さて、今日は何の日かご存知だろうか?
2月14日に行われる熱熱々な者はさらに熱くなり、寒い者はさらに寒くなる行事。
そう、バレンタインだ。
俺も今までそういった行事には無縁の日々だったのだが、今年はそうじゃない。
何しろ、家が騒がしいからだ。
一人部屋に残りベッドの上に寝転がる俺。
リビング・台所の方からはカチャカチャ混ぜる音と色々な声。
そう、萌えもん達がチョコレートを作ってるのだ。
色々心配ではあるが…
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「――ま、ますたー…?」
…おっと、いつの間にか眠っていたらしい…
目を覚ますと、ヤジロンが立っていた。
「…ん、どうしたヤジロン…」
「あ、あのぉ……ば、ばれんたいんちょこを……」
ヤジロンの手にはお世辞にも綺麗とは言えない包装で包んだチョコレートがあった。
「ん、ありがと。」
くちゃくちゃになった包装紙を綺麗に取り、中のチョコを取り出す。
「それじゃ、いただきます。」
「…………(ごくり…」
ヤジロンがじっと見る中、口の中へ放り込む。
甘みのある彼女らしい味だ。 ほんわかした様な味が口の中でじわっと膨れ上がり、至福の時を提供してくれる。
「…あの…ますたー、どうですか…?」
「うん、とても甘くておいしいよ。」
「わぁっ…! よかったぁ!!」
笑顔が弾けるヤジロン。
「かなり甘く作ったね。」
「うんっ! 本を見ながらいっしょうけんめい作ったんですっ!!」
「なるほど…勉強やさんだな、ヤジロンは。」
「ますたー、だいすきっ!!」
ヤジロンが飛び込んできた。
…うん、そういう風に飛び込んできてくれるヤジロン、大好きだ。
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コンコン……
夕方近くに部屋のドアを叩く音。
「…どうぞ。」
「……失礼するぞ……」
ガチャリとドアを開けて入ってきたのはカイオーガである。
「…妾の住む地域ではこのような風習はなかったからな…些か納得いかんのじゃが……ほれ。」
カイオーガが恥らいながらもチョコレートを差し出す。
プレゼントのように綺麗に包まれたチョコレート。
「御嬢、ありがと。」
「……べ、別に例を言わんでもよい…余興で作っただけじゃからな。」
「…ん、そうか。」
包みを開け始める。すると、途端に……
「そ、それじゃ妾は夕飯の支度をするからなっ…!」
慌てて部屋から出て行ってしまった。
「……? どうしたんだ一体……」
不審に思いながらもチョコを口にする。
ヤジロンのチョコとは正反対の、ビターチョコ。 大人の深き渋い味が口の中を突く。
「…うまいじゃないか……さては御嬢、上手くできたか不安だったんだな…」
後で、教えてやらないとな。 うまかったと。
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夜遅く。
もうそろそろ寝ようかという時。
ガチャリ。
ノックもせずに入ってきたのはウツボット。
「…ウツボットか。遅いじゃないか…」
「ふふ、寧ろ早いくらいですよ?」
ニッコリ笑うウツボット。さては日付が変わる直前に……まぁいいや。
「で、もちろん作ってたんだよな?」
「ええ、もちろん♪ ちょっと待ってね…………あった。」
ウツボットは服の中をまさぐり、袋に入ったチョコを取り出した。
「…お前何処に入れてんだよ…」
「私の体温で、微妙に溶けるくらいを保ってたのよ…♪」
…それ以前に、袋にべっとりついた液をなんとかしてくれ…
「…それじゃ、いただきます…」
少し不安になりつつも、口へ頬張る。
…ん? 不思議な味だ… ワインのようなアルコールを使ってるのはわかるけど…
このちょっと酸味のあるのは何だ? 果物か…?
「ウツボット、このチョコに何を入れた?」
「ブルーベリーと、ラズベリーを加えてみたのよ、おいしいでしょ?」
意外だな。ウツボットが味に拘るとは……しかし何だ、まるで体が熱くなってくる衝動は……
…ハッ、まさか…!?
「…ウツボット、それ以外に、何を入れた……」
「あれ? わかっちゃいましたぁ?」
「……俺の体が異変を起こしてるんだが?」
「ふふ、実はぁ…私の液もたっぷり入ってますよ…♪」
…予感的中…
「マスター、バレンタインって異性がいちゃいちゃする日ですよね…?♪」
ウツボット、明らかに確信犯だ…
…くっ、体が思うように……
「さぁ、夜をたっぷり、味わいましょ? マスター…♪」
…さては…最初からこうするために、わざわざ夜にしたのか……
「…っつ、ウツボット、謀ったな…!」
「ホワトデーなんて待ちきれませんもん…ほら、日付変わった今日が、マスターの私に対するホワイトデー…♪」
…だめだ、あまりの熱さに意識が遠くなりそうだ……
ウツボットが俺の上にまたがって…消化液を垂らして……
…俺、死ぬのかな……?
「ふふ、いただきまぁす…♪」
最終更新:2008年02月15日 20:46