5スレ>>216


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*注:ヤンデレです。最後にえちぃ表現ありです。そういうのが苦手な方は、閲覧をご遠慮下さい。



狂愛、という言葉をご存知だろうか。
特定の人物に対する思慕の情が、時を経て過剰なものとなり、やがて狂気の沙汰へと至ってしまうことである。
その想いが深ければ深いほど、想う期間が長ければ長いほど、その狂気は極端に先鋭化し、肥大化し、いずれ暴発する。

これは、ほんの少しのボタンの掛け違いが生んだ、少女の悲しい恋のお話。


【ずっと一緒にいようね】


少女は、ただ悔しかった。
かけがえのない仲間だと思っていた。
気の置けない親友だと思っていた。
喧嘩をすることはあっても、心から憎んだりしたことはなかった。
だが今は、あの言葉が脳裏に焼き付いて離れない。

『……渡さない。あなたにマスターは、相応しくない』

少女は怒った。怒って、怒って、最後には、泣いた。
泣き疲れると、今度は生気の無い瞳で虚空を見上げる。
心に生じた空虚な隙間。
今までの''良い子な自分''という虚像が、ガラガラと崩れていく。
残ったのは、''あの人''への狂おしいほどの愛。
そして、青い炎のように揺らめく、不気味な嫉妬心だけだった。



昔は、ほんの少しでも、自分に優しい言葉を掛けてくれたなら、それで良かった。
ほんの僅かでも、自分への愛を示してくれたなら、満足できた。
少女には''あの人''から貰った忘れられない言葉があった。

ず っ と 一 緒 に い よ う ね

2人だけで生きていける。間に入り込む者などいるものか。
そう信じて疑わなかったから。


しかし、少女の幻想は早々に打ち砕かれた。
無機質な球体に、容易く吸い込まれる眼前の敵。
初めは抵抗を見せたものの、やがて、その球体の動きが静かに止まる。
''あの人''は喜んでいる。
私は? 私はどう反応すれば良いの?
私だけじゃ、不満なの…?


新たな仲間は、ひどく無口だった。
喋ったと思ったら、その声はひどく小さい。注意深く聞いて、聞き取ることのできる程度だ。
少女は、その新参者が嫌いだった。
自分の方が役に立てる。常にそう思いながら、前を歩いた。
でも''あの人''は、そんな少女に、新参者の面倒を見るよう頼んだ。
本当は嫌だ。でも、''あの人''の頼みなら仕方ない。
その時から、徐々に2人の交友が始まった。
字を教え、戦い方を教え、人間と共に生きる上でのマナーも教えた。
新参者は素直に言うことを聞いた。とても飲み込みが早かった。
少女は嬉しかった。無口だけど、よく言うことを聞き、たちまち溶け込んでいく姿に、感銘を覚えた。
新参者もまた、よく面倒を見てくれる少女のことが好きだった。
やがて、幼い2人は友達になった。

たくさん遊んだ。一緒に遠出をして怖い思いをしたこともあった。
帰りが遅くなって''あの人''に怒られた時も、2人は一緒だった。
泣いてる時も、笑ってる時も、嬉しい時も、悲しい時も、2人でいた。
もちろん''あの人''に撫でてもらう時も、褒めてもらう時も、一緒だった。
2人はいつの間にか、かけがえのない親友となっていた。


''あの人''はその後も、徐々に仲間を増やしていった。
礼儀正しく大人しい子、不思議な色気を持つ子、うるさいけれど本当は優しい子、生まれて間もない子。
2人は一緒に、その子達をまとめてきた。そのうち、礼儀正しい子がまとめ役となったが、それでも良かった。
''あの人''にとって、一番信頼されているのは、自分だと信じていたからだ。
ただ1つ、間違いがあったとするならば…。
皆もそれを認めてくれていると、少女が思い込んでいたことにあった。

気が付けば、自分は''あの人''の隣にはいなかった。
代わって、あの無口な親友が、常にその場所にいた。
どうして…? そこは私の場所なのに…。
少女の中に、初めてチクリとした痛みが生じた。

無口な親友は、とても頭が良かった。
''あの人''はそれを評価し、作戦会議と称しては、すすんで親友を連れ出した。
少女は、''あの人''の夢を叶えるためだと割り切り、何も言わなかった。いや、言えなかった。
親友に冷たい目で見られるかもしれない。''あの人''に嫌われるかもしれない。
''あの人''の夢の邪魔をしたくない。
そう思うと、経過を静観することしか出来なかった。
色々教えてあげたのは私なのに…。
少女はまた、小さな胸の痛みを感じた。

新たに増えた仲間達といると、少しは気が晴れた。
賑やかで、一緒にいると楽しかった。
''あの人''も、仲間達と触れ合う少女に、満面の笑みを送っていた。
ただ、親友がその輪に入ることは、あまりなかった。
頑張って仲間との調和を保つ少女と、寡黙でマイペースな親友。
2人の距離は自然と、少しずつ、遠のいていった。

やがて、2人の間で会話が交わされることは、ほとんどなくなった。
話さないから、お互いが何を考えているのか分からない。
分からないから、余計に話しづらくなる。
2人はいつしか、お互いを敬遠するようになっていた。
交わす言葉は朝の挨拶ぐらい。
でも少女は、心のどこかでは、まだ深い絆で繋がり合っていると信じていた。
親友の心が、もはや別の方向へと向いていることも知らずに。


転機はやってきた。
''あの人''の目標である、リーグ制覇が成し遂げられたのだ。
この時ばかりは、2人は一緒になって喜んだ。
久しぶりの親友との会話。これで何もかも元通りになると信じていた。
親友と再び仲良く過ごし、他の仲間達とも楽しい時を送れる、と。
そして何より、ようやく自分が''あの人''の隣に戻れるのだ、と。

現実は、少女の心に暗い影を落とした。
いつまで経っても、''あの人''の隣は空かない。
相変わらず親友がそこにいて、離れる気配がないのだ。
その子の出番は終わったんじゃないの? 私にも相談してほしい。
だがやはり、集団の調和を重んじる少女は、その光景を黙ってみていることしか出来なかった。
少女の胸の痛みは、日に日に少しずつ大きくなっていった。

そんなある日、''あの人''が酒宴を催す旨を皆に伝えた。
リーグ制覇に貢献した私達への、感謝と労いの気持ちを込めた、ささやかなプレゼントだと。
仲間達は概ね、喜んで受け入れた。もちろん少女も。
だが親友だけは、乗り気がしない様子だった。
どうして''あの人''の前で、そんなにマイペースに振る舞えるの? 私は言いたいことの十分の一も言ってないのに。
少女はこの時、痛みではなく、とめどなく何かが沸き上がってくるような、そんな感覚を覚えていた。

少女は、この上なく大きな衝撃を受けていた。
キッカケは、仲間の1人が言った言葉だった。
皆、''あの人''の事が好き。だからここまで一生懸命ついてきた。
少女には信じられなかった。
自分と''あの人''の関係を、皆が認めていたワケではない、と。
完全な自分の思い上がりであった、と。
だが、''あの人''だけは違うとも信じていた。
勇気を振り絞り、自分を選んでくれるよう請う。
だがその時、親友から信じられない言葉が発せられた。
勝負して、勝った者が求婚できる、という内容の言葉が。

裏切られた気持ちだった。
結局、親友も''あの人''に取り入りたいだけだったのだと、少女は確信した。
その瞬間から、少女の中で、親友は親友ではなくなった。他の仲間達に対しても、もはやそう認識できなかった。
自分の大切な人を奪っていく敵だと。
後からぞろぞろと入ってきたクセに、自分と''あの人''の時間を奪っていったクセに、最後は本人すら攫っていってしまうのだと。
この時、少女は初めて、自分を襲っていた感情に気付いた。

勝負は、''元親友''との一騎打ちとなった。
これに勝てば、誰にも文句を言われずに、''あの人''をモノにすることができる。
勝者として堂々と、自分のモノだと言い張ることができる。
だが、少女の気はそれでは治まらなかった。
何より、必死で食らいついている自分を尻目に、全く動じず勝利を確信している''元親友''が、ひたすら許せなかった。
少女は吼えた。ありったけの言葉を、目の前の''元親友''に吐き出していた。
自分がいかに我慢してきたか。どれだけ長い間、耐えがたきを耐えてきたか。大切な人を返せ、と。
だがその寡黙な''元親友''は、冷淡な言葉でそれを一蹴した。

この人は、あなたには相応しくない、と。

結局、勝負はお流れとなった。
2人の形相は、かつてあれほど仲良しだった事が信じられないほど、憎悪に満ちたものだった。
''あの人''が止めていなければ、殴り合いの喧嘩になっていただろう。
いや、その方がまだマシだったかもしれない。
もはや2人の間の絆を信じるものなど、誰もいない。






薄暗く、目を凝らさなければ何も見えない静かな部屋。
蝋燭の淡い灯火だけを唯一の光源とするその場所で、1人の少女が、一心不乱に何かを書きなぐっている。
そこに並ぶ文字列は…
「死ね」「殺す」「消えろ」「根暗女」「ご主人様」「愛してます」
もはや魂の抜けきった人形のように、ただひたすら一様の作業だけを続ける。
その光景を異様と評さずして、どう表現しようか。
目を紅く血走らせ、目の下には濃い隈(くま)を刻み、薄ら笑いを浮かべながら独り言を呟く少女。
最大のチャームポイントだった、頭部の美しい花も、今や浅黒くしおれている。
もはや誰もが知る、あの明朗闊達で良い子な少女はいなかった。
そこに''ある''のは、愛情、憎悪、嫉妬の中で、絶望の境地へとたどり着いた、悲しい人形。

も う 誰 も 信 じ な い

'' あ の 人 '' は 私 の も の

許 さ な い










人通りのほとんどない、閑散とした無人島。
ナナシマ群島と呼ばれる島嶼部から、更に離れた絶海の孤島。
そこに、かつて船舶の補給所として建てられた、小さな施設がある。
自家発電機で電力は供給され、食糧の備蓄も穀類に限れば豊富にある。水道も通っているが、本来、定住民はいない。
そう、いないはずなのだが…。
「はい、ご主人様。あ~んして下さい」
「………」
補給所に備え付けられたベッドの上に、1人の青年が寝かされている。いや、縛り付けられている。
皮製の拘束具で手足の自由が利かず、頭すら動かせない状態である。
それを甲斐甲斐しく世話する1人の少女。
だが、青年はそれに応えない。
「あれ? これはお嫌いでしたか? ダメですよ、好き嫌いなく食べないと」
「………」
少女が訴えるも、青年は口を開かない。
いや、開けないのだ。
「しょうがないですね。私が食べさせてあげます」
そう言うと、少女はスプーンを口に含み、口内に料理を導く。
少し咀嚼すると、青年の口を手でこじ開け、それを流し込んだ。
「あふ…ん……ちゅ、くちゅ……ぴちゃ……」
少女にとって、この位は何の事もない、いつものイベントである。
「………」
青年は黙ってそれを嚥下した。
「うふふ、美味しいですか?」
「………」
青年は、なおも応えない。
「う~ん、ちょっとしびれ粉が強すぎたかなぁ。喋れないのはともかく、反応すら返せないのはさすがに…。でも、これもご主人様のため
だもんね」
そう言い放った少女の表情は、青年がかつて見た''ある少女''に似た、極上の明るさだった。
「……う…あ………」
不意に、青年の口から声が漏れる。
だが苦痛に満ちたその声は、青年が力を振り絞ってようやく出せた声だと分かる。
「どうしました? 何かご用件ですか? 下のお世話は夜までダメですよ」
「…どう……して…、こん…な……こ…と………」
その言葉を聴いた瞬間、少女の表情が曇る。
「どうしてって、ご主人様と安心して暮らせる所に移住しただけですよ。2人っきりで」
声のトーンも、先ほどと比べれば明らかに低い。
「…かえ…る…」
「帰るって、どこにですか? ここが私達の新居なのに。ねぇ? ねぇ? どうして?」
ベッドの方に身を乗り出し、青年の肩を揺さぶりながらまくし立てる少女。
「……み…んな…が……」
この言葉が、少女の逆鱗に触れた。
「皆? 皆って誰ですか? ねぇ? 誰よ!? あの女!? あの根暗で陰湿で、そのクセ色仕掛けでご主人様を篭絡しようとしたあの女ね!? そうな
なんでしょ!?」
少女の白い手が、青年の頬を打つ。
「どうして分かってくれないの? 私がこんなに愛してるのに!! 今まで何もかも我慢して、ご主人様の言うことちゃんと守って、良い子に
してきたのに!! ずっと尽くしてきたのに!! どうしてご主人様は何もくれないのよおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
青年の頬を打つ手が、一段と速くなる。
不思議な事に、少女の表情は怒りから、不気味な笑みへと変わっていた。
「あは…あはは…あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!」
青年は朦朧とする意識の中で、じっと考えていた。
俺が追い詰めてしまったのか。
俺が何もしてやれなかったばっかりに、こいつの心を壊してしまったのか、と。
補給所の中で、少女の狂気に満ちた笑い声がこだまする。
しばしの時間を置き、やがて青年は考えるのを止めた。

いつの間にか、少女が青年の上に跨っている。
「私のもの…ご主人様は、私だけのもの……」
今日もまた、青年の体を求めて乱れ狂うのだろう。
そして、少女は青年の耳元でそっと囁くのだ。



『ず っ と 一 緒 に い よ う ね』、と



【あとがき】
(´・ω・`)ども、4作目です。ダーク系に初挑戦してみようと思い、最近流行りのヤンデレにスポットライトを当ててみました。いやぁ、
それにしても主人公がヘタレというか空気ですね。流されっぱなしです。一応、私のSSは同じキャラを使った短編集っぽくし、時系列的に
もある程度繋がりはありますが、この作品ばかりはパラレルワールドです。1作目の『お月見山の酒宴』で、主人公がフシギバナを包んであ
げられなかった場合、オニドリルと和解せず対立したままだった場合、内面に閉じこもったままの彼女の心はどう蝕まれてしまうのか。
それらを踏まえ、「起こりうる最悪の結末」の予想として描いてみました。要するにギャルゲーで言う「最悪な選択肢ミス」オンリーでエ
ンドまでいってしまった状況ですね。ヤンデレを上手く表現できているかは不安ですが、不快に思われた方々には、深くお詫び申し上げま
す。個人的にヤンデレは好きです。

それというのも、バレンタインネタでえらく甘々なSSを投下してしまったので、帳尻合わせみたいな感じで暗いSSを考え始めたのがきっか
けでした。そしたら、私のSSの萌えもん達の中で最も適役だったのがフシギバナ。『お月見山の酒宴』で、図らずもその一端を見せてくれ
た彼女に、お鉢が回ってきたというわけです。でもフシギバナのほのぼの話も書いてみたいなぁ。

長文で申し訳ない。あと、やっぱり私の嫁はオニドリル。
ツールボックス

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