4スレ>>253


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「ヒトカゲちゃんっ!」
「リー姉こそっ!」
「お前ら・・・」
ちょっと眼を離したらまたこれか。毎回ではないにしろ最早慣れてきた。
「火の粉と葉っぱカッターでケンカするんじゃないと、一体何遍言わせる気だよ!」
あたりには火のついた葉っぱカッターが着弾した黒い小さな焦げ痕が点々と散らばっている。
二人はばつの悪そうな顔でケンカを止める。ここまでで一セット、お馴染みの展開。
今までに得た経験の半分以上が仲間同士での小競り合い、ってのもあんまりだと思う。


ここはニビシティ。萌えもんリーグを目指すトレーナー達が避けては通れない八つのジムの一つ、ニビジムのある街だ。
オーキド研究所を後にして、トキワで野生の萌えもん相手に戦闘を経験しつつ一泊。
それからトキワ萌えもんセンターでトレーナー証明書を受け取り、天然の迷路たるトキワの森を超えニビシティにたどり着いて数日経つ。
・・・とまあ、文字に表せばわずか二行。
その二行の間にさして特筆すべき事柄はなかった。
これから(リーグが目的ではないにしろ)カントー中のジムを制覇しなければならない立場にとっては、
初めて出てきたキャタピーとリーフィアがこっちの指示にも無反応で5分はカチカチに固まって睨み合ってたとか、
ひょこっと現れたビードルをヒトカゲが面白半分に追い掛け回し、挙句スピアーの大群に三人して逆襲されたとか、
ちょっと眼を放した隙にリーフィアとヒトカゲがケンカを始め(原因は未だ不明)、その騒ぎで機嫌を害したスピアーの大群に(ry
なんてことはいちいち取り上げるほどの出来事ではないのだろう。おそらく。多分。きっと。
・・・思い出しただけで気が滅入る。俺自身、初めて見るものばかりであまり二人に強いことは言えないんだけど。
森一つ抜けるだけでこうも手間取っているのでは、この先ジム制覇なんて冗談抜きでいつになるやら。

時間が掛かるであろう理由は他にもある。
ヒトカゲの友達のゼニガメ、フシギダネを連れて行った少年達(博士の孫がグリーンで、その幼馴染がレッドという名前らしい)の足取り探し。
ニビジムの認定トレーナーに二人の名前があったことから、少なくとも既にニビを離れお月見山越えに掛かっていることだろう。
もう一つは、金銭面での問題。
タマムシで俺が住んでいたマンションは契約を解消しておらず、それどころかきちんと家賃を納めるという念書まで書いたため、
そこらのトレーナーとのバトルで勝った賞金程度では到底やっていけない。
足りない金はというと、そもそもの本業である萌えもんセンターの職員として働かねばならず、そのせいで二人のLvUPが遅れ、
ニビジムを突破出来る日は遠のき、ヒトカゲの友達探しはさらに難関になってゆく(先に少年二人を見つけ出して再会させ、
それからゆっくりジム制覇と当初は思っていたが、お月見山方面の出口で見張っている謎の人物をどうしても出し抜けなかった。
彼は一体何者なのだろう)。
というわけで、とりあえずは時間が掛かってもニビジムの突破が当面の課題。
タダでさえ時間が足りないのだ、有効に使いたいものなんだが・・・。
「ったく、ケンカに使うPPがあるなら、そこらの野生っ子と互いに怪我しない程度にくんずほぐれつして、少しでも経験稼ごうとか思わない?」
「マスターの指示なしに萌えもんが勝手に戦ってたらいろいろとまずいと思うんですが・・・」
「くんずほぐれつって、なに?」
意見を返すのがリーフィア、分からない言葉を速攻で聞き返すのがヒトカゲ。
最初こそ少々もめていたが、基本的には二人の仲はいい。お互い機嫌のいいときなら、ヒトカゲちゃんリー姉ちゃんと愛称?で呼び合っている。
俺の見ている前でケンカが始まったことはない。が、俺が止めるまでずっとケンカしてたことならいくらか・・・
何が原因でケンカしたのかをどっちに問いただしても、どっちにもだんまりを決め込まれてしまう。
くんずほぐれつっていうのはな・・・とヒトカゲに簡単に説明してやりつつ、現状では壁が大きすぎることに内心肩を落とす。
萌えもん研究の権威であるオーキド博士ですら見たことも無い新種の萌えもんであるリーフィアは、ニビジム戦では戦わせられない。
時にはTV中継されることもある公式戦で彼女を出してしまえば、大混乱になるのは目に見えている。
それ以上に、ロケット団が必ず嗅ぎ付けて、何らかの形で手を出してくるに決まっている。
なら野生の萌えもんを捕まえ、戦力を増やせばいいと誰もが考えるだろう。
トキワの近くで出現するマンキーや、キャタピーを進化させたバタフリーなど、ニビジムに挑むのに条件のいい子をそろえれば大幅に時間短縮になるだろう。
だが。
リーグチャンピオンを目指しているなら、仮にそれを達成したら今度はチャンピオンの座の防衛が待っている。
チャンピオンになったからと言って、即トレーナー引退ではない。
だが、俺の場合は違う。博士に依頼された壮大なお使いを果たすためにチャンピオンロード前まで出向くだけだ。
それが終わったらリーフィアとともにタマムシに戻り、以前の生活を続けようと思っている。
その時ヒトカゲはどうするか、博士の孫らのどちらかに託すのかあるいは家までつれて帰るのか。それはまだ決めていない。
ともかく、自分がトレーナーという立場でいる期間の終わりを明確に決めている今の俺にとっては、
勝てないから捕まえて、勝ったらハイ預かりシステム行き、なんて扱いだけはしたくないと考えていた。
野生の萌えもんには野生の暮らしがある。それを捕まえることで奪い、自分のために働かせるのだ。
最後まで面倒を見る、という自信と覚悟なしに捕まえることは俺には出来なかった。
それは、つまり。
ヒトカゲ一人の力で、ニビジムを制覇せねばならないということ。
・・・いかに困難かは言わずともお察しだろう。
旅を始めてさっそくの障害に、俺の肩はますます落ちるばかりだった。


「公開戦、ですか?」
「ああ。いずれは挑む相手だ、どんなものなのか見ておくこともいいと思うんだが」
ジムで行われるバッチを掛けた戦いは、リーグの定めたルールにのっとった公式戦だ。
基本的には個人で挑戦の手続きをし、個人で挑むのだが、定期的に他人のジム戦を観戦できる公開戦というものが開かれる。
直接対決することなしにジムリーダーの戦いが見られ、また挑戦者とのスキルのやり取りを学べるということで非常に人気が高い。
避けることは出来ない相手、その雰囲気だけでも知っておこうと考えたのだ。
「いいと思います。ただ、私はボールから出られそうにないですけどね」
「そうなんだよな。ごめんな、リーフィア」
「気にしないでください。私のためなのはわかってますから」
自分はボールの中からでつまらないだろうに、快く了承してくれたリーフィア。いい子で助かるよ、ホント。
「ヒトカゲはどうする?」
「いくいくー!」
ちょっとしたお出かけ程度に思ってるのか?ともかく大賛成なのは把握した。
「よし、そうと決まれば準備しないとな」
早速俺は、次の公開戦に合わせての休暇を申請しにいった。


初めて入るジムは、想像を遥かに超える大きさ、迫力を持っていた。
案内に従って二階の観覧席に行き、良く見える位置で腰を下ろす。
腰にはリーフィアのボール、柵でよく試合が見えないだろうヒトカゲは抱き上げて。
試合が始まるのを待つ。
(すげぇ熱気だな・・・)
自分が挑戦するわけでもないのに、早くも雰囲気に呑まれかけている自分に気付かされる。
(覗いてるだけでこれなら、あのフィールドに立ったら・・・)
果たして、自分を保てるだろうか。
俺も、この子たちも。
・・・などという心配は半ばは杞憂だったらしく、
「人が一杯だねー!」
尻尾をふりふりヒトカゲは嬉しそうだ。あちち、こら火のついた尻尾を勢い良く振るなって。
とても始めに人間は嫌いだなんて言っていたのと同じ萌えもんとは思えない。
などとやっているうちにアナウンスが響く。
左手側は挑戦者、右手側はジムリーダーか。
あれがニビジムリーダー、タケシ・・・
バッチを巡る公式戦が、始まった。



多くのトレーナーがまず最初にバッチを手にするために挑むのがニビジムだ。
だが、それはニビジムが容易く超えられるという意味では決してない。
「くそぅ、コラッタ!電光石火だ!」
挑戦者のコラッタが、フィールドの岩を飛び伝って目にも留まらぬ一陣の閃光となり、タケシのイシツブテに吸い込まれる。
しかし、コラッタの最高速度であろうその速さで持ってしても、イシツブテは大して揺らぎもしない。
「甘いな!イシツブテ、岩石封じ!」
逆に、電光石火を仕掛け終わって動きが止まったところにイシツブテの放った大岩が襲い掛かる。
四方から迫りくる大岩を食らって、あえなく戦闘不能となるコラッタ。
「コラッタ、戦闘不能!勝者、ニビジムリーダー タケシ!」
審判の勝者を告げる声にあわせ、イシツブテの技による大岩がスッと消えた。
これで五人目の挑戦者がタケシのイシツブテに敗北している。
岩タイプの彼女にはこのあたりに生息する萌えもんたちの主な攻撃はほとんどが半減されてしまう。
さらに硬い体を生かしての捨て身タックル、ごつごつした足場で繰り出される地震、岩雪崩、岩石封じ。
どれもが必殺の威力を持っている。
だが、そんなことが問題なのではない。
(これが、本物の・・・萌えもんバトル、か・・・!)
タマムシの萌えもんセンターで働いていた頃には、さほど興味が無かった。
かつてトレーナーだった先輩や同僚がTV中継されている戦いに釘付けになっているのを、そんなものなのかと眺めている程度だった。
そして、今までにほんの腕試しの気分でこなしてきた虫取り少年とのバトルとは明らかに次元が違う。
挑戦者の腕も決して悪くなかっただろう。フィールドを生かして動き回り、何度も攻撃を仕掛けていた。
だが、それでも勝てなかった。タイプの相性や技の威力の差、という理論面だけの話だけではなく。
萌えもんに指示を下す、そのスキルが違うのだ。
己の萌えもんの特徴を良く把握し、相手の戦術を短期で見抜き、それに対して最も有効な戦法を判断して選択する。
これが、ジムリーダー。
俺が、倒そうと考えていた相手か・・・!
目の当たりにして、いかに己の考えが甘かったのかを思い知らされた。
萌えもんの方だって、イシツブテだけでもこの強さなのに、今日は出番の無かった彼の相棒のイワークはこの比では無いという。
これでは本当に、グレーバッチを手にできるのはいつの話か。
愕然としている俺とはまるで正反対に・・・
「いけ、そこぉ!ほらみぎぃ!ああ、そっちじゃないよお!」
ヒトカゲ大興奮。
いや、まあ、そりゃ人事なんだろうけどさ・・・
そのうち自分達があの場で戦うってこと、分かってないんだろうな。
次の挑戦者のオニスズメも、岩雪崩をかわしきれずに敗北。
これが最後の挑戦者だったらしい。どうも、予定より相当早く終わったみたいだ。
アナウンスが聞こえる。なになに、特別に飛び入りでの挑戦を許可する・・・か。
だが、あんな戦いを見せられた後で、それもこれだけの観客の前で挑戦の名乗りを上げるのはよほどの勇気がいる。
さすがにいないみたいだな・・・
「どうした!オレが怖いか。このグレーバッチが欲しくはないのか!」
タケシがバッチを掲げつつ、ニヤリと笑って観客席を睥睨する。
その開いてるのか閉じてるのかはっきりしない目と己のそれを合わせまいと、皆慌てて視線をそらす。
勿論俺もそうしたのだが・・・
「あたしだったらあそこでああしたのに!それでそれで、ここでこうやってーああやってー・・・」
あああダメだってばヒトカゲ、目立つなって!そんなに目立つと・・・
「ん?はははは、元気なヒトカゲだ!一つ、戦ってみるか自分のトレーナーに聞いてみてくれよ!」
ほら見れ言わんこっちゃ無いー。準備も何もできてない、心構えから崩されたばっかりだってのにー。
「え、あ、いや、俺はちょtt」
「やるやる、やってみるー!ぜーったい負けないもん!」
「な゙あ゙っ!?」
元気一杯に返事をしてしまったヒトカゲを慌てて抱え込む。
「ちょっとは落ち着けお前!今の俺達じゃ明らかに無理だって!」
「そんなことやってみなくちゃわかんないもん!」
いやいやいや!始まる前から全ての条件がこちらに不利だと分かっているのだ。
ヒトカゲには悪いがこれで今のまま勝てると思い込むには無理がありすぎた。
しかし、ヒトカゲに引き下がる様子も無い。
ボールのリーフィアも困惑している。
ごちゃごちゃしているうちに・・・
無常にも、飛び入り挑戦者決定のアナウンスが流れた。


                                           後編へ






あとがき(?)
第二部開始・・・になるのかな、一応。
本来、一つの街(あるいはジム)に付き一話の予定だったんですが・・・
見事に二話になりました。計画性無さ過ぎ自重。
無理矢理一話にしようと書いてて結局断念したため、この時点で後編も半分近くは書いてます。
ヒロキが野生っ子を捕獲しない理由がちょっと納得行きにくいかも知れないけれど、
とりあえず野生っ子を捕まえる形で仲間を増やす気は無いです。
というか増やしすぎると収拾付かなくなると思うので・・・
ヒトカゲがなんだか前話より子供っぽい気がするなぁ。
ちっちゃい女の子の挙動とかよくわからない。分からないままにとりあえず話を持っていかせて見ました。
後半にメインを持ってこようとするせいで、こうやって話が予定外に分かれたりすると
前半の内容がお察しなことにorz
わずかでも続きマダー?という声がある限りは書こうかなー、なんて思ってはいるけど・・・
読んでいただけたらうれしいな。
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