3スレ>>927


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「…なんか、急にあったかくなってきたな」
「火山のせいでしょうか。今は活動していない、はずなんですけど…」

ハードプラント習得の次の日。俺達は、『ルビー』を探すためにともしびやまへ向かっていた。
シャワーズの助けを借りて遠浅の海を渡り、濡れた服を乾かしたい衝動を堪えて陸地を進んでいく。

途中で出てきた野生の萌えもんを捕獲、もしくは撃退して進んでいくにつれ、肌に感じる熱気が強まってくるのを感じる。
俺の隣を歩いているシャワーズも、少々暑そうだ。だからって服であおぐな。いろいろ見えそうになってるから。

「って、あれ…何だ?」
「洞窟…でも、上から湯気が出てますね」

火山、湯気…ひょっとして…というか、もうそれしかねーよな。


「やっぱり、温泉だ」
「温泉?」
「まぁ、要するに天然の風呂だな。地下水が地熱で暖められて湧き上がってくるやつだ。
 普通の風呂よりも、水の質もいいし鉱物によるさまざまなプラスの効果がある…と聞いた。
 ちょうどいい。ここに入っている間に服を乾かそう」

俺はシャワーズを連れて温泉の入口へ向かっていった。


向かわなきゃよかった。
温泉は、広大な洞窟内のあちこちに沸いているようだった。それぞれの湯のまわりには簡単に壁が張られ、
管理人に申請して一室を借りて入る、という形になっているらしい。

ちょうど俺達が入ったのが昼前と言う事もあって空いている。
簡単に一室借りることができた。(ひと組に一室しか借りられないらしい)

で。

「いや、予想してしかるべきだったんだけどな」
「何いってんの、マスター?早くはいってきてよ」
「御主人さま、ここのお湯すっごい気持ちいーよ!」

まぁ、風呂の外に仕切りはあっても、中には仕切りがない訳だ。要するに混浴だ。

「いや待て、お前ら先入ってろ、俺はしばらく外で時間つぶしてくるから――」
「それは困るね、マスター。服が濡れている状態で外に出て風邪でもひかれたら、修行どころじゃないじゃないか」
「いや、でもな――」

「…分かった、ではこうしよう。シャワーズ、プテラ、手伝え。無理やりにでもマスターの服を脱がす。風邪をひかれては困るのでな」
「ごめん俺が悪かった一緒に入ってやるからそれは勘弁してくれ」
「遠慮しなくてもいいよ、私が上から下まで徹底的に優しく服を一枚一枚剥いでやろうじゃないか」
「フーディン、キャラが変わってます…」

…と言うわけで。
なんだかセキチクの一件を思い出すが、俺達7人は全員で温泉へと入ることになった。

「ふむ…予想以上に湯が熱いな」
「私としてはそんなに感じないが…そこまで熱いか、フーディン?」
「プテラは、熱いのには強いみたいですね」
「ボクたちはいいとしても、年少組が茹であがっちゃうよ…」

「ぐにゃー…」
「ふにゅー…」

「いかん、水の栓はいずこ!?」
「シャワーズ、君の後ろのそれじゃないかな?」
「えっと、これ?…熱っつぅ!これ、源泉ですよ!?」
「あ、たぶんこっちだ!水入れるよー」

もちろん全員タオルは巻いている。…みんな予想以上にくつろいでんな、オイ。

「…ライチュウ」
「なーに、フーちゃん」
「進化しても体はあまり成長してないんだな」
「うー…あたしはこれから大きくなるんだよ!そのうちハナちゃんみたいになるよね、マスター!?」
「俺に振るな、あと湯船で泳ぐな、例え俺達しかいなくても」

…まぁ、確かにライチュウもキュウコンも、進化しても性格は変化していない。…あと体つきも。
フシギバナほどになるかどうかはわからないが、成長はこれからなのだろう。
ただ、変化した点ももちろんある。

「なぁ、ライチュウ、キュウコン」
「なーに?」
「はい…」
「お前ら、髪…解かないのか、それ?」

そう、外見だ。ライチュウはストレートだった髪を左右に分けてツインテールに、
キュウコンは伸びた髪を纏めて九つの房に分けている。進化前は見れなかったうなじがちょっと色っぽい…かもしれない。

「ますたー」
「…どうした」

「かみの毛ほどきますから、あたま洗ってくれますか?」
「あーっズルイ!マスターあたしも!」
「じゃあ御主人さま、ボクもボクも!」
「マスター、あの、よかったら私も…」
「御主人、で、できれば私も…」

「お前ら落ち着け、そして洗うにしても一人ずつだから。そもそもお前ら揃いも揃ってなぜ俺に頼む」
「そんなこと言わずに、役得として受け取りたまえ。あと私もお願いしよう」

ぼやく俺の隣から、フーディンが何気にトンデモない事を口にしやがった。

…結局、一時間近い時間をこの温泉で過ごすこととなった。やましい事はしてないぞ、マジで。



     *  *  *

気を取り直して、俺達はとうとうともしび山に到着した。
とりあえずそれなりに急な山道を登っていくと、上に進む道と横へ逸れる小さな道がある。
普通に登っていれば確実に見のがす小さな道だが、足もとに注意していたため気づくことができた。

どっちへ向かうか。とりあえず、上にのぼるのは後にしたい所…横道へ行くか。




「で、ひとつ目のパスワードは…『またまた タマタマ』…」

何やら話し声が聞こえてくる。物陰からのぞいてみると、見覚えのある黒服の人間が二人いた。
犯罪組織ロケット団。話すと長くなるので割愛するが、俺はこいつらが死ぬほど大嫌いだ。

ここで何をしているのか。相手は二人…ボールは腰に2つずつ、か。
…俺的には、こいつら相手に遠慮も仮借も手加減も必要ない。徹底的に、殺して解して揃えて並べて晒してくれよう。


足もとに落ちていた小石を拾いあげて、同時にリュックに入れていたスタンスティックを取り出す。
伸縮、放電ともに異常なし。…これ、タマムシのロケット団アジトから頂戴した代物なんだよな。萌えもん調教、鎮圧用の。

「…さて、やるか」

まずは小石を投擲。地面にあたって音をたてた石のほうへ、二人の男の意識が集中するその一瞬。
俺は物影から飛び出して3歩で一人目の目の前に飛び出し、スタンスティックを叩きつけてトリガーを引く!
細かい事はわからないが、象でも一瞬で気絶する電撃を浴びて平然としている人間はいまい。

倒れた一人目は無視、スティックを伸ばして二人目のボールに伸びていた手を思いきり叩いた。
痛みに喚く暇も与えず、顎を蹴り上げてさらにスティックで一撃。もちろん電撃のおまけつきだ。

「…ま、これで2,3時間は起きてこれねーな」
「私はいつも思うのだが、マスターは素手でギャラドスやニドリーノくらい軽く倒せるんじゃないか?」
「別に大したことねーよ、こんなの。義父さんは素手でカイリュー投げ飛ばしてたぜ」
「………それは、君の基準がおかしいんだよ」



     *  *  *

ロケット団が入ろうとしていた洞窟へ侵入する。ライチュウに頼んでフラッシュで暗闇を払って、
奥へ奥へと降りて行くと――

「マスター、なに、これ」
「遺跡…かな」

その壁にはよくわからない文字が刻まれ、石室の中には壁と同じような文字が刻まれているテーブルがある。
部屋の隅には、下に降りる階段があった。

「ライチュウ、降りてみよう」
「うん」

降りてみると、今度は小さな部屋の中央に何かが置かれているのが目に入った。
真紅の輝きを放つ、手のひら大の宝石。これが、噂に聞いていた『ルビー』か。
手を伸ばして、台座から取ってみる。…ひょっとしたらトラップが発動するかも、とは思ったのだが、何もおきない。

「…これ、俺がこっちにこなかったらロケット団に取られてたんだな」
「でも、これでニシキさんよろこぶね!」
「そうだな。とりあえずリュックに入れておくか」


俺達は洞窟を出て(ついでにロケット団は縛り挙げたうえで1の島の警察に通報しておいた)、
元の道にもどって頂上へ登って行った。




     *  *  *

「…頂上だ」

古くて長い階段を登り終えると、そこはともしび山の頂上だった。火口はちょうど俺達の登ってきた反対側の下にあるらしい。
振り返ると、1の島と2の島が見えた。3の島は遠くにかすんでいる。

「で、マスター。登ってどうするのだね」
「…いや、昨日頂上にいったらいいって言われたからとりあえず来てみたんだけど」
「やれやれ、…マスター、下がって。上からくる」
「?」

フーディンに言われるまま数歩後退して、空を見上げる。
晴天に赤く輝く影、その姿は――

(…あれ、萌えもんか?どう見たって火の鳥だよな?)
(おそらくは間違いないね。マスター、気をつけて)

空から舞い降りてきた火の鳥は、その名のとおりと言うかなんというか、全身を炎に包まれていた。…しかし、それにしても体が大きい。

「ともしび山へようこそ、人間とその仲間たち。私(わたくし)はファイアー。伝説と呼ばれる炎の守護者たる萌えもんの一つ」
「ファイアー…図鑑にデータがある。…以前に確認されたのは、チャンピオンロードで数回の目撃情報のみ、か」

と、火の鳥――ファイアーが纏っていた炎が吹き飛び、その中からファイアーの本体が現れた。…あれ、なんか3回りくらい縮んだな。
しかし、その体からにじみ出る威厳と迫力は全く変わらない。今にも息がつまりそうだ。

「それで、私に何用です?観光、と言うわけでもなさそうですが?そもそも観光ならここではなく向こうの火口を目指した方が…」
「いや、ある人にここに行くといいって言われたんだけれど…」

…ああ、なるほど。そう言う事か。全く、あの人はいったい何者なのか。

「特に用はないというのですか?」
「いや、待ってくれ。…一つあるんだな、これが」

そう言って、俺は腰から順番にボールを取り出して、手持ち6人全員を展開する。

「勝負だファイアー!俺達の力試しとして、相手になってもらうぜ!」
「…ふふ、この私に向かってくる、その意気やよし」

ファイアーが穏やかな口調で、優雅に微笑む。そして、周囲の雰囲気が一変した。
壮絶な覇気と殺気。空気が一気に重くなり、俺の額に冷や汗が吹き出す。

「いいでしょう、挑戦は受けます。そして私に牙をむけたこと、後悔させてさしあげますわ!」
「…ッ!!来るぞみんな、一度固まれ!ライチュウ、光の壁!フーディンはリフレクター!プテラとシャワーズは攻撃の準備!
 フシギバナ、キュウコンは援護に回れ!」

「うん、分かった!」「任せたまえ」
「はい!」「承知!」
「了解ーっ!」「わかり、ました…!」

ファイアーは上空へ飛び上がり、エネルギーを集中させている。炎を貯めている所をみると、火炎放射か。

…って、あれが火炎放射か!?見た感じだけでも昨日見た『ブラストバーン』と同威力かそれ以上はあるぞ!?

「く、あんなモンくらったらバリア越しでも持たないぞ!キュウコン、フシギバナ、妨害は間に合わない、あいつの火にタイミングを合わせろ!
 少しでも威力を削るんだ!フーディンとライチュウは出来るだけ防御を厚くし――」
「遅いわ、焼かれなさい」

空中から俺たちに向けて、撃ちこまれる火炎放射。ワンテンポ遅れて、こちらからも火炎放射と破壊光線が放たれたが、威力が違い過ぎる!!
瞬く間に飲み込まれ、そして光の壁とリフレクターに激突する。

「んぐ…!」
「くっ、う…なんてすさまじいエネルギー…」
「頑張ってくれ、ライチュウ、フーディン!…くそ、フシギバナ!あいつの攻撃を妨害できるか!?
 シャワーズは時間差で攻撃をかけろ!」
「うん、やってみる!」「…はい!」

バリアの後方から、フシギバナがはっぱカッターを放つ。ファイアーはこれを避けようともせず――
すべて、『防ぎきった』。 分厚い炎の壁が彼女を取り囲み、攻撃を遮断したのだ。

「ますたー、あれは…」
「ああ、分ってる!炎の渦の応用ってわけか!なら、水の攻撃でどうだ!?」

シャワーズが放った水の波動が、炎の壁を打ち消す。ファイアーは美しい顔を若干ゆがめて、此方をにらみつけてくる。

「時間の無駄です、終わらせましょう。…ゴッドバード」

つぶやくと同時に、ファイヤーの全身が炎に包まれ、降りてきた時と同じように火の鳥の姿へと変化する。
その姿のまま――こっちへ突っ込んでくる!

「まずい、みんな、逃げ――」

間に合わない。もうすぐそこまで来て――

「うわああああああああああああああぁっ!!」



     *  *  *

「く………」
「へぇ、意外としぶといのが一人、いますわね」
「あと一瞬テレポートが遅れていれば私も戦闘不能だったがね。しかし、手加減してくれるとは思わなかったな」
「むやみに命を奪う趣味は持ち合わせておりませんの。…ですけど、主人を見捨てて一人逃げるとは薄情では無くて?」
「私もそう思うけどね、その主人の命令だ、仕方無い」

『フーディン、お前だけテレポートで離脱しろ!お前さえ無事ならなんとかなる!』
『…了解』

「へえ、随分と手下想いな主ですこと。…もういいわ、さっさと尻尾を巻いてお逃げなさい、負け犬!」
「…屈辱ではあるが、そう言ってくれるならありがたく逃げさせてもらおう」




     *  *  * 



目が覚めて、最初に見えたのは天井。続いて、ベッド横に座っているフーディンの顔。

「ぐ……フー…ディン?」
「…マスター?目が覚めたのか」

「ここは?」
「一の島、センター内の我々の部屋だ」
「そう、か…」

意識がまだはっきりしないが、俺の体はちゃんとベッドに横たわっているらしい。
頭を触ってみると、額に包帯が巻かれている。体のところどころにも包帯や湿布が張られているのがわかった。

「…みんな、は?」
「私を含め全員治療施設で回復済みだ。私以外の皆は、もう少しかかるそうだけれど…命に別条はない」
「…よか、った、…」
「よくない」

フーディンが強い口調で俺の言葉を阻む。

「よくないよ、マスター。…無事だったから、いいってものじゃない」
「フー…ディン?」
「私が、わたしがもっと早くに反応していたら、マスターに言われる前に動いていたら、全員無事で逃げられたんだ。
 特に、マスターは人間なんだ…倒れても、センターの治療施設じゃ治せないかもしれない…」

ぼろぼろ、と。俺を見下ろすフーディンの顔から、熱い滴りが零れおちてくるのが分かった。
俺はヤマブキからこいつと一緒に旅をしてきた訳だが、フーディンが泣いた所なんて、見たことがない。

「ほんとに、マスターが、死んじゃっ、たら、どうし、よう、って…わたしの、わたしの、せ、せいで…
 相手に、情けまで、かけられて…マスターが、悪く、言われ、ちゃって…」

「違うよ…フーディン。お前のせいじゃない。今回の敗けは、全部、トレーナーの、俺の責任だ。
 相手の実力も測れずに無理な戦いを挑んだ、俺のせいだ。お前は何も悪くない」

腕を伸ばして、フーディンの頬から涙を払う。

「お前のせいじゃない。…思いきり泣いたっていい。その分早めに泣きやんで、また俺を助けてくれ」
「マス、ター…ひぐ、ぐすっ…う、うえぇっ…」

ベッドに横たわる俺の胸に顔を押しつけて泣くフーディンの頭を、母親のように俺は撫でてやった。




     *  *  * 


泣き疲れて眠ったフーディンを俺の代わりにベッドに寝かせ、みんなの様子でも見に行こうかと考える。
ああ、そういえば…ともしび山で入手したルビーをニシキさんに渡さなきゃいけないんだったか。


通信制御施設に入ると、ニシキさんが駆け寄ってきた。
とりあえずルビーを手渡すと、彼は信じられないような眼でこちらを見てきた。

「あの…ひょっとして、これを探してその怪我を?」
「いえ、これはその後ちょっと手ごわい奴とやりあって…フーディンのお陰で、命からがら逃げてきたって感じなんですけどね」
「あ、あの子ですか…必死の形相であなたを引きずってセンターに入ってきたものですから、みんなびっくりして」

…後でフーディンにちゃんとお礼言い直しておこうか。

「でも、これでまた通信システムの強化、進みますかね」
「もちろんです!…まぁ、細かい調整なんかは一つ一つやっていくしかないんですけどね。
 いつまでも先輩のやり方を頼ってはいられないし、オレなりのやり方で頑張りますよ!」

一つ一つ…俺なりのやり方…か。…そうか…

「クリムさん、本当にあり――「ニシキさん、ありがとうございました。何か、ちょっと目が覚めました!」――え?」

俺は、仲間たちを迎えに走り出した。そう、俺は大事なことを忘れていたんだ。



ジョーイさんのところで聞いてみると、今ちょうどみんな治療が終わり、部屋へ走って行ったらしい。
…まずい予感がするな。急いで俺も追いかけよう。



     *  *  * 

「どおしよう、マスターがいなくなってるよー!」
「ひょっとして、けがしてる所を攫われたり――」
「ますたぁ…どこですか…」
「落ち着いてみんな、皆で探せばすぐ見つかるから…」
「シャワーズ、お前が落ち着くんだ!ソファーの下にマスターがいるはずないだろう!」

「…お前ら、怪我治ったばっかりで走り回ってんじゃねーよ」
「マスター!?」
「御主人!どこに行っておられたのだ!」
「そうですよ!一番安静にしてるべきなのはマスターじゃないですか!」
「いや、もうだいぶマシになった。お前らを迎えに行こうと思ったらスレ…じゃなくて、すれ違いになったみたいだな」

…こいつらにも、言わなきゃな。俺の覚悟と、決意を。

「みんな、聞いてくれ。今回の負けは、全部俺のミスだ。…本当にゴメン」
「マスター…」
「けど、今度は負けない。みんな、俺にもう一度チャンスをくれ。今度はあいつのペースに乗せられる必要はない。
 おれ達のやり方で、あいつに、ファイヤーに目にもの見せてやるんだ」

「良く言った!それでこそボク達の御主人さまだよ!」
「私、もっともっと頑張ります…勝ちましょう、マスター!」
「もう、まけない、です」
「負けっぱなしと言うのは症にあわんな。御主人、今度こそ勝とうぞ」
「さっすがマスター!あたしもそう言おうと思ってたんだよ!」
「お、お前ら…」

「楽しそうだね、君たちは。私を放っておいてそれは無いよ」
「フーディン!?お前、もういいのか?」
「おかげさまで、だいぶ気が晴れたよ。ありがとう、マスター。
 …それで、勝算はあるのかい?」

「ああ。…細かい作戦は明日話す。まずはとにかく…晩ごはんにしないか」
「…そういえば、もう7時を回ってるんですね…急いで作ります!」
「ボクもいってくるよ!」
「おなか…すきました」
「…まぁ、健康で何よりだな」



     *  *  * 


で、次の日。朝食を食べ終えて一息ついた面々に、俺が作戦の説明を始める。

「まず、昨日の戦いで分かったことを纏めてみよう。おおよそだが、3つある。
 一つ・ファイヤーはゴッドバード、火炎放射の技を使う前にチャージ時間がある。
 二つ・炎の壁はシャワーズの水の波動で消すことが可能。他の物でも消せるかもな。
 三つ・俺達の防御力では、火炎放射でさえ防ぐのがやっとだ。つまり、回避する方向で考えよう」

「そして、ヤツに対する俺達の有利な点はこうだ。
 まず、こちらは6人、相手はひとりと言う事だ。散開すれば、火炎放射で一網打尽、なんてことはない。
 もう一つ。一度俺たちに勝ったから、ヤツは俺たちを甘く見ている。そこにつけこむことができれば、勝ち目は充分ある」

「これから、各自に作戦を言い渡す。現場で指示を出すこともあるだろうけど、そうでないときはこれに従って自分で動け。
 今回の戦いのカギは…フシギバナ、お前だ。わかってるだろ?」
「うん。アレを使うんだね!」



     *  *  * 


ともしび山、頂上。昼下がりの山頂で、俺達とファイヤーは再び対峙した。

「あら、人間。またやられに来たのですか?」
「あいにく負けたままじゃ気が済まないんでな。リベンジマッチと行かせてもらうぜ」
「…ふふ、いいでしょう。今度も手加減してさしあげます」
「そいつはどうも!行くぜ、皆!」

俺がみんなに出した指示はこうだ。

まず、フシギバナは『フーディンの後ろでタイミングを待て、必要なら援護しろ』
そしてフーディンには、『とにかくフシギバナを守れ、そして仲間の支援を行え』
残りの4人にはこう言った『とにかくファイヤーを一度地面にたたき落とせ』
 
まず、先鋒はライチュウ。素早く前に走り出て、攻撃に入ろうとしたファイヤーに10万ボルトを放つ。
さらにキュウコンが続き、火炎放射で牽制をしかけた。

ファイヤーはこれを驚きもせずに炎の壁で散らす。しかし、すかさず放たれたシャワーズの水の波動がバリアを打ち消した。

「どうしました、これでは昨日とおなじですわよ!」
「それはどうかな!?」

高らかに叫びながら、さらに高空へと上昇、炎を放射する構えを取るファイヤー。
しかし、背後に回ったプテラが真上から破壊光線を放つ!

「甘い!」

一瞬で軌道を見きって、空中で回避しやがった!反動で動けないプテラを放っておいて、再度火炎放射の構えを取るファイヤー。
だが、その油断が命取りだ!

「イーナーズーマー…」
「なっ!?」
「キィーック!!」   

プテラの背に隠れていたライチュウが、そこから飛び出し――ファイヤーに、渾身の雷撃と蹴りを打ち込んだ!!
油断していたところに背中から蹴りを受けて、一直線に地面に落ちるファイヤー。

(いいぞ…そのまま下まで…!!)

しかし、敵もさるもの。空中で翼を広げ、地上数メートルで留まって、再び上昇しようとする。
だが、天空より駆け降りてくるプテラとライチュウがそれをさせない!

「大人しく落ちちゃえっ!」
「これで終わりだ!」
落下の勢いを利用した、メガトンパンチとすてみタックルが直撃。今度こそ完全に、地面に叩きつけられた!

「こ、この…調子に乗って…!」

立ち上がろうとするファイヤーだが、真上からすさまじい念力に押されて、膝をつくのが精いっぱいらしい。
フーディンが俺の目の前で、全身全霊の力でファイヤーを押さえつけているのだ。

「それはこっちのセリフだよ。一度勝った程度で調子に乗らないでほしいものだな…!
 今だ、やれ!!」
「はいっ!」
「おいうち、です!」
「行くよ!」
「任せろ!」

4方向から襲い来る、徹底的な破壊の嵐。爆炎と土埃が舞い上がって、視界を隠す。

「フシギバナ、やれ!フーディンは念力で奴の位置を掴んでフシギバナを誘導!」
「了解!…見えた!右21度、まっすぐ撃ちこめ!」
「行くよ…だああああああああああああああああああぁぁっ!!」

フシギバナの絶叫とともに、彼女の『力』が地下から持ち上がり、煙の中にいるファイヤーに殺到していく。

視界の晴れたファイアーが見たものは、自分の視界をさらに埋め尽くす無数の根だった。

「あ、きゃあああああっ!?」

「やった!御主人さま!」
「おう!」

狙いを定め、ハイパーボールを倒れたファイヤーに投げつける。…意外なほどあっさりと抵抗が止み、ボールが火山の岩肌に転がる。

「…御主人さま、やったの?」
「ああ。…ファイヤー、ゲットだぜ!」
「意外とあっさり捕まってしまったね。…もっと苦戦するかとも思ったんだけど」
「…そうだな。とりあえず、センターに戻るか!」



     *  *  * 

で、センターの自室に戻って、治療のすんだファイヤーをボールから出してみる。
たとえ伝説級の萌えもんとはいっても、ボールに入ってしまえば俺に危害を与える事はできない…と思う。

「…で、とりあえず捕まえちゃった訳なんだが…」
「敗北した以上、殺されても文句は言えませんものね。このファイヤー、謹んで貴方の供となりますわ。どうぞよろしく、御主人様」
「あー、それなんだけど…まぁいいや。どうせもう今日は遅いだろうから」
「マスター、ファイヤーさん、晩御飯用意できましたよ。歓迎も兼ねて、御馳走にしてみたんですけど…」
「あら、恐れ入ります。それとシャワーズ、同じマスターに仕えるのだから、別に敬称はいりませんよ?
 それではマスター、先に食堂へ行っていますね」
「あ、ああ…」

なんか、さっきまでとだいぶキャラが違うな。…何というか、実力を認めてもらったのだろうか。



「それではマスター、私はこれで失礼いたします。おやすみなさいませ」
「ああ、お休み。…早いな」
「その気になれば、1日中でも起きていられるのですけれど…少し、疲れたみたいでして…」
「そうか…まぁ、ゆっくり休みなよ」
「おやすみなさい、ファイヤーおねえちゃん」
「おやすみなさい、キュウコン。それでは」

「…なんだかなぁ」
「拍子ぬけ、と言った感じだね。もっと抵抗してくるかと思ったんだけれど…」
「ますたー」
「ん、どした、ロコン?」
「ねむい、です…わたしも、ねます」
「マスター、あたしも寝るね…おやすみー」
「あの、私も…」
「そっか…まぁ、今日はがんばったからな。お休み」

なんか、やけにみんな寝付くのが早いな。…あれ、俺もちょっと眠くなって…

「マスター?」
「悪いフーディン、俺もちょっと疲れてるみたいだ…」
「当然だ、君は一応はけが人なんだぞ。無理をせず休みたまえ」
「あ、ああ…消灯、頼むな」
「わかっているよ。お休み、マスター」

寝間着に着替えて、俺もベッドに入る。…不自然なくらい、あっさりと眠りに落ちた。












「フシギバナ、もういいぞ。ボールは確保した」
「うん。でも何で、ファイヤーにいたずらするの?」
「昨日の借りを返してやろうかと思ってね。楽しいし見てて面白いと思うから手伝ってくれ」
「わかったー。じゃあ、どこに行くの?」
「隣の治療室へ行こう。あそこなら音も漏れまい」













     *  *  * 



「御主人様、起きてくださいませ…」
「う、ん…」

やけに深い眠りだった気がする。いつもなら自分で目を覚ますところを、起こしてもらう事になるとは…
って、あれ?

「ファイヤー?」
「な、何でしょう?」
「いや…いいや。起こしてくれてありがとうな」

ファイヤーに先導されて、朝食の場へ向かう。

「ますたー、おはようございます」
「お早うございます、マスター」
「おはよー!マスター!」
「御主人、お早う。寝坊とは珍しいな」
「あ、ああ…」

…俺の隣にいるファイヤーの顔が紅い。なんかやけに紅い。その視線をたどってみると…

「あ、御主人さま!」
「やぁマスターお早う。今日は寝坊かい?」

…まさか、まさかな。

「なぁ、ファイヤー」
「…な、なんでしょう、御主人様?」
「お前さ、昨日…フーディンやフシギバナと何かあったのか?」

ステーンガタガタブルブルドンガラガッシャーン!!

(な、何だ今のギャグ漫画みたいな謎の擬音!?何の音だ!?)

「なななななな何をおっしゃっているのかしら御主人様!?私は昨日御主人様より早く床に就いたのですわよ!?
 御主人様やキュウコンにもきちんと挨拶したはずですわよ!?」
「あー、悪かった。俺の気のせいだ。忘れてくれ」

…聞かない方が、よさそうだ。

「ところでマスター、ファイヤーはどうするんだい?このままマサラの方へ行ってもらうか、
 それとも手持ちメンバーに加えるのか…」

フーディンがいきなり核心をついてきやがった。
…しかたないな。話を始めるか。

「…捕まえておいて何だが、逃がそうと思っている」
「「「「「「え!?」」」」」」

「今後、俺達はチャンピオンリーグに挑戦するわけだ。もちろん、沢山のトレーナーや観客がいる。
 もしそんなところに伝説の萌えもんを連れていってみろ、ファイヤーは確実に研究機関に奪われて、何をされるか分かったもんじゃない。
 マサラに連れていっても結果は一緒だ。それに、守護者のいないともしび山も危険が高まる可能性が高い。
 このあたりの事を考えて、ファイヤーにはともしび山に残ってもらうのが最善だと思うんだが…」

「…確かに、その通りですわね。分かりました。私はここへ残りますわ。
 その代わりと言うのもなんですが、もしよろしければ御主人様の故郷、マサラまでは私に送らせて下さいませんか?」
「そうだな…頼むよ、ファイヤー」
「お任せ下さいませ」



     *  *  * 


1の島の海岸に、俺とファイヤーが立っていた。ニシキさんへの挨拶も済ませ、部屋も引き払ってきた。

「じゃあ、ファイヤー、頼む」
「分かりました。では、とりあえず私におぶさってくださいませ」

ファイヤーの背中に乗ると、彼女の炎の熱がじんわりと伝わってきて暖かい。

「それでは、飛びますわよ!」

言った瞬間、俺達はもうすでに空にいた。かなりの速度で、地面や海が流れて行く。

「飛行形態をとります。熱くはないですから、安心して捕まってくださいね」
「え?」

轟っ!!

「うぉうっ!?」

突如としてファイヤーの全身が燃え上がり、初めて見たときと同じ火の鳥の姿になる。
この大きさだと、背中に乗っても全然安定感がある。

「それでは御主人様、しばし空の旅をお楽しみくださいませ♪」

火の鳥に乗って、俺達は一路マサラへと向かう。



     *  *  * 


マサラタウンに降り立つと、ファイヤーは即座に変身を解除して人型に戻った。

「それでは御主人様、なごり惜しいですが、ここでお別れですわね…」
「ああ。…まぁ、何だ。寂しかったらいつでもウチに遊びに来てくれ。伝説が来た程度で驚く家族じゃあないからな」
「うふふ、ありがとうございます。…でしたら、これをお持ち下さいませ」

ファイヤーは丁寧に俺の手を握って、何かを手渡してくれた。

「羽根…か?」
「はい、私の羽根ですわ。もしも私の力が必要になった時、その羽を高く掲げて私を呼んで下されば、
 世界のどこであろうと分かります。すぐに駆けつけますわ」
「…そっか、ありがとうな、ファイヤー!」
「ええ。…それではごきげんよう、御主人様」

最後に深々と礼をして、彼女は火の鳥に変身し、自らの故郷へ帰って行った。

しかし、考えてみれば5日間でここまでとんでもない事に巻き込まれるとは思っていなかった。
まぁ、修業としては悪くない旅だったかもしれない。少なくとも、得たものは決して小さくはないだろう。

俺は小さくなっていく伝説の火の鳥を見送りながら、そんなことを考えていた。





     おしまい。



























     あとがき


今回は…まぁ、比較的まともだったはずです。

ファイヤー相手のバトルメインでしたが、いかがでしょうか。

実は僕は、バトル描写はかなり好きなんですよね。

心理描写とかよりこっちの方が楽でいいんです。

…まぁ、うまく書けるかは別問題なのですが。


それでは、また次回にお会いしましょう。

最後まで読んで下さり、本当にありがとうございました。
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。