5スレ>>282


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※この話はポケモン不思議のダンジョン(時・闇の探検隊)の話が舞台となっております。
 未プレイの方には激しくネタバレとなってしまう恐れがありますので、ご了承下さいませ。




マリンブルーの光が美しく輝き、軽やかな音を立てて寄せては引いていく。
ここは不思議のダンジョンのひとつ、「海のリゾート」。

美しい景色が堪能でき、様々な色のグミがそこら中に転がっているという
正に萌えもんたちのオアシス……のはずなのだが。


「あ! そこ、自爆スイッチがあるから気をつ」


かちっ、どっかああああああああああん!


「「「ふぎゃあああああああああああああああああああああああ!?」」」



なぜか階段間際に爆弾スイッチが仕掛けられていて、



「そこ、ヘドロスイッチがあるから気をつ」


かちっ、ぶっしゃああああああああああっ!


「ぎゃああああああああっっ!?」

「うわああああああああ、リンゴとグミがべトベターフードになっちゃったよおおおお!」

「うわあ最悪だああああああああ!!」



なぜか食べ物アイテムの眼前に、食べ物が腐る罠が仕掛けられていて、



「そこ、くっつきスイッチが」


かちっ、ぶわっしゃあああああああああっ!


「ヒッぎゃあああああああああっっ!?」

「いやーー!何これべっとべと~~!」

「いいえ、ケフィアです…じゃねえよ何だこれ、トリモチなんか仕掛けんじゃねえクソがああああ!!」



なぜか、部屋の出入り口にべとべとになる液体をぶちまける罠が仕掛けられている
という、何というか、戦場の爪あとを髣髴とさせる妙なダンジョン


…それが海のリゾートだった。





『 ププリンさんと探検隊 
        
         =嘆きは儚き悩みのために= 』





「まったく…だからあれほど気をつけなさいって言ったじゃないの!
 お前さんらには学習するって言葉は無いのかい!?」


トラップ地帯を切り抜けた階段近く。
探検隊のメンバーであるポッチャマ、ピカチュウ、リオルの三人を揃えて正座させ、
説教タイムへと突入しているのは、淡いピンク色の髪の毛と、リンゴのように紅い目を持つ
少女・ププリンだった。

長い間探検隊をやっているポッチャマとピカチュウには、彼女の言っていることは
相当痛いお言葉らしく、先ほどから黙って項垂れている。


「まず部屋に入ったら左右を素振りしてトラップ確認!
 部屋の中心部に来たらもう一度素振り確認!
 アイテムの近くでも素振りして、階段近くでも素振りする!

 これくらい用心していかないと、ダンジョンでは命がいくらあっても足りない…
 …って聞いているのかいリオル!?」


お説教を聞いているのか聞いていないのか、明らかにつまらなそうな顔をして
鼻をほじくっていたリオルは、突然の怒号に思い切り不意を突かれたらしく
つっこんでいた人差し指を鼻の奥深くまで差し込んでしまった。


「 ∑ふんがっ!?ぎゃああああうーーっ!!
 …てめ、ババア急に大声出すなよ!
 指が鼻のとんでもないところまで入っちまったじゃねえか!!」

「アンタがアタシの話をちゃんと聞いてないからだろうが!
 人の話はちゃんと聞きなさいって習わなかったのかい!?」


蒼い毛並みの尻尾を逆立てて抗議するリオルの剣幕に、怯むこともなく反論するププリン。
己より体格の良い萌えもんに食って掛かられても、大して恐れは感じないらしい。

それどころかその辺にあった木の枝で、ばしばしとリオルの頭を小突くくらいに
彼女は優勢に立っている。
その原因は、リオルの口走った「ババア」という言葉が示すとおりだった。


この世界では、どういうわけか進化が自由に行えなくなっている。

ある場所まで辿り着くことが出来れば進化することは出来るのだが、
それを知っているのはごく僅かな萌えもんのみで、小さな姿のまま長い間を生きている
萌えもんも少なくない。

ププリンもその内の一人で、彼女は姿こそ幼いが、もう一人前のレディを名乗っても
いいくらいの時を生きている。

そのぶん知識も豊富で、ポッチャマとピカチュウが結成した探検隊では知恵袋的な存在として
重宝されていた。


「あーー、あの、ププリンさん…」

「そろそろ、先に進みません?
 今度は素振り確認、ちゃんとやりますから…」


黄色の耳をぺたんと垂れさせて、明らかに怯えた声で話しかけるピカチュウと
一応はこの探検隊のリーダーをやっているポッチャマの、やんわりとしつつも
芯のある声に促され、ププリンはとりあえず怒りを納めた。


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


それから数時間後。

予定よりだいぶ時間が掛かってしまったが、ポッチャマ率いる探検隊は
無事『海のリゾート』を突破し、最深部の宝部屋へと到着していた。

金色に輝く宝箱の山に、喜びを隠せずきゃあきゃあと騒ぎまくるピカチュウとリオルと、
彼らほどではないが小躍りして喜ぶポッチャマ。


「うはは~、宝箱の中身なんだろうなっ」

「そりゃあ宝箱に入っているくらいだから、きっと素敵なものだよ!」

「早くネイティオ鑑定所で開けてもらいたいね~♪」

「…ププリンさん、どうしたの?
 そんなところにいないで、こっちきなよー」


少し離れたところでじっとしているププリンに、ピカチュウがいち早く気がつき声をかける。
続いてポッチャマとリオルも、ピカチュウに続いて「おいでよー」と声をかける。

三人の呼びかけに応え、近寄ってくるププリンだが、その顔には先ほどまでの覇気は宿っていなかった。


「…おい、どうしちまったんだよババア。
 元気出せよー、辛気臭いの苦手なんだよ俺…」

「気分悪いの? 今日は寄り道せずにトレジャータウンに帰ろうか?」

「ううん、違うよ…何かねぇ、自分が虚しくなっちまってねえ…」


先ほどまで元気だったププリンの、今にも泣き出しそうな表情と声に驚く一同。
そんな三人の反応に気づいているのかいないのか、ぽつりぽつりとププリンは語りだす。


「こんな、ババアって言われても仕方ないくらいの年月を生きているのにさ…
 いつまでもこんな、ちんちくりんなまま、なんてねぇ。
 滑稽にもほどがあるってもんだよ…くっくっく…」


どこか自虐的な響きを含んだ語りに、三人はどう話しかけたらいいのか沈黙してしまう。


「もう少し…もうちょっとだけ、アタシに威厳っていうもんがあったらねぇ…
 アタシの言葉、こんな姿じゃあ説得力ないもんね。
 もう少しアタシに威厳みたいなのがあったら
 アンタら三人を、余計なトラップに巻き込まずに済んだのにね…」


溜め息のように重く、沈痛な言葉だった。

確かにププリンの姿は、いたいけな少女だ。
確かにその姿には、威厳はあまりない。

だがしかし、彼女はたくさんの時を生きてきた。
その事実を、容姿だけで判断するのはどうなんだろう、と
ポッチャマは思った。

しかし、言葉にならない。
自分の考えを、彼女の心に届くような言葉に変える自信が湧いてこなかった。


と、そんなポッチャマの横を、つかつかと蒼い毛並みが通り過ぎていった。

蒼い毛並みは、しょんぼりとしているププリンの眼前に立つと
ぱしんっ! と微かに音をたてて両頬を両の手で挟みこんだ。


「…ざっけんなババア。威厳だぁ? んなもん何の役に立つ?
 まあ確かにあったほうが良いのかもしれないけど、それはポッチャマだって同じだろ!?」

「えぇええええええええ私も!?」

「まあ、その姿じゃあねえ…」


リオルの後ろのほうでポッチャマが軽くショックを受け、それを全くフォローになってない言葉で
ピカチュウがフォローしようとしていた。

リオルはそんな二人のやりとりを無視しているのか気がついていないのか、とにかく言葉を続ける。


「でも、アンタは威厳なんかなくっても、ポッチャマについていく気になったんだろ?
 それは何でだ? …ポッチャマのことが、信頼できると思ったからじゃねえのか?」


真っ赤な目が、微かに見開かれる。
忘れていたことに気がつかされて、改めて驚いたような、そんな感じの反応だった。


「俺だってそうだ。ポッチャマは信頼できると思ったから、探検隊に入った。
 …ほら見ろ。威厳なんかあっても無くても、なーんも変わらねえじゃねえか」


リオルの言い分は、どこか無茶苦茶だった。
ツギハギだらけで、理論とかそういうものが欠けていた。

しかし、彼の言いたいことはププリンに大体伝わった。


――― 威厳なんかあっても無くても、信頼できると思える何かがなければ
その存在についていくことなど出来ない。


リオルがププリンの頬を離した頃になって、やっと後ろの二人も口を開いた。


「…その、ププリンさんには威厳は無いかもしれないけど、ボクはププリンさんのこと
 信じているよ? だって、ププリンさん色んなこと知ってるし、頼りになるし」

「そうだね。信じられなかったら、仲間として成り立たないもんね」

「な? だから、威厳なんか無くてもだーいじょうぶだって。
 少なくとも俺らはさ、アンタのお小言信じてるしなっ」


歯をむき出しにして笑うリオル。
その根拠のない自信に溢れた笑顔は、無鉄砲な若者らしい良い笑顔だった。

ピカチュウもポッチャマも、みんな良い笑顔だった。


「…さーて、そろそろ本格的に日が暮れてきたし、そろそろ帰ろうぜー?」

「うっわ本当だ! もうこんなに暗くなってるよ!」

「宝箱回収して、早く帰らなきゃね」



――― 若い、ということは、大したものだとププリンは思う。

若者というものは、まだまだ世間というものを知らない、危なっかしい存在なのに

…なのに、『力』で溢れている。


根拠のない言葉であっても、自信に溢れたその声と目にかかれば
絶対的なものにさえ感じられる。


……そんな、そんな若さを、外見だけとはいえ、この身がまだ持っているというのなら。



「うっわ、リュックの中身いっぱいじゃない!」

「あちゃー、これじゃ宝箱持って帰れないよー…」

「いやいや待て諦めるなっ!
 こういう時はだ、無理矢理にでも突っ込んで押し込めばなーんーとーかーーー!!」

「…こらこら、無茶するんじゃないよリュックが破けちまうじゃないか!
 こういうときはねぇ、一度中身を全部出して、一個ずつ整理しながら入れていくんだよ」

「ふむふむ……おおー! 流石ププリンさん!」

「ぴったり入っちゃったね!」

「亀の甲より年の功ってヤツだな、ババア!」

「うっさいババアっていうな若造が。せめて淑女とお呼び淑女と!」




この身が、まだ『力』を保っているというのなら

進化できない、ということは



それほど、悲観することでもないのかもしれない。
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