5スレ>>39


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 グレンタウンに上陸した俺とべとべたぁ。
 食事を済ませ、道行く人に観光名所や名物などを聞きつつ移動する。
 真っ先に到着したのはいかにもというような廃墟だった。
 どうやらここが研究所事故の現場みたいだ。
 以前はもっと大きな屋敷だったそうだが、事故で多くが崩壊。
 偶然生き残っていたものが、目の前にある不気味な建物である。

「……結構形が残ってるな……中にも入れるのか……。どうする?」
「ここわ……こわいです……」
「そうか? んー、なら別の場所に行こう」

 少し興味があったのだが、べとべたぁが行きたくないというなら諦めよう。
 行く場所はまだたくさんあるのだ。

「ごしゅじんさま? 他にわどんなところがあるですか?」
「そうだな……聞いた感じ地域の劇みたいなもんがあるみたいだぞ? 氷の女王っていう」
「こおりのじょおう、ですか?」
「興味あるか?」
「むー。わたしはご飯食べるほうがきょーみあるですけど」
「飯はダメ。さっき食べたばっかだ」
「でわおやつを」
「分かった。おやつは買ってやる」

 やったーですっ、と万歳しているべとべたぁを脇目に俺は思う。
 ……よく食うけどどこに栄養がいってるんだ……? こいつ。
 身長は伸びてないし体重も増えないし筋肉がついたわけでもないし……胸もねぇ……。
 ぺたぺた。

「ひゃぅ! な、なにするですかごしゅじんさまっ」

 やはり大きくないというかほとんど平らというか。
 背中に飛びついてきたときに弾力がなかった時点で気付くべきだったか。
 別に大きいのがいいってわけでもないけどさ。

「さーて、劇を見に行くか」
「ごしゅじんさまっ! するーとはいいどきょうですっ、そこになおるですっ」

 確か劇場は南の方にあるって行ってたなぁ。
 なんか後ろの方が騒がしいけど早く行って席とらないと。
 どうせ劇を見るならいい場所で見なくちゃね。



 劇場内は風でも通っているのかと言うほどがらがらだった。
 やはり今のご時勢、地方の小さな劇は流行らないのかもしれない。
 無料じゃなかったのも原因かも。意外と高かったし。
 それでもまぁ記念と言うことで入場。
 席は当然のように最前列へ。
 途中までぷりぷりしてたべとべたぁだったが、転んだので頭を撫でていたら元に戻った。
 今では俺の背中に乗っかってだらだらしてる。

「ほら、着いたからおりろー」
「ごしゅじんさまのせなかでみるです」
「わがままは言わないっ。降りないなら振り落とすしご飯はお預けだ」
「いじわるですっ ごしゅじんさまわいじわるですっ」
「こらっ、頬をひっぱりゅにゃ! いはひいはひっ」
「参ったというですっ! それまではなすつもりはないのです」

 ぬぅ……痛くはないのだが小癪なっ。
 このべとべたぁに参ったとは言いたくないのだ。
 俺は背中のべとべたぁの頬に手を伸ばし、同様に引っ張った。
 ……あ、すごくやわらかくて気持ちいい。
 予想外の感触に引っ張った頬をこねたり突いたりに変更。
 べとべたぁが耳元でうにうにむーむー言っているのが聞こえて和む。

「そろそろ始まるから降りようなー」
「はいです」

 時間も経つと素直になるわけで。
 ひょいと背中から降りて座布団に正座する。
 かしこまったようながちがちの姿勢。
 そんな額にデコピンをして、楽な姿勢に崩させた。
 勿論、なにするですかっ、という抗議が聞こえたわけだが無視をした。
 劇場内の照明が消える。
 ナレーションから物語は始まった。



 二十年ほど前、このグレンタウンに一人の萌えもんが現れた。
 その姿は透き通るような青色で、鋭く冷たい視線の中に大きな慈愛を含む目。
 彼女には家族と呼べるものはなく、友人すらもいなかった。
 だが、優しさと強さ、両方を兼ねて持っていた彼女はすぐに人気者となる。
 暮らしを立てるための仕事も手に入れ、幸せな日々を過ごしていた。
 それが何年続いたのか、ある日、研究所事故のあったその日。
 普段から一緒に遊んでいる子供達を、あろうことか凍らせてしまったのだ。
 すぐに融かしはしたものの、その体験は彼女の大きすぎる力を認識させてしまう。
 そして己自身も。
 再びこのようなことが起きないように町を去り、今ではふたごじまで一人過ごしているという。



「んー、ハッピーエンドじゃないのか」
「……」
「? どーしたべとべたぁ」

 劇が終わって外へ出ると、アイスを買ってやったというのに静かなべとべたぁが気になった。
 左手に持つアイスがとけ、ぽたぽたと地面に落としながらも無言。
 くしゃり、と右手に持ったパンフレットを握りつぶした。
 ば、と勢い良く顔をあげて俺を見る。

「ごしゅじんさまっ」

 なんとなく今からべとべたぁが言い出すことが分かった。
 話にでてきた萌えもんを助けに行こう、って。

「さっきの方をたすけにいきますですよっ!」
「あー、うん」

 予想していたから頷けたものの、突如言われたら混乱してただろうな。
 しかし、ふたごじまに行くとなると……船がいるか?
 いや、ツアーかなんかはないかな……。
 ツアーだと自由に行動できないからダメだな。

「さぁっ、いますぐいくですっ!」
「まてまて。ふたごじまに行くには船が要るぞ」
「ふね……うみの上をはしる車ですかっ」
「そ、ここに来る時も乗っただろ」
「で、でわおふねを今すぐにっ」
「そんなに簡単に取れるもんじゃないって。とりあえず今日中は無理だ」
「どうしてですかっ」
「船があったとしても、上着とか買わなきゃいけないだろ? ふたごじまは寒いぞ?」
「さむいのはきらいです……」
「分かったならまずは……宿だな」

 拠点だけはしっかり決めておかないと、街中で野宿とか嫌だしね。
 そういえば。
 前回べとべたぁが人助けモードに入った時もアイスと関係があったような……。
 今度から余裕のあるとき以外はアイスを買わないで置こうと胸に秘め、俺はべとべたぁにひきずられるのだった。
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