5スレ>>285


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萌えもんトレーナーとは萌えもんを戦わせるのが仕事の人間だ。
だが、単に戦わせていればいいだなどということは決して無い。
まず萌えもんからの信頼を勝ち得て、その上で常に最高・最良を目指すことが求められる。
単にバッチやマスターであるという立場などだけで言うことを聞かせてみたとしても、
それは腕のいいトレーナーではありえない。
全てがそうなるとはさすがにいえないが、少なくとも広く名を知られるトレーナー達───
───ジムリーダーにしろ四天王にしろ、その信頼関係は磐石である。
さし当たって、自分も手持ちの萌えもん達とのよりよい信頼関係を築かんと行動を起こした俺だが……








「……なんで気がついたら子守してるんだろうね俺…」
今の俺の背中には、赤子が赤ん坊用のおもちゃを手にしたまますやすや寝息を立てている。
といっても無論俺の子ではない。というか、人間の赤ん坊ではない。
いつもは俺の相棒、ガルーラのお腹の袋に入っている子だ。
それが今はなぜ俺の背中にいるかというと……

















これまではどうにか勝ち抜いてきたが、この先戦いはますます厳しくなるばかり。
自分達のレベルアップは勿論欠かせないが、同時に互いの絆を深めることも重要だ。
そう考えた俺は、皆と一日ずつとことん話を聞いて、悩み解決等に走ることにしたのだ。
で、手持ちの一人一人と十分に話を聞いて、ちょっとしたお願いを叶えて……
「今日はガルーラの番だよ。悩みとか、不満とか、お願いとか、
 何でも遠慮せずに話して欲しい。
 俺に何とかできる範囲なら、全力で手伝うから」
そう言った俺へのガルーラの返答は。
「ここのところこの子がよく泣くせいで、十分に眠れてなくて……」






確かに、このところ泣き喚く子供を彼女があやす光景をよく見るようになったな…
疲れているように見えたのもそのせいらしい。
というわけで、俺が子守して、その間にガルーラはしっかりと休息をとることになったのだが……
「やっぱ、目だってるよなぁ…」
というか、目立たない訳がない。
ガルーラ自体、そもそもカントーではサファリパークでしか確認できない非常に珍しい萌えもんだ。
その生態など(とくに性別比)にはまだまだ不明な点が多く、地道に研究が進められている。
そんな珍しい萌えもんの子供を単独で背中にしょっていれば嫌でも目立つというものだ。
おまけに今俺が居るのはクチバ。
カントー唯一の港町だけあって様々なタイプの人間が居る。
その中には背中の子に興味津々で近寄ってくる者もいれば、なぜ親元から離しているのかと噛み付いてくるものも。
コッソリ大金積むから売ってくれだなんて、頭がどうかしてるんじゃないかってのも居た。
「……このままじゃガルーラが元気になる前に俺がやられそうだ…」
主に精神負荷で。
そんな危険を感じた俺は、街中を離れて草むらの方へと足を伸ばした。















郊外の草むらともなれば、修行中のトレーナーくらいしか人は居なくなる。
「やれやれ、ようやく一息つける……」
人気が少なくなって安心し、深呼吸する。別にこの子が重かったりはしないが、気分的なものだ。
そうやって安心していると……
「……ん、起きたかな?」
背中の子が目を覚ましたらしい。
寝起きはそう悪くはないらしく、泣き出す様子はない。
あぅあぅと赤子らしい意味不明な声を発しながら、手にしていたおもちゃをぶんぶん振る。
カランカランとおもちゃから軽い音が鳴る。いてて、俺の頭を殴るんじゃない。
と……
すぽーん。
文字を当てるならそんなかんじの放物線を描いて、赤子の手からおもちゃが飛んでいった。
「あーあ……俺なんかぽかぽか叩くからばちが当たったんだ」
などと言ってみても通じるわけがない。
それどころかおもちゃが飛んでいったせいでなにやら泣き出しそうな気配になってきた。
「……マズイよなぁ… 
 さっさと行ってさっさと帰れば大丈夫かな?」
何のことかというと、おもちゃが飛んでいったのは萌えもんがでる草むらの中。
そして、皆に休憩をあげてきたせいで、今の俺の手元には萌えもんがいないのだ。
いや、居るにはいるが、まさかこの子で戦闘するわけには行かない。
考えているうちに、赤子がべそをかき始めた。このままでは思いっきり泣き出すだろう。
「しょーがない…急いでとってくるか」
無謀なのは解っていたが、まさか大泣きさせたまま街に戻ることもできない。
探しに行くしか方法はなさそうだった。











カラフルな色合いのおかげで、おもちゃはすぐに見つかった。
「はいよ。今度は飛ばすんじゃないぞ」
そういって渡してやると、幸い泣き出す寸前で止まってくれた。
あとはここを出れば……
がさっ。
背後で響いたその音は安堵しかけていた俺を凍りつかせた。
慌てて振り向くと、がさがさと音をたてながら姿を現したのは…
「スリープか…!」
運悪くエンカウントしてしまったらしい。
よりにもよってこいつか……
他の奴ならば出くわしても一目散に逃げればよかったが、念力を使うスリープ相手ではそれも難しい。
実にあっけなく、絶体絶命(?)の大ピンチに陥ってしまった。
けれど、そのとき俺が考えていたことといえば。
(どう動いたらこの子が無事ですむかな……)
スリープと俺の身長差からすると背中にしょってる赤子には気付いていない可能性が高い。
だが、動き方しだいでは赤子に気付かれ、攻撃の矛先を向けられてしまう。
だからといって安直に後ろ向きに走ると、見えないから転びやすい上に転ぶと赤子から倒れることになる。
俺が進退窮まっていると、スリープ側から行動を起こされてしまった。
両手を前に突き出し、念波をぶつけてくる。
「ぐぅ……っ」
脳を含めた内臓だけを纏めて揺さぶられるかの様な感覚に、一瞬でその場に倒れそうになる。
根性だけで踏みとどまるが、その間も念力は止まらない。
視界がフラッシュする。ありえないはずのけたたましい笑い声が聞こえる。言葉にしがたいほどの悪臭を感じる。
五感を好き勝手にいじり倒されるその負担に、俺の体はあっという間に悲鳴を上げ始める。
(ガルーラの、子を……あずか、ってるんだ……簡単、にま、負けるわけには……)
必死に己を鼓舞してみても、萌えもんの攻撃に晒されているという状態は変わらない。
限界が訪れるまではほんの数瞬だった。
だが、たった数瞬耐えられたことが、結果を大きく変えた。
「ご主人様ーーー!!!」
唐突に響き渡る声に、スリープの集中が乱れて念力が解かれる。
そのまま崩れ落ちそうになるのをどうにか堪えて振り向けば、其処には。
必死に駆けよってくる、ガルーラの姿があった。
「よくも、よくもご主人様に───!」
遠目にも激怒しているのがよくわかる。
怒り狂ったガルーラのメガトンパンチが、スリープを一撃でぶっ飛ばすのを最後に視界に納め、
俺はその場に前のめりに崩れ落ちた。
慌てふためいて俺の名を呼ぶガルーラの声と、背中で泣き叫ぶ赤子の声が、いつまでも意識にまとわりついていた。


















「───っ……ここ…は…」
気がつくと、俺はベッドに寝かされていた。
よくよく見渡すと、萌えもんセンターの宿泊棟に俺が借りていた一室だ。
体を起こそうとすると全身が悲鳴を上げる。
「ぃいってぇぇ…」
その声で気付いたのか、ベッドに突っ伏す形で寝ていたらしいガルーラが体を起こす。
「ご主人様、気がついたんですね。よかったぁ……」
どうやらあの後、気を失った俺をガルーラが負ぶって萌えもんセンターまでつれてきてくれたらしい。
「せっかくお休みだったのに、迷惑かけたうえに子供も危ない目にあわせちまって……
 …ほんとに、ごめんな」
「そんな……ご主人様はこの子を必死に守ってくれました。
 自分がぼろぼろになってまで…
 皆無事だったから、もういいんです」
柔らかい笑顔で、そう返してくれるガルーラ。
その顔を見ていると、なんだか安心したのかまた眠くなり。
もう一寝入りすることを継げて、再び眠りに落ちた。


















結局のところ、当初の目的が果たせたのかどうかはいまいち解らない。
まぁもともとが信頼関係なんてものは目に見えるようなものじゃないから仕方が無いのだろう。
これといった大きな変化といえば、ガルーラの俺の呼び方が変わったくらいか。
「なぁ、ガルーラ」
「? なんですか、だんな様?」
「……ちょっと前から聞きたかったんだが、
 なんで俺をだんな様って呼ぶんだ?」
直接聞いてみると、彼女は珍しく顔を赤らめて、
「だって、だんな様は私の子をかばってくださったし…」
この台詞の後はなんだかごにょごにょ言ってて聞こえなかった。
要するに、あの一件が理由らしい。細かいことは解らないが。
ともかく、皆と今まで以上に仲良くなれた、気はする。
これからも俺はこいつらと先に進んでゆく。
何処までいけるかはわからないが、きっとその気になれば何処まででもいけるだろう。


「よし。
 今日も一日頑張ろうな、ガルーラ」
「はい、だんな様!」
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