拝啓、お母様。
「お茶入れてちょうだい。今すぐに」
貴方の息子は、今日も頑張って生きています。
「あつっ!?こんな熱いの飲めるわけないでしょ!入れなおしなさい!」
信頼関係を築くには、忍耐が必要だとよく仰っていましたよね。
「ちょっと、ぬる過ぎるわよ。やり直し」
その言葉を胸に、今日も頑張っているんですが・・・
「不味い。もういいから、ミックスオレ買って来て頂戴。3分で」
そろそろ限界を迎えそうです・・・
ふたごじまにいた、伝説の萌えもんのフリーザー。
多くの萌もんとハイパーボールを犠牲にしつつも、何とかゲットすることが出来た。
が、本当の苦労はここからだった。
食べ物の質について細かく言われたり、マッサージをやらされたり、
タマムシ食堂の1日限定5個のスペシャル弁当を徹夜で買いに行かされたり・・・
とにかく、いいように使われまくった。
その上、戦闘では散々言うことを無視してくれた。
脳波測る機械で、ぜひ俺の脳を見てもらいたい。
爆発すると思う、9割9分本気で。
さすがにこれ以上は耐えられそうにない。
一度ガツンと言うか、そう思いながら、フリーザーを外へ呼び出したわけだが・・
「何の用かしら?さっさと終わらせてもらいたいんだけど」
・・・すごく、怖いです。
一度目を閉じ、深呼吸して気持ちを落ち着ける。
目を開き、こちらをにらみつけるフリーザーをしっかりと見据える。
「フリーザー、そろそろわがままはやめてくれないかな?」
「あら?堪え性のない男、早いのね。」
・・・思わず崩れ落ちそうになった。
男の子に、早いって言葉は禁句だと思うんですよ、先生。
あと、俺は早くない、断じて。
折れそうになった心を必死で立て直し、再度話しかける。
「茶化さないでくれないか?これでも真剣なんだ」
「あっそ」
「俺に不満があるのか?それなら、ちゃんと言って欲しいんだ」
その言葉に、フリーザーはにやりと笑みを浮かべた。
そして、口を開き、
「判断が遅い、相性も考えずに力でごり押ししすぎ、
相性がよくてもレベル差を考えて、冷静に戦闘を組み立てられない、
あと、グズでノロマ」
と、再起不能になるくらいに叩きのめしてくださいました。
フリーザーはしてやったりとばかりに笑い、
こんな風じゃ言うことなんてきけないわよねーとダメ押しを叩き込んでくる。
フリーザーの言ってることは、俺自身も気にしていたことだったので、
反論しようにも出来ない。
言い返せない俺を見てご機嫌になったのか、満面の笑みで再び喋りだすフリーザー。
「それにしても、こんなマスターに使われる萌もんがかわいそうね。」
ぐさり、と聞こえるはずのない音が胸から聞こえた。
「貴方のせいで、あの子達は何度傷ついて倒れたのかしらね?ちゃんと自覚してる?」
歯を食いしばる。
悔しいが、事実だ。
俺のせいで、みんなには多くの負担をかけて、危険な目にあわせている。
だから、俺に反論する権利はない。
「でも、貴方に付き従ってるあの子達も馬鹿よね。マゾヒストってやつ?
貴方なんかを信じて戦ってるなんて、おかしいんじゃない?」
ぶつり、そう確かに頭の中で聞こえた。
そして、気付いたときには、
ぱんっ!!
全力でフリーザーの頬を叩いていた。
「なにを「確かに、お前の言うとおりだよ。」
フリーザーの言葉を遮って告げる。
俺はダメなところばっかりで頼りにならないやつ?
あぁ、全く持ってその通りだ。
「判断は遅いし、ごり押しばかり、冷静に考えるのも苦手だ。あと、グズでノロマさ」
でもな、とフリーザーをにらみ付けながら付け足す。
「あいつらを馬鹿にするな。こんなダメな俺を支えようと必死に頑張ってくれてる。
俺を信じて命を預けてくれる。そんなあいつらを笑うな。」
そうだ、あいつらは俺のかけがえのない仲間なんだ。
だから、
「俺は、あいつらを笑うお前を絶対に許さない。」
そう言って、言葉を切る。
沈黙が生まれる。
そのまましばらくにらみ合いが続いたが、すっとフリーザーが視線を逸らす。
そして、何も言わずに飛び上がると、そのまま飛び去ってしまった。
「あの、ますたー・・」
足元から声が聞こえ、視線を移すとオロオロと困っているロコンと目があった。
「あの、いいんですか・・?ほっといて・・」
「あー、その、頭が冷えたら帰ってくるだろ」
叩くことはなかったかな、とわずかに後悔が生まれるが、頭を振って追い出す。
心配顔のロコンに、大丈夫だと声をかけ、ポケモンセンターへと戻った。
3日後の夜、焚き火の前で座り込む俺の前にフリーザーは降り立った。
「相変わらずダメダメね、貴方。」
戻ってきて早々、ダメ出しをされた。
「何?人にアレだけ言っておきながら、ボロボロに負けてるじゃない」
あー、ばっちり見てたわけですね、あなた。
実のところ、大丈夫と言っておきながら、心配でたまらなくなり、
この3日まともにバトル1つこなす事が出来なかったわけである。
戦績は、14戦14敗。ひどいなんてもんじゃなかった。
「あとであの子達に謝っておくことね」
「うん、分かってる。本当迷惑かけてばっかりだな、俺」
「えぇ、その通りよ。あの子達だけじゃ貴方に振り回されっぱなしになっちゃうわ」
そう言って彼女は苦笑していたが、ふっと真顔に戻ると、俺のほうを見つめてくる。
「あの子達だけじゃ荷が重過ぎるし、しょうがないから私も手伝ってあげるわ」
「そっか、ありがとう。」
「勘違いしないでもらえる?あくまであの子達のためなんだから」
「うん、それでもありがとう」
そう言って、笑いかけると、フリーザーは「全く・・」と、ため息をついた。
その顔は、呆れつつも、どこか清清しく楽しそうな表情をしていた。
「じゃ、俺の番な」
「何が?」
「この間、叩いてすまなかった。女の子に手上げるなんて最低だった。」
「いいのよ、私もあの子達のこと馬鹿にしたんだし」
「でも、やっぱり「あー分かった。分かったから黙りなさい。」
また、ため息をつくフリーザー。
しばらく、目を閉じ考えると、一言、
「立って、目閉じなさい。」
「うい」
素直に立ち上がり、目を閉じる。
同じように頬を叩かれると思って、歯を食いしばる。
・・・・・・・?
いくら待っても何の反応もない。
どうしたんだ、そう言おうとした時、頬に軟らかい感触が生まれる。
キスされた。多分。
予想外の出来事に、思わず目を開けそうになったその瞬間、
「隙ありぃぃぃい!!!」
「へぶっ!!!」
顔面に思いっきり翼を叩き込まれた。
そのまま、俺は後ろへひっくり返り、目を回してしまった。
ただ、意識が落ちる直前、
「これでおあいこよ、マスター」
そんなフリーザーの楽しそうな声が聞こえた。
おまけ
こんな平行世界
「あら?堪え性のない男、早いのね。」
「早い・・?」
「えぇ、全くもうちょっと耐えれないのかしら。早すぎよ。」
「早いと、そう申したのか?」
「え、ちょっと、どうしたのよ、いきなり怖い顔して・・・」
「早いと、そう申したのだな?」
「ちょっと、なんでこっちに迫ってきてるのよ」
「早いかどうか、その身で確かめい!!!」
「え、や、いやああああああ!!!」
10分後、海の真ん中で氷付けになって浮かんでるマスターが発見されました byロコン
最終更新:2007年12月08日 00:42