1スレ>>560


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はじめまして皆様。
自分は、駆け出し萌えモントレーナーの一人です。
ただし極度の度胸なしで重度のヘタレという、どうしようもない性格ですが。

・・・自分の名前?
いえ、名乗るほどの者でもないので
どうかお好きなように想像してくださいませ。

突然ですが、自分にはコレといった才能も特技もありません。
世間にはそんな人いっぱいいるよ、とはいうものの。

大人の言うことにひたすら従って、

「言うことをよく聞くいい子」「扱いやすい子」

というレッテルを貼ってもらうことにより、
その無能さを隠して、大人たちに守られ生きてきた卑怯で卑劣なヤツ。
それが自分です。


そして今自分は、
自分自身の無能っぷりに限りなく絶望している真っ最中なのです。


「うううう、ううう、ぐす・・・
  嫌だ嫌だ嫌だ怖い怖い怖い・・・
 もうやだもうやだもうやだ、あんな洞窟なんて抜けられないって・・・!」


がくがく、がくがく。

震えが止まらない。
体育座りの体勢のまま、その場を動けずにいる。
両膝に突っ伏したまま、顔を上げられずにいる。

口から出るのは、溢れ出る恐怖心を紡いだ言葉ばかり。

ポケモンセンターの中だというのに、自分の頭の中にに蘇るのは
暗くてだだっ広くて、出口がどこなのか見当もつかない
敵だらけのオツキミ山の洞窟のことばかり。

進んでも進んでも出口が見当たらない、気味の悪い洞窟内。
倒しても倒しても、一向に減る気配のないズバットの大群。
こっちの姿を確認するなり問答無用で戦いを挑んでくるトレーナーたち。
なんかよくわかんない黒服の、敵意むき出しの怖い大人たち。

そして、いくら倒してもキリがない戦闘の中で傷ついて
次第に限界を迎えていく、みんなの姿が

頭に張り付いて忘れられない。


「・・・ダンナ、ダンナぁ」


ゆさゆさ、ゆさゆさ。

身体が揺れて・・・いや、よく見たら揺らされていただけでした。

その小さな手に似合わず、しっかりと力強く身体を揺すってくるのは
フシギダネ・・・じゃなくて、ついさっきフシギソウになった
自分の相棒的存在の萌えもん。

ていうか、そのダンナって呼び方やめてくれって言ってるのに。
自分は仮にも・・・一応は女なのに。
まあ、おしゃれに自信がなくて男装に走っている自分も悪いとは思いますけどね?


「ダンナぁ・・・元気出そうよ、ね?
 次は、今度はきっと大丈夫だって・・・ね?」

「・・・うぅ・・・」

「今度はさ、きずぐすりをリュックいっぱいに持ってってさ。
 それが間に合わないんだったら、もうちょっとレベル上げてさ。
 ・・・そしたら、そしたら今度はきっと出口見つかるって!」

「・・・ぅ」

「あ、それとも暗いのが怖い?
 だったら手ぇつないでいてあげるから!
 だからもう泣かないで」

「ちが、っう。ちがうよ・・・ひっく、フシギ、ソウ」

「へ? ちがうって、何が?」

進化したことでタレ目がちな可愛らしい容貌から、きりっとしたツリ目に変化した
(といっても可愛いことに変わりはないのだけど)その顔で
フシギソウがこちらの顔を覗き込んでくる。

確かに暗いのは怖い。出口が見つからないのも怖い。
誰彼構わず襲い掛かってくるトレーナーたちも、野生萌えもんたちも怖い。

でも、一番怖いのは


「・・・っ、こわい、のは

 自分のせい、で」



言うことを聞くしか能がないくせに、何にも出来ないくせに

自分は人形じゃない なんて 変な反発心起こして

旅をすることで、社会勉強したいから なんて 大嘘ついて

家を飛び出して

勝手気ままに萌えもんたちを 捕まえていって

そのくせ

そのくせ



「みんなが・・・倒れて、いくのが、こわい・・・

 自分が、無能なせいで、みんなが、ボロボロになっていくのが

 ・・・こわいんだ、よ・・・!」


何にも出来ないくせに、

せめてこの子たちのリーダーを努められるようになろう なんて

出来もしないこと、心に誓って


その挙句が・・・





「うるっさああああああああああい!!!!」



文字にするなら ばっちーーーん!! てな感じだろうか。
物凄い音が自分の頬から響いた。

次に来たのは、勢いよく前へ引っ張られる感触。
そして、どアップで視界に映るピカチュウの顔。
痛みは後からじんわりとやってきた。


「っなぁーーーーーにが自分のせいで、よっ! ふっざけんじゃないわよ!
 自己嫌悪するなとは言わないけど、でもその前に
 アンタにはまだやらなきゃならないことがあるでしょうがっっ!!!」

せっかく可愛らしいのに、ついさっきのオツキミ山での戦闘で
瀕死状態に追いやられた怒りのせいか、顔がくしゃくしゃになってるピカチュウ。
ていうか、この子のおかげでどんなに可愛い子でも
本気で怒った顔は怖いのだということを学びました。


「泣く暇があるんなら、ちゃっちゃと次の対策を考えやがれー、だな」

右のほうからオニスズメの落ち着いた声が聞こえてきました。
もはやいつものことなのですが、その可愛い顔で
的確すぎる突っ込みを入れられると物凄くへこみます。
ちょっとは手加減してやって下さい。


「そーそー。
 あんた打開策考えんのだけはイイ線いってるんだし。
 無能と決め付けるには、まだちょっと早いんじゃないかしらぁ?」

上のほうからは、人のことを小馬鹿にしたようなスピアーの声が聞こえてきました。
本人に悪意はきっと微塵もないのでしょうが、その見下し目線を向けられるたびに
悲しみとよく分からないゾクゾクを感じてしまいます。
ちょっと頼りないビードルだった頃の性格はどこにいったのでしょうか?


「泣かないでよマスター。ほら、元気の出る歌うたったげるから!
 
 たーちあがれ けだかくまーえ さだめをうけたせんしよ~!
 せーんのかくご みにまっとい~ 
 きみよ~おおしく、はぁばぁったっけえええええええ!!」

「プリン、自重なさい」

今度は左のほうからプリンの叫ぶような歌声と、
それに対して冷静に突っ込んでいる二ドリーナの声が聞こえてきました。

決して下手ではないんだけれど、ごめんプリン。
君は歌って相手を眠らせるのが特技なんでしょう?
そんな熱い歌を歌って相手を興奮させてどうするんですか。
いやまあ、そんな歌を教えた自分が悪いんだけども。

そして二ドリーナ。努力するだけでいいんで、そのクールなまなざしで
こっちをひたすらじーーーっと見るのは勘弁してください。
何だか常時責められているようで、とても心苦しいのです。
愛想笑いでいいので、ちょっとくらい笑いかけてやってください。


「そ、そうだよダンナ! ダンナ私たちに約束してくれたじゃない。
 いつか絶対、萌えもんリーグに連れてってくれるって!」

ああ、そういやそんなこと言ってたっけか・・・
ニビシティのジムリーダー倒した直後だったから、
ついそんな調子のいいこと言っちゃったんだけど。


「とわへええええええええ!
 とわへえええええええええええ!!」

「いやだから、うるさいってプリン」

「ていうか歌詞混ざってない?」

「それにねえ・・・こんなこと認めんのは、すっごく嫌だけど
 私たちにはもう、アンタしかいないのよ!
 いまさら他のヤツについて行くわけにはいかないのよ、わかる!?
 だから、だから・・・
 ああもう、何言いたいのか訳わかんなくなってきた!!!」


視線をそらすことさえ許さない! と言いたげな剣幕でこちらの
胸倉を引っつかんでいたくせに、今度は思いっきりはっ倒されてしまい
物凄い勢いで後頭部を壁にぶつけてしまいました。

ていうか本当、みなさんその小さな体のどこにそんな力があるんですか?
おかげで何に対して落ち込んでいたのか、頭から吹っ飛んでしまいましたよ。
いや、単に痛いだけなんですがね?


「・・・つまり、私たちをゲットしたからには
 最後まで責任もって連れて行け!
 簡単に諦めるな!
 ・・・って言いたいのよね? ピカチュウは」

「っそ、そうそう、それよそれ!」

「まったくもー、素直じゃないんだからアンタは。
 本当はこの人間のことが心配でたまらないくせに♪」

「何よそれっ!?
 アタシはこいつがあんまりグズグズ言ってるから、頭に来ただけで」

「とか何とか言って、
 さっきまで泣きそうな顔してオロオロしてたじゃなーい」

「あ、あれはその、あの・・・
 も、もらい泣きっていうか、もらいオロオロってやつよ!
 仮にも自分のマスターがヘコんでんだし・・・」

「ああ、一応はダンナのことマスターって認めてるんだピカチュウ」

「いつもカリカリしてるから知らなかった」

「・・・っ!
 う、うっさい黙れスピアーっ!フシギソウっ!オニスズメっ!二ドリーナぁっ!」

「私何も言ってないのに・・・」



責任。
それは、今の自分にはとても重くのしかかる言葉。
でも、今の自分にはとても重要な言葉。


そうだ。

こんなどうしようもない人間に捕まえられて、
一緒に行動する羽目になったこの子たちのほうが、よっぽど大変じゃないか。

ピカチュウが言ったように、この子たちには、もう

こんな自分について行くしか、道は無いんだ。



「・・・っく、ひ、ぅうううう・・・うあぁあああ・・・」

「ちょ、ちょっと、なに泣いてんのよ。
 ・・・あ、あたしのせい? ちょっと力入れすぎた!?
 ねえ泣かないでよ、ごめんってば!」

「いつもは殴られても蹴られても、せいぜい落ち込むくらいなのに・・・
 そ、そんなに痛かったのダンナ!?」

「あ、き、きずぐすり使う? それともオボンの実食べる!?」

「そりゃあ、あんだけ強く頭打ったらなあ」

「痛いのが当たり前だと思う」

「壁にぶつかった時の音、尋常じゃなかったしねえ」


「ち、ちがうよ、ちがうよ・・・ごめんね、ピカチュウ。
 こんな頼りないマスターで。
 ごめんね、フシギソウ。いつも心配かけて。

 ・・・プリンも、オニスズメも、二ドリーナも、スピアーも・・・ごめんね。」


こんな、どうしようもないヤツが、リーダーで。


涙と鼻水でべとべとになった顔を、両手で何回も何回も擦る。
きっと今、見せられたものじゃない顔になっていると思う。
でも、新しく出てきそうになっている涙を必死にこらえて、

顔を上げる。
前を見る。

みんなの顔を、しっかり見る。


きっとまた困難にぶち当たったり、悲しいことがあったりしたら、
今日みたいにみっともなく泣き喚くと思う。
でも、これだけは約束するよ。


「・・・頑張るから。
 みんな頑張っているんだから、わたしも頑張る。負けない。

 だからこんな、頼りないやつだけど。
 すぐ泣き喚く、どうしようもないやつだけど


 ・・・ ・・・」



涙声が酷くて、ちゃんと言えたかどうか不安になったけど
ちゃんと私の言葉は聞こえたらしい。

みんなの顔が少しだけ、やわらかくなったのが分かった。


「はー、しょうがないなぁ」

「ここまで来たんだし、アンタの気が済むまで付き合ってあげるわよ」

「でも、やっぱりリーグは無理でした。なんて言ったら承知しないんだからね?」

「これからはさ、あんまり泣かないでねマスター? 私まで悲しくなっちゃうから」

「そうね、マスターはもうちょっと涙腺を鍛えたほうがいい。」

「これからも素敵な歌を教えてくれるんなら、わたしは何だっていいよー♪」


みんなのあたたかい言葉に胸が詰まって、また泣きそうになった。
涙腺ってどうやったら鍛えられるんだろう? と疑問に思ったけれど
それはまた今度にでも調べればいいことで。

まだちょっと痛みが残る頭をなでながら、その場に立ち上がった。











「・・・よ、よし・・・
 準備完了、覚悟も完了!!(多分)」

「何だよ多分て」

オニスズメのツッコミを右から左に受け流・・・すことができれば
あんなにグジグジ落ち込むことも無かったんですが。

まあ、そんなこんなで
フシギソウに慰められ ピカチュウに張り倒され
プリンに熱唱され スピアーに褒められてんのかどうか微妙なお言葉をかけられ
二ドリーナとオニスズメに冷静に突っ込まれた次の日。

萌えもんセンターでみんなの体力を満タンに回復して
きずぐすりをリュックがパンパンになるまで詰め込んで
あなぬけのヒモ5本ほどを用意して
タウンマップを常に左手に携えて(あんまり意味は無い)。
がっちがちに守りを固め、今自分はオツキミ山の入り口に立っております。

これでまた駄目だったら泣くぞ神様!?
っていうくらいに準備に準備を重ねました。

もうこうなりゃ全滅上等、どうなろうと知ったことか!
あ、でもやっぱり全滅はカンベンしてください!
てな感じの、前向きなのか後ろ向きなのかよく分からんテンションです。


「おおおおおおおおっし!

 みんな逝くぞおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「「「「∑いや逝ったらだめだろ(でしょ)ーーーー!!!」」」」


「くらきーやーみぃのぉ いーきづく ちてーいのそーこーもー
 きーみーといっしょだからー こわーくーはーなぁーいぞ♪」

「誰にもわからないようなマイナー曲は自重しなさい、プリン」

「んじゃあ、
 
 きーがーついーたらー おなじめーんーばーかーりプレイ♪
 そしていーつーも おなーじばしょで」


「∑言うな言うな縁起でもない!!」


ああ畜生騒がしいな、この人間はいつもどおり頼りないな。

なんて、みんなの胸中にはちょっと愚痴っぽい言葉が渦巻いていましたが



『こんな、頼りないやつだけど。

 すぐ泣き喚く、どうしようもないやつだけど


 もうちょっとだけ、一緒にいてやってね』



情けないトレーナー少女が必死に紡いだその言葉に免じて、
今日もみんなで一緒にゆくのでした。




ちなみに、トレーナーの彼女は気づいてなかったようですが。
オツキミ山で延々迷い続け、足止めを喰らっていた結果
萌えもんみんなのレベルはかなり上がっており

(フシギダネがフシギソウに進化していることからも
 皆さんお分かりになるかと思いますが)

本気というか意地というか、まあそんな感じのものを出した彼女たちは
この日、オツキミ山を無事抜け出すことに成功したのでした。


そして、勢いあまってハナダジムに飛び込んでしまったのは 
また別のお話。
ツールボックス

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