5スレ>>274


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「くっそぉ…あのサイドンめ、覚えてろ!」
 ベッドに包帯とベルトでぐるぐる巻きに固定されたカイリキーが唸るが、
「いや、それはただの自業自得だろうに。」
 すっかり完治し、ベッドの上で鎌を研いでいた(萌えもんは普通の生物より傷の直りが早い)
ストライクが呆れて返す。
「あたいはマスターが気になるんだっ!」
「そんな事は百も承知だ、長い付き合いだからな。」
 ジョーイに届けて貰った砥石から鎌を離し、研ぎ具合を確認し、もう一方の鎌を研ぎ始める。
「だからと言って、その身体で出て行ってもどうしようもあるまい。
私達に出来るのは、次のチャンスにむけて万全の体制を整える事だ。」
「……あたい達は、あたい達に出来る事をしろってことかよ。」
 彼女は頷いてその通りだ、と示した。
「……次は、勝とうな。」
「……当然だ。」
 磨きぬかれた鎌の刃が、決意に燃える4つの瞳を映していた。

      雨のあがった次の日に~On the next day when the rain stopped~中編

「手術は成功よ。二人とも、しばらくすれば目を覚ますと思うわ。」
「……! ありがとうございます!!」
 ジョーイの言葉に、安堵の表情を浮かべ、深々と頭を下げる少年。
「随分と激しい戦いだったみたいだけど……。これからもこういう戦いを続けるつもりかしら?」
「………! それは……。」
 ジョーイの言わんとする事を察した。
「萌えもんマスターになるためには、間違い無くもっと厳しい戦いが待ち構えているわ。
四天王は、ジムリーダーとは比べ物にならない程に強いのよ? 彼女達、もしかしたら本当に死ぬかも……。」
「それでもっ……!」
 ジョーイの言葉を遮るように声を上げる。
「僕は……僕は、萌えもんマスターになりたいです! でも、皆は死なせない!
僕は、皆と一緒に、萌えもんマスターになりたいから……!」
 強い意思でジョーイの目を見つめ返した。
「そうね……。あら、そろそろ二人が手術室から出てくる頃よ。」
 その言葉に、水をかけられたように飛び上がり、ジョーイに一礼した後、慌てて手術室へと駆けていった。
「……ふふふっ、すっかり一人前のトレーナーの顔ね。 
泣きそうな顔で、ボロボロのヒトカゲとワンリキーを連れてきた以前とは大違い……。頑張れ、少年。」
 彼の成長に笑みを浮かべ、自分を呼ぶ声に応えてそちらへと向かった。

「いや~、死ぬかと思ったね全く!」
「ってエビワラー一番ぴんぴんしてたじゃん!」
 萌えもんと共に泊まれる宿の個室(俗に言うファミリークラス)に集まったメンバーが、口々に互いの完治を喜び合う。
華やかなその場において、厳しい顔をした少年とカイリキー、そしてストライクだけが浮いていた。
「マスター……。」
「マスター、あたいらは……。」
「……大丈夫、僕の口からちゃんと話すよ。みんな、ちょっと聞いて。」
 少年は立ち上がると、メンバーに呼びかけた。
「……僕達は、サカキさんに負けた。それで、僕は、カイリキーを助けるためにいわなだれに飛び込んで、
その事でちょっと色々話を聞かれてた。ごめんね、皆が大変な時に……。」
 4人が口を開きかけるが、厳しい表情のストライクがそれを制する。
「あ、処分は厳重注意だけで済んだから安心して。バッジも没収されてないし、リーグ出場権もあるから……でも。」
 それは、グリーンバッジを手に入れてから。彼はそう言った。
「萌えもんマスターになるために……僕は、もう一度サカキさんに挑戦する。
ここで萌えもんマスターの夢を諦めたら、あの時と同じ、全てが止まったままになるから。
今度は、あの時から先に進むために、萌えもんマスターを目指したいんだ。」
 全員無言のままその言葉を聞く。が、目に宿る光が、彼の考えを肯定している事を示していた。
「急で悪いけど、ジム戦は明日の午後の部。みんな、それまでゆっくり身体を休めておいて。」
 全員が頷き、自らの割り当てられた布団に戻って行った。が、少年は一人立ち上がる。
「マスター?」
「……ちょっと散歩してくるよ。」
 身体を起こしたカイリキーをそう言って制し、彼はそっと部屋を出た。布団から半起き状態のままそれを見送る。
 とりあえずは布団に横になるが、
「良いのか? マスターを放って置いて。」
「聞いてたろ、すぐ帰ってくるんじゃねーのか?」
「……この天気で、か? 外は大雨だ。」
 その言葉に、再度身体を起こすカイリキー。
「……ちょっと行って来る!」

 ストライクの言う通り、外はかなりの大雨であった。宿の傘スタンドに彼のいつもの傘が置いてあった所を見ると、
この天気の中、傘も差さずに外に飛び出したらしい。
「……マスターッ!何処だーッ!!」
 土砂降りの雨に掻き消されながらも、カイリキーは必死に叫んだ。不意に、あの悪夢の記憶がフラッシュバックする。
もしかしたら、またさらわれたのかもしれない。

『ごーりきー! ごーりきーぃぃっ!!』
『このガキは貰ってくぜ。』
『へっ、萌えもんが人間様に逆らうんじゃねーよ!』
『くっ……そぉ……! オレの……オレ達のマスターを返しやがれええええっ!!』

「……っざけんな、シャトル団はもうないんだっ!!」
 頭の嫌な想像を振り払い、トキワの森入り口付近まで走る。そこに、彼が立っていた。
びしょぬれで、顔をくしゃくしゃにして立っていた。
「カイリキー……?」
「マスター! よかった、心配したぜ!!」
 このままでは風邪を引くだろうと、カイリキーは彼の手を掴み、宿へ連れて行こうとする。
その手が、不意に重みを増した。
「……っマスター?」
「……カイリキー、僕は……萌えもんマスターなんかなりたくない……。」
「!?」
 カイリキーは思わず振り向く。が、彼より背が高い上、顔を伏せた状態ではその表情を読み取る事は出来なかった。
「僕は……家族が……皆が大切だから……。だから……皆を傷つける戦いをしたくないよ……。」
「な、何言ってんだよ、マスター! 萌えもんマスターになるのが夢だったんだろ!?」
「夢なんかじゃないよ!!」
 しのつく雨音すら掻き消す大声で、少年は叫んだ。
「ちょっと萌えもんトレーナーの才能があるからっておだてられて……!」
「マスター……。」
「ジム戦のバッジをどんどん取っていって、それで稀代の萌えもんトレーナーだとか、そんな事言われて……。」
「マスター。」
「でも、もう嫌なんだ! ジム戦やトレーナー戦で、これ以上皆がボロボロになってくのを見るのは嫌なんだ!
サカキさんですらあんなに強いのに、このまま四天王と戦ったら、絶対皆死んじゃうから!
また独りぼっちになるくらいだったら……皆を犠牲にしなきゃいけないなら、僕はそんな夢なんか叶えたくない!!」
「マスターっ!!」
「………………っ!!」
 カイリキーは、冷え切った少年の、その細い身体をそっと抱き締めた。人肌の温かさが、彼を包みこんだ。
「……!! う……うああああああああん!!」
 あの時と同じように泣きじゃくるマスターの身体を抱き締めながら、カイリキーは囁いた。
「ごめんな、マスター……。辛いの、分かってやれなくて、ごめんな……。」
 その腕に力が篭る。
「守るから……、マスターの大切なものは、皆オレが守るから……! あの時の二の舞には、もう絶対にしない……!」
 自らの腕に抱きかかえられた、守るべき存在。その確かな感触を確かめながら、カイリキーは宿へと向かった……。

――翌日。天気は快晴。先日まで振り続いていた土砂降りが嘘のように晴れ上がっていた。
 彼等は無言のうちに朝食を取り、自らの出番に備えての軽いトレーニングを行った。
言葉を交わさずとも、彼らは理解しあっていた。互いの絆と、心を。
「皆……、今更なんだけど、頼みたい事があるんだ。」
 少年が切り出したのは、トレーニングを終え、いよいよサカキとのリターンマッチに挑む少し前の事だった。
「マスター?」「兄ちゃん、どうしたの?」
 全員が彼の周囲に集まったのを見計らって、彼は話し始める。
「……サカキさんは強い、本当に強いと思う。でも、今なら……。今なら、勝てる気がする。」
 珍しく強気な言葉に、全員がちょっと意外な顔をした。
「でも、この旅はサカキさんを倒して終わりじゃない。萌えもんマスターになるために、越えるべき強い人はまだいるよ。
チャンピオンロードの人達、四天王、そして、オーキド博士の孫の、あの子……!」
 カイリキーが腕組みしながら頷き、ストライクがそれをたしなめる。
「僕は、本当に無力だ……。それでも、そんな僕でも……皆のおかげで、ここまで頑張ってこれた。
辛い事や、苦しい事も、迷った事もあったけど……もう迷わない。皆で萌えもんマスターになるために、僕はもう負けない。
それが、叶えたい僕の『夢』だから。だから、そのために……。皆、僕に力を貸して!」
「当然だよ、兄ちゃん!それが、ボク達とと兄ちゃんの夢だからね!」
 即答したのはリザードンだった。
「私は、あの時あなたに忠誠を誓いました。必ず、あなたの夢をかなえて見せると、この刃と…」
「この拳に、だよ!」
 ストライクが掲げた刃に、エビワラーがグローブの甲を当てる。
「全く……。今更だろう、そんな事は? そもそもお前はわたしがいないとてんでダメなんだからな、うん。」
「あんたそれマジに言ってる? それとマスターにダメって言わないの!」
 腰に手を当て、ふんぞり返るパルシェンに、ジト目でツッコむギャラドス。
「マスター。俺達はずっとそのマスターの味方だぜ。今も、そしてこれからもな。」
 カイリキーが、彼女らしい不敵な笑顔で答えて見せた。
「みんな……本当に、ありがとう!」
「礼はまだ早いですよ? マスター。」
「そうそう。まずサカキさんを倒さないと。」
「うん……。行こう、みんな!」
 いつの間にか潤んだ目を拭い、全員を萌えもんボールに戻す。それらをホルダーにセットし、鞄のアイテムを確認する。
全ての準備が整ったのを確認し、彼は一歩を踏み出した。
 今までのように後ろ向きな一歩じゃない、純粋に『前』に進むための一歩を。

――トキワジム、ジムバトル用特設会場
「来たか……。」
「サカキさん……いや、トキワジムジムリーダー、サカキ!
あなたにジムバッジをかけた公式萌えもんバトルを申し込みます!!」
 振り返ったサカキは、彼の目に宿る光に目を細めた。
「どうやら、色々と踏ん切りを付けてきたみたいだな、君は。」
「はい。もう大丈夫です。皆を治療している間、ずっと考えていた事の答えが出たから。」
「男子三日会わざれば活目して見よ、と言う事か。ならば!」
 マントを翻す。その腰には萌えもんボールが5つ。
「この大地のサカキ、君の力に応えよう、俺のベストメンバーと、全力を持ってな!」
 間合いを取り、萌えもんボールを構える二人の間に萌えもんリーグ委員が現れる。
「では、自分が審判をさせていただきます。このバトルは公式戦として記録されますので、
フェアな戦いをお願します。両者、準備はよろしいですね!?」
「はい!」「うむ!」
「それでは、ただいまよりトキワジムバッジ争奪、公式ジムリーダー戦を始めます!」
 審判が手を振り上げる。
「萌えもんバトル! レディイイイイイイッ! ゴォ!!」
 バトルフィールドに、二つの萌えもんボールが投げ込まれた!!
                                to be continued...
 次回
サカキ最終戦。主人公はバッジをゲットする事が出来るのか!?
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