4スレ>>221


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グレン島にある萌えもんセンター。
カツラと接戦を展開して傷だらけのパーティを、センターの人に預けて、
皆の回復が終わるのを私とマスターは椅子に座り、待っていた。

私は先ほどのの戦闘で傷一つ受けてない。だからこうしてマスターと一緒に待っている。

聞こえるのは、ウィーン、という回復装置の音と、通信交換や対戦ができる部屋へ続くエスカレーターの音、
それと萌えもんセンターの人の足音。それ以外は聞こえない。

「……」

私とマスターは会話一つ交わさなかった。
というよりは、マスターから、話しかけるなと言ってるような、
ピリピリとしたオーラが放出されてるから、話しかけたくても話しかけることが出来ない。

「……」

膝に置いている両の拳を、ぎゅ、と力強く握り締めるマスター。
その手のひらの中にはしっかりと、朱色に輝くクリムゾンバッチが収められている。
ジム戦での勝利、それはトレーナーとしては喜ぶべきことだろう。でも。
マスターの表情は、ジムリーダーに負けてしまったような、そんな表情をしていた。
――――無理だよね。この状況で喜べ、なんてさ。
皆、戦闘が終わったときにはボロボロだったし。
特にイワークなんて、虫の息で、正直死ぬんじゃないの?って思ったし。
マスターの一番の心配は、そのイワークがどうなのか、だろう。
傷、相当深かったし、万が一の場合には戦闘に参加不可能……なんてことになるかも。
それは私にとっては好都合な訳だが。残酷な考え方かもしれないけど。
下手にマスターや他の皆に気を遣う必要も無くなるし、何しろパーティの「お荷物」がいなくなるのだから。


――ポーン。
アナウンスが入る。……どうやら回復が終わったようだ。
私とマスターは受付の方へと向かった。


「お待たせしました……」

センターの人の喋りに明るさが無い。
いつもなら明るく、はきはきとした声で、回復し終わった萌えもんボールを差し出すのだが。
その理由はすぐに分かった。

「あれ?」

確か預けたボールは4つの筈だ。
リザードン、ラプラス、エレブー、イワーク……
なのにセンターの人から差し出されたのは3つ。
残る一つは、回復装置の上に置かれたままだった。

「あの、一個、置き忘れてるけど」

マスターはそう言って、回復装置の上に置かれたままのボールを指差した。

「えっと……それなんですけど、あなたのイワーク、かなり傷が深いようで、
完治するには少し時間がかかるみたいなんです」

「そう、ですか……時間ってどれくらいかかりますか?」

かなり不安そうなマスター。
というか、完治するのか。ちょっと残念。

「そうですね、最低でも2日はかかると思います。
もし休むところがないのであったら、3階の部屋を使ってください」

「分かりました、ありがとうございます……
ということだガラガラ、今日は休もう。お前も疲れたろ?」

「何言ってるのよ。じしん一発放っただけで疲れるわけないでしょ」

「そうじゃなくて、精神的に気を遣わせすぎただろ?
今度からは危なっかしくないようなバトルをしたいもんだな、全くよ」

リザードン、ラプラス、エレブーのボールを抱えながらマスターは微笑んで、
3階へ続くエスカレーターに上っていく。
その背中は、いつもの覇気や、頼もしさが感じられない、弱弱しい背中だった。
私の心配をしてくれるのは嬉しいけど……

「自分の心配もしたらどうなの」

そう呟き、私もマスターの後を追った。


萌えもんセンター、三階。
センターの人曰く、ここは泊まるところが無いトレーナーの為に設けているらしい。
設けている、とは言いつつも、あまり利用はされていないらしく、
そのせいなのか、贅沢にもセンターの人は3部屋も私達に用意してくれた。

「えーと、なんだか3部屋も借りさせてもらうことになったんだけど……
部屋割り、どうしようか」

かなりの優遇っぷりにちょっと困惑してるマスター。
皆の前では明るく、いつも通りに接しているつもりだろうが、
やっぱりイワークへの不安と、カツラ戦での疲労の色は隠せない。

「別に考え込む必要もないんじゃないかしら」

ソーラービームを受けたというのに、傷はすっかり完治。
ラプラスの回復力には驚いた。
同じくソーラービームを受けたイワークは、まだ完治していないっていうのに。
こういうところでイワークとの力の差が伺える。

「じゃああみだくじで決めようよ!それともじゃんけん?」

「エレブー、今はそんな状況じゃないですよ。旅行じゃないんだから」

「……はーい」

相変わらずはしゃいでいるエレブーをたしなめるリザードン。
ここから見るとまるで親子のようだ。
リザードンは真面目で面倒見がいいから、きっといい親になるんだろうな。

「じゃあ、勝手に振り分けるけど、この部屋は俺とリザードン、
隣がラプラスとエレブー、その隣がガラガラ……ってことでいいか?」

「ガラガラ、1人で大丈夫ですか?
何なら私が代わりますよ。どうせ私、外で寝るし……」

――――って、ちょっと、リザードン。
リザードンと部屋を交換したら、マスターと同じ部屋になるじゃないか。
つまり二人っきりじゃないか。
そんなの無理だ。無理だ無理。

「大丈夫だよ。気を遣わなくて。それに今日は……疲れたから。
先、寝るね、おやすみ」

「そうですか。今日は皆頑張りましたからね。おやすみなさい、ガラガラ」

リザードンの誘いを断って、少し赤くなった顔を隠すように、私は自分に割り振られた部屋に駆け込んだ。


――バタンッ。
乱暴にドアを閉め、ベッドに倒れこむ。
そして、静寂が訪れた。同時に後悔がこみ上げてきた。

「なんで断ったんだろ、私」

リザードンの誘い。私と場所、代わらないかって。
ホントは代わりたかった。
マスターには話したいことや聞きたいことが山ほどあるんだ。
私って、重い話とか、真面目な話って合わないらしく、
皆がいると冷やかしを喰らいそうだから、ずっと言えずにいて。

言えば、「冗談だろ?」って笑わるのがオチだろうけど。

今更戻って、訂正するのも気が引ける。
なんだか心がもやもやして、歯がゆい。
こういう時は寝るのが一番だ。
明日になれば、きっと忘れるさ。

私は強引に布団を被り、目を閉じた。







30分後。
起き上がる。

「駄目だ……寝れやしない」

まだ日が沈んで間もない。寝るのには早すぎる。
でも何かして暇つぶしをしようにも……何をしよう。
やっぱ寝ようか、目を瞑ってれば自然と眠れるだろう。
そう思って再び布団に潜り込もうとした、その瞬間。

――コンコンッ。

「ガラガラ……起きてる?」

ノックする音と同時に、ラプラスの声が聞こえた。
何かあったのだろうか。

「起きてるけど……どうかした?」

「入ってもいいかしら。少し話がしたくて」

「話……? 別にいいよ」

私がそう言うと、ラプラスがドアを開けて入ってきた。

「あれ、ラプラス、シャワーでも浴びてきたの?」

「ええ、エレブーの相手してたら、ちょっと汗がね……」

ラプラスの髪はしっとりと濡れていて、いい香りが漂う。
雰囲気がいつもよりも大人っぽくて、ちょっとドキッとする。
マスターがこれを見たら、どう言うだろうか。
きっと大絶賛に違いない。
そしてまた余計な事いって、私が一発。要するにいつもの流れだ。
にしても、シャワーも装備してるとは、どれだけ金持ちなんだ。ここは。

「エレブーは?」

「遊びつかれたのか、寝ちゃったわ。
汗びっしょりだったから、シャワー浴びてきなさいって言ったんだけど、そのまま寝ちゃって。
仕方ないから汗だけは拭いておいたけど……ホント、子供なんだから」

呆れた表情を見せるラプラスだが、口ぶりがどこか楽しんでいるような。

ラプラスがエレブーと遊んでる姿、か……
想像しようにもイメージが湧かない。
ラプラスって、元気に遊びまわるような、そんなイメージ無いし。

「で、話って何?」

「そうそうガラガラ、私、あなたに聞きたい事があるの」

「聞きたいこと? ……何?」

「実はね……」

私の方へ詰め寄るラプラス。
真剣な表情で詰め寄ってくるから、緊張が走る。
そして、ゆっくりと、口を開いた。


「マスターのこと、どう思ってるの?」


「……はぁ?」

その真剣な表情から出るような質問じゃないだろそれ。

「どう思ってるのか、ガラガラの意見を聞きたいの。
――――で? どうなの?」

「ど、どうなの? ってそんな突然言われても・・・
ま、まあ、いいマスターだとは思うよ。
戦闘の指示だって正確だし、性格はちょっと……だけど、しっかり仲間のこと考えてるし」

「嫌とか思ってない?」

「一言余計なところが嫌だけど」

「ふーん、そっか……」

「いきなり何? ラプラス。マスターのこと、どうって……」

「ん? ガラガラ、最近マスターの方を睨むようになったなーって思ってたから、
マスターのこと、嫌いになったのかな、と。
そっか、マスターのことは嫌いじゃない、むしろ好き、と……じゃあなんで、マスターのこと睨んでたの?」

睨む? 私がマスターを?
少なくともそんな行為はしていない筈だけど。

「ラプラス……勘違いしてるみたいだけど、私、マスターを睨んでなんかいないよ?」

「そう? 私には睨んでいるように見えたわよ?
特にマスターがイワークと一緒にいるとき……」

「……!!」

私は理解した。
ラプラスはマスターのことをどう思っているか、私に聞きに来たのではなかった。
それはただ、ラプラスが本当に私に尋ねたいことへの前振り。
本当に、ラプラスが聞きたいことは――――

「分かった……そんな顔をしてるわね。
そろそろ隠す必要はないか。
ガラガラ、あなたイワークがマスターと話してるとき、いつもイワークを睨んでたわよね?
なんだか凄く気になってるの、私。
あなたがマスターのことどう思ってるのか、それも気になるけど、
あなたがイワークのことを嫌いな、その理由を聞きたくて来たの」

ラプラスはいつも通りの口調で私に話しかけてるのだと思うが、
なんだか今回ばかりは、ラプラスの口調が私を挑発してるように聞こえて、
苛立ち、自然と私の口調は強くなった。

「理由、ね。そんなのラプラスなら分かることじゃない?」

「大体は見当つくけど、あなたの口からその理由を聞きたいの」

「そう、じゃあハッキリ言うけど。
イワークはこのパーティの『お荷物』なの。体が無駄に堅いだけで、それ以外は駄目。
戦闘でも格下相手に一苦労、くさタイプやエスパータイプの、とくこうを力とする技に関しては、
ご自慢のぼうぎょも形無し、瞬殺。パーティにいてもいなくても変わりない。
苛立ちを覚えるのは当然のことじゃない?」

「あなたの言うことはもっともだけど、能力値だけで相手を『お荷物』と判断するのはおかしいと思うわよ、私」

「それじゃあ何? ラプラスはイワークの事を『お荷物』とは思わないわけ?
あんなに使えないのに? いるだけ無駄なのに?」

「ガラガラ。イワークも私達と同じなの。マスターの役に立ちたい、そう思って戦ってるの。
イワークだって能力値は低いのかもしれない、でもマスターの役に立ちたくて、必死になって、
何度やられても倒れず、立ち向かって……
これって凄いことだと思うわよ?あれだけやられて、深い傷を負っても、へこまずに戦おうとする根性とか。
私には絶対真似できない」

「でもそんな思いを持ってたとしても、結果として残さなきゃ意味ないじゃない」

「結果として残さなくとも、思いや頑張りは伝わっていると思う。
イワークが一生懸命な娘だってことは、皆知ってるから」

「でも、そうだとしても……」

「ガラガラ、あなたの気持ちは良く分かる。でも、そんなワガママ言ってる場合じゃないのよ?
だから、イワークのことを認めてあげても……」

ラプラスの言う通りだ。
イワークが強くなるためにこっそりと特訓していることも、
バトルでなかなか結果を残すことが出来ず、何度も泣いていた事も、知らなかった訳じゃない。
何度でも立ち上がるその根性、仲間への思いやり。
それが人一倍あるイワークを心のどこかで認めてはいた。

それでも、心からその力を私は認めようとしなかった。
何故なら私にはもう一つ、イワークのことが嫌いな理由があるからだ。
――――マスターの愛情を一番に受けているということ。
かつて、私がカラカラで、まだ家族が存在していた時。
親の有り余る愛情を受けた私の姉に、イワークの姿を重ねて。
そのせいか、姉に抱いていた嫉妬や憎しみを、私はイワークに抱くようになった。
だから私はどうしても、イワークの事を認められずにいたのだ。
もちろんそのことは誰にも言ってない。誰も知っていない。
それなのに……『あなたの気持ちは良く分かる』だと?
何も知らないくせに、知ったかぶって。

今まで心の中でかろうじて抑えつけていた感情が、一気に体へ流れ込む。

「……」

「ガラガラ?」

「……何が分かるっていうのよ、ラプラスに私の何が」

「え?」

「そうよ、分かってるわよ。根性だとか、優しさだとか、私には足りないものをイワークは沢山持っている。
そう考えると、イワークのことは認めてあげてもいい……そう思う。
でも……でもね。納得がいかないのよ。
バトルが終わった後には『イワーク良くやったな』、『大丈夫か? イワーク』って、
マスターがいつも気にかけるのはイワークばかり。
最近はイワークに付きっ切りだったし、私たちには見向きもしない……
腹が立つのよ。マスターの為に何も出来ない、それなのにどうしてイワークは……!」

「それはマスターがイワークの事を心配してるからよ。それにマスターだって手が何本もあるわけじゃない。
イワークのことで手一杯なだけじゃ……」

「それでも! イワークだって他人の世話をいつもいつも受けるほど子供じゃない!
それに、いつもイワークばっかり気にかけてるマスターもマスターだよ!
あの時、約束したのに……絶対に忘れないってマスターは言ったのに!

私の怒りは、いつの間にかマスターにも向けられていた。

「約束? あの時? ガラガラ、何の――――」

ラプラスの言葉を遮り、私は怒鳴る。

「何も知らないくせに! 黙ってて――――むぐっ!?」

ラプラスに口を押さえつけられた。

「ふう……そろそろちょっと、冷静になったほうがいいわね。
分かってる? 隣ではエレブーが寝てるの。起こしたらどうするのよ?
そもそも、こんなにあなたを怒らせたのは、あんな質問をした私だけどさ……」

「む――――っ!」

「まあ、そんなに怒らずに……外に出てみたらどう? 今日は天気がいいからきっと月が綺麗だし、
それに涼しいみたいだし、落ち着くかも」

そう言ってラプラスは手を私の口から離す。
ラプラスに口を押さえつけられたせいか、私は少し冷静さを取り戻していた。
でも、まだ胸の鼓動はいつもより速い。
落ち着かせるために、深呼吸をする。
ゆっくり、ありったけの空気を吸って、吐く。
そして、

「…………分かった」

私はラプラスの助言に従い、部屋を出て、外の空気を吸いに行くことにした。






――――――――――――――――――――
構想をイメージ出来たとしても、文章に直すのは難しいことに今更になって気づく。
そしてこれは物語として成り立っているのでしょうか、どうなんでしょうか。
時が過ぎたら、読み返してみようっと。
次が後編で、終わる予定。
センターの3階は都合のいいように作っただけです。

ちょっと堅苦しいなあ。となんだか思うようになってきた。
かと言ってほのぼのとか書けんのは想像力が足りないからでしょうか。
ツールボックス

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