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【萌えっ娘もんすたぁ Another Reason】 第一部

08 ヤマブキ大封鎖線 - 英傑、ここに集う -


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始まりは、唐突にやってきた。
それを告げた号砲は、街の一角の大規模な爆発。
合図にしては派手にして十分だった。たちまち街は混乱に陥った。人々は我先にと逃げ出そうとしたが、
各主要都市を繋ぐ関所は既に封鎖され、人の出入りは完全に不可能であった。
「何が……起こっている…。」
道場の扉を叩いて飛び出してきた女は、東西南北各所に置かれている関所に駆け込もうとしている
街の人々の混乱を描く人の流れをそこに見た。
建物の中で聞いた爆音、そして身に感じた地響きから嫌な予感はした。
そして、その予感は見事に的中したのだと、街の阿鼻叫喚をその耳に受けて確信した。


「うん、予感的中。」
地に横たわる黒ずくめの男を右足で踏みつけながら、持っていた巨大なスプーンを普段の大きさに縮めた。
「"やれやれ…人が出払ってるときにこんな事が起きるとはね"…ねぇ。」
「マスターの心を読み取るとはどういう了見かしら、フーカ?」
東側ゲートにて…半ば呆れた物言いのナツメは眼前に広がる関門へ向き直る。
「遂に現れたようね……ロケット団。」
普段は飄々としているフーカであっても、流石にマスターの心を覗くことは無い。…というか、出来ない。
何故ならば、ナツメはその心理を外部から完全に遮断することが出来るため、他者からその心の内を
読むことは難しいからである。…というのが本人の言うところであるが、精神、感情に乱れが起こると、
その制御も実は簡単に外れる。そうであったとしても、仮に思念を傍受したとしても、その内容は
心にとどめておけ、ナツメは自分の萌えもん達にそう厳命してある。
それでもフーカはナツメの心の乱れの証を、掟を破ってでも示したわけである。
ナツメ自身、思念を制御できていると思っているから、逆にその制御の乱れを示す方法はこれしかないのだ。
「……フーカ。テレポートの準備は?」
「もちろんいつでも。」
…一つ、深呼吸をするナツメ。フーカが傍受したナツメの思念は、そこで途絶えた。


「増援が途絶えましたね。」
最後の敵を打ち落としたことを確認したキリエレは、一息ついた。辺りには倒れた萌えもん達。
そしてそのマスターであろう黒ずくめの集団たちも一緒に。
西側ゲート、そこにたどり着いたときには、既にロケット団の姿があった。
「キリエレ、お疲れ様。…では、行きましょうか。」
エリカはキリエレを労い、もう一人の同志に向き直り言った。
「急ごう…ぴくるも戻っておけ。」
「はいですぅ。」
敵の数もさることながら、こちらは一戦を終えた後、まともに治療も受けないまま走ってきたために、
コンディションもさほどよろしくない。
故に最高のパフォーマンスを発揮できない二人であったが、今は一分一秒でも早くこの状況をどうにかしたい。


「どうにかしてあの関所を突破しないといけないわね…。」
一方、北側ゲート。そこには一人の少女が佇んでいた。見上げた建造物は高さにして自身の二十倍はあるだろう。
「ナツメは大丈夫なのかしら…まぁ、あいつは簡単にやられはしないか。」
問題なのは、この今の状況。大都市ヤマブキの機能が麻痺したとなると、様々な分野において
悪い影響が現れるのは手に取るようにわかる。自分の旅も、ここを通らないといろいろ不都合である。
「クチバに行くにはこっちが最短なんだけど…。」
視線を下に戻す。遠くからでもわかる、黒ずくめの集団――ロケット団。
この一連の騒ぎが彼らの齎した悪事であれば、尚更看過出来ない。
「仕方ない……派手にやりますか。」
少女はそう言って、腰のボールに手をかけた。
「カスミさん!」
その時だった。後方から、聞き覚えのある、声――振り返った先には、
「え…っ、すず!?」
大きな翼を広げて滑空してきた、その姿は、忘れるはずも無い。そして、その背中に乗る男。
「よぉ、野次馬参上だ。」
「ヨシキさん!」
カスミは思わず顔を緩ませる。
「すずを貸してやる。上から飛び越えて行け。」
出会いも束の間、今はやるべきことがある――カスミはヨシキの言葉に素直に従った。


関所付近の混乱もさることながら、街中の様子もまた異常な有様だった。…極端に静まり返っていたからだ。
既に鎮圧された後のようで、それを示すかのように、ロケット団員が辺りをうろついていた。
「困りましたね。これでは身動きが取れませんよ。」
ビルの隙間の小道から様子を窺うエリカ。そして少年。
「………。」
街の中に入ったのはいいものの、その後の目標を見失ってしまった。
恐らく敵の中枢を狙えばいい――が、その中枢はどこにいるのだろうか。
「おい、西側からの連絡が途絶えたぞ!」
「何?西側は何をやっているんだ!」
「西側にて交戦中との知らせが――!!」
「交戦って…誰とだよ。」
「おいまずいぞ!東もゲートが突破されたらしい!」
「警察か!?」
「いや、警察はないだろう。上層部が牛耳てるらしいからな。」
途端に慌しくなるロケット団員達。西側ゲートは、恐らくエリカと少年のことだろう。
この混乱によって、仲間内での情報伝達が遅れているらしい。
――となると、東は一体誰が?
予想外の情報に少年も思案を巡らせる。
考えているうちに、たちまち辺りに混乱は広がる。
「北側ゲートにて交戦中!」
「まだ来るのかッ!?」
「ええい…急いで各自ゲートに向かえ!援護するぞ!部外者を一人も入れさせるな!」
号令を受けて東奔西走する団員達。ものの一分もしないうちに、あれだけいた団員の姿が無くなった。
「どうやら…私達以外にも立ち向かう同志がいるみたいですね。」
「どうだか…だが今のうちかもしれない。」
「そうですね…何はともあれこれは好機に変わりありません。行きましょう。」
ビルの陰から飛び出した二つの影は、大通りを駆け抜けた――。


「やれやれ…一気に駆け抜けますからカスミさん、しっかり捕まっていてくださいね。」
空からの進路でも、やはり敵と遭遇するか。数体のゴルバットたちを眼前に見据えるすずとカスミ。
「いけそう?」
「戦闘は久々ですけどね…これでもリーグでマスターと共に戦いましたから…ッ!」
すずの周りに、不意に強風が吹き荒れる――それは、戦慄を覚えるくらいに鋭い風。
「――!?」
カスミは素直に驚いた。あの文鳥屋のすずが、まさかこれほどの力を持っているとは。
「エアスラッシュ!!」
普段は温厚な爪を隠した鷹が、その美しき大きな翼をはばたかせた時、風は刃となり襲い掛かる――


『そこを左よ。』
……?
幻聴だろうか?何かが聞こえる気がした少年は、思わずエリカに訊ねた。
「なぁ。」
「なんでしょうか?」
「今何か…聞こえなかったか?」
「…?」
その声の正体はエリカにもわからないらしい…というか聞こえていないのだろう、不思議そうな顔をする。
「声が……」
「? 声ですか?」
「ああ。女の声だ。」
「女の……?あら。」
突然くすくすと笑い始めたエリカ。そういうことかと一人楽しんでいるように見える。
「失礼。その声の主に……心当たりがありますよ?」
「なんだって…?」
「その声に従いましょう。……そう。あなたには聞こえるのですね?」
なんとも羨ましいような、微笑ましい様な、そんな顔をエリカは少年に向ける。
「……?」
なにがなんだか納得のいかない少年は、怪訝な顔を浮かべた。
『早く来て……あなたを待っているの。』


「待っていたわ。」
テレポートしてきたナツメを迎えたのは、彼女がもう、見慣れた顔だった。
「シズク?……あなたも来たのね…。」
「街の治安を守るのはジムリーダーの仕事だからね。」
手に腰を当てて、シズクは堂々と言い放った。
「あなたは非公式じゃない…」
「うっさいわね!別にいいでしょ、街を守りたいのは私だって同じなの!」
「そうね……ところで、それは私達だけの考えではないみたいね。」
「…え?」
ナツメは、目を閉じて精神を研ぎ澄ませる。
「今ここに……私たちと同じ志を持っている者が、三人…いえ、四人かしら?ここに集まってくるわ……。」
利害は違うかもしれない。でも目的は同じ。目の前に立ちはだかるは、巨大なビル。
「そのうち二人は…近いわ。最短経路でここに向かってる。
もう一人は…これは、空?…上かしら。オニドリルの背中が見えるわ。」
「はいはい、便利だねぇ超能力は。」
アンタには敵いませんよと、顔が語っているシズクであった。
ナツメの眼にはどんなビジョンが浮かんでいるのか、それは誰にもわからない。
そして彼女の眼は開かれた。
「あら……誰かと思ったら……エリカだったの?」
ナツメの目の前に現れた二つの影。一人は顔見知り、同じジムリーダーである、エリカだった。
エリカの隣の人物……には心当たりはない。しかし……
「御機嫌ようナツメ。…あなたの導きでここまで来れました。」
軽く挨拶を交わす二人。
「シズク師範も、お元気そうで。」
「久しぶりじゃんか、エリカ。」
こちらはがっちりと握手を交わす。
「…エリカ?」
「はい?」
ナツメはエリカに訊ねた。
「隣の男の子は一体……?」
不思議そうにナツメは少年を見据えた。彼女は捉えていた。彼の体から放たれている尋常じゃない"気"を。
少なくとも、只者ではないように思えたナツメは、彼を少し警戒する。
「…仰っている意味がわかりません。貴方が彼にテレパスを使って話しかけていたんでしょう?」
テレパス――即ち、思念会話の一つだ。相手に直接語りかけることによって意思を伝達することができる、
超能力の一種――"女の声"と聞いて、エリカはすぐにナツメの顔を思い浮かべたのだ。
「テレパス?……いいえ、私ではないわ。」
しかし、エリカの予想は外れたようだ。
「知り合いでは…ないのですか!?」
だとしたら……一体誰が、少年に語りかけていたんだろうか?
「や。また会ったね。」
「師匠。無事だったんですか。」
そして師弟はまたしても出会った。…今度はのんびりと旅の報告を交わす暇もなさそうだが。
「当ったり前じゃない。ヤマブキ道場の師範があんな集団ごときにビビって看板を畳む訳ないでしょうよ。」
師の安否を確認できた少年。とりあえず一つの目的はいい結果に終わったようだ。
各自が挨拶を済ませたその時だった――
「「「――!?」」」
急に吹き荒れた、突風。何事かとしばらく吹き荒れる砂の粒から顔を覆っていると、しばらくして風は
弱まり、ようやく目を開くことができた。
「あーやっぱり!ナツメとエリカじゃない!」
「…カスミ!?」
「あら…貴方もいらしたのですか?」
すずの背中から降りてきた……一人の少女、カスミ。英傑は、ここに集まった。
「…あれ、もしかしてシズクさんまで!?」
「やぁカスミ。久しぶりだね。」
「ホント久しぶりで…あーーーーっ!」
相変わらずうるさい女だ……と少年が心の中で愚痴を零していると、その当人と目が合った。
「アンタはっ!あの時のッ!!」
「……。」
「知り合い?」
まぁ落ち着いてと二人の間に割って入るシズク。
カスミと少年の関係について一通り聞き終えた彼女は、一言付け足した。
「あれだ。こいつは私の弟子だぞ?」
「えええええええええ!?」
……何はともあれ、この場に五人の戦士達が集合した。後は、敵の中枢に滑り込んでこの状況を打開する。
それが、彼らの総意であるのだから。

『英雄達は揃いました。早く来て……ずっと貴方を…待っているのです。』

少年の脳には、相変わらず何者かからの思念が、送られ続けていた。


- 08 ヤマブキ大封鎖線(前編) 完 -
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