4スレ>>174


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唐突に言うが、俺はポケモンオタクだ。
小学校の頃のポケットモンスターというゲームの存在が俺をこのような人間にしてしまった。
そのゲームにどっぷりと嵌り込んだ俺は、昼夜を惜しんでポケモンを育成した。
そのせいで学業のほうが真っ赤になってしまったのは、小さな犠牲だ。俺はそう割り切っている。
俺は戦術も研究した。
その時分の頃というものは、俗に言うフルアタ型ばかり育てる傾向にある。
しかも十万ボルトと雷を同時に覚えさせるなどの愚行も当然のようにやっている。
だが、俺は状態異常やステータス変化を駆使し、数多の友人を泣かしてきた。
リアルでの喧嘩沙汰になった事などは、両の手でも足りない。リアルの方は俺の惨敗であったが……。
そんな俺は、大人になる中でポケモンから離れる友人が多く居る中、全世代を制覇するに至った。
完全なダメ人間である事は言うまでも無い。
こういった経歴を持つ俺だから、必然として強いポケモンを使う。
だが伝説などとんでもない。厨ポケ? ――っは、その三倍はもってこい。
といった、信念は持っているものの、基本的にポケモンなどに愛情は注がない。
唯一王や唯一神を使う奴の気が知れないね。
そう思っていた。


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目が覚めたら妙な町のベンチで眠っていた。どうやらバス停のようだ。
グラグラする頭を何とか起動させながら、俺は昨晩までのことを思い返した。

高校の終わりに、流石に不味い思い、死ぬ気で勉強して、とある二流の私立大学に滑り込んだ。
流石にもう、ポケモンに熱中している者などは周りに居ない。
俺の大学生活は四年生になるまで沈んだままだった。
だが、DSとWiiを手に入れてからは変わった。
俺はWi-Fiという文明の利器を用いてポケモンバトルに熱中していたのだ。
インターネットも普及した今では、容易に情報を得られるため、ポケモンバトルも更に白熱していった。

そんなある日、後輩と共に行った居酒屋で、俺は前後不覚に陥る程酒を飲み――
「そして今に至る、か」
この頭痛は二日酔いのものか、と処理をしつつ俺はぐるっと周りを見回した。
ベンチの下にはリュックが置いてある。俺のだ。
そして、周りの風景は田舎だ。果てしなく田舎だ。
THE田舎と言わんばかりに居並ぶ畦道。
のどか過ぎる程にのどかな所だ。
今時の日本にもこんな所があったんだな、と寝惚けた思考回し――
「ちょっとマテェェェェ!!」
大音量で叫んだ。喉がヒリヒリする。
バサバサと何かが飛び立つ音がしたが、野鳥かなんかだろう。
周りを散策する事を諦め、どうしよう、と悩む俺の前に一人の少年が現れた。
「どうしたんですか?」
何だろう? この少年には何かがある、と俺の直感が告げていた。
パッと見にはただの人の良さそうな少年だ。
だが、その佇まいが彼が只者ではない事を示していた。
「ああ、すまない。ちょっと二日酔いでね。ここまで来た記憶が無かったんだ」
バス停で寝ていたって事はバスに乗ってここまで来たのだろう。
たはは、と照れた笑いを浮かべる俺に少年も笑みを漏らした。綺麗な笑顔だった。
「余程酔ってたんですね。マサラまで来る人なんて滅多に居ませんよ」
言う奴によっては嫌味になりかねない台詞だが、人懐っこい笑みを伴えばそんな事は気にならない。
ああそうなの~? と間延びした返事をする俺だが、とある違和感に気付いて酔いが吹き飛んだ。
あまりの衝撃に一瞬硬直してしまったほどだ。
「――すまん、もう一回地名を言ってくれ」
「マサラタウンですよ」
ちょっと訝しげに眉を寄せた少年だったが、俺はそれどころではない。
マサラだぞマサラ。
マサラはまっさらはじまりのまち。
そう、俺のポケモン人生の始まりの地だ。
……テーマパークか何かだろうか。
思考という名の海に潜って行く俺を少年がサルベージする。
「立話もなんですし、ウチに来ませんか?」
ありがたい。
俺はその申し出をありがたく受け取った。
とはいえ、何だかんだで動揺していたようだ。
俺は、背負ったリュックの中で、何かが転がった事に気付かなかった。


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「ただいま」
少年の声が家の中を走ると、パタパタと足音が響いた。
現れたのは綺麗な女性だ。しかもえらく若々しい。
「おかえり――あら、後ろの方は?」
恐らく母親であろう――それにしても美人だ――女性は、少年を笑顔で迎えたが、
俺の姿を視界に納めると不思議そうに首をかしげた。
「酔っ払ってバス停で寝ちゃってまして……。そこを丁度お子さんが通られたので、連れて来てもらったんですよ」
「じゃあお客さんなのね。歓迎するわ」
コロコロと笑って歓迎してくれる女性に頭を下げ、俺は少年の部屋へと向かった。

「一つ聞きたいことがあるんですが」
部屋に入り、腰を下ろした俺と少年は、互いに質問をぶつけ合った。
「マサラって聞いたときの貴方の反応は異常でした。
 マサラまで来たことより、マサラという地名そのものに反応しているように感じました」
大した洞察力だ。
俺は少年の観察眼に感服し、自分の事情を話した。
酔っ払って寝たらいつの間にかここだった、という事と、
マサラという地名については心当たりはあるが、それはあり得ない、という事を伝えた。
「マサラは田舎ですから知らないってのは――些か傷つきはしますがあり得ます。
 ですが貴方はそうではない」
「根拠は?」
少年の目を見据え、俺は短く言葉を放った。
暫しの逡巡を挟み、少年は答えた。
「勘です」
呆然としてしまった。
そして、ただ純粋に笑いがこみ上げてきた。
声をあげて笑う俺を見つめる少年の頬は、赤かった。
「笑わないで下さい」
その言葉の持つ拗ねた響きに、俺はまたクックックと笑った。
完全に拗ねてしまった少年に謝りつつ、俺は話し始めた。
「お前の度胸には恐れ入るよ。
 まぁ、そんなお前に免じて本当のことを話したいが……。
 正直俺も混乱しているんだ」
これは本当だ。
突然目が覚めたら、そこはゲームの世界かも知れない、というのだ。

俺は、ここで自分の持つ最大のカードを切る事にした。
すなわち、ポケモンは存在しているかどうか、である。
こんな事を聞けば正気を疑われるのがオチだ。
居るにしても居ないにしてもだ。
だが、ここを確認しなければ始まらない。
「坊主、お前は――ポケモントレーナーか?」
言った。俺は言ったぞ。
反応が怖い。
「ポケモンって――何ですか?」
ナンテコッタイ。


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博士に見せてもらったボクシング漫画のラストシーンのように、真っ白な灰になったお兄さん(仮)。
そもそもポケモンという存在が分からない。
俺は萌えもんトレーナーだ。萌えもんなら分かるがポケモンとは……。
語調が似通っているから勘違いかもしれない。
真っ白な灰になっているお兄さん(仮)をポンポンと叩く俺。
「うぁ……」
死んだ魚のような目を俺に向けるお兄さん(仮)。
言うなれば廃人のそれだ。
若干引きつつ、俺の方へと意識を向けさせる。
「ポケモンが何か知りませんが、似たような存在ならありま――」
ここまで言って俺は閉口せざるを得なかった。
目に光を宿したお兄さん(仮)が俺に掴みかかってきたからだ。
「その、話、詳しく、聞かせて、貰い、たい」
息も荒く、血走らせた眼を俺に向けてくるお兄さん(仮)は、言葉を途切れさせながら俺を揺する。
ヤバイ、苦しい。
意識が朦朧とし、ヤバイと思ったとき、
腰の萌えもんボールが輝き、萌えもんが一人現れた。
「何をしているのですか!」
現れたのは、俺が初めて手に入れ、そこから苦楽を共にしてきた無二の相棒――
「フシギバナ……」
俺の言葉にお兄さんの力が緩み、俺は何とか脱出する事が出来た。
だが、フシギバナの緊張は全く解けていない。
そこからはありありと敵意が汲み取れた。
「フシギバナ?」
お兄さん(仮)は、フシギバナ、という名前に反応した。
どういうことだろう? と思考を展開しつつ、俺はお兄さん(仮)と再び向き合った。


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フシギバナ――
俺にとっては因縁の相手だ。
初代ポケットモンスターにおける御三家の内の一体、フシギダネの最終進化形態。
草タイプであるが故に弱点は多いものの、ヤドリギや各種状態異常を操り、
その耐久性もあり、使いこなせば非常に厄介な相手だ。
初プレイでゼニガメを選んだ俺は、必然的に最後にフシギバナと対峙した。
そして、数多の死闘を繰り広げたのだ。
それは、ファイヤレッドになっても変わらなかった。
俺にとって、フシギバナとは永遠の宿敵なのだ。
その姿は、言うなれば、蛙の背中に巨大な花が咲いたものだ。
だが、目の前に立ち、少年を守護するように立っている存在はその範疇から外れている。
女性の頭に花が住み着いている。しかもその女性も別嬪と来たものだ。
俺はそれがフシギバナと認める事が出来なかった。あろう事か喋ったのだ。あり得ん。
ぶんぶんと頭を振る俺に少年が声をかけてきた。
「あの、落ち着きましたか?」
「ご主人様?」
俺を気遣う少年を、信じられないという目付きで見るフシギバナらしき人物。人物と定義していいのか甚だ疑問ではあるが。
「大丈夫だよ、悪い人じゃないみたいだし。多分動転してたんだと思うんだ。だから、警戒を解いてくれない?」
「分かりました」
少年の願いを聞き取り、敵意を霧散させたフシギバナ。
見れ見るほど別嬪だ。どう考えてもポケモンとは結びつかない。
この世の妙に頭を捻らす俺に、少年から回答が与えられた。
「ポケモン、が何かは知りませんが、この世界には萌えっこもんすたー――通称萌えもんが生息しています」
……は? 萌えもん?
萌えっこもんすたー、という名称には覚えがあった。
一時期、ニコニコ動画のランキングを騒がしたポケモンを擬人化させた動画だ。
俺自身はまったく興味がなく、物好きもいるものだ、ぐらいにしか思ってなかった。
まさかここでその名を聞くとは……。
考え込む俺に、少年は、オーキド博士の研究所へ赴く事を提案した。
何の手掛かりも無い俺は、その提案に飛びついた。


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「すまんが、萌えもんはそこにおる一体しか残っておらんが、持って行ってくれ」
どうしてこんな事になったのだろうか。
オーキド博士を頼っていったというのに、肝心の博士はと言えば、
少年が新たに図鑑作成に協力してくれる新米トレーナー――というには年を食ってるが――を連れてきたと勘違いしてしまったのだ。
しかもこの世界、トレーナー認定証が存在していないというおまけ付。
まぁ、短パン小僧や虫取り少年など、明らかに持ってないだろう、と思われる奴もいたこともあり、
まぁいいや、と勝手に自己完結した。

「どうする?」
「すみません。ああなった博士は止められません」
独り盛り上がり、拳を振るう博士。ああ、何もこんな事で老体に鞭を振るわなくてもいいのに。
博士主催の拝聴者のいない独演会は、博士がぎっくり腰でぶっ倒れるまで続いた。
ああ、もう本当に如何しよう。
このまま流れに身を任せて旅に出るべきか。
いやよく考えろ。俺は思考の回転スピードを上げに上げる。
旅だ。旅とはすなわち流浪の身となるんだ。
野宿できるか? 否!
自炊できるか? 否!
耐えられるか? 否!
頭を飛び交う否否否。旅をしろとかそれ無理。
大体問題が多いわ!
よくよく考えたらかなり非常識なゲームだぞこらぁ!
可愛い子には旅をさせよ、どころの騒ぎじゃない事に気付き愕然。
「さぁ、早くそこのモンスターボールを手に取るのじゃ。
 さあ、早く! ハリーハリーハリー!」
近寄ってくるオーキド博士に圧されながら、俺は机の上にあるボールを手に取った。
すると、そのボールは光の粒子となって霧散し、俺のリュックの中に入っていく。
唖然としてそれを見送る三人衆。あまりの事態に、各々がそれを処理するのを拒んでいるかのようだ。
あれだけ騒がしかった空気も一気に消え去ってしまい、場を気まずい沈黙が支配した。
「なんじゃこりゃぁぁ!」
オーキド博士の叫び声が研究室に響き渡った。てか博士、それ俺が一番聞きたい。
「お、おお主、いいい、い、一体何をしたのじゃ」
「分かりませんよ! そんなの!」
完全に子どもの喧嘩だ。
あーだこーだと言い合う俺達の中で少年だけが不思議に冷静だった。
「リュックの中身は何ですか?」
「え? ――ああ、大学のレポートやら課題やらが入ってるよ」
そう言いつつ、俺はリュックを引き寄せて、中身を漁った。
出てくるのは、レポート用紙やら課題やらが詰まったファイルとDS――の筈だった。
出てきたのはファイルと――一つのモンスターボール。
――は?
立て続けに起こる不思議な出来事のオンパレードに目が点になる。
「出してください」
少年の導きに、俺はボールを手に取った。不思議な重みに持つ手が震える。
そして、俺は下手でボールを軽く投げた。
現れたのは砲筒を二門抱えた美少女。
呆然とする俺に美少女は微笑んだ。
「お待ちしておりました。マイマスター」
その笑みは俺の心に衝撃を与えた。



――続――
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