5スレ>>215


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 二月十五日のバレンタイン


  時計の短針が十二時を示し、バレンタインになったばかりの十四日。
 皆が寝静まった頃にシャワーズが台所へとやってくる。
 できるだけ音を立てずに静かに動く様子は、萌えもんバトルなんかよりも真剣だ。
 最小限の明かりをつけて、ごそごそと棚からボールや泡だて器やハート型の型を出していく。
 テーブルにそれらと本を並べ終えたシャワーズは一つ頷き、冷蔵庫からチョコレートを取り出す。
 冷蔵庫の中には、すでに型に入れられ冷やされているチョコが数個並んでいる。
 これは昼間にシャワーズの仲間が主のために作ったものだ。
 一緒に作ろうと誘われたのだが、恥ずかしさのあまり断ってしまった。
 一度断ってしまうと、参加したくても声をかけづらく、興味のないように振舞ってしまった。
 結果、誰にも知られないように、真夜中にこっそり作るということに。

「これで準備はできたわ。
 さてチョコ作りに取り掛かろ」
 本を開いて作り方を探す。
 その際にこれであの人のハートは貴方のもの、という謳い文句が目に入り、
 妄想していてしまい、自らを抱き顔を赤くしてくねくねと動く。
 きゃーっと声を上げかけて、そんな自分に気づいて恥ずかしさのあまり、とけるで隠れてしまった。
 誰もいない台所にほんのり赤い水溜りが一つ。
 なかなかにおかしな光景だ。
 しばらくして我に返り姿を現す。
「え、えーとお湯を沸かして、その間にチョコを包丁で刻むのね」
 誤魔化すように作業を進める。
 誰もいないのに誰に対して誤魔化しているのか、それはシャワーズだけの秘密。
 サクッザクッとチョコを刻む音だけが響く。
 単調な作業にシャワーズの思考は、チョコを渡した主の反応を妄想し始める。
「ありがとう、嬉しいよシャワーズ。俺からのお礼は……なーんて、きゃーっ」
 今度は声を出してしまう。
 それに気づいて、またとけるで隠れる。
 こんなふうに妄想、とけるを繰り返してチョコ作りは少しずつしか進まず、完成する前に朝が来てしまった。

「マスターあげるー」
 シャワーズの仲間たちが次々と主にチョコを渡していく。
 主は嬉しそうに萌えもんたちからのチョコを受け取っていく。
 そして全員分もらって気づく、
「あれ? シャワーズのはないの?」
「シャワーズはこういうイベントに興味ないんだって」
「なんで私があげないといけないのよ」
 チョコを渡せる仲間が羨ましいが、そんなことは微塵も感じさせずに強がる。
「楽しみにしてたんだけどな」
「マスター味見してよー。自信作なんだよー?」
 シャワーズのことを気にしていた主は、腕をひっぱる仲間に注意が向き、せがまれるがままチョコを食べていく。
 美味しいよと満面の笑み浮かべる主を見ていられず、シャワーズは部屋を出て行った。

「今日は完成させる!」
 頑張るぞと気合を入れたポーズでシャワーズは台所に立っている。
 昨夜と同じように、皆が寝静まってからシャワーズはチョコを作り始めたのだった。
 シャワーズの脳裏に浮かぶのは、昼に見た主の笑顔。
 今度は、自分の渡したチョコであの笑顔を見たいと、チョコ作りにも熱が入る。
 再び妄想ととけるを繰り返していくが、なんとか夜明け前に完成させることができた。
 二日続けての徹夜はつらいが、高い達成感が心を満たす。
 短い睡眠もドキドキとワクワクで削られてしまった。

「マスター」
 居間で本を読んでいた主に、チョコを後ろに隠した状態で近寄るシャワーズ。
「これ、あげる」
 なんでもないように差し出すのは夜明け前に完成したチョコ。
 完成させるのが精一杯で、包装することまで気が回らなかったのでむき出しだ。
「興味……なかったんじゃ?」
 呆然と驚きが入り混じった表情で尋ねる主。
「私からもらえなくて寂しそうだったからよ。
 大切に食べなさい」
「うん、ありがと」
 そう言って主はハート型のチョコをかじる。
 浮かべた笑顔は、昨日と同じもの。
 シャワーズの心にも嬉しさ浮かび溢れて、表情に笑顔となって表れる。
 
 一日遅れてもチョコはチョコ。
 気持ちが込められていれば、いつでもバレンタインだ。
 少なくとも当人たちは満足しているので、それでよかった。
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