5スレ>>185

いつも通り、部屋のベッドでごろごろとしていると、下の食堂で何か音がする。
またギャロップが変なことでも企んでいるのだろうと解釈し、気にしない事にした。
そう考えた直ぐ後に、下からの音が消える。
変わりに、急いで階段を駆け上がる足音が聞こえてきた。
足音は止まり、扉の向こう側から声が聞こえる。
「マスター。居るわよね?」
「ああ。」
悪戯っぽくはなく、何となく急いだ感じに俺を呼んだギャロップ。
珍しいと感じ、ベッドから起き上がり、腰掛ける体制になった。
扉を開けて、ギャロップが部屋へ入ってくる。
背中へ手を回し、軽く赤面していた。
酔っ払って・・・というわけでもなさそうだ。
「マスター?今日は何日か覚えてる?」
手を後ろに回したまま、腰を屈めて顔をこちらへ寄せてくる。
「んっと・・・2月の13日だっけ?」
「マスターの体内時計、1日ずれているわよ。」
呆れ顔で言ったと思えば、直ぐに先ほどの表情に戻った。
「で、14日って何の日?」
「へ?誰かの誕生日だっけ?」
「・・・他にない?」
パッと答えが出てこない俺に対し、もどかしそうに腰を動かすギャロップ。
「14日・・・あ。」
「何?何々!?」
「近所のばあちゃんの誕生日だ。」
物凄くどーでもいい事を思い出し、口に出してみると・・・ギャロップは振るえ始めた。
謝ろうと思った瞬間、俺の体はベッドへ倒された。
胸元を踏まれ、ド迫力の煽り視線の状態にされた。
よく見ると、ギャロップが小さな箱を手にしている事に気づいた。
綺麗なラッピングが施された箱だ。
怒っているにも関わらず、あまり力を居れずに大切に持っている。
「マスターの・・・」
「あ、そうか、バレンタインか。」
何か言おうとしたギャロップに、被せるように俺は言った。
ギャロップは、箱を隠せていないことに気づき、急いで後ろへ隠した。
「そ、そうよ。早く思い出しなさいよ。まったく。」
そういうと、胸元を踏んでいた足を急いで退かし、俺の正面へ立った。
「ごめんな。あんまり縁のないイベントだから・・・」
取り合えずベッドから体を起こすと、ギャロップは赤面させながら、俺に小さな箱を突きつけてきた。
「い、今までありがとう。」
ぶっきらぼうに言うギャロップが、とっても新鮮に思える。
そんな彼女に、俺は軽く笑ってしまった。
「な、何よ。」
「ありがとう。これからもよろしくな。」
お礼を言いながら、ギャロップから小さな箱を受け取った。
「あ、当たり前じゃない。」
ギャロップは言葉の足りない事に気づき、顔を背けてしまう。
その仕草が、とても愛らしく感じ、俺は空いた手でギャロップの頭を撫でてやった。
手の感触に驚いたのか、ギャロップはこちらを向きなおす。
「ありがとな。」
面と向かってお礼のいい直しをした。
俺はギャロップの頭から手を退けると、箱の方へ視線を移した。
「ん、一緒に食べるか?」
「私はいいわよ、一人で食べて。」
「そういわずに、折角世界で一番美味しいチョコレートを貰ったからには、一番好きな奴と食べたいものよ。」
俺が言い切ると、ギャロップは驚いたように目を丸くした。
そして直ぐに、普段の悪戯っぽい顔に戻った。
「うふふ・・・何か一言たりないわよ。」
「世界で一番好きな奴と、ね。」
俺は、そう言いながらギャロップの頭を再び、撫でてやった。
気持ち良さそうに目を細めるギャロップを横目に、部屋にある小さな机の椅子を二つ引いて、座った。
机の上には綺麗にラッピングされた小さな箱。
それを囲むようにして二人は座る。

俺は決して忘れないだろう。
そのとき食べたチョコの味と、ギャロップの表情を。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年02月15日 20:27
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。