4スレ>>24


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

毎度のことだから慣れているが、私はこの荒野に舞う土の匂い、草の匂い、そして血の匂いをその身に纏った
風をこの身体に浴びると興奮が抑えられず、高揚をこの手に持つ二本の槍に託し敵を穿つ命運の星に生まれた。
怒号木霊す、空が見下ろすこの大地のもと、天候は矢の雨、それ降り注ぐその戦場という名の舞の披露目にて、
私は誇り高き一人の将を冠し、背負いし運命を全うする者也。
咆哮は咆哮と交わり陣は陣と交わる、そこに儚くも誇り高き戦士の魂を華々しく散らす様はまさに、
今という時を象徴する戦煩う群雄割拠の時代。私も命、戦にて散らすと覚悟を掲げた身故、今日もまた、
守るべき国の為、そこに暮らす民の為、それらを育む君主の為に、流し流される鮮血の飛沫に身を投じる。

「我が軍旗に恐れを嘶く者は道を空けよ!我が軍を貫ける矛はこの世に無し!
我は美蜂が誇りし一騎当千の将――ラスピアス!…名を知る者は武器を棄て、自らの国へ還るがよい!!」

そこに矛と矛は交わりあうことを知ってか否か、野生に生きるものたちは戦の舞台から降り始め、
祭りの後に横たわる躯を狙うか、野鳥達は舞台の上を空高く飛び回る。
二つの大きな山の合間に沈む、西の空で静かに燃え上がる陽は、未だ沈むには早すぎる。
そして――草花を撫で木々を揺らす、舞台に吹き荒れる幾重にも香りを乗せた乾いた風は、
私の腰にまで達せんと伸びた銀の髪を、結って重くしたことなど気にも留めずに持ち上げ揺らす。

「美蜂の旗を掲げし喜びと誇りを決して忘れることなかれ!命を惜しむ必要など微塵もない!!
皆の去り行く魂は我が美蜂の下、英霊として永遠に刻まれるであろう!我らの名誉は、
我らが美蜂の栄華にあり!!槍を構えよ!向かい来る敵をその槍の下に屠るがいい!!いざ!!」

それは戦の為に生まれた命であり、戦の為に散る命。ここにいる幾千の戦士達は、私の命運を共にする
者であり、又導く者であり、又抱く者である。そこに散る花弁を私は――拾い上げ空へと還す事はできない。
それでも…そんな私でも、共に荒野を歩み、共に記憶を刻み、共に戦に散り行くことくらいは――できる。

 -+-+-

北には巨大な山脈を臨み、西には広大な湖が広がる大平原に都は聳え立つ。
目には城下町の様々な歓楽が、鼻には花と蜜の甘く芳しい香りが人々を迎え入れる。
周りに水路を構え、その上に建てられた黄金色の城――通称『蜜の城』と呼ばれている、
その香り高き国は、美蜂――蜂の国の名称――の本丸である。

「……作戦は以上だ。直ちに戦闘準備を進めよ。」

美蜂周辺の国々は、もともと一つの大国であり、自然の美しい様を称え『理想郷大和』と呼ばれていた。
人々は平穏な暮らしの下、互いに協力し生活していたが、ある時に起きた民族間の戦争により、
そのまま現在の各国へと分解され、耐えることのない戦争の下今もいがみ合うような因果となったのは
人々の記憶が色褪せるほど昔の出来事である。
軍師の話により、その場での作戦会議は終了した。現在美蜂が敵対している国――『大和熊宮』は、
理想郷大和の正当な後継であることを主張し、各国をつぶしに掛からんと襲い掛かる大国である。
国土差は美蜂の約七倍、兵力差においては約十一倍とも言われ、有能な将が仕官しているとも聞く。
そんな大国を相手にしているんだ、戦の前のこの震えも私が未だ生きているということを思い知らせてくれる。

「……ビークイン様……?」

いつも真新しい高貴な紫色のカーペット敷き詰められた廊下を歩き、会議室から進み突き当りを左に曲がると
水空高く湧き出る泉を中心に華麗なる草花が咲き誇るテラスに差し掛かる。
そこに草花を愛でるは私の君主…美蜂の国が誇りし象徴――ビークイン女王陛下。麗しきその後姿に私の
両の眼は奪われ、急かす足を思わず止めさせた。

「……! ラスピアス?」

振り返り私の姿を捉えたかと思うと、陛下はにこりと微笑む。その笑顔に魅せられ私も微笑むつもりであった、
しかし悲しきことか戦を前にして、顔は引き攣り陛下に無礼な顔を見せてはいないか不安な限りだ。
そのようなことを申したのがそこまで可笑しかったのだろうか今度は陛下、小さく吹き出して
堪えきれない様子で腹部を抑え、笑い高らかに空を仰ぐ。

「そんなに緊張してしまって……駄目じゃない。」

私との距離を自らの足で縮める陛下は、呆然とする私の目の前までやってきて、御世辞にも綺麗とは言えない
がさつな私の頬に両の手を添えた。…頬が熱を帯びたことは私にも覚えあったがまるで、壁に張付けられた
かのように、私の身体は自らの純情に耳を貸さず、動くことはなかった。

「ねぇラスピアス、兵達の前であなたがそんな顔をしていては、彼らを困らせるだけではなく、
戦にも勝てずに果ててしまうわよ。…今のあなたの顔は、みっともないわ。」

――それは陛下にこんな距離で見つめられているから…などとは口にすら出せず、私は只々陛下の言葉を
心の中へ刻み込むことしかできず、意識をかろうじて繋ぐ程度の事しかできなかったことが情けなく思う。
しかしながら陛下の言葉だけは素直に私の体の中へと入ってくる。

「絶対に…戦場にその悲しげな瞳だけは持っていかないで。…そして不安な顔を見せていいのはこの私にだけ。
何時どこであっても、あなたは一人の将として振舞うことよ。それを約束して頂戴。」

私と陛下の間を駆け抜ける甘い蜜の香りを運ぶ風が駆け抜け、そのひと吹きを間に置いた後、
私の顎は無意識に下り相槌を打った。聞きたくもない心の臓の音が、この時ほど早まったことはない。
陛下は満足したような微笑で返してくれた。そして添えた手を収め、徐に踵を返し私に背を向け歩みを二つ、
三つほど私から離れた後に、再び踵を返し私に向き合い、その深き青、吸い込まれるような瞳が私を捉えた。

「…どうして貴方は戦士になってしまったの?百程の子を孕み、種を未来に植えつける事が私たち女の役目。
それを貴方も知っているはずなのに……」

……言葉ほど悲しみは、ない表情。陛下は微笑みながら私に問いかけてきた。
私たち蜂の女どもは、陛下の仰るとおり子を孕むことこそ真違わぬ役目である。女王陛下に至っては、
かれこれ五十を超える子孫を残している。王位を継ぐのは女子であり、現在三十三位まで王位継承権を持つ
子供を抱えている。私たち一族の言葉に、『百八つ魂を分かつ』という言葉がある。
この言葉が意味するところは、"女の命は百八の種をこの世に蒔いた時、尽きる"という言い伝えからできた。
それはあくまでも言い伝えであり、最も多くの子孫を残した陛下の先代は、百二十一であったが――

「私の家柄は……戦う世運のもと、王家に仕えて参りました故――」

ラスピアス一族――それは王家の剣となり盾となり、王家の為なら命でさえ平気で棄てる家系、その家柄の
娘である私は、この世に生を受けたとき、女だと聞いた落胆の声と共にこの城へやってきたという。
どれほど良家であっても、その役割は男のものだった。期待の目は皆無に等しく幼少期の私は異端扱いされ、
時に迫り来る逆境に揉まれながら、それでも私は戦士となった。……女であることを棄てて。

「貴方の家柄なんてどうでもよき事。貴方には兄も弟もいた。それでも尚、貴方は私の剣になった。」

その通り、ラスピアス一族には将となるべき男子はいくらでもいた。期待と羨望の眼差しを向けられ、
優秀な武術の成績を残し、将来をほぼ約束された兄がいた。それでも兄は将になることはなかった。
私がいたからだ。
彼の力を大幅に上回る能力を私は兄の二倍以上の努力の末に手に入れ、その実力が認められたのは、
つい最近の話である。優しい兄は自らの将来の座をあっさりと私に譲り、私の下へと仕えた。
何故兄は私に将の座を明渡したのか定かではないが、身内を蹴落としてまで達成した悲願の夢に、
私は呑まれてしまったのだろうか、いつも重圧は付き纏い離れることはなかった。

「戦士に……なりたかったんです…。」
「兄を蹴落としてまでね…その理由を、あなた自身の理由を私は訊いているのよ。」

穏やかな微笑みは変わることなく、陛下は私を宥めているかのようにも見えた。
そんな笑顔が、私の心の奥底にしまわれていた、私の全てを解き放ったのだろうか。
今ははっきりとした視界が広がる。

「この戦乱の世に、平和をもたらす為です――」

その為になれるのであれば…私はこの命すら惜しくない。これが真のラスピアスの系譜なのだろうか。

「嬉しいわ。私と同じ志を持つ将だなんて。」

それはわからないけど、少なくとも…今目の前にいる者を護りたい、それは揺ぎ無い決意であったと思う。
何故だろうか、戦の前の例えようのない体中の震えが、この時を境に急に途絶えたのは。

 -+-+-

……。
空からは、矢を深々とその身体に突き刺した鳥の骸が降りはじめ、戦場を駆け抜ける乾いた風の、
血の臭いは濃さを増す一方であった。この刹那にも、眼前の戦士達はその命を散らしつつある。
この情景を次の代に伝えたくもない今の私にとって、それは心を抉る様な痛みでもある。

「ラスピアス様!ご命令を!」

状況は芳しくない。伝令の旨を聞き終えた私は、二本の槍を天高く掲げた。

「本隊はこれより突撃を敢行!皆の者、我に続くがよい!旗を掲げよ!そして謳え!」

戦う理由。それが今の私にはわかるから。


「美蜂が誇りしヴァルキリー・ラスピアスはここにありと!!!」


- 完 -



-+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+-+--+

さて今回の読みきりいかがだったでしょうか?遂に原作と全然違う舞台を用意してしまいましたがw
まぁあれです、いつもどおり広いお心で勘弁してくださいねw
独自設定が入っているので、以下はその用語をご説明いたします。


◇ラスピアス

鹿氏パッチで導入された酢飯氏原画の彼女です。導入に関して様々な声があったようですが、
ここは一つ、別にいいんじゃない?ってことでいろいろな意味で突っ込みの方はご容赦をお願いします。
個人的には好きですよラスピアス。初見でVPのレ○スを思い浮かべたからこんなの書いたとかそうでないとか

◇美蜂 (びほう)
ビークイン女王が治める旧理想郷大和の地方国家。虫娘達の国だと思ってください。
敵対国として現在は大和熊宮と戦争の真っ只中。

◇大和熊宮 (やまとくまみや)
主に獣系、リングマとかラッタとか、グラエナとかそんな感じの種の娘達が築き上げている国家。
旧理想郷大和の都を保有してることから自分達が正当だと勝手な言い分をつけて周辺諸国と戦争中。

◇理想郷大和 (りそうきょうやまと)
美蜂、大和、そのほか周辺国の地域を昔統一していた国家のこと。
まさに理想郷らしいです。よくわかんないけど。


残念なことにたくさん設定しておいてこれ、 読 み き り なんですよね。
もうマジで設定丸投げ、伏線無視wwwしかし前々から書きたかったことが書けて満足。
反省はしてます。後悔はしてnry
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。