5スレ>>108


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君にも見える トキワの森
遠く離れて リーグに一人
リーグ制覇の使命をかけて
四天王まで あとわずか
マスターの指示を胸に秘め
帰ってきたぞ 帰ってきたぞ
バタフリー

想いを篭めて 狙った敵は
とくこう技の おくりもの
空中舞って 銀色の風
懐切り込み サイコキネシス
リーグ制覇を果たすため
帰ってきたぞ 帰ってきたぞ
バタフリー

大地の上に 崩れる萌えもん
戦いすんで また一歩
はるか彼方に見据えるものは
あれが あれが チャンピオン
帰ってきたぞ 帰ってきたぞ
バタフリー



「以上、『帰ってきたバタフリー』 作曲は 嫁に3939氏改め 鳥嫁氏でした。
 …よかったな、バタフリー」
「こんないいものを…恐れ入ります。ありがとうございました」
「…では、本篇をどうぞ!」




      












『さぁ、第79回となる萌えもんセキエイリーグ、予選大会がついに始まりました!
 今回の予選は、パートナーとともに1人一つ用意された聖火を守りながらチャンピオンロードを抜けて、
 大スタジアムの聖火台に焔をともす速さを競うサバイバルレース!はたして、何人が生き残り、夢の本戦へと進むことができるのでしょうか!』

「…始まったな」
「やな。なかなか面白そうな事しとるやん?これやったら予選出るのも悪くなかったかもなー」
「うーん、でもなんか、トレーナーの質がバラバラな気がしますね」

俺達は今、セキエイリーグ本部の用意してくれた宿舎でテレビ越しに予選を眺めている。
今いるのは、シャワーズとフライゴンだけ。他の面々は、外へ出て巨大スクリーンで観戦したいらしい。(フーディンとバタフリーが付き添っているので心配はないだろう)

「たぶん…外見だけ取り繕ったバカだろう。リーグに出たという実績だけでも、それなりの評価は得られるからな。
 そのくせ、参加資格はわりあいハードルが低いときてやがる。…そう言う奴らをふるい落とすための予選なんだろ」
「厳しい事言うなぁ、我らがマスターは」
「…ああいうのが万が一生き残ったりしてるとさ、俺は正直気分は良くないな。努力した奴が馬鹿みたいじゃないか」
「けど、それもまた世の中の不公平というか、不思議なところというやっちゃな」
「ま、そうかもな…あと、いい加減離れろフライゴン。シャワーズ、お前もだ」
「嫌です♪」「だって暖かいんやもーん♪」

今の俺は、広い宿泊施設の寝室の一つのベッドに座り、正面のテレビを見ている。その膝の間にシャワーズがいて背中を俺に預け、
背中にフライゴンが抱きついている形…正直、なかなかに前後からいい感触が来てるんだが…それにしたって、軽く暖房も効いてるので暑い。
まだ春先だもんなぁ。毎年このリーグは開催されるが、年によって開催季節が変わる。コンディションの公平性を重視しているのか。

「シード選手でよかったかもな。こうやってのんびり予選を見物できる身分なんだから」
「そうですね。…8つのバッジには、こう言う意味があったんですね?」

萌えもんセキエイリーグ本戦へのシード選手登録条件。それは、

・ジムリーダーであること
・カントー、ジョウトどちらかの8つのジムバッジをすべて集めること
・国内、別の地方のランキングで特定以上の成績を収めること

おおよそこれくらいか。今回のシード権獲得選手は、16+7人。ただし、不参加表明者が二人いる。
サカキと…名も知らない誰かだ。…そもそもサカキは、もうどこかへ高跳びして姿をくらました。
今頃どこかでまた何か企んでいるかもしれないし、案外パートナー達とのんびり過ごしているのかもしれない。どっちでも俺には関係ないが。

「ああ。…お、あの選手のライチュウ、似てねぇ?」
「あ、ホントだ。私達のところと見た目がそっくりですね。同種族だからでしょうか」
「世界には自分と同じ顔が3人はいるっちゅー話やからなぁ…」

3人でくっついたままテレビを眺める。だから暑いってのに。

「てかさ、明日から試合なのに俺達のんきだよなぁ…普通なら、最終調整とかしないか?
 もう流れと言うかノリでこんな感じだけど」
「大丈夫やて。無理に気ぃ張っても力は出ぇへん。自分のペースでゆるーくやってもええんちゃう?」
「そうですね。下手に気合を入れるよりは、こっちの方が私達らしいかもしれません」

「…ま、そーかもな。そろそろ昼になるし…みんな呼び戻して昼飯にしようか。
 フライゴン、荷物持ち手伝ってくれ。シャワーズはみんなを迎えに。…そうだな、フーディンかフシギバナをこっちによこしてくれればいいかな」
「はいな!」
「わかりました」




      *  *  *


「…はい、注文は以上です。はい」

高原内フードコート、『ウインディーズバーガー』。9人分という大量の注文にも嫌な顔一つせず対応してくれる、
店員のウインディの笑顔が眩しい。まぁ少し時間はかかるようなので、番号札をもらって適当な柵を背にのんびりと待つ。
…選手用食堂で食べてもいいんだけど、情報収集の目が常にどっかで光ってやがる。…買物はなるべく俺一人で行くべきかもな。

「ミカン、あたしコレ食べたいな」
「そう…それじゃあ今日はここで買いましょうか、アカリちゃん」

ふと目をやると、白いワンピース姿の少女と、パートナーらしきデンリュウが並んで注文をしているところだった。
…あまり量が多くないからか、ほどなくしてテイクアウトの袋を貰ってカウンターから離れる。
丁度振り返った彼女と、目が合った。

「………?」
「………?」

お互いに曖昧に会釈を交わす。…どこかで見たような顔なんだけどな。

「マスター、知り合いかい?」
「…いや、初対面のはずなんだが…どっかで顔を見た気がするんだよなぁ…」
「ひょっとして、どっかですれ違ったとかちゃうの?」
「んー…違うだろうな…写真か何かで…いいや、そのうち思い出すだろ」

ほどなくして、ウインディが9人分を持って来た。…重そうだ。とりあえず俺が両手に3人分ずつを持ち、
残りを2人に任せる。…フライゴン、なんか熱のこもったまなざしでウインディを見つめんな。たしかにふかふかしてそうだけど。

3人並んで、高原の道を歩く。
俺は両手に袋を、フライゴンは両手で持って少し上を飛び、フーディンは念力で袋を自分の真上に浮かせながら歩いている。

「…マスター、この前雑誌にあったゴシップ記事、知ってるかい?」
「なんだよ?」
「ウインディーズバーガーの裏メニュー。面白いよ?ウェブでバックナンバー探せばあるんじゃないかな」
「あー、それウチ読んだで!ちょっと本気で行きたなったなぁ♪」

…フライゴンが行きたくなる…アレだな。付き合いは短いが、なかなかコイツの性格は分かりやすい。

「ま、その話は食べながらでもできるだろ。冷める前にさっさと戻ろうぜ」
「だね」
「やな」



      *  *  *


全員で適当な場所に座り、テーブルに買った物を広げて皆で食べる。
やっぱり、みんなで食べた方がうまいよな、精神的にも。

今度は寝室ではなく居間。こちらにもテレビがあるので、みんなで予選大会の結果を眺めている。
…どうやら、もうすべて終わっているようだ。

「ん、結構いける。…マサラには、まだないんだよな、この店」

「ライスバーガー…この発想はなかったな…意外と…」
「ん、やっぱこれやね。このポテトの揚げ方が…」
「確かに、独特の感じですね。私には難しいかも」

「どうしても、虫向きではありませんね…おいしいですが、食べにくい。すごく…大きいです…」
「これは食べにくいというか…我としては小さいな。味はいいのだが」

「ライチュウ、そーす、ついて、ます…」
「え、どこどこ?」
「ほら、これこれ。えっと、ティッシュないかなー?」

すごく…カオスだ。

「…!マスター、これ!」
「来たか」

テレビにうつっているのは、本戦トーナメント表。
全選手70人前後が、ずらっと並んでいる。…つまりは、ここに乗っている人間は今年のカントー・ジョウトにおけるトップクラスという事だ。
…まぁ、リーグに出なくて俺たちより相当強いやつらもいっぱいいるだろうけど。

「マスター、君の名前もあるようだよ」
「対戦相手は…アサギシティ、ミカン…って書いてあるな。マスター、しっとる?」
「いや、多分知らない。…けど、ホントにジムリーダーはみんないるんだな。
 タケシやカスミ、エリカにキョウ、ナツメ…カツラ…あと、マチスだっけ。ゴミ箱しか記憶になくてな」
「マスター、それはひどいよ…?」

ともかく、試合日程をチェックする。俺達の試合は…開会式の後、第3試合か…早いな。

「明日の…まぁ、昼前くらいだろうか。スタジアムは四天王が入るまでは第2と第3しか使わないらしいから、
 普通に考えて午前中になるだろう。朝はしっかり準備しておくように」
『はーい』






      *  *  *


夜。なんとなく寝る前に外に出てみると、案の定廊下の談話室に一人いやがった。

「…寒くないのか」
「ホテル支給のパジャマを甘く見てはいけないよ、マスター」

スタジアムが少し遠くに見える窓。その景色を眺めながら、フーディンと俺は同じソファーに座る。

「マスター」
「なんだ?」
「いよいよ明日だけど…緊張とか、してない?」
「してるさ、凄くな」

今までに経験した事のない戦いだ。観客や、スタジアム、ルール…気になる要素は多すぎる。
…ひょっとしたら、リーグの実力に自分では追いつけていないのではないかという懸念さえ抱いてしまう。

「緊張、って言うのかな。怖いだけかも」
「…私もだよ」
「?」

ふと見れば、フーディンの肩が僅かに震えている。コイツのこんな所を見たのは、…初めてだろうか。

「負ける事が、怖い。実力を出せない事が、怖い。…マスターを、負けさせてしまいそうで、怖い。
 いや、単に戦う事が怖いだけかな。…何を言い訳してるのだろう、私は」
「…フーディン…」

…そうだよな、コイツだって戦いは楽しいものじゃない。別に、好きで戦っているわけでもないだろう。

「お前が戦いたくないならないって言ってくれ。…別に、お前達が戦う理由なんてどこにもないんだ」
「戦いたくない、って訳でもないんだけどね。…ただ、流石に今回はちょっと自信が揺れてるだけさ」
「…今までほとんど負けたことのないお前がか?」
「不敗は無敵じゃないんだよ」

「そりゃそうだ。世の中に無敵なんてあってたまるか」
「全くだね」

「…負ける事、傷つくことが怖いのは誰だって一緒だ。俺も、お前も」
「その通りだ。…マスター、明日はよろしく頼むよ」
「任せとけ。みんなで決勝まで行くぞ」

「それじゃ、私はお邪魔みたいだから退散するよ。おやすみ、マスター」
「ああ、お休み。…?お邪魔?」

去っていくフーディンの言葉の意味が分からず部屋の方を振り向くと、一人、そこにいた。



「シャワーズ?」
「…マスター」

すとん、と先ほどまでフーディンがいた場所に腰を下ろすシャワーズ。

「どうした?…眠れない?」
「いえ、少し、寝る前にマスターとお話がしたくて」
「そっか」

先ほどまで隠れていた月明かりが、俺とシャワーズを照らす。夜のスタジアムをぼんやり眺めながら、
なんでもないような話をしていた。

「…とうとう、ここまで来たんですね」
「そうだな。長かったような、短かったような…大変だったよな、色んな事があって」
「でも、楽しかったですよ。少なくとも、私は」
「俺もだよ。お前と一緒にいられて、お前に会えて、本当に楽しかった」

「…マスター、このリーグが終わったら、どうするんですか?」
「考えてない」
「えぇっ!?」

…いや、ホントに思いつかないんだ。

「どうしようかなぁ…ただ、家でニートってのは流石に嫌だからな。まだ冒険を続けるか、
 何か仕事を探すかだな。…萌えもん関係の仕事があればいいんだけれど」
「…………」
「シャワーズ?」

反応がない。うつむいているから、顔も見えない。

「マスター…私達は、どうなるんですか?マスターが仕事についたり、新しい旅に出たら…」
「どうするも何も、連れていくに決まってんだろ」
「でも、でも…!私より強い人がいたら、私を置いて行ったりしませんか?
 …私は、一人になんてなりたくないんです。…それに、私と一緒にいてくれるのはマスターだけなんです。
 お願いだから―――」
「うるさい。馬鹿かお前は」

目を潤ませて、体を震わせたシャワーズを思いきり抱き締める。

「誰がお前を置いて行くだと?俺が誰だか分ってるのか?お前を拾ったのは俺なんだ、今更置いて行くかよ」
「で、でも…」
「あぁ、もう!ならこれでどうだ!」

一度シャワーズを離して、ポケットに入れていたある物を取り出し、シャワーズの左の手をとる。

「…これ…?」
「見てわかるだろ、指輪だよ」
「…えっと、左手の…薬指…って!?マスター、ここここ、これ…意味、分かってるんですか!?」
「分かってなかったらわざわざ其処を選んでつけるか普通。…まだ、婚約だけどな。
 ちゃんと職業が決まって、身分が落ち着いたら――」


「だ、だって、私萌えもんですよ!?」
「実は俺の義母さんの親も萌えもんだそうだ」

「子供とか、生めませんよ!?」
「忘れてるかもしれないが、俺はあの家の養子だ」

「周囲から、変な眼で見られるかもしれませんよ!?」
「だからどうした。もともと俺は犯罪者の子供なんだぜ?」

「ほ、他のみんなは…」
「実はフーディンとフシギバナには話が通ってるんだ、これが。…別に、今すぐ結婚ってわけでもねーし、
 いっそみんなでどっかに住んじまうのも楽しそうだな」

「…私で、いいんですか?」
「何言ってんだ、お前は」

なるべくなら、言いたくない。…恥ずかしいし。けど、言わなきゃ駄目だって分かってる。

「俺は、お前じゃないと嫌だ」

…一瞬、時間が止まったかと思った。と思ったら、いきなりシャワーズの眼から涙が零れおちた。

「……嬉しい…」
「って、おい!?泣くなよ!」
「だって、嬉しいんです。…何か、ホントに一緒にいられるんだな、って…」

「…馬鹿」
「あっ」

ぎゅ、と。もう一度きつく彼女を抱き締めてやった。

「ホントもウソもねぇよ。…ずっと一緒だ、絶対」
「…はい。…明日から私、もっともっと頑張ります」
「そうだな……みんなで、勝つぞ」
「はい!」




      *  *  *


「…来たね」
「来ましたね」
「来ちゃったね」
「来ちゃいましたね」

「…お前ら何してんだ」
「いえ、なんとなく」
「理由は必ず必要なものでもないよ、マスター」

…というわけで、来てしまった試合当日。…俺は今、スタジアムの下、控室にいる。
先ほど開会式も終わって、後は出番を待つだけ。

「…とりあえず、本戦も四天王が入るまでは、3VS3のタイマンの形になる。
 第一戦の相手のミカンは、鋼使いだと聞いているからな…出すメンバーを今決めるぞ」

ちなみに、もともと出すメンバーは決めている。

「まず、フライゴン」
「はいな」

「バタフリー」
「はい」

「フーディン」
「了解」

「…みんな色々言いたい事はあるだろうが、とりあえず今回はこの3人だ」
「マスター、どうして私を使ってくれないんですか!?」

シャワーズの問いに、フーディンが答える。

「シャワーズ、それは…死亡フラグ回避のためなんだ」
「はい?」
「たいてい結婚を控えた者が直後に戦闘になると、高確率で死亡するんだ…恐ろしい事に」
「ええっ!?」
「しかしここで戦闘をしなければその確率は格段に下がる!」
「そうなんですか!?」

…俺に聞くな。




『さぁ、ただいまより始まりますのは、一回戦三試合目、
  アサギシティジムリーダー・ミカン選手 対 マサラタウンシード選手・クリム選手の試合となります!
 どちらもかなりの実力者、白熱した戦闘が期待できそうです!』

…実況の声が素晴らしく響く。
空は快晴。時期としては暖かい。…仲間のコンディションも十分。この上なくいい条件だ。
係員に促されて、バトルフィールドへ出る。

フィールドの構造は、俺達トレーナーがいるテラスのようなトレーナーベースから一段下に、
バトルフィールドが展開されている。このフィールド、様々な条件に変化するらしい。…金かかってんなぁ。

『先に入場しますのは、マサラタウン――クリム選手!圧倒的な実力でカントージムリーダー勢を下し、
 文句なしのシード選手に認定された若き戦士!今回手持ちには多彩なタイプを揃え、万能的な編成に仕上がっています!』 

「マスター、すごい事言われとるで」
「ほっとけ、嘘は言われてないんだ」


ベースの端に立つ。腰ほどまでの柵があるが、ボールを投げるのに支障はないだろう。


『さて迎え撃つのは、アサギシティジムリーダーであり、薄幸の美少女ミカン選手!その可憐な容姿とは裏腹に、
 使用するのは頑丈かつパワフルな鋼タイプ!パワーで敵をねじふせる!』

「…むしろ可哀想なのは向こうだろ…常識的に考えて」
「女の子なのに…不憫です…」
「まさに薄幸の美少女やな」
「誰が上手い事言えと…って、あの子…昨日の」


間違いない。フィールドを挟んで向かい側にいる彼女は、昨日ウインディーズバーガーで会ったあの少女だ。
相手もこちらに気づいたようで、軽く礼をしてきた。…こちらも思わず礼を返す。

『さぁ、今回の試合もお互いに三体の萌えもんを選び、一対一で対戦させる形式となります。
 戦闘中の道具における援護・萌えもんの交代は禁止されていますのでご注意ください。
 それでは、まずは一体目の登場だ!』

「頼むぞ、フライゴン!」
「任しとき!」

『クリム選手はフライゴン! 対するミカン選手は――ハガネールだ!
 ドラゴン対鋼!これは一戦目から面白い組み合わせ!まさに、最初からクライマックスです!』


フライゴンとハガネールが、フィールドの中央で向かい合う。…審判が、旗を掲げた。
同時に、バトルフィールドが変化していく。…荒れた大地に、大きな岩…荒野か。


『合意と見てよろしいですね!?

 ただいまこのバトルは全国萌えもん協会における公式バトルと認定されました!

 ミカン選手のハガネール対クリム選手のフライゴンの待ったなし一本勝負、

 それでは――萌えもん・ファイトォッ!!』


…それなんてメダロット?っと、ツッコミやってる場合じゃねぇよな。


「フライゴン、奴のテールに気をつけろ!イワークより格段に重い一撃が来る!」
「おっしゃ!…ウチの強さは、泣けるでぇ!?」

「ハガネール、お願い!」
「…うん!」

「ドラゴン…」
「アイアン…」

互いに相手に向かって突進、それぞれの武器を振りかぶって攻撃態勢へ――

「クローッ!」「テールっ!」

――激突音!!


吹き飛んだ土煙の中から、二人が同時に飛びだす。威力は互角。…だが、持久戦になれば防御力で不利だ。

「フライゴン、距離をとれ!近距離で打ち合っても時間の無駄だ!」
「はいな!」

ハガネールの第二撃をかわして、フライゴンが低空から飛翔、相手の真上をとる。

「鋼には炎、やったなぁ…そぉりゃあぁぁっ!!」
「ああああっ!?」

真上から、叩きつけるような勢いの火炎がハガネールを襲う!
鋼タイプに炎は大敵…これで決まるか!?

『ハガネールの射程圏外から、フライゴンの火炎放射ーっ!効果は抜群!
 まさに炎の滝!熱い、熱すぎる!接近戦の不利を見切り、いち早く射程圏外からの攻撃に切り替える判断力!
 クリム選手、カントー制覇の実力は伊達ではありません!』


…さぁ、どう出る?まさかこのまま放置とは来ないだろう…フライゴンもそれは分かっているようで、
時々炎を止めて相手の動きを警戒している。

ミカンが身を乗り出した…来る!

「…ハガネール、りゅうのいぶき!」
「は、はいっ!…えーいっ!」

「おっとぉ!?あ、あぶなーっ…」

かろうじてかわしたフライゴンだが、その体に何かが巻きついた。
あれはハガネールの…体の特徴ともいえる、ポニーテールか!?

「…ど、どこまで伸びとんねん…ゴム製か何かかいな…」

軽口をたたくフライゴンだが、確実にハガネールの方に引き寄せられている。
…空中のフライゴン、地上のハガネール…放っておいても、接近戦に持ち込まれるだけ…なら!

「フライゴン、引っ張られるなら突っ込め!」
「!…その発想はなかったわ!行くでぇぇっ!」
 
『ミカン選手の的確な指示により、ハガネールが見事にフライゴンを捕らえました!
 しかし敵もさるもの、クリム選手は即座に接近戦を指示!引き寄せられるならこっちから突撃!』

「加速付き、ドラゴン…クローッ!」
「あうっ!」

フライゴンは見事にやってくれた。ダメージはそれほどでもないようだが、テールからは解放されたようだ。
さらに、このチャンスを逃さず背後にまわって後ろからハガネールをつかんだ!

「こ、この…アイアン…うっ!?」
「おーっと、そうは問屋がおろさへんってな!」

ぎちり…と、ハガネールのポニーテールにからみつく物体。フライゴンの尻尾が、その動きを抑えていた。
さらに、気合いとともにフライゴンはとんでもない事をやってのけやがった。

「ふん、ぬぅぅぅりゃあぁっ!」

『な、なんとーっ!フライゴンがハガネールを持ち上げたーっ!?何という怪力、
 鋼タイプの重い体を持ち上げている!しかも、自分の尻尾でアイアンテールを封じています!これでは手も足もでないっ!』

「お、重い…?そんな…私…」

あ、ハガネールが涙目になってる。…そりゃそうか、女の子が重いなんて言われたらなぁ…
…けどまぁ、バトルの手を抜くわけにもいかないし…フライゴンに頑張ってもらうしかないか。

「気にすることないて、アンタ、見た眼より相当軽いで?普通の女の子と同じくらいや♪」
「ほ、ホント?」
「ああ。ホンマや。…だから…投げるのには、楽なことこの上ないな♪」
「え、え、え、…えええええええええええええっ!?」

『と、飛んだぁぁぁぁーーーっ!フライゴン、ハガネールをつかんだまま自らの領域へと飛翔!
 まさか、これは…地球投げかーっ!』
「否っ!!」

上空から、フライゴンの力強い声。同時に、ハガネールが落ちてきた。
咄嗟にテールをつきたてて着地したため、ダメージはあまりないらしい。…フライゴン、何をするつもりだ…?

『あ、ああああ!?フライゴン、何か持っている!大きいぞ、何だアレは!?』



「ロ ー ド ロ ー ラ ー や ー っ ! 
 
 
 無駄無駄無駄ァブッ潰れよォッ!!」



「どっから持って来やがったそんな危険物ーっ!!!!」
『なんという、なんという事だ!本当に、どこから出したのか全く分からない!スタジアムの外にはなかったはずだ、
 なぜロードローラーがあそこにあるんだーっ!?』

いや、そう言う問題じゃない!そもそもあんなモノ落としたら普通にハガネールだって命が危ないぞ!?
って言ってる間にロードローラーが――

「URYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」

大きな轟音。…ハガネールの目と鼻の先に、重機は鎮座していた。
そのハガネールは…あ、倒れた。気絶したな。当然といえば当然だけど。

『ハガネール、戦闘不能!よって第一戦は、クリム選手の勝利となります!しかしあのロードローラーはいったい何だったのか…
 …いえ、それよりも、次の戦闘を行います!両者、二体目を準備して下さい!』





「…バタフリー、頼むぞ」
「はい、分かっています」

「ジバコイル、お願い」
「はい」「あい」「はーい」

荒野のフィールドに、バタフリーが降り立つ。相手は――ジバコイル!コイルの最終形態か!

『第二戦は…クリム選手、バタフリーを投入しました!対するミカン選手は、ジバコイルを繰り出した!
 タイプの相性では、バタフリーが不利…しかし、マスターの作戦能力は先ほどの戦闘で証明されています!
 これはいい戦いになりそうだーっ!』

「…バタフリー、分かってるな?」
「はい。まともにやれば、勝てる相手ではありませんね」

スタジアムを見渡す。…うん、行ける。

「ここのスタジアムは、すり鉢状に中央に向かって風がゆるく吹いてる。…お前ならできるだろ?」
「ええ。マスター、すぐに勝利を持ってきますね」
「期待してる」



『―――萌えもん、ファイトォッ!!』

…とはいったものの、正面どころか多少の絡め手では敵うまい。俺の作戦も、確実とは言い切れない。
ジバコイルは、攻防に優れている上に、その索敵能力が非常に高い事が脅威となる。

バタフリー、お前の実力次第だ。…頼むぞ。



『さぁ、開始直後からミカン選手のジバコイルが攻める攻める!左右のコイルの雷撃は全くとどまるところを知りません!
 クリム選手のバタフリーは防戦一方だ!しかしこちらも巧みに回避を続けています!これは一見膠着状態だ!』

「…………簡単に隠れさせてはもらえませんか」
「みぎー」「ひだりー」「はっしゃー」

『おっと、岩陰に隠れました!これなら電撃は当たりません!バタフリーどう出る!?』

この作戦は、静かに、気づかれないように行わなくてはいけない。この行動を勘づかれてもあまりよくない。
しかし、なるべく早い方がいい。遅くなればなるほど、この作戦は相手にばれやすくなる。

「…19、20、21…」

岩陰の見えない場所でゆっくりと羽をはばたかせ、時間を稼ぐバタフリー。

――そして、変化は突如として訪れた。


『お、おぉぉぉっ!?いきなり、ジバコイルが地面に落ちたぁあっ!どうなっているんだ!?
 あれは…眠っている!眠り粉です!いつの間にか眠り粉が撒かれていました!
 こんな事が出来るのは対戦相手のみ―――なるほど、バタフリーは物影で眠り粉を放出していたのかーっ!!』


…その通り。スタジアムの構造上、風はほとんど常に中央に向かってすり鉢状に吹いている。
すなわち、風の収束点に敵を誘導し、後は物陰から眠り粉を放てば、軽い粉は風にのって敵へたどり着き、その動きを停止させるわけだ。


『こ、これは――ジバコイル、戦闘不能!よって、バタフリーの勝利となります!
 何という事だ、有効な戦略とはタイプの不利まで覆してしまうものなのか!これは予想外のダークホースが出現だー!
 さて、次でラストとなります。両者、3体目の準備をお願いします!』



「…フーディン、お前がシメだ。…勝って来い」
「任せておきたまえ」

「ミカン、あたしが行くよ!」
「アカリ…うん、お願いね」


『―――ファイトォッ!!』


「それぇぇぇっ!!」

デンリュウが放つ無数の電撃が、フーディンを襲う。…だが、この程度で慌てるようなこいつじゃない。

「ヌルいね」

瞬間的にフーディンの姿がかき消え、別の場所に現れ、また消えて、現れ、電撃をことごとくかわしていく。

『さぁ、第3戦ものっけから熱いっ!デンリュウの放つ稲妻の弾幕を、焦りもせずテレポートで回避!
 百を超える電気の弾丸が、一発たりとも当たらないっ!無敵BGMでも流れているというのか!?』


…ねーよ。フーディンを見れば、回避できなさそうな雷撃を念力ではじいていた。

「…それじゃあ、今度はこっちから行くよ!」
「ふぐぁっ!?」

ひゅ、と。フーディンが軽く拳を突き出すと、デンリュウがよろめいた。
…念力か?だが、ふつうのサイコキネシスにあんなモーションはないはずだが…。

「私が独自で開発した戦闘技術だ。念によって拳を作り、離れた相手を打つ。
 打撃としても念力としても使える私の新技術、名づけて『念拳』!」
「………」

…まんまじゃん…

ま、まぁ、名前の事は置いておいても、相当な効果があるようだ。

「あいにく私は君を倒すつもりはない。可愛い子に怪我をさせるのは嫌いでね。
 …降参、してくれないかい?」
「やだぁっ!」
「…そうか、残念だ」

フーディンが哀しげに首を振る。
そして、目が光った。ある意味、あれは狂気なのではないかとさえ思うほどに。


「ならば……君が!泣く(降参)まで!殴るのを!やめないっ!」


連打。連打。連打連打連打連打連打連打連打―――!!



…気付けば、フーディンの前には、気絶したデンリュウが転がっていた。

「…最後まで、降参せずか。いい根性をしているものだね」

『…何が、起きたのかはよくわかりませんが…フーディン、圧倒的な実力でデンリュウを下しました!
 これにより、3勝0敗でクリム選手の勝利となります!皆様、健闘した二人のトレーナーに、大きな拍手を!』

奔る歓声に適当に手を挙げて答えながら、軽くため息をはく。…なんか、ドッと疲れたな。

「…よくやったよ、みんな。これで、まずは1勝だ…フーディンのアレは凄まじかったけどな」
「まぁ…正直、やりすぎた感もあるけれどね。念拳では殴られた跡の回復は早いから、問題ないだろう」

「そっか。…部屋に戻ろうか。――なんか、初日なのにつかれちまった…」
「慣れへん環境やからなぁ。当然っちゃ当然やな。はよ帰って皆で休もか」
「…そうだな、帰ろう」












   つづく。
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