5スレ>>191

あるトレーナーの家の話。
日めくりカレンダーが見せているのは、13の字。不吉な雰囲気だがそういうわけではない。
2月の13日。そう、バレンタインデーの前日だ。
バレンタインデーというと、女性達が年に数回とない気迫と根性を見せる日。
その戦いは前日より始まる。そう、彼女達も例外ではないのだ。

青い髪の少女が、楽しそうにチョコを混ぜる。その横では、紫の髪の少女が歌を口ずさんでいた。
「ひゃくごじゅういちのよろこび~♪ひゃくごじゅういちのゆめ~♪」
「え、何その歌?」
「めざせ萌えもんマスターですよ。有名じゃないですか、知らなかったんですか?」
「も、もちろん知ってるわよ!知ってて聞いたの!」
いやいや間違ってるよ、と突っ込む人はいない。

2人はあるトレーナーの萌えもんである。が、その飼い主は今外出中。
というより今日に限っては、紫の髪の少女―モルフォンのお願いで、外出してもらうことになっている。
モルフォンは、毎年この日は、マスターに隠れてチョコを用意することに決めているのである。
マスターにとってはバレバレなのだが、その気持ちがうれしいのか断ったことは1度もない。
当然、青い髪の少女―アメモースは、その由を知っているわけがない。
そもそもアメモースは、今日という日までバレンタインデーを知らなかったのである。

それは、モルフォンが、毎年この日にだけチョコを用意する理由を尋ねてみたのが発端だった。
「アメモースちゃん…知らなかったんですか?
 明日は、バレンタインデー。女の人が男の人に、感謝や愛を込めて、手作りのチョコを送るんですよ。」
その話を聞いた瞬間、アメモースはモルフォンに食ってかかった。
「どうしてそんな重要なことを教えてくれないのよ!…あたしも作る!」

そういうわけで、モルフォンにチョコ作りを1から教えてもらっていたのである。
「アメモースちゃんも案外優しいところがあるんですね~。」
「ち、違うわよ!これは、その…マスターを餌付けするための作戦よ!」
そんなことを言いつつ、アメモースはチョコを型に流し込む。
モルフォンの指導もあって、とりあえず安全に料理ができているようである。
「あとは、冷やして固めて、おしまいです。」
「ふーん、割とすぐできたわね。えーと、冷やす冷やす…。」
アメモースはつぶやきながら、両手を前に突き出した。

「…アメモースちゃん?冷やすといっても…」
「れいとうビーム!!」

ガチンッ!
アメモースの手から放たれた一筋の光線は、見事にチョコを零下数十度まで一瞬で冷やした。
…台所の机ごと、だったが。

………

「ただいまー…って、うっ何だこれ。」
俺が家のドアを開けると、むわっとした熱気が部屋から飛び出してきた。
初春も近づいてきたというのに、部屋の中はまるで猛暑。あまりの温度差に、心臓発作でも起こしそうだ。
「何だよ、いったい何が…って、おぉッ。」
俺が不安なまま部屋に入ると、そこには案の定、驚愕の光景が広がっていた。
部屋の中は、熱気+湿り気、さらに床が水浸しという状態。
そして机の上には、この熱気の中で未だ溶けない氷の塊。
そしてそれを無我夢中に見つめるアメモースと、雑巾がけ真っ最中のモルフォンの姿があった。

…全く状況が読めない。とりあえずモルフォンにたずねてみよう。
「…モルフォン、何があったんだ?」
「あ、お、おかえりマスター。べ、別に何もしてないわよ?」
「あー、何だ?ってかお前呼んでないし。」
なぜか過敏に反応するアメモース。なるほど、こいつが何かしでかしたようだ。
「何をしたんだ?…言えよ。」
「な、何のことかなー?あはは…。」
「あの…、私が説明してもよろしいでしょうか。」
冷や汗か一仕事ゆえか、汗だくなモルフォンが、今まで起こったことを報告してくれた。
どうやら、チョコを作る過程でアメモースがれいとうビームを撃ったのが事の発端らしい。
れいとうビームを撃つ理由が分からんが、まぁそれはおいておこう。
「それで、氷を溶かすために、部屋を暖めているのです。」
「それで暖房か。今暖房は…40度!?」
即、エアコンのリモコンを16連射。
「バカかお前らは…ドライヤーを使えドライヤーを。」
「う、その手があったか…。い、いや、こっちのほうが効率が良いわよ!きっと!」
あくまでツンツンするアメモース、俺の意見を真っ向から否定しやがる。はぁ…ため息が出るな。

「で、これがチョコと。」
「そう!私が丹精込めて作ったのよ?」
とりあえず部屋の雑巾がけを終わらせて、3人そろって一息ついてから、改めて机の上の氷の塊を溶かす。
ドライヤーで溶かした氷からは、ちょっとゆがんだハート型のチョコが出てきた。
ボケっこなアメモースにしては、割とおいしそうにできているな。
「…お前1人で作ったのか?」
「Yes!」「No!」
「…なるほど。」
アメモースとモルフォンの意見が食い違ったときは、大抵モルフォンが白。
つまり、これはモルフォンが指導して作ったチョコということだ。
俺はその事実を確認し、安心しつつチョコを口に運んだ。
「…どう?おいしいわよね?」
不安と言うより、期待に満ちた目を輝かせるアメモース。
「…うん。キーンと冷えてて…これはうまいな。」
「でしょ!?やったー!」
アメモースは子供のようにはしゃいで喜んでいる。…やけに可愛い。
と、俺の視線に気がついたのか、いきなりもじもじし始めた。
「う、ま、マスターの餌付けが成功したから喜んでるのっ。悪い?」
苦しい言い訳だった。…どちらにしろ可愛いやつだ。

まぁ、今までアメモースは単にわがままなやつとしかとらえてなかった。
それが、こんな一面を見せてくれるとはな。素直にうれしかった。
バレンタインデーにはまだ早いが、俺には十分すぎる贈り物だ。
「ありがとう、2人とも。」
アメモースとモルフォン。これからもこいつらと一緒だと思うと、うれしいような、先が思いやられるような。

…ただ、チョコに砂糖が入ってなかったことは…忘れよう。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

※端書
初投稿にしてギャグ。こんなのでいいのか分かりませんが。
一応、アメモース=ツンボケ、モルフォン=おとぼけ、です。わかりづらい文で申し訳ない。
駄文ながら最後までお付き合いくださってありがとうございます。

書いた人:蛾

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最終更新:2008年02月15日 20:29
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