5スレ>>59


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私は何のために生きているんだろう。私は何をするために生きるんだろう。…考え始めたらきりがない。
それも当然と言われれば当然、未来へ向かってゆくたった一本の道、その先は常に霧の中にあるのだから。
それに怯えていたら……前に進めないことはわかっているつもり。
でも…私の足は恐怖に怯え、大きく一歩も踏み出すこともできず、ただ震えているだけ。
前にも後ろにも、進むことなど……できはしない。

その道には、幾重にも張り巡らされた"歪み"がある。その狭間に飲み込まれたが最後、一人で抜け出すことは
不可能に近い――私が怯えているのはその"歪み"。だってあなたもそうでしょう?
ほら……膝が笑っているじゃない。いくら強がっても、私たちは所詮…弱き者なのだから……

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私立・萌えもん学園プロジェクト ショートストーリー

In Front Of You ~ 尊き人へ ~


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いつもはその低血圧気味な朝のせいで、起きるのはベッドのそばにある目覚ましがけたたましく鳴ってから
なのだが、今日に限ってその時針が六を指す三十分も前に彼女が目を覚ましたのには理由があった。
一つに、昨日の夜はいつもより少し早めに眠りについたこと。それに伴って洗濯機も早めに回したことにより、
ベッドに入る頃と同時に家の中の全ての機能を停止させたからこそ、睡魔を誘う静寂を得ることができたのだ。
未だ柔らかい朝の日差しがカーテン越しに差し込む頃ではないが、この部屋の中で一番最初に目覚めて
しまったのだから仕方ない。彼女に一番近い時計ですら――最近の電波時計は気配りが効くというか、
夜になると秒針が止まったまま正確な時刻を示してくれるらしく――音を立てずに時を刻んでいた。
「ん………ふぁ……。」
昨日干したばかりのふかふかの布団は、彼女に再び眠るようしつこく催促する。しかし今二度寝したら
絶対に起きれないような気がしたので、ゆっくりと身体を起こし、情けない声をあげてひとつ伸びをする。
半分しか開いていない虚ろな眼は先を見据えず、焦点が定まっていない。
右手で後頭部辺りをくしゃくしゃと掻きながら、半身起こした状態で五分近くぼーっとしていた。
(………あれ…?)
彼女の脳が活動を開始したのはそれから更に五分後であった。いつも朝起きて最初にお世話になる時計も、
現在は沈黙を保っている。それを見つめながらようやく、彼女の時計は微調整を始める。
(…五時四十分?なんでこんなに早く起きたのかしら…?)
次に目を向けたのは、壁掛けのカレンダー。ベッドから右側にある、木彫りのパソコンラックとの間に
掛けられているそれは、日付を四角で囲った一カ月おきに捲るシンプルなカレンダーである。
イラストすら挿入されていないが、そこにはびっしりと色鮮やかな彼女直筆の文字がデザインされていた。
殆どは『部活』や『朝練』とだけやる気のない文字で書かれているものだったが、所々に生き生きとした
文字で『もちっことうふふ』など意味を汲み取りきれないハートマークつきのものもあった。
そして、今日の日付を追った先には、赤いペンで升目をはみ出るほど大きな文字で、こう書かれていた。
『始業式』
「あ。」
ようやく目覚めを迎えた彼女の頭が、重ったるい半開きの瞼を完全に開かせた。


顔を洗って洗面所からリビングへ戻ると、香ばしい香りが彼女の鼻腔を燻った。
吹き抜けになっているキッチンと向かい合うように設置されたカウンターテーブルの上に、トースター。
予めセットしておいたパンがいい具合に焼きあがったようだ。彼女は無意識にキッチンへ向かう。
朝ご飯こそ質素なものの、彼女の体力を保つ栄養価は一日のスパンで見ると十分に足りているので問題はない。
そのままコーヒーメーカーを取り出しつつ、朝食の準備をする。何故だか年季の入った古いものである。
彼女の朝は決まってコーヒー。一年前からの決まりごとである。コーヒーカップは無駄な装飾のない、
いつもの真っ白でシンプルな物だ。冷蔵庫の隣、食器棚の一番手前から取り出す。
リビングに戻りリモコン片手にテレビをつける。一人暮らしの高校生という珍しい生活環境の上に、
これほど大型でスタイリッシュな液晶テレビを部屋の片隅、隣に観葉植物を添えて設置してある部屋に
住んでいるのは、恐らく彼女くらいではないだろうか。…時間的に、そろそろ天気予報が流れる頃合である。
――今日の天気は、快晴。絶好の新学期日和である。
ピンポンピンポンピンポン……♪
焼きあがったトーストにバターを塗っていた所に、突然の呼び鈴の音が彼女の耳を突き刺した。
この音はマンション入り口のインターホンだ。リビングを出てキッチンとの境界にある受信機と向き合う。
「はーい。どちらの巨乳様ですかー?」
相手を確認せずに言ってみる。
『ちょっとー誰が……ってやっぱりー起きてたんだぁ。』
「今朝ご飯食べようとしてたところだからそろそろ来るかなーって思って。」
『ほんとにー?いつもよりーまるまる1時間くらい早めに来たんだよー?』
…そういえばそうだった。今日は一時間も早い朝食を取っていたのだが、本人はそんな自覚すらなかった。
それなのにこの入り口に佇むでか乳は何を根拠にこんなに早く来たのだろうか、と彼女は疑問を抱く。
確かに、普段の彼女なら今はまだ布団の中で、ようやく目を覚ますだろうといった時間帯なのだが……。
『それよりもー。入り口開けてよー。』
「はいはい。今開けるわ。」
これで一分後にはこの部屋に客がやってくる。と言っても、それほど気を遣うほどのよそよそしい関係ではない。
毎朝一緒に同じ学び舎に登校し、同じ部活で共に汗を流し、同じ時間を共有することが最も多い相手――
ピンポ~ン…♪
一度だけ鳴る、この呼び鈴は玄関のほうである。彼女が次に足を運んだ先、それは玄関。
そしてその扉を押した先には――同級生であり、同じ部活のチームであり、幼馴染であり、そして親友の――
「おはよう~ペル。」
制服に身を包み、両手に鞄を抱え、頭の上には控えめ且つ煌びやかな装飾の大きな帽子で着飾った、
「はぁいもちこ♪上がって上がって。」
もちこ――もといネンドール嬢は、ペル――ペルシアンの元へやってきた。


「ところでさぁ…。」
最後の一切れとなったトーストを頬張り、コーヒーを流し込んだ後ペルシアンは唐突に訊ねた。
「どうして今日はまたこんなに早く来たわけ?」
振り返りネンドールのほうを見ると、彼女はソファに凭れながらテレビを見ていた。
「………ねえちょっと?起きてる?」
「………………ふぇっ!?」
びくっとひとつ、身体を小さく跳ねて反応を見せる。
「ちょっと……寝たりないんじゃないの?」
「うう~…このソファが気持ちよすぎるんだよ~。」
それもそうだ。ネンドールが座っているソファはペルシアンの実家から持ってきた物だ。
ペルシアン自身値段を知らない。しかしながら赤い革張りのソファというのも随分と存在感があるものである。
カーテンはピンク、カーペットは茶色。暖色系の色に支配された部屋の中、
真っ赤なソファは溶け込んでいるようでその実、少し主張が強すぎる気がしなくもないが。
「少し寝てく?まだ全然時間あるし…」
「ううん。大丈夫だよ~。」
後九十分程度は寝ても全然始業式には間に合う。此処から学園へは徒歩で二十分程度の距離だ。
「大丈夫って……そうそう、なんで今日はまたこんな早い時間に来たのよ?」
「ん~…今日は家族みんな早出だったからぁ~…。」
普段から眠そうな口調が、この時は更に増して眠そうなのは気のせいではないだろう。
「それにぃ~、ペルなら今日はきっと起きてるなっ!って思ったから~。」
…何を根拠にその考えは出てくるのだろうか。ペルシアンは相変わらず理解できない彼女の思考を疑問に思う。
しかし結果としてネンドールの考えは現実のものとなっていた。
(今度……盗聴器がないか確認しておこうかしら……。)
そろそろ本気で彼女に監視されていないかと、親友にあらぬ嫌疑をかけてしまう程だ。
それくらいネンドールの勘は鋭い時がある。
「そういえば……家族揃って早出?妹ちゃんも?」
「うん。やじこもぉ~なんだか今日は委員会が忙しいみたいよ~?」
やじこ――ネンドールの妹のヤジロンだ。彼女は美化委員だったかしら、とペルシアン。
そうなんだ、と言ったら会話が不意に途切れてしまった。
「ふぅ~……すぅ~……。」
迂闊だったとペルシアン。彼女の天使のような寝顔を見ているうちに、このまま寝かせてもいいとは思ったが…
「だぁあもう!はい起きた起きた!!」
「ふぅにゅぅ~…」
彼女を寝かせたままだと、最低でも三時間は寝続けるんだった、ということを過去の経験から思い出したペルシアンは、
これ以上深い眠りに入る前にと、赤いソファをひっくり返すかの勢いでネンドールの身体を強く揺さぶった。


ということでネンドールをやっとのことで起こし、そのだるそうな身体をカウンターテーブルの方へと
誘導するのに軽く三十分程度を費やしたペルシアンは、キッチンで皿を洗いつつ彼女と対峙した。
これなら迂闊に眠ることもないだろうと。
「コーヒーならあるけど……飲まないわよね?」
「こーひーきらぁい………。」
「言うと思ったわ…。」
返答を待つ前に冷蔵庫の前に立つペルシアン。扉を開く。
「今は……ミルクだけねぇ…。」
それを取り出す。片手にもったパックには『63℃低音殺菌モーモーミルク』と書かれている。
「ミルク……しかないんだけどぉ。」
「ミルクきらぁい………。」
我侭なでか乳である。ではその胸はどうやって育ったということを問い詰めたくなったペルシアン。
「うーん……じゃぁ後何か…あったかなぁ…」
「かふぇおれはすきー。」
どういう基準だろう。
「……じゃぁカフェオレね、了解。」
どこか腑に落ちないペルシアンであった。
昔からの付き合いで、互いの好き嫌いは大体把握している。ネンドールはコーヒー、ミルクが飲めない。
ペルシアンは緑茶が飲めないのだ。しかしながら、例えば野菜嫌いだが野菜ジュースは飲めるといったように、
ネンドールはカフェオレであれば平気で、またペルシアンもお茶漬けならお茶は平気なのだ。
「それにしても相変わらず牛乳飲めないわねぇ。」
此処で核心に迫ると、内心の笑みが顔に出ているペルシアンは言った。
「うん……おいしくないんだもん…。」
ペルシアンからコーヒーカップを受け取ったネンドールは、一口それを飲んでから理由を語った。
「それに…おなか壊しちゃう……。」
それはカフェオレでも問題あるのではと突っ込みを入れたくなったペルシアンだが、それは本題ではない。
「…あんたまた大きくなってない?」
ガタタッ!と条件反射のように椅子から立ち上がったのは、つい今まで
眠気と戦っていた者とは思えない程の動揺を見せるネンドール。
「な……なんでわかたったららぁ!?」
突然の出来事に呂律も回っていないようだが、突然の出来事だと思っているのはネンドールだけである。
「ああ……私達…背が近いじゃない。だからすぐわかっちゃうのよねぇ…♪」(くすくす…)
………。
しばしの沈黙――それを先に破ったのは顔を真っ赤に染め上げたネンドールのほうだった。
「し……んちょう…ね…。あ~あはは☆そ~なんだ、うん~三ミリくらい……ううん…いっ…セン…チ…。」
途中から苦しくなってきたのか素直に白状し始めたネンドールであった。ちなみに三ミリは『嘘』で、
一センチが真実である。ちなみに彼女は身長の話でごまかそうとしていたのだが、ペルシアンの新手の
誘導尋問だと途中で気づいてからは…胸の話として素直に受け入れたのだ。
「へぇ~一センチも……ほ~んと憎らしい乳だこと……。」
椅子に腰掛けなおし、その場に縮こまってしまったネンドール。これで女バレの皆から弄られる事が確定した
かと思うと、彼女の気は重いわけである。……そこにペルシアンの魔手が伸びているとも知らずに……
ぷにゅ。
「―――ッ!!」
ペルシアンの右手の人差し指は、無防備なネンドールの左の、柔らかいつき立ての餅のような感触の乳房へ――
「ひゃぁぁぁぁぁぁっ!」
当たり、そこに起爆スイッチがついていたのだろうか、椅子を横に蹴り飛ばして後方へ大きく飛び退くネンドール。
「うっひぇっひぇっひぇ……」
絶対に女性が発さないだろう怪しい笑い声を上げて、キッチンから回り込み、リビングへと向かうペルシアン。
本日のレース、開催である。
「やぁぁぁぁだぁぁぁぁこないでぇぇぇぇぇ!!」
「うにゃぁぁ~ッ!揉ませろぉ~!!」
結局ペルシアンの暴走が疲弊して沈静化するまで、
二人はL字になっている赤いソファの周りをぐるぐると走り回るハメになった――。


昨日のうちに洗濯機で回しておいた洗濯物は…干した。昔からつけている、鈴のついたチョーカーも、
お気に入りの南京錠のデザインのネックレスもつけた。腕時計――右手に填めてる。
鞄の中身は忘れ物なし!髪は梳いてセットした!化粧はまぁ…殆どしないから適当。忘れ物なし。
最後にフレグランスを一振り。ジャスミンとローズの香りが軽く鼻腔を掠める。
どこにもない――これは私のオリジナルブランドの中で…一番のお気に入り。
それにしてもタウリン千ミリグラム配合ね…このドリンクあんまおいしくないけど…よし、栄養補給完了!
――こうして、今日から再び、彼女は女子高生として学園へと赴く。
今日からは三年生――家の廊下を歩く姿を、少し背伸びしてモデルっぽく…威風堂々と歩く。
「おまたせもちこ!行きましょう。」
後ろ手で扉を閉めると、そこから見える道路には、同じ制服を着た学生の登校風景が見えた。
今日から新学期……新たな生活は、此処からがスタートラインだ。

- 続く -
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