3スレ>>963


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皆様こんにちは。サントアンヌ号生活3日目のへタレトレーナー(♀)です。

3日目の朝まではサントアンヌ号内にて、清掃作業やその他諸々の
雑用をさせて頂いていたのですが

『 色々と手伝ってくれてありがとう。そろそろキミも船での旅を楽しんできなさい。
  まだ子供なのだから遠慮せずに、気の済むまで遊んでいくといい 』

…という船長さんからの優しいお言葉もあり、ご厚意に甘えさせて頂くことに
なったのです……が……。



「あらあらやっぱり女の子ですわねえ。とってもよくお似合いですわ~」

「ねえねえ、これはこれは~?」

「ああそれは追加の箱ですわ。中身は確か…」

「ダンナってばフリフリの服も似合ってるね!」

「正確にはヴィクトリアンメイドタイプのメイド服ね。エプロンドレスとも言われるものだわ…」

「あらー箱の中身、随分高そうな服じゃない。どうしたのよこんな良いもの?」

「ふっふっふ。働く女の懐を甘く見てはいけませんわよスピアーさん♪」


わいわいきゃあきゃあ。

箱の中身を覗いたり、ひっぱり出しては楽しそうに会話している
アヤメお姉さんと萌えもんのみんな。

私はというと、ちょっと置いてけぼりを喰らってしまったような気分です。
ですが、なんとか口を動かして質問してみました。


「…あのーみなさん。
 ……なんで私、こんなことになってるんでしょうか?」



「「「「「「「 おもしろいから? 」」」」」」」



異口同音とはこのことなのですね。

7人全員、まったく同じタイミングで言ってくれましたよ…… orz






『 ヘタレの奮闘記。サントアンヌ号で着せ替え人形状態編 』






「ほらほらこっち向いてぇ~♪ いち足すいちはぁ?」

「…う、うぐ…」

「ダンナほら、笑って笑って!」

「…に、にー…」


――― ぱしゃっ!


「はーい、バッチリ撮れたわよ~♪」

「それじゃあ次は、コレなんかどうよー!?」

「ああ、良いなそれも!」

「駄目よ、次はコレって約束したじゃない…」

「う~ん、どれもこれも素敵だから迷っちゃうね~」

「あ、コレなんだか厄神サマの服に似てる~!」

「じゃあ次は二ドリーナさんお勧めのソレで、その次がピカチュウさんのソレ。
 そのまた次がプリンさんの持っているソレでよろしいですわね?」

「「「 はーい♪ 」」」


それじゃあお嬢さん、お着替え手伝いますから後ろ向いてー と声をかけられ、
アヤメお姉さんに言われるがままに動いてしまう自分。

無言の圧力というか何と言うか、そんな感じのものに押されてしまって逆らう勇気が沸いてきません…


「あ、あのーアヤメさん。
 このお洋服どこから湧いて出たんですか?なんか山ほどありますけど…」

「何言ってるんですの。貴方もさっき見たとおり、コレは最新の萌えもん空輸のテストもかねて
 運ばせたんですのよ。ちなみにこちらの箱は追加分。なかなか使えるみたいですわね~」

「はあ…」

「――― うん、お着替え完了。次は髪の毛のセットですわね~♪」


せめてもの抵抗として、話しかけることで着替えの手を休ませようとしましたが
それすら何ともないようで、ちゃっちゃか次の服に着替えさせられてしまいました。

今度の服は二ドリーナが勧めてきたもので…ええと、チャイナ服…とはちょっと違うみたいです。
横に大きくスリットが入っているのですが、その下にズボンをしっかり履いているので
あんまり恥ずかしくはありません。

花柄のレースが白い布の上に薄く被っていて、ピンク色の牡丹の花の刺繍が入っている
とてもキレイな服です。
アヤメさん曰く「アオザイ」という名前の民族衣装だそうです。

そしてどこから出したのか、ウィッグを慣れた手つきで私の頭に装着していく
メイドのツチニンさん。

流石メイドさんと言うべきか、あれよあれよという間に私のショートヘアに
可愛らしいお団子ヘアーが装着されたのでした。


「あらーコレもよくお似合いですわね~!」

「うふふ…マスター、キレイよ」

「あ、ありがとう二ドリーナ」

「んむむぅ~~ た、確かに似合ってるわね…。つ、次はコレだかんねヘタレっ!」

「ああちょっと待ちなさいよ!まだ写真撮ってないじゃないの!」

「あうあうあう!ピカチュウさんやめてウィッグはそうやって
 無理に引っ張って取るものじゃないってばぁーーー!」

「次はピカチュウの選んだドレスっぽいワンピースでー」

「その次が私の選んだ厄神さまね~」

「正確にはそれ、ゴスロリドレスっていうんだけどね…」

「まあとにかく、まだまだあるから頑張っていこうぜマスター♪」

「アンタいっつもズボンに長袖シャツだから、何だか新鮮で楽しいわ~」


振り向けば全員笑顔、笑顔、笑顔。

そりゃあもうみんな良い笑顔をしていましたが、何故でしょうか



「…ひいいいいいいやあああああああああああああああ…!」




……その笑顔に捕まったら最後、もう引き返せないと感じたのは……





++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++





「――― ぜ、ぜー、ぜはー…や、やっと抜け出せた…!」


萌えもんの皆&アヤメさん、そしてツチニンさんの合計8人の包囲網から
なんとか抜け出すことに成功し、人気の無い廊下のすみっこで一人息を切らす自分。

まだ着替えさせられた格好のままなので、事情を知らない人に見られでもしたら
大いに怪しまれること請け合いです。
怪しまれるだけならまだしも、通報沙汰にでもなったりしたら大変なので
とにかく気配をころし、時が過ぎるのをひたすら待ちます。


「はぁ…何だってまた皆、しかもアヤメさんまであんなことに熱中して…
 そんなに人を着せ替えさせるのが楽しいのかな…むぅ…」


みんなの嬉しそうな顔が見れて、私も悪い気はしなかったけれど…
やっぱり何と言うか、恥ずかしさが抜けきらないというか。

いつも男の子みたいな格好をしている理由も、変な大人に攫われたりしないようにと
(R団に一度拉致されましたが)
お母さんに提案されたのを実行しているだけじゃなくて、自分自身女の子の格好が
似合わないと思っているからであって。

…長年他人にバカにされ続けてきたせいか、自信喪失も甚だしい自分。
でもいわゆる女の子らしい服装は、お前は世の中の女性全員を敵に回す気か ってなくらい
私には似合わないと思う。


でも、

何でだっけ どうしてだっけ。

私が、女の子の服が嫌いになったのは。





――― ごそり


人のいないはずの廊下から、いきなり物音が聞こえてきました。

まさかもう皆に見つかったか!? と盛大に焦りましたが、どうやら違う模様です。
こう、泥棒みたいな感じでこそこそした気配するのです。

そーーっと物陰から、物音がした方向を覗いてみます。

視界に飛び込んできたのは、黒地に赤で大きく「R」と書かれた服がみっつ。

…そんな分かりやすい特徴を忘れるほど、私もボケてはいません。


(ろ、ロケット団…!?)


そう、オツキミ山やハナダシティで私たちを苦しめた犯罪結社(?)
ロケット団が、何とサントアンヌ号に乗り込んでいるではないですか!


(ど、どどどどーして何でまたサントアンヌ号に…!?)


事情は良くは分かりませんが、わざわざあんな目立つ格好で乗り込んできたのです。
きっとまた、良くないことを起こしにやってきたに違いありません…!


どうしようどうしよう…!


――― ひとしきり悩んだ後、何とか結論が出ました。

部屋から逃げて置いてきてしまったから、こちらの萌えもんはゼロ。
でもこのまま放っておいたら、船の中の人たちが大変なことになるのは必至。
…ならば…


「ま、ま、待ちなさいロケット団の皆さん!」


自分は生身の人間とはいえ、声ぐらいは出せるし騒ぐことくらい出来る。

ならば可能な限りロケット団の注意をひきつけて、なおかつ周囲の人たちに
感づいてもらえるまで騒げば、きっと警察を呼んでもらえるなり何なり、何とかなるはず…!

という結論を脳内で出し、決死の思いでロケット団の前に姿を現したというのに。
ロケット団の皆さん全員、まるで氷付けになったみたいに固まってしまって。


「「「 ……… 」」」

「? な、なんですか?いきなり固まっちゃって…」

「いや」

「その」

「なあ」


「「「 …なんだってまた、こんなとこにシスターが… 」」」



そう 忘れてました。

自分は、さっき着せ替えられて…修道女の格好をしていたということを…




「………うわあああああああああああん見るなバカぁああああああああああああ!!!」




数秒の重い沈黙のあと、その場には私の絶叫とロケット団を殴打した音が響き渡り

一応は私の目論見は成功したみたいでした。



……大いなる恥をたくさんの人に見られた という代償つきで、ですが…… orz




+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++




「…………」

「もー、ダーンーナーぁ。
 せっかくのパーティーなんだしさ、そろそろ機嫌なおしてよー」

「そうそう、それに船長さんがパーティーで直々に
 感謝状送りたいっていうらしいしさ。
 ヒーローがそんなむくれっ面じゃあ、盛り上がるものも盛り上がらないぜ?」

「……わかってるけど…せめてこの格好だけは……」

「はー…アンタねえ、こんなお金持ちの集うパーティーに
 いつものあの服で参加するつもりだったの?」

「悪いけれど、それはマナー違反よマスター」

「そうそう、TPOっていうの?
 その場にふさわしい格好をしていないっていうのは、とても失礼なことなんだよ?」

「いいじゃないの、似合っているんだから!
 安心しなさいよ。アンタ自身がどう思おうと、アタシの目にはアンタは綺麗に写ってるわよ!」

「そうそう、似合ってなかったらここにいる全員で止めてたって」


今は夜で、ここは船内のパーティー会場。
ロケット団を何とか無事に捕まえてもらって、事なきを得た昼間から随分時間が経ちました。

私はただ騒いだだけなのに 船長さんったら大げさで、私に感謝状を渡したいなんて言い出して。

お陰で(?)本来なら参加なんかしなかったはずのパーティーに参加することになって…


……こんな、高そうなドレスを着せられる羽目になって……



「あらまあ、お嬢さんったら。こんな素敵な夜に何をむくれることがありますの?
 それとも、そのお召し物がお気に召しませんでした?」

「あぁ、いえその、そういう訳ではなくて、ただひたすら恥ずかしくって
 …ってアヤメさん!? そ、その格好は…」


昼間の続きのごとく、私を綺麗な服に着せ替えたアヤメさんの声が聞こえて
あわてて振り向いてみたら

アヤメさんったら、とっても女らしい細身のお姉さんだっていうのに
その身に纏っていたのは煌びやかなドレスではなくて。

まるで宝塚の男役のひとみたいにかっこいいタキシードで ビシッ!と決めていて
……同じ女なのに、思わず見とれてしまいました。


「ああ、コレですか? うふふ、貴女だけおいてけぼりにするわけには
 いきませんからね。私も着慣れぬものを着てみることにしてみましたの
 …似合いません?」

「っい、いいえ、いいえ全然! 全然似合ってますよ!!」

「ふふ、それなら良かった…
 ねえお嬢さん、貴女が女の服を嫌う理由…よかったら教えていただけません?
 別に似合っていない訳でもないのに、勿体無いですわよ…」


口調はいつも通り、人の一歩先を進むような印象を受けるものなのに。
この時のアヤメさんの目と声は、とても真撃なものを感じました。
なんというか、嘘をついてはいけない目、というか…。


「理由、ですか……そうです、ね。
 強いていうのなら…馬鹿にされるから、でしょうか」

「馬鹿に、される?」

「いやその、アヤメさんや皆は馬鹿にしていないことは分かってます。
 …周りの人たちが、笑っていると、私の格好を馬鹿にしてるんじゃないかなあって…
 そう思ってしまうんです。
 
 私、そういう環境で育ったせいなのか…
 どうにも自信が持てなくて、女の子の格好が苦手になっちゃって…」

「まあ、何て無粋な輩どもなんでしょう…!」

「ありがとうございます。でも、私」


言葉を続けようとして口を動かそうとしたら、その口をアヤメさんの細い人差し指で
塞がれてしまいました。

アヤメさんはというと、真撃な光を宿した両目で私をまっすぐに見つめて


「いいこと? 私、見込みもない者に構う暇は持ち合わせてませんの。
 こんど貴女自身が貴女のことを卑下したり、他人が卑下しようものなら
 その口、掻っ捌きに参りますわよ?」

「…!」

「それに、ねえ。
 貴女を好いている人は、貴女が思っている以上にいらっしゃるはずですわよ?」


怒った顔に見つめられていたかと思えば、次の瞬間にはアヤメさんは
いつもの優しい笑みに戻っていて。

何気なく後ろを振り返ったアヤメさんにつられて、自分もその視線の先を見てみると
そこには笑顔の船長さんや、たくさんの乗客さんたちが立っていました。


「いやあ、あの悪名高いロケット団を退治してくれたのが
 こんなに可愛らしいお嬢さんだったとは」

「本当にありがとう。あなたのおかげで、航海を無事続けることができたのよ」

「パーティーを始める前にそろそろ、表彰式を行いたいんだ。
 お嬢さん、すみやかに終わらせるから、お願いできるかい?」

「…ね? 言ったとおりでしょう?」


向けられる視線は、すべて 笑顔、笑顔、笑顔 ―――。

でも、不思議と怖くはありません。

昼間は、あんなに怖く感じたというのに。



「ほーらっ、何やってんのよ!」

「早速ご指名がきたぜ?」

「ここで応えるのが女ってもんでしょうよ♪」

「ダンナ、いってらっしゃーい!」

「私たち、ここで見てるから…笑顔、忘れないでね」

「カメラでばっちり撮ってるよ~!」

「…う、うんっ! 行ってくる!」

「ああお嬢さん、後で私と一曲踊って下さらない?
 私、明日で船を降りてしまいますの。だから…」

「はいっ! 上手く踊れるかはわかりませんけど、それでも良かったら!」



船長さんに連れられて、表彰式を行う場所へと向かう。

たくさんの視線が突き刺さって、とても緊張してしまったけれど
怖さはあまり感じなかった。

それはきっと、アヤメさんが教えてくれたように


私を好いている人が、思いのほか多かったからだと 私は思いました。
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