5スレ>>233


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小さな島の中に、人がまだ踏み入れていないような、一つの洞窟がある。
ひっそりとしていて、生き物がまったく居ないような洞窟。
物音と言えば、水が滴る音だけが聞こえるだけだ。
殆どの人が存在すら知らない中、研究者やコレクターに噂が流れた。

洞窟の一番奥にある、微妙に日差しの入る場所に幻と呼ばれる『カイオーガ』が存在している。

多くの研修者やコレクターが洞窟の中に入り、そして出てこなくなった。
流石に多くの人が帰らなくなると、島の住人にも洞窟が知られ、恐れられるようになった。
そんな洞窟を目指し、今日も一人の少年がその島へやってきた。
今まで洞窟を目指した者達とは違い『自分はトレーナーだ。』と言った。
そして、その少年は島の住人が止める中、何かに惹かれるように洞窟へと入った。
・・・
・・

俺は、何かに惹かれるように洞窟へ入った。
トレーナーの中にまで聞こえてくる、不思議な噂は俺の耳にも入ってきていたが、島を訪れた時には既に頭から離れていた。
真っ暗で、何も見えない洞窟の中。
頼りになるのは、手にしている懐中電灯のみだ。
照らされているのは、人が一人やっと通れる程度の細い空間。
前に来た人の物であろう、私物などがたまに照らされる。
しかし、今の俺にはそんなものは目に入っていなかった。
ただ、何も考えずに洞窟の奥へと向かった。
そうして、奥へと進んでいくと、空間が微妙に広くなっていく。
更に進むと、洞窟の中なのに雨が降り始めた。
冷たい、非常に冷たい雨だ。
懐中電灯が雨に打たれ、俺は光を失う。
漆黒の闇に飲み込まれた俺はの足取りは、不思議と止まらず、先へと進んだ。
雨、そして何も見えない中、更に進むと、何処からか入っている日差しの下に、一人の少女がいた。
俺はそこへ辿りつき、初めて気づく事が出来た。

この少女に会うために来たんだ。と。

少女は下を向きつつも、こちらを睨みつけてきている。
瞳からは精気が伺えない。
雨は、涙を失った瞳の変わりに振っているようだ。
更に少女へと近づこうと、足を踏み出すと声が聞こえてきた。
「貴方は人間?何しに来たの?」
「俺は・・・ただのトレーナーだ。」
答えると、少女は顔を上げてこちらを見てきた。
依然、精気の失ったままの瞳で。
「そう、なら帰りなさい。」
「・・・いやだ。」
俺は、感情のない声にこたえると、少女の座っている岩の横へと向かった。
移動する俺を、そのまま睨みつける少女。
「横、座ってもいいか?」
「・・・勝手にして。」
返事を聞いてから、岩の上、少女の横へと腰掛けた。
ホッと一息ついて、横目で見てみると、まだ睨みつけていた。
俺は気にせず、正面を向き、問いかける。
「なぁ、」
「貴方は此処へ何しに来たの?何が目的?」
俺の言葉を被せるように、逆に問いかけられてしまった。
「此処へ来た目的は・・・何だろな、何かに誘われた。かな。」
「・・・じゃ、目的は?」
「辿り着くまでは、何も無かったけど、さっき目的が出来た。」
そういって俺は、少し横を向いた。
少女の瞳は、早く言えとでも言うように俺を睨みつけてくる。
俺は、そんな瞳に微笑を送りながら続けた。
「寂しそうな子に、外を知ってもらいたい。」
「ふざけるな!」
俺が言い切ると、少女は軽く声を荒げて来た。
そしてまた、力の入らない声に戻り続けた。
「私を連れ出したところで、見せ物にするか、監禁するのだろ?」
「違う。」
否定すると、更に少女は睨みつけてくる。
「違わない、人間はいつもそうだ。何かと理由をつけて誤魔化そうとする。」
「言っただろ、俺はトレーナーだ。」
「変わらない。人間は人間だ。」
早口で、ひたすら否定する少女の声を聞いてると、胸が痛くなってきた。
この少女は何も知らずに、知る事も出来ずに居るのだ。
「人間だから、どうなるんだ?」
「人間なんて所詮、自分のことしか考えられない。私の存在なんて目に入らない。」
多分、結果のみを必要としている研究者のことを指しているのだろう。
「じゃ、トレーナーだと?」
「所詮人間だ。どれも変わらない。」
「初めての事ってのは、怖いだろうけど、楽しいものだよ。」
俺はそういうと、視線を少女から正面へ戻した。
しかし、少女は未だこちらを睨んでいるようだ。
「外へでた、そしたら見せ物にされ、調べられ・・・此処へ逃げた。」
少女が言い終わると、俺は少し笑ってしまった。
少ない経験で、必死に抵抗してくる子供を見ているようで。
「さっきから言っているだろ?俺はトレーナーだ。」
「だから何?」
変わらない少女の表情と口調。
物分りの悪さに、少しイラつきを感じはじめる。
「外へ出て、冒険をし、戦ったりしながら、色々な仲間を見つける。ただそれだけだよ。」
「だが、人間は人間、信じたところ・・・」
少女はまだ、何かを言おうとしていたが、俺の声にかき消された。
「人間は人間さ!自分のこと意外を考えられない事だってある!
 だけどそんな事ばかりじゃない!
 人の事を考えない?自分の事以外考えていない?そんなの今のお前じゃないか!!
 自分が傷つきたくないからって引き篭もって居るだけで!!!
 そんなんじゃ、傷は癒えないどころか深くなるだけだ!!!
 それに、少しは俺の気持ちも考えてくれよ!!!
 俺はお前についてきて欲しいんだよ!!
 そうじゃなきゃ、こんな所まで来ないし、話なんてしなかった!!!
 一目みて、一緒に冒険したくなったんだよ!!!
 お前となら、どこまでも行けると思ってしまったんだよ!!!
 惹かれて、一目で惚れて、好きになっちまったんだから誘っているんじゃないか!!!!」
俺はもどかしさに頭に来て、つい怒鳴ってしまった。
ふと横を向いてみると、少女は睨むのを止めて、目を大きく開いて驚いてた。
多分、この子は初めて叱られたのだろう。
ずっと一人で、考え、過ごし、生きていたはずだ。
初めて他人が、自分を考えてくれる
少女の方へ顔を向け、胸を撫で下ろして落ち着いてから続けた。
「だからお願いだ、一緒に来てくれ。」
そして、岩から立ち上がり、少女の正面へ立って、手を差し伸べた。
「知ることは怖いことじゃない。大丈夫、少し勇気を出せばいいだけだよ。」
俺がそういうと、少女は差し出された手を握ってきた。
瞳は、精気を取り戻したように、輝きを取り戻している。
微笑みかける俺に、少し恥ずかしそうに笑う少女。
不思議と、降り止まない冷たい雨が、少し暖かくなった気がする。
「初めて会って、初めて話して、そんな事言うなんて・・・変な人だね。」
そういうと少女はクスクスと笑い始めた。
俺は苦笑いをしながら、答えた。
「よく言われるよ。」
少女は座ったままだが、俺の手を握るのをやめない。
笑うのをやめ、こちらを見てくる。
先ほどとは違う、精気を感じられる顔で。
「少し、勇気を出してみるよ。」
少女はそういうと、少し手に力を入れながら、立ち上がった。
同時に、暖かくなって来ていた雨は降り止んだ。
少女の瞳には、涙が流れていた。
「マスターの言葉を信じて。」
俺はマスターと呼ばれると、少し照れくさくなってしまった。
まだ、名前も知らない少女に・・・しかもあんな事を言ってしまったから、尚更だ。
握られていない方の手で、自分の頬っぺたを軽く掻く。
「えっと・・・名前なんだっけ?」
「ホント、何も知らないで来たんだね・・・私はカイオーガ。」
「カイオーガ・・・うん、いい名だ。よろしくな、カイオーガ。」
「うん!」
元気に答え、涙を拭きながら俺の腕に抱きついてくる少女、カイオーガ。
多分、長年押さえ込んでいた本当の自分をようやく開放できたのだろう。
ようやく、自分の涙を流せた彼女に、俺は答えてあげなければならない。
やっと信じる物が出来たカイオーガに。

「それじゃ、行こうか。」
「うん、これからよろしくね。マスター。」
「ああ、こちらこそな。」
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