4スレ>>85


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「なぁ、坊よ」
「ん?」
ここはセキチクシティの萌えもんセンター。
主力で使っている六人――フシギバナ、キュウコン、カイリュー、ピカチュウ、グレイシア、ピジョット――以外にも
俺はたくさんの種類の萌えもんを育てている。
だから俺は、一緒に旅をしている間だけでは皆との深い信頼関係は築けない、と思っている。
そのため、俺は萌えもんセンターで一人一人と会話をするのが日課となっている。
ホウオウも、ボックスに預けられてからはこうして俺と会話をしている。
ホウオウの方もボックスでの生活はそこそこ快適で、他の萌えもんともかなり打ち解けているようだ。
ルギアが姐御、ホウオウがお嬢、と呼ばれているとボックスの萌えもんから聞いたときは本気でずっこけたのを覚えている。
と、かなり馴染んでいるお嬢ことホウオウだが、やはり不満はあるようで。
「他の皆はよいのぅ。妾は坊と旅をする事はかなわんというのに……」
ホウオウの言葉に思わず苦笑してしまう。
それについてはボールに入る前に散々言ったのだ。
伝説の萌えもんである二人を連れて歩く事は出来ない、と。
二人はそれを快く了承したのだが、やはり大空の守護者であるホウオウにとっては辛いようだ。
「……そうではない」
拗ねたようなホウオウの呟きにクエスチョンマークを浮かべる俺。
ってかお前もエスパーか?
「妾は炎・飛行じゃ。――そうではない、坊は顔に出やすいのじゃ」
妾は坊をいつも見ておるからの、と赤面させてくれるホウオウ。畜生、照れるじゃないか。
「また、えらく甘い雰囲気を作ってるわね」
ひょっこりと顔を出したのはフリーザー。
相も変わらないぶっきらぼうな態度に苦笑してしまう。
その苦笑で、フリーザーの機嫌がますますピサの斜塔よろしく傾いていくのも、最早お約束だったりする。
このやり取りにボックス内から含み笑いが多数聞こえる。
ボックスの中に居る萌えもんにとって、このやり取りは日常茶飯事なのである。
「ほう、羨ましいのかフリーザー」
ニタァと口の端を吊り上げてフリーザーと向き直るホウオウ。
からかっているのは傍目にも明らかなのだが、このような状態に陥ったフリーザーはどうにも脆い。
あっという間に頬に朱が差し、思考の回転が悪くなる。
そして、人を弄るのが大好きな娘達――キュウコンが筆頭なのは言うまでも無い――の格好の標的に成り下がってしまう。
普段は隙がないクールビューティ――もっとも俺はそんな顔を知らないのだが――らしいので、この時間だけが彼女が隙を見せる
僅かな時間だそうだ。
泣き虫な一面を持つとはいえ、流石にそれを見逃すホウオウではない。
「べ、別にそんな訳じゃないけど……」
ここでチラリと俺に一瞥を遣すフリーザー。
何だ? と言わんばかりに首を傾げると、フリーザーの頬に差している朱の質が変わった気がする。
言うなれば――
「この朴念仁が」
――羞恥から憤怒へと。
この移行には正直参った。
氷の女王であるフリーザーだが、俺からしたら激情の塊だ。どこをどう見たらクールビューティになるのかぜひ教えてもらいたい。
個人的にはファイヤーのほうがクールビューティに相応しいと思う。あの二人、タイプを偽ってるんじゃないだろな。
あの二人を纏め上げているサンダーの苦労を思うと涙が止まらない。
そんな俺の思考を読んだかのように、フリーザーのいかりのボルテージはぐんぐんと上昇していく。
……いかり、なんて覚えさせてたっけ?
恍けた思考を回す俺を呆れたように見つめる二つの視線。
「そこが朴念仁と言われる所以なのじゃよ」
やれやれと首を振るホウオウと、
「ま、それが少年の少年たる所以だろう」
いつの間にやら奥のほうを陣取り、ニヤニヤとしているルギア。
相も変わらないその神出鬼没さに敬意を表しつつ、俺はフリーザーを必死に宥めるのであった。


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「有名なのも些か困り物だな。
 そのせいで慕っている人と離れ離れになるのは、堪ったものではないからな」
ふぅむ、と考え込んでいるルギア。
さり気なく爆弾を投下しているのだが、俺はスルーする。触るな危険。
「何せ、ホウオウ、ルギア、といえば伝承にも名が残るビッグネームだしなぁ。
 知名度ならミュウやセレビィ、カイオーガにグラードン、レックウザともタメをはるからな」
そうすると、ミュウの名を冠するミュウツーを使用したのは早計だったかもしれない。
ミュウツーに人間がどんなものかを教えるために連れ歩き、トレーナーとのバトルも経験させたのだが……。
などと、自分の行動を振り返りながら、二人の事を思い返す。
方や天空の守護者と謳われ、虹の麓に住むとされるホウオウ。
方や深海の守護者と謳われ、深層海流に乗り世界を回遊するルギア。
その両方がその伝承に違わない絶大な力を誇っている。
となると、普通のトレーナーとの勝負で使うわけにはいかないのだ。ただのイジメになってしまう。イジメカッコワルイ。
さらに言うならそのビッグネームも俺の躊躇いを生んでいる。
伝説を使役する者は過去にも居たらしい。
過去に起こった戦争を止めたのも数代前の伝説の萌えもんを使役していたらしい。
そんな背景もあるから、非常に連れ歩きにくい。
「私達の名が売れているのが問題ならば、いっそ名前を変えればどうだ?」
ルギアの正気を疑うような発言に俺は閉口する。
「いやな――」
「おお、それは名案じゃ。そうなれば妾らも坊と共に在れるではないか」
お前ら目立つだろ、という意見を言う前にホウオウに遮られる。
「だから話を――」
「差し当たっては偽名を考えなくてはな。幸い、人間の中には萌えもんに名前をつけることを生業とする変人が居るという」
名前をごまかしても無駄だという事にこの二人は気付かない。
いや、敢えて目を瞑っているのかもしれない。
二人の視点は完全にそこに絞られている。
更にそこに加わるレジェンズ――
「ほう、その話、私も噛ませて貰おう」
「ほら、フリーザー、折角のチャンスだろ?」
「うう、なんか納得がいかない」
「マスターと共に旅――。なんていい響きだ」
わらわらと湧いてくる伝説と称される面々。
いや、お前ら盲目過ぎるだろ。
ミュウは本質を理解しているのだろう。付き合いきれない、と辟易している。
嗚呼、俺の味方はお前だけだ。
俺とそんなに旅をしたいのか、議論は紛糾していく。
最早、女三人寄れば姦しいどころの騒ぎではない。
当然のことながら俺が話を差し込む余地は当然無い。
パソコンの前でどうしようかと悩んでいる俺を尻目にどんどん議論は過熱していく。
「やはり、人間の名に近いほうが主に親しみを込めてもらえるであろうか」
「それは言うなれば『トモコ』とか『アイ』とかか?」
「人間的過ぎてもだめだろぅ。あくまでもアタシ達は萌えもんなんだよ」
「たしかに、キュウコンやフシギバナがそう呼ばれているのに私達がそうのようでは、マスターもやり辛いだろうしな」
「やっぱ、元の名前を捩った方が良いのかしら?」
「ならばお主は『フリー』か?」
「いやよ。蚤じゃないの」
fleeの方か。
などと考えているあたり、俺は考える事を止めたようだ。
もう、どれだけ話しても無駄だという事は目に見えている。
俺は助けを請うようにミュウを見つめた。
暴走すれば手の付けられないレジェンズの、唯一の良心。
俺と目が合ったミュウは軽く溜息を吐いてニッコリと微笑んだ。
俺の目にはそれが聖女の微笑みに見えた。
「さて、そこまでですよ」
ボックス内でフラッシュを使用するミュウ。それは当然パソコンの外に漏れるわけで。
「目がぁ~、目ぇがぁ~」
と、一人ムスカごっこをやっている俺を華麗にスルーして場を鎮圧するミュウ。
あまりの手際の良さに脱帽する俺。手馴れてるな。
「いい加減になさいな。彼も困って地に伏しているでしょう」
蹲っている俺に視線を移してミュウは言った。
まぁ、蹲っているのはフラッシュの影響なんだが。
「さて、伝説もあろう者が本質を見失ってどうしますか?」
あまりにも珍しいミュウの一喝。
「名前を変えても溢れ出る力は隠しようがありません。
 いい加減に気付きなさい」
ミュウの一言で、ああ、と手を打つダメダメレジェンズ。お前ら、本当に気付いてなかったのか。
しかし、そうなると流石にボックスの中に居るままは可哀想だ。
しかし、連れて歩ける数には限界がある。
ならばどうするか。
俺の出した結論は、単純明快だった。


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現在、俺の腰にぶら下がっているボールは六つ。だが、一つは空だ。
なぜなら――
「坊よ、妾は空腹じゃ。何か食べるものをくれんか?」
こういうことだったりする。
日替わりで一人ずつ、俺のボールの六番目に入り、各々が満喫する。
空を飛び回って気まぐれに俺の下へとやってくるフリーザーみたいな奴や、
俺と四六時中一緒に居たがるミュウツーみたいなタイプなどだ。
ちなみにホウオウは俺の上空を旋回している。
だから、ホウオウが出ているときは、俺のいるところの空には常に虹が架かっていたりする。
俺のこれからの日常は伝説を含めた大切な仲間で埋め尽くされるのだろう。
だが、そんなのも悪くない。
「坊ぅ、無視をするでない」
ホウオウには悪いが暫しの感慨に耽らせてもらおう。
だが、流石に涙目のホウオウは無視できないか。
ホウオウの頭に手を乗せ、空を仰ぐ。
ああ、今日も虹が綺麗だ。

――了――
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