4スレ>>176


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「――突然ですがっ」

両手で机を叩き、声を上げるマスター(女)。
その行動に、先ほどまで和気藹々としゃべっていたもえもんたちは一斉に静まり返る。

「どうした? マスター」

6人の中で、唯一伝説もえもんではないリーフィアのフィルが口を開いた。
ほかの5人も口には出さないが怪訝な顔をしている。
それらを一通り見渡し――マスターはふぅ、とひとつため息をついて。

「もう来月からの食費がありません」

――爆弾を投下した。





生き物は動くためには栄養が必要である。
栄養は、食事からとる必要がある。
つまり平均以上に動ける生き物は、平均以上の食事を必要とするのである。

まぁ、要するに。
伝説のもえもんを5人も連れていれば大量の食費が必要で。

「此処のところトレーナーから巻き上げる金もはした金だしー? 君らの食費をまかなえるだけの資産がもう無いのですよ、アンダースターン?」

背もたれに背中を預け、ふんぞり返ってだらけて話すマスター。表情には呆れと諦めが広がっている。尚、御年いまだ10代。

「まぁ、最近悪名というか強さが知れ渡っちゃってるから、いまさら勝負を仕掛けてくる命知らずのトレーナーもいないしねぇ」

苦笑しながら話すのはレックウザのアイシィ。それに「そうなのよねー」とやる気なさげにマスターが続けた。
以前――まだもえもんリーグを制覇したばかりの頃や、伝説のもえもんを手に入れた頃……
その頃は挑戦者として探さずともトレーナーが近寄ってきたものだった。
しかし女子供とはいえ、もえもんリーグを制覇したその実力は本物であるからにして、その大半は鎧袖一触に蹴散らされていった。
トレーナーと同じようにたえず来る、伝説のもえもんについて研究したいという無礼な輩を片端から断っていって数が少なくなった頃。
同じように彼女らに挑むトレーナーも少なくなっていったのである。

「大体さ、最近のトレーナーときたらこちらが必死で歩いてバトルサーチャー使ってるのに見てみぬフリするからさぁ……何様のつもりなんだか」
「あの……それで、マスター?」
「ん?」

おずおずと手を挙げたのは、これまた伝説もえもんであるラティオスのティオ。
おどおどした様子からは想像も出来ないが、彼女(?)は心の機微に聡く、今ではパーティに欠かせない潤滑油の役目も果たしている。

「それで、残りのお金はどれくらい残ってるんですか……?」
「おお、いい質問だ。さすがパーティ1の美少女だな、未来に目を向けている」
「いえ、あの、美少女ではないんですけど……」
「ちなみに安心しろ。ティオの発育に必要な牛乳の資金だけは死守している。だから悩まず豊胸体操に挑んでくれ」

グッ、と親指を立てて見せる。
完全にぽかんとしているティオを尻目に、ファイヤーのイクシオン、ジラーチのセイラが騒ぎ出した。
パーティの中でも一番二番を争うほど元気の有り余っている二人。

「えー、ずるーい! マスター、それってえこひいきー!」
「ボクの分はー? ボクもまだ発展途上だよー?」
「え、ちょっと待ってよ二人とも! まずその前に違和感を感じるべき場所があるはずだよね?!」

あわてるティオだが、問いかけられた二人の方は「なにが?」というキョトンとした顔でティオを見つめる。
果てはマスターとアイシィまで。

「どうしたティオ。違和感のかけらも無い至極普通の会話だったじゃないか」
「ええ、そうね。違和感なんてまったく感じなかったけど?」
「アイシィ姉さんまでっ……というかマスターは何を何事も無かったかのようにっ!? 何度も言うけど僕は男の子ですって!」

ティオがそう主張すると、マスターはふ、と息を漏らすと、がっしとティオの両肩をいたいほどにつかんだ。
両目はまっすぐにティオの目を捉え、顔は真剣そのものの表情なのだが。

「目を覚まして、ティオ!」
「……はい?」

何を言い出すのだろう、と思ったがいまだマスターの目はティオの目から離れない。
どころか、

「あなたは女の子なの! あなたは数年前に悪の組織ロケット団に捕まってそれはもういろんな辱めを受けたことで心を閉ざしてしまっているのよ!
 その過去があなたが心を開こうとするのを留めているだけなのよ! もうロケット団はいないわ、本当の自分を隠さないでいいのよティオ!」

などと言い出す始末。しかも目には涙さえ浮かべている。

「あの……マスター……僕は男の子で……」
「ああ、なんてこと! まだ彼奴らに受けた行いの数々があなたの心を縛るのね……! ちょっとアイシィ、今のロケット団の活動範囲わかる?」
「確か5の島の空き地で基地を作ってたのが最後だった気がするわ」
「普通に会話しないでくださいっ?! だから僕は男の子だって、何度言えばっ」
「じゃあティオが男だと思う人、挙手ー」

突然素に戻って、全体に意見を求める。
ティオは期待を込めたまなざしで皆を見渡すが、「当たり前のことを」といった顔で誰も手を挙げない。

「はい6対1。多数決の原理によってティオは女の子であることが承認されました、はい拍手~」
『わーい』
「――数の暴力っ?! というか生まれたときから決まっている人生の上でとても大事なことを7人の多数決程度で決められたっ!?」
「諦めなさい――そうなるのがあなたの運命だったのよ」
「そんな運命信じたくないですっ!!」
「……あ、あのー」

そこに、恐る恐る手を挙げる一人。今まで一言もしゃべっていなかったカイオーガのネプタだ。
もえもんとしての実力、器量などは申し分ないのだが、なきむしなせいかくのために皆の後ろに隠れがちである。

「ん、どうしたネプタ?」
「ありがとうネプタっ! 君ならわかってくれると信じてたよ!」
「い、いえ、あの、ティオねえさんのことじゃなくて」
「………!!」

がっくりと膝を落とすティオに戸惑いながら、ネプタは続けた。


「あの……そろそろおかねのことについてはなさないといけないのでは……?」





余談だが、ティオはその後立ち直るのに時間がかかったとのことだ。
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