5スレ>>294(1)


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 ――それは、旅の途中の出来事だった。


Title 『あ 野生のプリンが あらわれた!』


 俺はニビシティの激戦を終えてハナダシティへと向かう最中だった。
「まずはお月見山を抜けないといけないらしいな」
 助手にわざわざ届けて貰ったランニングシューズを履いて、俺は駆け出した。


 矢先…


「あー!お前トキワの森で会った奴だ!」
 いきなり少年が俺を見るなり叫んできた。
 なんだなんだ?
 …あ、そういや会った事があるな。
「勝負だ!あの時から僕も強くなったんだぞ!」
「んじゃま、ポッポ、頼むよ!」
 萌えもんバトルが始まった。お月見山突破の前に腕ならしだ。



「ヂクジョオオオ…」
 鼻水と涙を惜しげもなく垂れ流し、地面に四つん這いになってうな垂れる少年。
 ポッポの風起こしの強さに、少年の繰り出す虫萌えもん達は成す術も無かった。
「あー…ご、ごめんな?」
「い゛い゛んだぁぁぁぁ……」
 まぁ、正々堂々の勝負だ。謝るのも違うよな…。

 ――そんな時だった。


「~♪~~~♪」


 何だ、この歌声。
「ヒック…僕の…虫…萌えもぉおおおん…」
 綺麗な澄んだ声だ。
「うううう…バタフリーとスピアーが欲じいよおおお…」
 いつまでも聞いていたくなる、魅力的な歌声。
「…うう…う…。………」
 ん…?
 少年の泣き声がやんだ。
 歌声に引き込まれ、辺りを見回していた俺が、そこで初めて少年に目をやった。
「……ぐー…」
 寝て…る?
 ペチペチ、と往復ビンタをするも、起きる気配は無い。
 路上でいきなり寝る奴が居るだろうか。
 …まさか?

 歌声が聞こえる方向に向かい、俺は駆け出した。
 近くに居る…っ。


「~~♪~~~~♪」


 歌声はどんどん近くになるが、癒しによる眠気もまた色濃くなる。
 …眠いが、…。
 あ…居た…!

 草むらの中に大きめな石。
 そこを舞台に歌を歌う萌えもんの姿。
「プリン……?」
「~~♪……ほえ?」
 歌がやむ。同時に今までの眠気も吹っ飛んだ。
 しばらく俺とプリンは見つめあい、硬直し続けた。

「…」
「…」

 気のせいだろうか。若干、プリンの顔が引きつっている様にも思える。
「や、やあ」
 俺は少し気まずい空気を何とかするべく、挨拶を試みる。
「ひっ…」
 後退りするプリン。
 柔和な笑みを極力浮かべながら、近付く俺。
「い…」
 プリンは深く息を吸い込んで、
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 大きく叫んで逃げた。

「ちょ、おま」
 何か悪者扱いされたように思えてならない。
 叫ばれた驚きもあって、意味が分からないまま俺はプリンを追っていた。

「やだやだやだ!来ないで!」
「何でだよ!話し合おう!須らく話し合ってみよう!」
「ハァハァ…っ。変なおじさん、来ないでぇぇぇ!」
「ピチピチボーイだよ!おじさんでも無いよ!頑張ってるよ!」
「訳分からない事言わないでよ!」
「ハァハァ…!」
「ハァハァ…!」
「ハァハァハァハァ!」
「と、吐息が…っ。やっぱこの人、ロリコンの変態親父なんだぁぁ!」
「バカ!誤解されるような叫びをまき散らしてるんじゃないよおおお!」

 鬼ごっことは、何年ぶりだろうか。
 ちっちゃいプリンは、まだ「あんよ」とも言える足を一生懸命動かして俺から必死に逃げる。
 俺はあえて本気で走らずに追いかけた。
 だがこれだけの距離走ると、相当体力が必要とされる。
 お月見山のふもとだけあって、坂道や草むらなど悪路ばかりだ。
 疲れ始め、追い駆ける事をやめようとした時だった。

「痛っ…」

 コテン、とプリンが転んでしまった。
「だ、大丈夫…っ?」
「こ、来ないで。…いっ…」
 どうやら足を軽く捻挫してしまったようだ。
 俺の所為だな…。一旦ニビシティに戻ろう。――この娘を抱えて。
「え?何するの?ちょ、やめてよ変態ペド親父ぃいい!」
「暴れるなって…。ごめん、怖がらせて悪かったよ。その怪我じゃ歩く事もままならないだろ…」
 ひょい、とプリンを抱えると、俺は駆け出した。
 疲れが抜け切らないが、ここは気合だな。
「うわぁーん…っ!あたし、オワター!」
 シューズの性能が、早速分かったぜ。…走りやすいな


「……夢でバタフリーとスピアー居たのにぃいいい…ううううっ」


 先程の少年も目覚めていたようだ。…いつまで泣いてるんだ。



『ポケモンセンター ニビシティ』


「ジョーイさん、大丈夫…なんでしょうか」
 俺はプリンを預けて、尋ねた。
「軽い捻挫ね。擦り傷なんかは、殺菌消毒して止血したし、後は湿布を貼って安静にしてれば大丈夫よ」
 そう言って、処置の済んだプリンを手元に戻される。
「お大事にどうぞ」
「有難う御座いました」


『ニビシティ 公園ベンチ』


 プリンもどうやら、落ち着いたらしい。
「俺の所為でごめん…」
 ベンチで二人並んで腰掛け、先程の件について謝罪する。
「…」
 黙って俯いたまま、何も話さない。
「いきなり逃げ出したからさ、つい追い駆けちゃったんだ」
「…」
「何もしないから、安心してよ…。ね?」
 するとここで、ようやくプリンは口を開いた。
「…見られた…」
 呟くように、ポツッと。
「ん…?」
 言葉を促してみる。
「あたしの歌ってるとこ、見られた…」
「あー…」
「…近くに誰も居ないと思って、お歌の練習してたのに…恥ずかしかった…」
 拗ねるような口調で、ぶつぶつと呟く。
 事の全容が分かった。
 矢張り、俺が全ての原因であったわけで…。
「ご、ごめんね…」
「…」
「あまりにも、綺麗な歌声で…さ」

「え?」

 なにやら驚いた表情で、今まで伏せてた顔をこちらに向ける。
「それまで萌えもん勝負してたんだけど、相手の子が君の歌で眠っちゃってさ」
「ええ?」
「俺も危なかったよ。だって君の歌、凄く気持ちが良いもん」
「な…っ」
 プリンが再び顔を伏せる。
 率直に俺が必死にプリンを追った理由を説明し、少しは理解してくれたらと思う。
「…気になって歌声のする方に行って、それで今に至るんだ」
「…そ、そう」
「邪魔してごめん、追い駆けてごめん、怪我…させてごめん」
 悪者扱いされた気、ではなく、悪者そのものだったなぁと自嘲する。
 申し訳なさで一杯だった。

「…っ…」

「え?」
 聞き取れなかったが、何か言った。
「…許す!」
 目をぎゅっとつむって、真っ赤になった顔を伏せたまま、プリンは続ける。
「許すの!あたしのお歌褒めてくれた!恥ずかしかったけど、嬉しかった。
 見つかっちゃうのはしょうがないし、怪我したのも、あたしが走って逃げたからだもん」

 そして、バッと顔を上げて俺を見る。


「…次は、いきなり出てきて来ないでね…?」


 俺は、
「分かった」
 これ以上無いってくらい笑みを浮かべて、そう言った。




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 【あとがき】

 萌えとかそういうの無くてごめんなさい。
 キャラ立って無くてごめんなさい。

 一応、これはこれから執筆するかも分からない本編、とされるストーリーを基軸にしたものです。
 宜しければそちらも一読して頂けたらと思います。

 それでは、読んで頂き有難う御座いましたっ!

                          作者:てんくるり
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