああ~~~っ!
 お、おーきどはかせえええええ゛え゛えええええ~~~~~!!」

「お、落ち着きたまえ … … 君!
 今は泣いていても仕方がないじゃろう? 大丈夫、誰もキミのことを責めたりなどせんよ。
 ほらほら、船長さんたちがビックリしてしまっているじゃないか。
 笑って笑って。辛いときこそスマイルじゃよ~!」


思わず涙腺がゆるんでしまって号泣状態に陥ってしまった私を、必死になだめようとしてくれるオーキド博士。

久々に自分の名前を親しい人に呼んで貰えた、という安堵感も手伝って、何だか余計に泣けてきてしまいます。



「…ふむ。つまり話を要約すると、バトル中に眠らされてしまって
 気が付いたらサントアンヌ号は出港してしまっていた、と。
 そういうことじゃな?」

「ぐず、ぐすっ…ひゃ、ひゃい…」

「まーったくあの悪ガキどもめ。
 じゃからワシからは萌えもんを渡さなかったというのに…全くどこから手に入れたのやら」

「そ、それで、はかせぇ……わ、私はどうしたら…」

「むう、そうじゃなあ…とりあえず船長さんのご厚意に甘えさせてもらって、まずはクチバシティまで
 乗せていってもらいなさい。迎えの者をそこに待機させておくから、大人しくしているんじゃよ?」

「は、はい…
 それで、迎えのひとって、一体……」

「ああ、キミもよく知っている人じゃよ。」

「?」

「ちょうどいい時期に来てくれていて助かったわい。
 何せ、キミを助けることに関しては、彼ほどのプロフェッショナルはいないしのう」



いつもは鈍い頭が、この時ばかりは鋭く閃いてくれた。

私を、助けてくれるひと っていったら……



「も、もしかして… 兄さん、マサラに戻ってきているんですか!?」

「おお、鋭いのう。
 そうじゃよ。彼は今、マサラタウンに遊びに来ておる」

「そうなんですか…兄さんが…!」

「まあ、とにかくそこで良い子にしておりなさい。
 ワシも色々手を尽くしてみるから、キミも諦めずに頑張るんじゃぞ?」

「はいっ! 分かりました博士!」

「ほっほ、よろしいよろしい。では、元気でな~」

「はい!」


――― ぷつん。軽い音をたてて、通信は切れた。



「ねえねえダンナ。さっき言ってた“兄さん”って誰?
 ダンナは1人っ子だって聞いてたから、ダンナに兄弟がいたなんて知らなかったよ」

「ああ、違うんだよフシギソウ。私が1人っ子なのは本当。
 …兄さん、って言ってもね、私が勝手にそう呼んでるだけなんだ」

「ふーん…で、どんなひとなのー?」

「んーとねえ…ちょっと怖く見えるけど、でも、やさしいひと。
 何だかんだいって私のこと、いっつも助けてくれた、頼りになるお兄さん…って感じかな?」

「へー。ダンナのこと、助けてくれたひとかぁ」

「今はセキチクシティってところに引越しちゃってね。もう会えないと思ってたんだけど…」



また会える。

それも、遠い日の話ではなくて、近日中に。



「よかったねダンナ。私もその“兄さん”ってひとに会ってみたくなったよー」

「うん。…それじゃあ、私そろそろ掃除に戻るね」

「あ、私も行くー!
 ダンナといっしょにお掃除するー!」

「え、いいの? フシギソウもゆっくり休んでればいいのに…」

「ゆっくりするの、もう飽きちゃったんだもん。
 だから私もダンナのお手伝いする~」

「ん、了解。それじゃあ一緒にお掃除しよっか?」

「は~い!」


船長さんにお礼を言って、フシギソウとふたり、甲板掃除に戻る。

その足取りは、自分でも分かるくらいウキウキしていた。


これで当分は、落ち込むこともなさそうだなあと自分でも感じた。





そして浮かれるあまり、バケツをひっくり返して甲板掃除を一からやり直す羽目になったのは

まあ、予測できていたというか何というか……


本当、私ってある意味 期待を裏切らないやつだなあ orz





そんなわけで、約一週間の船上生活がはじまったというわけです。






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今回のこの話は、嫁に3939氏のおっかけ兄さんのお話と、
619の人氏のハブネークのアヤメ姐さんのお話とクロスしております。
そちらの方も読破すると色々面白いかもしれません…
尚、3939氏にも619の人氏にもいちおう許可は頂いております。

お二方、本当にありがとうございました。
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