私達は現在漂流しています。
何故? サントアンヌ号があっさり氷山に激突し沈没してしまったからです。
それはタイタニックだろうって? あったのだから仕方ないです。
そもそも南国のフロンティア行きで何故氷山に……。
そんな疑問は簡単に解決できました、ロケット団にシージャックされていたのです、いつの間にか。
お陰でシンオウ行き・途中爆破下車なんていう事になったわけ……なのです。
―――
一面に広がる海面、流氷、そして、船の残骸と共に流れる1隻の救命ボート。
「鬼火程度ならいくらでも出せるけど……いい加減寒いわ。」
私が愚痴を言いたくなるのも当然よ。
北海のど真ん中にボートで漂流する4人なんて身も心も寒くなるわ。
「わふぅ~。」
ハピナスの胸元でもこもこしてる毛玉にはきっと寒さは物の数じゃないのでしょうね。
「もう少しで陸が見えるはずです、我慢してください。」
地図と方位磁石を使い大体の現在地を特定したハピナス。
この程度メイドの嗜みです、だなんて普通のメイドはそんな事できないわよ。
「ふかふかだ~。」
「きゃ、ちょっとガーディちゃん何してるの、だめです、そんな所……。」
無邪気に服の元に入っていく毛玉。
ハピナスも災難ね、でも暖かそうかしら。
「……煙草が切れる。」
――煙草程度でぶちぶちと……本当に緊張感の無い……。
まったく、食料が2日分しか残ってないとか、流氷で沈没するかもとか、
ボートの周りをポッチャマが泳いでるとか、悩む事はいくらでも他にあるでしょうに。
「……は?」
ボートの周りを無数のポッチャマが泳いでいる。
いつの間にか風が強くなったと思ったらこの子らがボート押してたのね。
「あなた達いつから? っていうか、どうして押してるの。」
一番近くに居た小さなポッチャマを摘み上げて聞く。
毛玉より小さい上に軽いから一人ほしいわね。
「お船を見に来たらぁ、なんだか死にそうな人達がいたから助けてるだけなの。」
――死にそうとかあっさり言われると……。
―――
ポッチャマ達に牽引されて程なく到着したのは一面の氷河。
ちらちらと舞う粉雪は北の地を際立たせ、しかし寒さをも忘れさる美しさを誇っている。
風に舞う雪の先にそれとなく点在する小ぶりのかまくら、白い煙は暮らす者の居る証。
白と青に染まる風景に溶け込む萌えもん達。
ポッタイシやエンペルト、ポッチャマの進化系だけと思えばさに非ず。
凍てつく水面をその身で下し、優雅の美にて完成された絵画の如き者、ミロカロス。
温和な愛くるしい外面、しかし後に威厳を持った猛々しい容姿を持つにいたるタマザラシ。
純白の髪をなびかせ静かに日を浴びるパウワウ、ジュゴン。
暖かな場所に生まれ育った四人はこの絶景に圧倒させられている。
まさに北海特有、他の海にはない特色ある面々をここに見る事が出来た。
「ここが私達の集落なの。」
テコテコと体を左右に揺らしながら歩くポッチャマ、その後ろに続くのは言わずと知れた狐達一行。
煙草が切れたのかマスターは手持ち無沙汰に、おそらく旅を開始して初めて自前で用意したモンスターボールをもてあそんでいる。
「明日まで待ってくれれば近くの陸地まで送れるの。」
狐達一行を助け、狐に摘まれたポッチャマの少女は話しながら一際大きいかまくらまで歩いていく。
周りの萌えもん達も何故だか少女を見るや、道を開け静かに傅く有様である。
それはまるで……威光を示し民衆を下す王者のような。
――そういえばボートを牽引する際も先導して……。
唐突に破砕音の様な轟音が響く。思考を断ち切った音源に目を向けると……。
「入って。」
蹴破るよう乱暴に扉を開け、――その暴挙にもまた唖然とさせられたが――中に招き入れる少女の姿。
内部は広く人間の大人が立ったまま10人は軽く並ぶ事ができるだろうか。
広い内部に反して、装飾は少なくまったくと言っていい程飾り気は無かった。
明かりは雑に置かれたランプ、暖を取るのには中央の七輪。
隅に大量の魚が積まれているのが彼女の種族をよく現しているかもしれない。
「……まずは礼を言わせてもらう、救助に感謝する。」
「大した問題じゃないの。」
何故か氷河の露店にて販売していた地域限定煙草を咥え、火はつけずとも上機嫌に礼を述べるマスター。
彼女はそっけなく礼すらもいなし、氷の塊にしか見えなかった冷蔵庫から水を取り出し薬缶に注ぐ。
海上の氷河では真水は貴重である、という話をここまでの道行きで聞いていた。
「少し聞いてもよろしいですか?」
もはや最近では敬語なのかすらも怪しいハピナスが少女に向かって問う。
どこからか茶葉を取り出す辺りが、メイドとしての謎ポケットを抱えていると、狐が後に断言したりするがそれはまた別の話。
外での寒さの影響を微塵も出さない立ち回りが訓練された生粋のメイドとしての彼女のプライドを感じさせる。
「答えられる事しか答えなくてもいいのなら。」
そう答えるポッチャマの瞳は何故か冷徹な眼差しを宿していた。
―――
あとがきでもういいよね?
久しぶりに書いた挙句実験的に説明描写など入れてみた。
gdgd感が拭えないので吊って来ます。CAPRI
最終更新:2008年01月12日 23:31