5スレ>>109


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「今日の練習はこれで終わる! 後は各自考えて行動するように!!」
「うっす!」

夕方、橙に染まる空の下を大きな声が飛び交う。
校庭の片隅で円陣を作っているのは野球部。その円の中心には、銀髪・小麦色の肌の萌えもん。

「モジャンボ、後はお前に任せたぞ。」
「わかりました、バシャーモ先生。」

バシャーモ、そう呼ばれた萌えもんは円陣を作る生徒のうちの一人、深緑の長髪・ピンクのバッティンググローブをはめている萌えもん、モジャンボに後を任せると、一人円陣を後にした。



バシャーモ先生。ここ、萌えもん学園の教師であり、野球部の顧問でもある。
主に体育を教え、熱血に、かつ爽やかに授業をするその姿に惚れる生徒も多い。
そのためか、バシャーモの机にはいつも何かしら手紙が置いてあるのだ。

案の定、部活から戻ってきたバシャーモの目に止まったのは机の上に置かれた数個の手紙である。

「今日も置いてあるな。」

その手紙を一枚一枚確かめる。
生徒からの悩みだったり、ラブレターでもあったり……
そして、一つ読み終えると紙を取り出し、つらつらと書き連ねる。
バシャーモは内容に関わらず、全ての手紙に対し返答をするのだ。

「…ん? ウツボット先生から…? 何々…『今度教師達で行く飲み会があるのですが、参加しませんか?』……」

バシャーモは顔を上げ、ウツボット先生の机がある方を見る。
いない。おそらくまだ部活の最中なのだろう。さっき、校庭で水圧ロボット飛ばしてたような気がしないでもないが……

「…さてと、では見回りに行ってきますね。」

バシャーモは他の先生方に声をかけると職員室を後にした。

夕刻の施錠、これはバシャーモの仕事の一つだ。
下校時間が近くなると各フロア、各教室を回り、扉・窓が閉まっているかを確認していく。
これをドサイドン教頭先生と一日交代で行っている。過去に一緒に戸締りしたのだが、ある時とてつもないものを見てしまってからはこうして日替わりで行っているのだ。

「おーい、下校時間が近いぞ。そろそろキリつけて帰宅しなさい。」

教室・廊下・生徒会室・実験室…校舎内に人がいるか確認し、いれば必ずこの言葉をいう。
生徒達はこの言葉で下校時刻というのを理解し、下校する。 一種の習慣にもなっていた。
そして、校舎の見回りが終わった後は外へ出て、体育館や武道場、屋上を確認するのだ。

「体育館はOK…と。さて、屋上見てから武道場だな。」

何故屋上か、本来校舎内の時に回ればいいのにと思う人もいるだろう。
しかし、これには理由がある。

「……ハッ!!」

バシャーモは一旦しゃがむと、思いっきりジャンプをした。
そう、バシャーモは跳躍力が凄いのだ。校舎を楽々飛び越える程度の高さまで跳べるであろうその脚力は屋上へ行くには十分だった。
屋上にスタッと降り立つバシャーモ。どうやら、屋上には誰もいないようだ。

「屋上よし…っと。」
「ハーッ!! テヤーッ!!」

ふと、大きな声が聞こえてきた。武道場から聞こえる勇ましい女性の声。

「…この声は…ゴウカザル先生だな。」

バシャーモはパッと屋上から飛び降りた。


――――――――
――――――
――――
――

「テイヤ―――ッ!!」

武道場ではゴウカザル先生が空手の形の練習をしていた。
ゴウカザルは空手部の顧問でもある熱血教師だ。
生徒達が帰った後もこうして、日々鍛錬を続けているのだ。

「…ふぅ、今日はこの辺にしておきましょうかね。」
「精が出ますねぇ、ゴウカザル先生。」
「!」

誰かの声にゴウカザルはピクリと反応し、入り口の方を見た。
扉に手をかけてニッコリ笑っていたのは、彼女のライバルでもあるバシャーモだった。

「……」

一瞬不意を突かれた様な表情を見せるゴウカザル。しかしすぐにその表情もなくなり反対に笑顔が見えた。
そして……ゴウカザルは声より先に体が動いていた。
明らかに獲物を狙うかのような間詰め。標的はもちろんバシャーモ。

「さぁ勝負ですバシャーモ先生ッ!」

ゴウカザル先生の言葉と間詰め後の正拳突きが発せられたのは同時だった。
バシャーモは咄嗟に逆手で突きを受け止める。

「いやいやゴウカザル先生、もう勝負始まってるようなもんじゃないですか…」
「四の五の言わず勝負ですッ!」

またも言葉と同時に発せられる正拳突きを反対の手で受け止めるバシャーモ。

「ほら、入り口付近ですし、もうちょっと広い場所に移りましょうよ。」
「いいえ! 戦いは何時何処で起きるかわからないのです! それならばこんな所で戦いになってもおかしくないはずです!」
「それはそうですが……よっ、」
「!?」

バシャーモは手を横へ受け流し、受身で武道場の中に入った。

「……これなら障害物もないでしょう。さぁ、始めましょうか。」

バシャーモは手を拱いた。

何時からであろうか。2人のバトルが始まったのは。
思えば出会った時からかもしれない。
今まで顔を合わせる度にゴウカザルは勝負を挑み、バシャーモは挑まれながら幾度となく退けてきた。
今回もまたそう。
おそらくこれはゴウカザルがバシャーモを『押し倒す』日が来るまでかかるだろう。

「ハッ! とぉッ! テイヤーッ!!」

次々に繰り出されるゴウカザルの攻め。それは休むこともなくバシャーモを狙い続ける。
バシャーモはそれを手・腕・脛等で防ぎ、ダメージを最小に抑えている。

(一昨日戦った時よりもちょっと重みが増してる…!)

日頃の特訓のせいか、ゴウカザルは初めて戦った時より既に数倍も強くなっていた。
鍛錬はしているもののゴウカザル程でもないバシャーモ。力の差は最初ははっきりしていたのだが、今ではほとんど大差もなくなっていた。

「かわらわりっ!!」
「しまった…!」

ゴウカザルの瓦割りでバシャーモの両腕ガードを弾き飛ばされた。
反動で足元がぐらつくバシャーモ。

「今だっ! インファイト!!」

ゴウカザルが隙を突き懐に突っ込む。

「ハァ―――ッ!!!」

初手の重いアッパーがバシャーモの腹に入った。バシャーモの体がタンと浮き上がる。
しかし、ゴウカザルの拳は攻撃を当てたのにも関わらず、感触がなかった。

「!?」

気付くと2撃目を入れる前に、バシャーモの体がさらに高く浮き上がっていた。
バシャーモの体はまるでアッパーを腹に喰らい、宙に浮かんでしまったようにくの字に折れ曲がって回転し、ゴウカザルの背後でドシンという音を立てて床に激突した。
結局2撃目をスカす形となってしまったゴウカザル。後ろを振り向くとバシャーモが激突した拍子にパンと起き上がった。
受身である。

「危なかった、あれを喰らってたら負けてましたよ。」

そう、バシャーモはアッパーが腹に当たったと同時に跳躍することでダメージの軽減を図ったのだった。

「さ、流石ですねバシャーモ先生! でも、まだまだこれからですよ!!」

体勢を立て直したゴウカザルは再び真っ直ぐに突っ込んでくる。

(突っ込んでくる癖、直ってませんね…。)

何回も戦っているのか、バシャーモにはゴウカザルの攻めの特徴を十分に理解していた。
突っ込みに合わせて避けるように上空へジャンプする。

「かかりましたね!!」
「!?」

それは、ゴウカザルも同じことだった。
何回も戦い、体で覚えることで相手がある行動をしたときの対処が出来る。初めは真っ直ぐだったゴウカザルも今ではこういうことも自然と出来るようになっていた。

「ジャンプ中ほど隙があるものはないですよ! きあいだま!!」

軌道の一定しない球体がゴウカザルの手から発せられた。

「しまった、避けれ…」

ドォーンという大きい音と共にきあいだまが弾け、あたりに煙が立ち込めた。

「どうです! 今日がバシャーモ先生を『おしたおす』日です!!」

煙が蔓延しているためバシャーモの様子がわからない。まともに喰らえば大ダメージの代物である。
煙が晴れるにつれ、影が見えてきた。
立っている。しかも、周りを風に包まれてバシャーモが立っている。

「……まさかこの技を使うことになるとは思わなかったな。」
「…!?」

バシャーモは頭をポリポリ掻いて気まずそうな表情をしている。

「『飛行』の力で、きあいだまを相殺させてもらったよ。」
「『飛行』の力…ですか?」

ゴウカザルの顔が少し強張る。何故なら、格闘は飛行に弱いからだ。

「風を身に纏い、相手に突っ込む技。これが、ブレイブバード。」
「ブ、ブレイブバード……」
「…どうしました? さっきまでの勢いが嘘だったような顔してますが……」
「い、いえ、何でもないです!!」
「さ、ゴウカザル先生。ここからが本番です。全力でお相手します。」

ゴウカザルには風を纏ったバシャーモが鬼のような存在に見えた。

「フ、フレアドライブッ!!!」



――――――――
――――――
――――
――


気付くと、天井を見ていた。

「女の方にはあまり手出したくないですからね。しかも、弱点の技となると尚更です。なので、こういう形を取らせていただきましたよ。」

ゴウカザルは未だに状況が掴めていなかった。
バシャーモの顔がすく近くにある。上半身を背中で押さえつけられ、襟首に手が回っていて、右手がバシャーモの体に引き寄せられて固定されている。
ゴウカザルが未だに自分の状況を掴みきれてないようなのでバシャーモはさらに話を進めた。

「先生ががむしゃらに突っ込んできましたからね。ですので、傷つけないように受け流しがてら足払いして寝技をかけさせていただきましたよ。」

その言葉を聞いてようやくゴウカザルは理解した。
要は、柔道の技をかけられたと。一本負けだということを。
バシャーモは受け流しながら上手い具合に手首を掴み、足払いして体落としし、そして袈裟固めをしたのだということを。

「さて、勝負はつきましたよ。今日はもう諦めてくださいね。」
「…はい、わかりました。」

バシャーモがサッと体をどかした。

「さて、武道場の方の戸締りよろしくお願いしますね、ゴウカザル先生。」
「…………」
「…? どうしました?」
「今度は負けませんよ!! あなたを『おしたおす』まで頑張りますからねーっ!!」
「あー…はい、わかりましたからよろしくお願いしますね。 あ、後一つ…」
「?」
「今度、先生方が集まって飲み会するようですよ。そちらまで情報回ってるかどうか知りませんが。」
「いえ、初耳です。」
「そうでしたか。私も出席するので、よろしければその席で色々と動きの指導をしようかなと思いまして。」
「いいえ、結構です!私なりに頑張って先生を『おしたおし』ますから!!」
「ハハ、わかりました。楽しみにしてますよ。それでは。」

そう言うとバシャーモは武道場から出て行った。

「……バシャーモ先生にまだあんな技があったなんて…! まだまだ特訓しないと……!」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ゴウカザル先生、強くなりましたね…。」

武道場から少し離れた場所で振り向くバシャーモ。

「とうとうブレイブバードまで使ってしまったな。この調子だと抜かされかねない。…俺も本気を出すことになるのかな……」

ほぼ沈みかけの夕日がバシャーモを橙に照らし、より一層悲壮感を漂わせた。




「…………それにしても誰だ?『押し倒す』の意味を間違えて教えたの……今度本人から聞いてみよう…。」
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