5スレ>>51

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「んん・・・」
朝の日差しを感じて目を覚ます。
「おはようございます」
「んにゃ?」
傍らにはハクリューが座っていた。
彼女は基本的に早起きで、たいていは僕が目を覚ます前に起きている。
「・・・ああ、おはよぅ~・・・」
枕元に置いておいたデジタル時計には、8:26という文字。
寝ぼけ眼のまま窓を見やると、眩しいくらいの光が目に沁みた。
どうやら今日も絶好の旅日和なようだ。
(ああ、でも洞窟だから関係ないか・・・)
そろそろ目も覚め、頭も回ってきたようだ。
(んん~~・・・・・・あ・・・)「・・・オニスズメはどう?」
時間、天気、今日の予定と、一つ一つ頭を回していき、ようやく昨日起きた出来事までに思い至る。
「まだ寝てますね」
「・・・そうか」
僕もまだ少し眠い。
「んくぅ~!・・・風呂、入ってくるよ・・・」
「はい」

10時頃、支度も済ませ、さてお月見山を越えようという頃。
だが、出かける前にオニスズメを何とかしなければならない。
「やっぱり同じ草むらに返すべきかなぁ・・・」
「そうですね」
もともとそのつもりであったが、このまま置いていっても大丈夫なのかと、若干不安も残る。
オニスズメは、まだ少し腕が痛いのだろうか、ちょっと歩いてはは腕を見、また歩いては腕を摩り、パタパタと僕達の後ろをついてくる。
(なんだか懐かしいな・・・ミニリュウと初めて会った時みたい・・・)
怪我をしている時にこう思うのも悪いが、そんな姿が目を楽しませてくれる。

「それじゃぁ、元気でね」
「さようなら」
昨日とはうってかわって清々しい雰囲気の中にある草むら、その草むらで別れを告げた。
「・・・」
――たはずなのだが、なかなか草むらに帰ろうとしない、帰ろうとしないでこちらを見つめている。
(やっぱり・・・可哀相かな・・・でも・・・)「・・・じゃぁ行こうか」
「・・・はい」
少し名残惜しいが、少し心配が残るが、僕とハクリュー、お月見山へと歩き始める。
――と、
「ん・・・?」
オニスズメも急いで後をついてくる。
その瞳には悲しみの色が宿ってるように見えた。
「一緒に・・・くる・・・?」
「・・・はい・・・!」
パァッっと顔を輝かした。
オニスズメの、初めて見る笑顔だった。
「大丈夫かな、ハクリュー?」
「・・・はい、私はご主人様を信じてます」
「信じる・・・?」
「あ!っいえ!・・・なんでもありませんっ!」
何故かハクリューの顔が赤くなってしまった。
「はは、大丈夫だよ~、見捨てたりなんてするわけないよ」
「あ、う・・・はい・・・」
益々赤くなる。
耳まで真っ赤に染まってしまったが、表情は嬉しさを表している。
「それじゃぁよろしくね!」
「え?・・・ああ、よろしくお願いします、オニスズメさん」
「・・・はいっ!」
こうして、二人目の仲間が加わった。


「くらいなぁ~、中」
「そうですね」
「ハクリュー、大丈夫なの?」
「あ、少し・・・怖いですけど」
「そっか・・・オニスズメは怖くない?」
「・・・はい」
僕、ハクリュー、オニスズメ、三人で薄暗い洞窟を歩いていく。
僕とハクリューは手を繋ぎ、オニスズメは僕の腕の中にいる。
片手で抱くのはちょっとつらいが、怪我も心配だし、迷子になるともっと大変だろう。
「ところでご主人様」
「ん?」
「地図とかあるんですか?」
「いや、今回は一歩道らしいからね、迷うことはないよ」
「ホントですか~?」
「なんだよそれ~」
「ふふっ、なんでもないです」
いつのまにこんなことを言うようになったのだろうか?
なんだか距離が近くなったような気がする。
ちなみに、一本道というのは情報はセンターで聞いたもの、確かな情報だ。
今回は迷うような不安もないだろう。
「ところでこの洞窟、ある特別な石が内部に点在しててね、真夜中になると、綺麗に光りだすんだってさ」
「そうなんですか!?」
「うん、まぁ今日は夕方までには抜けちゃうからね・・・今度余裕があるときにでも見にこようか」
「はい!」「・・・みたいです」
「ご主人様はなんでも知ってるんですね」
「いや、はは、ハクリューには適わないよ」
――そんな他愛もない会話をしながら、進んでいく。
洞窟内は、意外に簡素な構造で、本当に一本道のようだ。
なんの問題もなさそうだった。

そろそろお昼ごろになるところ。
「そろそろお腹すきましたね・・・」「・・・うん」
「もうちょっと我慢だ、今食べると後半辛くなっ――!?」
「?、どうしまし――」
「シッ!!」
ふと、暗闇の中、物陰に蠢くなにかを見つけた。
思わずハクリューの口を押さえて、黙らせる。
(あれは・・・?)
人。
数人の黒い男が、数匹のもえもんになにか命令している。
(ロケット団!?)
全身黒く、真ん中に赤いRの文字。
さすがに聞いたことはある。
もえもんを使って悪事を働いていると。
「(・・・ご主人様?)」
「(ロケット団だよ)」
「(え?・・・ロ・・・ケット・・・?)」
「(ロケット団)」
「(・・・)」
「(ハクリュー?)」
急にハクリューが震えだした。
「(!?、どうしたの!?)」
尋常じゃない振るえ、最初の日の夜のような・・・。
「(ハクリュー!?ねぇ!!ハク――)」

――――?

途端、違和感を覚える。
目の前が真っ白になる。
その違和感の正体もわからぬままに。
ハクリューとオニスズメがどうなってしまったかも知らぬままに。
暗い暗い底へと落ちていった。


――なんだろう・・・この夢・・・夢?

――あれは・・・ミニリュウ・・・?

――ここは・・・?

――ハクリューは・・・?

――オニスズメは・・・?

「・・・!!」
目覚めると、そこは暗闇。
「・・・?」
周りには何もない。
ただ真っ暗闇。
自分の腕の自由が効かない感覚だけしかなかった。
「起きました?」
「!?」
戸惑っていると、割と近くから、不意に声が届く。
その方向をよく見ると、すぐ隣に泥だらけのハクリューがいた。
「ハクリュー!!」
思わず抱きつ――こうと思ったが、腕の自由が効かない。
ロープで縛られている。
「・・・ここは!?オニスズメは!?」
「よく・・・わかりません・・・オニスズメさんはご主人様の隣にいます」
ハクリューとは逆隣に首を回すと、こちらもまた泥だらけのオニスズメがそこに倒れている。
よく見ると自分も泥だらけだった。
「まだ気を失っているようですが・・・」
幸い、腕以外の怪我はないようだが。
「僕達は・・・そうだ!あの時・・・ロケット団を見つけて・・・その時に・・・」
「どうやら、眠り粉のようです」
「眠り粉・・・ということは・・・誰かが・・・?」

「そうだ!」
「「!?」」

突然、低い声が響く。
男の声。
正面の暗闇から、黒装束の男が現れた。
真ん中には赤いR、ロケット団だ。
僕より、一回りも二回りも年上であろう男。
「俺達がお前らを捕らえた、あの場面を見られてしまったからな」
「あの・・・場面・・・?」
「ふん、とぼけたって無駄だ」
そういい残して、男はまた、暗闇へ去っていった。

それからしばらくの間、ずっと同じ場所に監禁されていた。
僕達三人は、精神的にボロボロの状態。
「あれから・・・何日経ってるのかな・・・」
「・・・わかりません・・・」「・・・」
たまに出される食事と少量の水で、耐えるしかなかった。
極限状態。
それなのに僕は、あの夢のことをずっと考えていた。
ミニリュウが暗闇で泣き続ける夢を――。

その状況は続き、14回目の食事を終える。
(14回目・・・まだ・・・5日目・・・なのか・・・?)
ハクリューもオニスズメも、もう限界だった。

その時――。

「うわぁぁぁぁ!!」
男の悲鳴。
その悲鳴の方を向くと、暗闇の中から少女が、ユンゲラーを連れて、一歩一歩近づいてくる。
「・・・?」
その少女に、その紫雲の瞳に、見覚えがあった。
「君は・・・」
センターにいた少女。
紫雲の瞳を持ち、圧倒的な存在感、威圧感を放った少女。
その少女が口を開く。
「大丈夫か?」
「あ、はい・・・」
僕達を縛っていたロープが急に消えた。
おそらく傍にいたユンゲラーが消したのだろう。
「もう大丈夫だ、他は片付けといた」
そう言い残して、何事もなかったかのように暗闇へと戻っていく。
僕は数秒呆けていたが、思い出したようにオニスズメを担ぎ、ハクリューの手を引いて、慌てて追いかける。
「ちょ!・・・ちょっと待ってくださいっ!!」
「・・・ん?」
「あ、あの!ありがとうございます!!」
「ああ」
「あ、あの・・・どうして・・・?」
「ああ、すまないな、君達が捕われるのはあの時からわかってたんだが、少しやらねばならないことも多くてな」
「・・・あの時?」

話を聞くところによると、彼女はナツメという、ヤマブキシティのジムリーダーであるらしい。
超能力少女で、センターで見かけたときから、こうなることは未来予知していたようだ。
あの時から、もう既に二週間経っているらしい。
やらなければならなかったことってなんだろう・・・。


久々の外、目に沁みる光がすごく嬉しい。
ナツメは外に出た瞬間に、それじゃぁ、と言って消えてしまった。
まだまだ聞きたいことはあったが、まずは体を休ませる方が先か。

「よかった・・・よかったよ・・・二人が無事で・・・」
「いえ、私は全然平気です・・・ご主人様が無事でホントに良かったです・・・」
「・・・わたしも平気です・・・ご主人さま・・・」

もう全員ボロボロ。
(早く・・・ハナダで休もう・・・)



~~あとがき~~
ようやく仲間が増えました。
まだまだ物語も序盤、わからないことだらけですが、どうか飽きずに見ていってください;;
ちょっと今回は表現とか展開とかテンポとか、少し変かなぁ・・・。
そして今回も大幅な形式変更でご迷惑おかけしました・・・。
タイトルはまぁ、ノーコメントで;;
次回はハナダですね。
最後に、こんなものに付き合っていただき、本当にありがとうございました。m(__)m
第6話、できあがったらまた見てもらえると嬉しい限りです。では。

もえもん紹介
ミニリュウ ハルのパートナー。一途な性格。詳細は不明。
オニスズメ ハルのもえもん。人見知りな正確。
ユンゲラー ナツメのもえもん。

ちなみに、パートナーという表現に特別な意味はありません。
そのトレーナーが持つ一番強いやつ、程度に捉えてもらえればいいと思います。

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最終更新:2008年01月30日 20:22
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