4スレ>>303


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エレブー視点です。
キャラの性格とかは前作「お荷物」の性格をそのまま引き継いでます。
――――――――――


ふう。
ごちそうさま。
今日も一日3食、おいしいごはんを食べさせてくれた神様仏様に感謝。
そしてあしたも、おいしいごはんが食べられますように。

天井に向かって両手を合わせ、目を閉じる。
雑念に囚われてはいけない。大切なのは無心。




――――いちどでいいからお腹一杯、ごはんを食べたいなあ。

おっと、いけない。無心無心。
頬を叩いて雑念を吹き飛ばす。
神様に感謝、仏様に感謝……

「そこまで祈らなくても、エレブーの思いはちゃんと神様に届いているよ」

お父さんの声がしたから、目を開けて、合わせていた両手を離す。
振り返ると、さっきまで眠っていたお父さんが、私の方を見て笑っていた。

「大切なのはお祈りする時間じゃなくて、感謝の気持ちがどれくらい大きいか、なんだよ。
エレブーはどのくらい神様に感謝しているかい?」

「うーんとね……このくらい!」

両手いっぱいに手を広げる。
ほんとはもっと一杯感謝してるけど。

「はは、それくらいだったら大丈夫、きっと喜んでるよ」

「ほんと?」

「ああ、きっと神様は明日もエレブーに美味しいご飯を食べさせてあげるよ」

「うん!」

「さて、今日は寝ようか。ご飯も食べたことだし、眠いだろう――――――?」

いきなり、お父さんが不思議な表情をしていたから、
私もお父さんが見ているほうを振り返った。

そこには、ここでいちばん偉いマルマインさんがいた。
なんだかマルマインさんは怖い顔をしてこっちをにらんでいる。
いつも怖い顔をしてるけど、今日の顔はいちばん怖かった。

「どうだエレブー、体の調子は」

「ああ、順調だよ。少しずつだけど腕が動かせるようになった」

「足は?」

「足も、足首がやっと動かせるようになった」

「そうか。回復に進んでいるといって無茶はするな。再発でもしたら今度は回復ができないかもしれない」

「分かっている……ところで、わざわざ見舞いの為にここにきたんじゃないんだろう?」

「相変わらず鋭いな――――」

マルマインさんはそう言うと、お父さんに向けていた視線を、ほんの少しの時間、私の方に向けた。
目が合う。
やっぱり怖い。
またマルマインさんはお父さんの方へと視線を戻した。

「娘を借りるが……いいか? エレブー」

「突然何をする気だ? 娘に何かするようだったら、この体は思うように動かないが、たとえ這ってでも止めるぞ」

「なに、お前を悲しませるような事をする気はない。この娘にもそろそろ私たちが置かれている状況を、
話したほうがいいと思ってな……」

「……!マルマイン!娘を私と同じ目に合わさせるつもりか!?」

「いや、強制はさせないさ。決めるのは彼女自身だからな。
……ついて来い」

さっきから、お父さんとマルマインさんが何を言ってるのかはよく分からないけれど、
いちばん偉いマルマインさんの命令はかならず聞かなくちゃいけない。
よく分からないまま、私はマルマインさんについていく。
マルマインさんの元へ歩きながら、私はお父さんの方を振り返った。

「お父さん……」

お父さんは悲しそうな顔をしていた。
それを見て私も悲しくなった。





マルマインさんに連れられてやってきたのは、小さな小部屋。
お父さんから前に聞いたことがあるんだけど、マルマインさんはここで、私たちのために色んなことをやってるらしい。
机の上にはむずかしい言葉で書かれた大きな本があるし、
床には意味がよく分からない紙切れが散らばっていた。
見ていて気持ちのいい部屋じゃない。

「さてエレブー。早速だがお前に聞きたいことがある」

「なに?」

「お前の父が、一日中寝たきりな理由……それが何だか分かるか?」

「えっと……」

お父さんはずっとベッドの中で横になっている。
朝、私が起きたときも、
昼、遊びに帰ってきたときも、
夜、寝るときも、
もちろん、ごはんを食べるときも。
ずーっと、お父さんはベッドの中で横になったままだ。
いつから横になったままになったんだっけ。
確か結構前だった気がする。
最初のころは不思議だったから、何度かどうして寝てるの、って、お父さんに聞いたことがあるけど……
その時は……なんて言ったんだっけ?


うーん。




ああ、思い出した。

「疲れてるから、って言ってた」

「そうか……やはり、本当の事を言ってないのか……」

「?」

本当のことってなんだろう。

「いいかエレブー。サンダー、という名前を聞いたことはないか?」

「さんだー?」

「そうだ、翼の生えた……」

さんだーって何だろう。

「……じゃあ、トレーナーと呼ばれる人間がいるのを知ってるか?」

「とれーなー?」

とれーなーって何だろう。
首をひねって考えてみるけど、ぜんぜん分からない。
私の姿を見て、マルマインさんは頭を抱えて、ため息をついた。

「はあ……本当に何も聞かされていないみたいだな。
いいか、これから私が言うことをよく聞くんだぞ」

「うん」

「まず、サンダーというのは、数ヶ月前からこの無人発電所に居座るようになった、
伝説の鳥萌えもんの一人だ」

「むじんはつでんしょ?もえもん?」

「あ――――……無人発電所というのは、ここのことを指す。
萌えもんとは、私たちのような種族のことを指す。分かったか?」

「うん」

「続けるぞ。そのサンダーは、私たちと同じように電気を食料とする。
お前で言うところの……『ご飯』だ。
そいつが吸収する電気があまりに多いせいで、
私たちが吸収するための電気が少なく、ちょっとした飢饉状態になってしまったんだ」

「ききん?」

「飢饉というのは、食べ物が少なくて、飢え……お腹が減って苦しむことだ」

「なるほど……」

「私たちはサンダーに向けて、吸収する電気の量を減らしてはくれないか。
もし出来ないのならここを去ってくれと頼んだのだが……
サンダーは怒って皆を攻撃し始めたんだ。
その時、逃げ遅れたコイルを庇って、お前の父さんはあのような状態に……」

「……」

つまり、サンダーという萌えもんがいて、
そいつがみんなのごはんを奪ったから、
マルマインさん達がごはんを返すようにサンダーに言ったんだけど、
サンダーは怒って、皆を攻撃し始めて、
お父さんは逃げ遅れたコイルを助けようとして、今のようなことになったしまった……

そういうことで、いいのかな?

そうか、だからお父さんは、ごはんは腹六分目にしなさいと、言うようになったのか。
だからお父さんはベッドの中で横になったままなのか。
なるほど納得。






出来るわけ、ないじゃん。






「……ゆるさない」

「……?どうしたエレブー」

「お父さんを寝たきりにさせて……」

胸があつい。

「皆のごはんをうばって……」

拳がふるえる。

「きっとサンダーは、おなか一杯ごはんを食べているに……違いない!
くそっ!私だっておなか一杯食べたいのに!」

声が大きくなる。

「どこへ行くつもりだ?」

無意識に私はマルマインさんの部屋を出ようとしていた。

「サンダーをぶったおす!」

「まあ待て、エレブー。怒ったところで何になる?私たちが束になっても敵わない敵だ。
お前の父も、私たちの中でも強い部類にいたが、それでも敵わない。
それなのにお前一人で敵うと思うか?」

「そんなのわからないじゃん!」

「分かってるから言ってるんだ。それにお前一人で戦ったところで、きっとお前の父の二の舞だぞ。
父はお前が自分と同じ目にあうことを願ってはいないはずだ。
それに話は終わっていない。ここからが本題なんだ。落ち着いてくれ」

本題ってことは、まだ話があるのか。
そういえば、お父さんはいつも、『人の話は最後まで聞け』って言ってるっけ。
じゃあ、さいごまで聞かないといけないな。
気持ちとしては早くそのサンダーとかいう奴のところに行きたい気分だけど。

「――――わかった」

今は抑えて、抑えて。

「よし……本題に移る。
この世界には萌えもんを率いて、旅をしている、トレーナーという人間がいるらしい。
彼らの目的は、各地に居る萌えもんたちを捕獲してデータを取ったり、
萌えもん同士を戦わせたりしている。
どうやら最近、この無人発電所にサンダーがいるということが、各地に知れ渡ってるらしく、
それを聞いたトレーナーは、きっとサンダー目当てにここに訪れる。
何せ伝説と呼ばれる萌えもんだからな……滅多にお目にかかれない。
そのここを訪れてくるトレーナーと手を組むんだ。聞けば、そいつらが連れている萌えもんは強いらしい。
協力すれば、サンダーをここから追い払うことが可能かもしれない……」

「じゃあ、そのトレーナーってのを捜せばいいんだね!」

「ああ、……しかし、問題は協力の方法にある。
トレーナーは萌えもんを捕獲するために、ボールを使ってるらしく、
そこに萌えもんを入れて持ち歩いているらしい。
協力するためには、そのボールの中に入らばければいけないのだが……
エレブー、私たちの掟を覚えているか?」

「掟?えーっと、『トレーナーから捕獲された場合、その者はそのトレーナーと共にこの地を去らなければならない』」

さいしょこれを聞いたときは、何を言ってるのかよく分からなかったけど、
マルマインさんから今、いろいろ聞いて、なんとなく分かった気がする。

「そうだ。つまり、トレーナーに協力する……つまりトレーナのボールに入るということは、
そのトレーナーと一緒にこの地を去る覚悟が出来ている、ということになる。
唐突な話なのだが、エレブー。トレーナーと共にサンダーと戦わないか?」

「うん」

「……あまりに即答で信じられないのだが。
ちょっと言い方を変えて聞くぞ。お前はこの無人発電所を去る覚悟があるのか?」

「うん」

ここから出て行くのは、ちょっと怖いけど、
それよりもお父さんをひどい目にあわせて、しかも皆のご飯を奪ったサンダーに対する怒りが強くて、
怖いことなど忘れてしまっていた。

「ここまで言って迷わずに即答するということは、覚悟は出来てるということか……
……分かった。お前がそこまで言うのなら私が止める必要も無いだろう。
トレーナーは直にやってくると思うから、しばらく待っているといい。
そうそう、トレーナーに協力する前に、父にこのことを伝えておくんだぞ?」

「分かった」

「よし……ならば今日は寝るといい。おやすみ」

「おやすみなさい」

マルマインさんにお辞儀をして、私はお父さんの所へ戻った。






お父さんの所にもどる。
相変わらずベッドに横になったままだ。
その理由を知ったあと、お父さんの姿を見ると、サンダーが憎くなる

「エレブー!大丈夫か?マルマインに何かされなかったか?」

「ううん。別に」

「そうか……良かった。ところでマルマインは何を言ってた?」

「いろいろ聞いた。むじんはつでんしょのこととか、萌えもんのこととか。
それでね、お父さん、私、サンダーを倒しに行く」

「……!」

「お父さんがこんなことになったのは、サンダーのせいなんだよね」

「……マルマインから聞いたのか」

「うん。それに、サンダーがごはんをたくさん奪って、皆を苦しめているって事も。
私、サンダーを許さない。お父さんをこんな目に遭わせて、皆を苦しめてるんだから」

「でも、エレブー。一人で戦う気――――」

「それなら大丈夫。トレーナーと協力すれば倒せるかもしれないって、マルマインさんが言ってたから。
もちろん、掟のことは分かってるよ。ここを出なきゃいけないってことも」

「それで……マルマインには何と答えたんだ。」

「分かった、って言った。
私はサンダーを倒しにいく。ここを出る覚悟だって出来てるよ」

「……」

「勝手に決めて、わるいことだとは思ってるけど、
でも私はお父さんの仇を取りたいし、皆が毎日、ごはんを食べられるようにしたい。
だから…………?お父さん?」

「やっぱりエレブーは母に似たんだな……
母はお前みたいに正義感が強くて、好奇心旺盛な人だったよ」

「お母さん?」

私はお母さんを知らない。
いたのかもしれないけど、記憶がさっぱりない。

「お前が小さい頃にここを出て行ったんだ。掟に従ってな。
広い世界を見に行きたいんだって言って、私がどんなに反対しても、自分の信念を曲げることは無かった。
エレブー、お前も……たとえ私がここでお前がサンダーを倒しに行くことに反対しても、その決意は固いか?」

「うん」

「そうか……やはりこういうところは母に似たんだな。
お前がそう望むのであれば私は止めないよ。
でも……私のようにはならないでほしい……お前の痛ましい姿を見たくは無いから。
約束できるか?」

「分かった、お父さん」

「じゃあ、今日はそろそろ寝ようか。
お前も眠いだろう。明日に備えてゆっくり眠るといい」

「うん。おやすみなさい、お父さん」

「ああ、おやすみ」


眠りに付く前、きゅう、と胸の辺りが締め付けられた。
きっと、ここを出るときめても、こころのどこかではお父さんと別れるのが嫌なのかな。
そしてお母さんも……ここを去る前に、私みたいに胸がきゅう、ってなったのかな。

そう思いながら、いつしか胸の痛みも忘れて、私は眠った。





翌日。

「……」

私はむじんはつでんしょの入り口をじっと見ていた。
トレーナーが入ってくるのを見ているのだ。

「……」

来ない。

「……」

なかなか来ない。
いっぱい待ったと思うんだけど、ぜんぜん来ないな――――。
そろそろ昼時、ごはんを食べないと……
おなかが減って、待つことにそろそろ飽きてきた、その時だった。

「――――!あ!」

見たこともない服装をした人が入ってきた。
腰にはボール……トレーナーだ!
それに周りには見たことがない人が一杯!
ええと、あれが私たちとおんなじ、萌えもん、っていうんだよね?
凄い、マルマインさんやお父さんとぜんぜん違う!
髪の色とか、ふんいきとか――――


早速、話しかけてみようかと思ったけど、
なかなか一歩が踏み出せない。
ちょっと怖いのかもしれない。
トレーナーに協力を申し出たら最後、私は掟に従い、むじんはつでんしょを出なければならない。
それはお父さんとの別れを意味するから。

でも、昨日、やってやると決めたんだ!今更こわがってどうする!

ぱしっ!
ほっぺを叩く。
てかげんはしたつもりだけど、痛みがほっぺに残る。

「よし、きあいちゅうにゅう!」

自分を奮い立たせて、私はトレーナーの元へ駆け出した。







――――――――――――――――――――
あとがきです。
また短編なのか長編なのか分からない長さです。
一応前作と同じように3部構成にする予定……。時間軸は前作の結構前。
前編はエレブーの視点で書きましたが、中編、後編はマスターの視点で書きます。
後編はバトル風味で書く予定だけど、果たしてこんなヘタレにバトルが書けるのか。
通常の文でもアレなのに……。

で、自分のイメージではエレブーは幼く、能天気なイメージなので、
ほんの少しひらがなにしてみたり、表現を堅苦しくしないように努力したのですが……
やっぱ堅いでしょうか。

あと「ごはん」は「電気」と読み直してください。
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