4スレ>>312


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こことここと…あとここかな。よし、終わり。
「これで終わり。お疲れ様、お大事に。次の方ー」
この子は…あ、ここか。む、麻痺もしてるのか。じゃぁこれも、と。
「はい、おしまい。お疲れ様、お大事に。次の方ー」
この子は…あーあ、寝ちゃってるんだね。眠り粉でも食らったかな?ともかく、これつかってから、これ。
「おはよう、ご機嫌いかが?もう手当ては済んでるよ、お大事にね。はい、次の方ー」
この子は…ん?
この痣…こっちにも。これもか。ん、ここのも?
何度か手当てした子だけど…手当ての度に妙な痣が増えてる…?
…萌えもんバトルの痣じゃないな。ここらで見かけない萌えもんだけど、何があったんだろう。
「君、ちょっといいかな。この痣とか、これとか。これ、萌えもんバトルのじゃないよね?」
尋ねた瞬間、その萌えもんはびくりと身を縮こまらせる。
「いやね、別に怒ってる訳じゃない。けどさ、治療する立場としては、普通なら無いはずの怪我とか、気になるのさ」
「あ…いえ、これは…その…」
「言えないの?」
「……(こくり)」
「そうか。じゃあ、無理には聞かない。また来るときがあって、そのときに教えられるようだったら、教えてね」
「え…?あ、はい。えと…その…」
「ん?」
「……ありがとうございます、お兄様」
「え…いや、気にしなくていいよ(お兄様…かぁ…)。これが俺の仕事だしね。
 よし、これでおしまい。お大事にね」
「…はい…」
その日俺の最後の患者だったその萌えもんを見送りつつ。
何故だか、いやな予感が拭えなかった。


「さあ、今日も地道に訓練、頑張ろうか」
「はーい」
「おー」
ハナダについて早一週間。
今日も仕事の合間を縫って二人の訓練に励む。
新たな町については萌えもんセンターに登録し、仕事の合間にリーフィアたちの訓練にでる。
肉体的に楽では決して無いが、自分が選んだ道である。吐くほどの弱音やするほどの後悔など、何処にも見当たらない。
が、別口で気がかりなことを拾うことはあるわけで。
「マスター、どうしたんですか?なんだか上の空ですけど」
「ご主人様、疲れてるならやすもっか?」
しまいには体を動かしている二人に心配される始末。
「ん?あぁ、ごめんごめん…」
「何か悩みがあったら、相談してくださいね?私達、マスターの力になりたいですから」
「リー姉ちゃんに言いにくかったらあたしでもいいからね!」
健気に気遣ってくれる、二人が可愛らしくて和みながら。
(萌えもんのことは萌えもんに聞いてみるかな…)
二人の心遣いに甘えてみることにした。
「そっか。…実はな」
仕事で時々見かける萌えもんのことを話した。
萌えもんバトルでの怪我は薬で簡単に治せる。致命的と見られるものでも医療装置ならほとんどが助けられる。
しかし、それ以外での怪我は。人の怪我と同じように、治るのに時間が掛かる。
俺の見立てでは──
──その萌えもんは、自分のトレーナーに手酷い扱いを受けている可能性があった。
「トレーナーが…自分の萌えもんに?」
「そんなこと、していいの?」
「スキンシップと言える範疇を超えてしまえば勿論アウト。
 で、痣が残るような、それも前の痣が消える前から新しい痣が出来るようなレベルじゃ完璧アウトだな。
 着てる白いワンピースがずるずる引きずるくらいに大きいから目立たないんだろうけど…
 どうにかしてトレーナーを見つけて、暴力を止めさせないと」
「そうですね。その萌えもんがかわいそうです」
「さんせーい。ところでご主人様、なんでワンピースの下の痣が分かったの?」
「服の上から薬は使えないからな。怪我の場所を見せてもらってるときに…
 …こほん。痣の場所は確認したが、俺の名誉に誓って治療以外のことはしていないからな」
「「ふーーーん」」
相談し、今後の方針が一つ決まったが、同時に二人の疑わしげな目線に悩まされることになった。





非番の日。
地元のトレーナーがたむろしていると言う話を聞いていた俺達は、街の北にある橋を渡り、デートスポットとしても名高い
岬を回ってみることにした。
「おー、いるいる」
ちょっとした林めいた広場に7、8人ほどがうろうろしていた。
「皆やる気たっぷりみたいだな」
「そうですね。頑張りましょうね」
「いっぱいやっつけるぞー!」
意気揚々と乗り込んでいく。見知らぬトレーナーの侵入に皆目の色が変わる。
たちまちバトルが始まった。




「お疲れ様、二人とも」
「今日はたくさん戦いましたね」
「くたびれちゃったー」
危ない場面も何度かあったが、どうにか二人でそこにいたトレーナーをあらかた撃破し。
俺達は林を抜け、ハナダの岬へと近づきつつあった。
「さぞかし素敵な眺めなんでしょうね…」
「まだ日が高いから人はほとんどいないだろうけどな。日没が見られる夕方や、良く晴れた星の見える夜は
 すごいらしいよ」
「いっぺん見てみたいなぁ」
そんなことを話しながら歩いていると。
「…ん?誰かいるな…」
岬には既に先客がいた。
服装を見るとキャンプボーイか。
そして、その向こうに見えるのは。
ここからでは非常に小さいが、緑の髪に赤い髪飾りのような突起、白いずるずるのワンピース。
(あの萌えもん?)
虐待を受けていると俺が判断した萌えもんだった。
そのほかにも二人、見慣れない萌えもんがいる。三人とも、少年の手持ちのようだ。
「あの子が、マスターが言っていた?」
「ああ。しばらく様子を見よう」
手近な木陰から様子を伺う。
この距離では会話までは聞こえないが…
少年が、萌えもんに怒りをぶつけているようだ。
これはますますもって怪しいと思いながら覗いていると。
俺の推察、そしていやな予感は、現実のものであると示された。
「……!!」
少年が足を振り上げ、萌えもんを蹴り飛ばしたのだ。
情け容赦なく。一瞬もためらうことなく。
彼、いや彼らにとってはいつもの事なのだろう。
「!! マスター!」
「わかってる!」
こうなれば黙ってみているわけにはいかない、その場から出た俺達は少年に向かって駆け出そうとした。
しかし、
「あら、あなたトレーナーなの?勝負してもらうわよ!」
その場でまだバトルしていなかったトレーナーに捕まってしまった。
急いでいると言っても、聞く耳持たずに萌えもんを繰り出してくる。
どうにか勝利した頃には、少年を見失ってしまっていた。
「くっ…」
「マスター、また見つけられる時が来ます。気を落とさないでください」
「そうだよ、ご主人様。次見つけたときにとっちめちゃえばいいよ!」
「…それも、そうだな。ありがとな、二人とも」
だが、あの少年を捕まえ、止めさせるのが遅れれば遅れるほど。
あの萌えもんの体の痣は、増え続けることになる。
そのことが、俺の心を苛んでいた。




その日から丁度4日後。
「さて。今日はハナダジムの公開戦だ」
「どんなジムリーダーさんなんでしょう」
「現カントージムリーダーの中で最年少、女性ジムリーダーだな。
 性格としては歳相応らしいが、その実力は紛れもなくジムを率いるものだそうだ。
 というわけで、ヒトカゲ。ニビのときみたいなマネは勘弁な」
「う…わ、わかってるもん」
反省はしているみたい。
これなら大丈夫だろう。
と言うことで、萌えもんセンターのすぐ横、ハナダジムへと向かった。


岩タイプ使いのタケシのジムとは大きく違い、ハナダのジムは巨大な室内プールの様相を呈していた。
普通のプールとの差異は、ところどころに頑丈な足場が置いてあるところか。
アナウンスがなり、ジムリーダーカスミが姿を現す。
「……」
なんというか、見知らぬ多くの人間の前に水着で登場ってのは、年頃の娘としてどうなんだ。
幾ら室内プールといっても自分ひとりだけ水着って、恥ずかしいんじゃないのか?
等と考えるあたり、俺も自分で思ってるほど心が若くはないらしい。
「さて、どんなバトルなのか、見せてもらうか」



ニビでも思い知らされたことだが、ジムリーダーは強い。
タケシの場合はイワークの前にイシツブテを倒せるトレーナーが少ないようだったが、カスミはそれとは違う。
ここでのルールは戦闘中に入れ替えはありらしく、ヒトデマンの様子を見てためらわずに引っ込めてくる。
ヒトデマンと交代か、あるいは倒されるかするとカスミの片腕、スターミーが現れる。
そのスターミーの強さが尋常ではない。
ほとんどが水場である地の利から、高速で水中を泳ぎまわり相手に狙いを定めさせない。
そして相手がまごついて見せる隙を確実に捉え、サイコキネシス・十万ボルト・冷凍ビーム・水の波動といった多彩な技で粉砕する。
お陰でタケシを倒したがカスミのスターミーが倒せないというトレーナーがたくさんおり、萌えもんセンターは他の都市より大忙しだ。
…あ、これで8人目。次がラストみたいだな。
「あいつは…!」
岬で見かけた、萌えもんに暴力を振るっていた少年。
「またキミ?ちょっとは成長してるんでしょうね?」
カスミのセリフを聞く限り、何度も挑戦しているらしい。
「うっせー!こんどこそバッチもぎ取ってやるから覚悟しやがれ!」
乱暴な口調で言い返し、萌えもんを繰り出す。
最初の萌えもんは、俺が手当てをしていた萌えもんではなかった。
だが、ハナダの岬で一緒にいた萌えもんだった。
「いけよ、ヒマナッツ!メガドレイン!」
ヒマナッツと呼ばれた少年の萌えもんが、開始と同時に足場を飛び移ってカスミのヒトデマンに襲い掛かる。
「ヒトデマン、水にもぐって」
だが、手馴れた様子のカスミの一言で、ヒトデマンは水中に身を躍らせ、容易く攻撃を回避する。
「いい加減、その萌えもんじゃ先制攻撃は無理だって学んだら?萌えもんがかわいそうよ」
「うっせーってんだよ!おらヒマナッツ、ぼやぼやしてねーで追っかけろ!」
少年の怒声に、慌ててヒマナッツが水に飛び込む。
しかし、どう見ても水タイプではない少年のヒマナッツはヒトデマンを追うどころか泳ぐので精一杯。
そうなればヒトデマンの敵ではない。
「ヒトデマーン、終わるまで水の波動ー」
カスミも明らかにやる気が無い。毎度の展開なのだろう。
まともに動けないヒマナッツに、ヒトデマンの放ったリング状の蒼い衝撃破が立て続けに叩き込まれ……
手傷一つ負わせられないまま、ヒマナッツは戦闘不能に。
その後の展開も、ほとんど同じ。
次に繰り出されたブルーというらしいピンクの萌えもんもヒマナッツと同じ運命をたどり、
最後にでてきた、俺が良く手当てしたあの萌えもん───ラルトスも、テレポートで接近して念力を一度当てたに終わった。
「なんなんだ、あいつ……まるで考えてないじゃないか」
その日の試合のなかで最もひどい試合だった。
他の挑戦者は早々にスターミーを投入されたり、あるいはヒトデマンの多彩な防御技で翻弄されて敗北していた。
だが、あの少年相手にカスミが命じたのは、水にもぐれ、と水の波動を打ち続けろ、の二つのみ。
それでも最も早くに終わった。
試合終了の合図のときの少年の態度から、敗因が自分にあるだなどとは欠片も思ってはいまい。
「萌えもんのことを、まるで考えていない……」
少年に対する怒り。それと同等以上に、自分の萌えもんにあんな態度をとるトレーナーがいるという事実に。
俺は、ショックを隠せなかった。





「結局、対策らしい対策は思いつかなかったな」
「そうですね…」
分かったのは、ヒトデマンは持久戦に優れ、逆にスターミーは短期決戦を得意としていることぐらい。
公式戦にリーフィアが出られない以上、戦えるのはヒトカゲだけだが、あれでは勝てるはずが無い。
いや、リーフィアが出られたところでスターミーの冷凍ビームがある。
今の俺達には勝ち目を見出すのは難しかった。
「ともかく、どうにかして勝たなきゃ先に進めないからな。
 いい案でも浮かべばいいんだけど」
「私達だけで勝てないのなら、他に野生の萌えもんを仲間に入れるしかないんじゃないですか?
 幸い、そばの草むらで草萌えもんを見かけましたし」
「んー……そうなんだよなぁ」
しかし、そうしてカスミを破ったところで、その後はどうするのか。
これから先のジム戦で、勝てないからといっては都合のいい萌えもんを捕まえては戦わせ、終わったら預かりシステムに任せるのか。
そう考えると、どうしても俺には野生の萌えもんを捕まえるという選択肢は選べなかった。
「あーあ……誰かがこの子を引き取ってーって、萌えもん連れてきたらいいのに。
 そしたら、ご主人様も引き取るでしょ?」
「事情によっては引き取るけどさ。そんな偶然に期待するわけにもいかないし、何よりそんなことは無いほうがいい。
 自分の捕まえた、自分の萌えもんにくらい、トレーナーなら責任持って欲しいよ」
それは、まだまだ駆け出しながらもトレーナーとして、また萌えもんセンターに勤める職員としての、
俺の正直な気持ちだった。


                                                              続く






あとがき
もう開き直って各街に2、3話書くことにしました(爆)
冒頭から目一杯フラグ撒いてます。
これまでに書きそびれましたが、ヒロキの思考の中では萌えもんは一人二人と数え、その他の場面では一匹二匹と数えてます。
お陰でただでさえ読みにくいのがなおさら読みにくいですが、萌えもんセンターの人々は皆そんな風なものだということでご理解ください…
お月見山であった事とか思いっきり省いてます。もう既にレッドとグリーンが通過した後なので、ロケット団も化石もとうに無いってことで。
あとマサキが出ません。図鑑作ってるわけじゃないし船のチケットはレッドがもらってるしでうわさすら出ませんでした。
いまいちはっちゃけるというか、お茶目なテンションが書けません。小ネタとかのような、ツッコミかイジラレが限度です、ボケが出来ません。
始めの方に撒いた設定のせいでリーフィアの出番が出にくいのはどうしようもないです。ごめんよリーフィアごめんよ。
カスミと暴力少年の口調もいまいちしっくり来ない…
設定ではカスミもこの少年も15ってことにしてます。14歳の設定(だったかな?)の気がしたけどサトシもシゲルもいない世界だし。
20過ぎのヒロキからしたら15って少年であってるよね?
冒頭の手当てのときのあの子(もうこの話の中で名前出してるけど)の「お兄様」ってのは妙な意味は全く持たせてません。
「マスター」あるいは「ご主人様」はそのときのその子に既にいるので、他に適当な呼び名を超丁寧に、としたらああなりました。
ポーカーフェイスなりにヒロキは密かにあの場で萌え萌えしてるんです。ちゃんと仕事してるあたりはプロですから。
ちびっ子萌え…はヒロキじゃなく筆者です(オイ)ヒロキは仕事上からも健全…なはず。
ごちゃごちゃ言い訳してたらあとがきまで読みにくい…ほんとすみません。
こんなダメ筆者でも続きを期待してくれるなら脳汁溢れさせるかいがあります。
お付き合いいただき、誠にありがとうございます。
ツールボックス

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