「よろしくな」
人間はボールから出された私に言った。
どうやら彼が私の主人らしい。
とりあえずよろしくと返しておいた。我ながら無愛想だ。
彼はやや渋った顔になる。それでも笑顔は崩さなかった。
隣にいるポケモンは彼のポケモンだろうか。
印象的な赤い瞳はとても穏やかだった。
ふぅん・・・
前に人間と一緒にいたポケモンに話を聞いたことがあった。
《人間と一緒にいて楽しかったの?》
《楽しかったね。戦いは辛い時もあったが、一緒に頑張れた》
《・・・どうしてここに?》
《いや、元々ここにいたのさ。主人が当時俺を捕まえてな。それは鮮やかなものだったぜ?
俺が若かったっていうのもあるんだけどな》
悔しがるわけでもなく、何処か嬉しそうな顔つきだった。
《でも、主人は体があんまり良くなくてな》
《・・・病気?》
彼はやや表情を硬くし、頷いた。
《旅自体も結構無理をして続けていたんだが、とうとう中断することになった。
その時主人は言ったんだ。『寝てるとこを見てても面白くないだろ?』ってな》
《それであなたは?》
《『そうに違いない』って言ってやったよ》
と、自慢の鎌を見ながら彼は誇らしげに言った。
《それでここに?》
《そうさ。まぁ、体でも良くなったらまた主人から会いにやってくるさ》
《そう・・・》
彼と彼の主人の関係が良いものなのかは私には分からない。
でも、彼の語る表情からは悪いものは感じなかった。
《おっと、またやってきたか。またな!》
ストライクは去っていった。
去った方向を見ると、人間がいた。
彼を捕まえようとしているみたいだが、投げたボールは中々あたらない。
しばらくすると彼は飛んでいってしまった。
・・・主人が来るのを待っているのだろうか?
「-はにらみつける・ねこだまし・メガトンパンチ・かみつく、か。
ねこだましで先制し、メガトンパンチで攻撃する、と。攻撃能力も高いし、優秀だな」
「そうですね。うちにはノーマルタイプもいませんし」
私の覚えている技らしい。人間の手には赤くて四角いものがある。
あれで分かるのだろうか。
そうだとしたら、私達ポケモンより、人間の方が分かっているのかもしれない。
「主人」
「ん? 俺か?」
頷きながら尋ねた。「私は戦うのか?」
「そうなるけど、嫌か?」
人間は特に表情を変えなかった。
「嫌じゃない。けど、この子が危ない時は・・・」
主人はとても嬉しそうに、了解したと答えた。
最終更新:2007年12月09日 15:23