4スレ>>145


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「ヒトカゲ、秘密兵器の準備はいいな?」
「はいマスター」
 自慢の爪を擦りあげる音でヒトカゲは応える。
 目の前にはニビシティジムリーダー、タケシが仁王立ちで二人を見据えていた。
「まさかほのお萌えもんで挑戦してくる奴がいるとはな。
 面白い、俺のいわ萌えもんの力を存分に味わっていけ!」
「属性優位に立ってるからってあまく見るなよ。いけ、ヒトカゲ!」
「はい!」
 勢いよくバトルステージに飛び出すヒトカゲ。
 元来臆病な彼女にとって、いわやみずといったほのお萌えもんの天敵に立ち向かうなど、
考えただけで足がすくんでしまう。
 しかし、この時だけは違った。ヒトカゲのマスターが呟いた秘密兵器に自信をもっていた。
 ―――これさえあればもう怖がることはない。
 ―――わたしを選んでくれたマスターに強いところを見せてやる!
 その気概は、ヒトカゲにある種の気迫すら持たせた。
 それに胸躍らせたのか、タケシがくりだした萌えもんは、紛れもない彼の切り札。
「立ち向かえイワーク!」
「イワークだと!」
 計算外だ、とヒトカゲのマスターは舌を鳴らす。
 ヒトカゲも一瞬ひるんだ。
 自分のしっぽより全然長く、そして大岩の硬質を携えたその髪の毛をたゆたせて、自分を睨んでくる。
 旅に出る前なら見るだけで泣き出していたであろう萌えもんだ。
 だがヒトカゲは泣かなかった。目尻の涙をこらえて、逆に睨み返してやった。
 マスターもその決心を感じ取ったのか。
 初手はいきなり、この日のための特訓の結晶。
「ヒトカゲ、メタルクロー!」
 驚く間も防御の隙も与えない。
 まさしく電光石火、元々すばしっこさならヒトカゲがイワークに負ける道理はない。
 アイアンクロー。鉄の硬度へと変質したその爪にかかれば、岩など紙くずと同じ。
 いわ萌えもんを文字通り粉砕する、はがねタイプの技こそが、二人の秘密兵器だった。
 懐に飛び込む。爪がきちりと音を立てる。まだ敵は反応もしていない。
 その無防備な肢体を肩口から、がきん、と切り裂いた。
 がきん、と。
「へ?」
「はい?」
 粉砕どころの騒ぎではない。
 イワークの体には何の変化もない。
 無理に変化を挙げるとするなら、灰色の服がメタルクローの軌道に裂かれていることぐらい。
 それ以外はなんともない。イワークはピンピンしている。
 だからこの反撃は当たり前のこと。
「イワーク、がんせきふうじとじしんで動きを止めろ!」
「それ息の根も止まりますー!」
 涙ながらの訴えもなんのそのというか、お構いなくというか。
 なんかもー、へたに状況描写するより最後の一匹にこころのめなしでぜったいれいどを決められた時の絶望感を
思っていただいた方が分かりやすいと思いますよ?
「はっはっはっは! 目の付け所は良かったが、ヒトカゲではパワー不足だったな!」
「ヒトカゲー!」
 駆け寄るマスターの足音だけを聞きとる。
 ああ、こんなザマじゃあもう違う萌えもんで戦うんだろうなぁ。情けないなぁ。
 薄れいく意識でそんな泣いてしまいそうなことを思っていると。
「大丈夫か! くそう、次こそは勝とうな! また二人で挑戦しよう!」
 今 な ん と お っ し ゃ い ま し た ?

 ……結局ヒトカゲがイワークを下すのは、リザードに進化して久しくなった頃だったという。
 なお、合計挑戦回数とその内容は、本人の名誉のため伏せさせていただく。



「マスターまだかなぁ…」
 リザードはハナダシティセンターでそんなことを呟いた。
 彼女のマスターは今、この町のジムリーダーへの挑戦手続きに出かけている。
 なんでもここのジムリーダーはあまりにも強く、足止めをくってるトレーナーの再挑戦が後を絶たないらしい。
 そこに新規挑戦分も重なり、ジムリーダーへの挑戦にいちいち約束をとらなくてはならない事態に陥ってるというのだ。
 だがリザードはそんな事情とは別のところで気持ちが沈んでいた。
 ハナダジムはみず萌えもんの使い手が集うと聞いたからだ。
 件のニビジムはアイアンクローがあるという理由で挑戦したが、今回はそうもいくまい。
 炎に水をぶつけるなぞ、無茶だ無謀だと言葉を使うのもおこがましい暴挙だ。
 流石に今回はわたしは控えだろう。そして、おそらくはでんきかくさタイプで勝負を挑む。
 安全は保障されているが、その引き換えに自分のマスターが違う萌えもんを選ぶ。
 それが今のリザードの立ち位置だった。それが、とても嫌で嫌でたまらない。
 だが救いがないわけでもない。
 マスターとの二人旅が終わるのは辛いが代わりに仲間を交えた賑やかな日々が待っている。
 何よりニビシティの悪夢を繰り返すことはなくなる。これが特に大きい。
 今も残るがんせきふうじの傷跡とかポニーテール恐怖症とかに加えて、新しいトラウマに悩まされることはない。
 そうでなくては泣き虫な自分は人目のあるセンターで咽び泣いてることだろう。
 人目があるといえば。
(なんだか見られている気がする……)
 トレーナーのいない萌えもんがセンターにいるのが結構な変事であることを差し引いても、見られている。
 そして、何かが聞こえる。
 音源は自分を見ている人達からだ。
「例のリザードってあの娘かしら? 可哀相にねぇ…」
「まさかほのお萌えもんでカスミに挑戦する奴がいるとはなぁ」
「カスミさんカンカンだったぞ。いい度胸じゃない、スターミーでハナダの藻屑にしてやるわ! って」
「うへえ。あのスターミーに皆やられてるんだろ?」
「カスミは俺の嫁」
「くさやでんきの萌えもんでも勝てないってのに、よほど自信あるのかねぇ」
「でもあのリザードじゃないのかな。さっきからオドオドビクビクしてるよ」
 ……うそだ。絶対に他人の空似だ。
 そうそう、リザードなんてそんなに珍しくも、いや珍しいけど、何もわたし一人だけじゃないし。
 必死で噂に抵抗する彼女に、しかし民衆は残酷である。
「しかし変なトレーナーだったらしいぜ。カスミの返り討ち宣言に…えっとなんて返したんだっけな」
「そうそう。なんでも『リザードはリザードンの一歩手前なんだ。そのリザードが負けるもんか!』とか」
 うそ! どこか自分のマスターっぽい台詞だけどうそ!
 ぶんぶんと頭を振るリザードの肩に、ぽん、とかかる手。
 この感触には覚えがある。帰ってきたんだ。
 そうだ、この人に訊けば全部うそだ根もない噂だってことがはっきりする。
 期待の眼差しで振り向く。
 おかえりなさい、と言う前に、声をかけられる。
 当然のように。
「ただいま。突然で悪いけど、早速ジム行くぞ。挑戦すぐに受けてくれるってさ」
 リザードがショックから立ち直るまで三十分。ハナダジムを攻略するのには二週間かかったという。
 そして彼女が星型恐怖症になったのは言うまでもない。



「リザード、かえんほうしゃだ!」
「はい!」
 ポケモンタワーに供養の送り火ではない炎が灯る。
 敵はタマタマ。レベル差は歴然。焼き払えないわけがない。
 リザードは久々に優位な相手と戦えた幸せを噛み締めた。
「どうだ! お前の萌えもんは残すところ後一匹だぞ!」
 自慢気に自身のライバルを指差すリザードのマスター。
 一人だけを手持ちとするそのやり方は、リザードのレベルを異常なまでに引き上げる結果となった。
 最早苦手な属性相手でなければ負けはしない、という次元までリザードは行き着いたのだ。
「へー、やるじゃん。けどオレにはまだこいつがいるぜ!」
 余裕があるのか、敵トレーナーは自信満々にボールを開ける。
 中から出てきた萌えもんは、リザードと同じ研究所出身のカメールだ。
「よう、随分強くなったじゃねえかリザード」
「アンタよりはね」
 普段は臆病なリザードも、昔の馴染み相手には気軽に軽口をたたけた。
 本来ならシートを敷いておちゃも淹れて故郷の話に花を咲かせたいところだが、そうもいかない。
 そして、戦闘としての状況は逆転した。
 カメールがみず萌えもんなのもマイナスだが、リザードはこの戦闘で四人の萌えもんを相手している。
 消耗が激しいのは隠しようがない事実だ。息は上がり、生命力の証であるしっぽの炎も危なげだ。
 最初からカメールを出さなかったのもこれが狙いだったのだろう。まともに戦ってリザードに勝ち目はない。
 だがトレーナー同士の戦闘に逃げはない。ひとたび始まれば結果を見るまで終わりはないのだ。
 リザードが不安そうに自分のマスターを見上げる。
「マスター、指示をください」
 敵はまだ動いていない。
 何かを仕掛けるなら今だけだ、とリザードは考えている。同じことを主も考えていた。
 迷いは負けだ。リザードの要求から数秒を待たずに、新たな指示を思いつき、送る。
「新技でカメールを足止めしろ!」
「えぇ!?」
 耳を疑う。新技ってこの前わざマシンで覚えたアレ……!?
 嫌な汗が体中から噴き出る。だが、自分のトレーナーの命令は萌えもんにとって絶対だ。
 特にリザードにとって、指示に逆らってマスターから嫌われる、など無意識に避けている程の一大事。
 ごくりと喉が鳴る。どうか、どうか。
 少し前かがみになって、胸元に余裕を作る。竹馬の友のカメールよ。
 襟を掴んで、過剰なまでにあおぐ。お願いだから。
 頬なんかも染めちゃったりして。ギャグとして受け取ってください。
「ふ、ふぅ……暑いわねぇ。あ、どこ見てるのよえっち!」
 リザードの メロメロ!
「………」
「………」
「………」
「………」
 寒い。怨霊とか呪いとかじゃなくて、生きてる者の所為で寒い。
 雌としての尊厳を失った気もするが、それ以上に寒い。
 もちろん空気的な意味で。
「……よしリザード! 気にせずきりさく!」
 そして、せめて一番動揺してほしかった人の発言が、彼女の色々と大切なものを引きちぎった。
「マスター、何でわたし初対面の雄を誘惑しなきゃいけないんですかぁ? しかも天敵のカメールをぉ」
 力という力を失ったようにへなへなと座り込んだリザードは、
「びいいいいいいいい! マズダァアァァァァァァァアア!!!!」
 ほのお萌えもんとは思えない量の涙と共に、わんわんと泣き出してしまった。
 カメールとの過去もぶっ飛んでしまう動揺っぷりである。彼女のマスターが慌ててなだめにかかる。
 そして結果を見ることなく戦闘は終わった。
 最初で最後の一人とそのトレーナーがこれでは戦闘自体が成り立たない。
 立ち去るカメールの同情の眼差しと鼻血にも気づかず、リザードはポケモンタワーで泣き続けた。
 その姿は傍から見れば
「友達の萌えもんが死んじゃって飼い主に慰めてもらってるペット」
 にしか見えなかったという。



「ひっく、うっく…えぐぅぅええ」
 あたしはミニリュウ。ごしゅじんさまのもえもんだよ。
 いま、ともだちのリザードンがないているの。
 それはいつものことだけど、いつものことじゃなくて、いまはあたしたちふたりだけしかいないんだ。
 ごしゅじんさまは
「はい、確かにやりすぎたとは思っています。
 でもジムの壁丸焼きにしたり部屋を水浸しにするのは萌えもんバトルではよくあることだと思うのですが。
 え? とにかく被害届が出てるんだからご同行お願いします?
 あとカメールの言い訳強引だよ、一作目と矛盾してんじゃないよこのタコ?
 な、何の話ですか? あ、ちょっと何掴んで、どこ連れて行く気ですか!
 いやなみのりのために破壊した水道管の事もって、そういう技じゃないでしょなみのりはアッー!」
 ってつれてかれた。とうぶんかえってこないきがする。
 ぼーるもいっしょにもってかれちゃったから、あたしたちはせんたーでおるすばん。
 なみのりごっこも、リザードンがすごくいやがるから、ひまだった。
 そういえば『かんにんぶくろ』ってどこにあるのかなってかんがえてもわからないし。
 リザードンもひまそうだったから、ずっとしりたかったことをきいてみた。
「ごしゅじんさまとリザードンってどこいったの? どんなことしたの?」
 リザードンが「えっとね」とはなしてくれた。
 あたしがつかまるずっとまえから、ふたりきりでいろいろしたってきいてたから。
 どんなたのしいところいったのかなぁ、とおもってきいていたら。
「うぅぅう……マスターのばかばかばかばかばか」
 きゅうにないちゃったの。
 あたしはなんでないちゃったかわからないから、こまっちゃった。
 でもすごくないてる。ときどき「そういえばあの時なんて!」っていってる。
「無理ですよぉ……ひっく、ニドクインの、うっ、じし、じしんなんてぇ、ひぐっ、ごめんなさいぃ」
 とにかくごしゅじんさまがかえってくるまで、あたしはリザードンに“よしよし”してあげようとおもう。
 あーあ、はやくごしゅじんさまかえってこないかなぁ。





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