5スレ>>309


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「じゃ、行こうか」
「うん!」
「うむ」
そう言って、シュウとエレブー、ミュウツーの三人は買出しへと出かけた。
シュウの戦い方は、基本的に、萌えもん達に怪我をさせない絶妙なものだ。ただ、予見し得ない出来事というのは付き纏うもので、
予期せぬ怪我をすることもある。そのため、治療薬の補充は欠かさない。備えあれば憂いなし、だ。
センターに着くなり、ラプラスとリザードンは体を洗うために風呂に直行したため、今回は付いてこられなかった。
最近はフレンドリィショップも多様化し、トレーナーアイテムばかりではなく、萌えもん対象の商品も置くようになった。
当然、店は拡大し、二階建てなど珍しくなくなり、所によってはタマムシデパートに肩を並べるほどの大きさの店もできた。
今シュウ達が滞在している町にも、デパート並の大きさのフレンドリィショップがある。
そのぐらいの大きさになると、内容もデパート張りになり、地下では食料品なども売っていたりする。
ショップに着くと、シュウが二人に言った。
「僕は薬の補充をしてくるから、もし行きたいところがあったら行って来ていいよ。どこかある?」
「ここには本屋はあるのか?」
行く先々で情報収集をしたがるミュウツーらしい質問だ。
シュウは壁に掲げてあった案内板を見やる。
「えっと、ああ、あるよ。五階だね」
「なら、わたしはそこに行くとしよう」
「分かった。エレブーはどうする?」
訊かれたエレブーは元気よくシュウの右腕に抱き付き、「アタイはご主人と一緒!」と返事をした。
「分かった。じゃあ、後で迎えに行くから、それまで本屋にいてね、ミュウツー」
「分かった」
返事をするなり、ミュウツーはさっさと階段を上っていった。
ミュウツーを見送ったシュウは、右腕に抱きついたままのエレブーに顔を向けて言った。
「じゃあ、僕達も行こうか」
「うん!」
元気良く返事をするエレブー。満足げな表情で、歩き出してもシュウの腕を放そうとはしなかった。
トレーナーアイテムの取り扱い店舗は二階にある。
買い物籠を手に持ったシュウは、くっついたままのエレブーをそのままに、店内を見て回り始めた。
買い物も程々に済み始めたときだった。
「シュウ?」
呼ばれた声に立ち止まる。
視線を向けた先にいたのは、懐かしい顔だった。
「やっぱシュウだ!俺だよ俺、ユウキだよ。覚えてないか?」
「ユウキ!?久しぶりだねぇ」
「ホント、久しぶりだなぁ」
ユウキと呼ばれた青年は、嬉しそうに言った。
二人は幼い頃、近所に住んでいた友達だった。ユウキが親の都合で引っ越してしまい、それ以来、会っていなかった。
ユウキの腰にもボールが付けられており、トレーナーであることがすぐに分かった。
「ユウキもトレーナーになったんだね」
「ああ。結構強いんだぜ、俺のパーティー。まぁ、お前には負けるけどな、元チャンプ。いきなり引退したのには驚いたぜ。何かあったのか?」
「まぁ、ちょっとね。力不足は本当だよ。今は、また一から修行のしなおしさ」
「そっかぁ。ところでよ、久しぶりに会ったんだし、これから飯でもどうだ?トモエとかエイジも一緒なんだ」
「トモエとエイジも一緒だったんだ」
「ああ、お前と一緒で、偶然会ってな。で、どうよ?」
トモエもエイジも、親しかった友だ。
久しぶりの旧友との再会。シュウも嬉しくないわけがなかった。
一瞬、肯定の返事を出そうとしたシュウだったが、腕に抱きついたままのエレブーを見て思いとどまった。
「いや、悪いけど、遠慮しておくよ」
「何か予定でもあるのか?」
「いや、予定って程でもないけど、この子と買い物の途中だし、センターには待ってくれている子もいるしね」
「付き合い悪いな、ったく。今度は付き合えよな。じゃあな」
そう言ってユウキはその場を後にした。
ユウキを見送った後、エレブーはシュウに顔を向けた。
自分の所為で友人との食事がダメになってしまったのではないかと心配していたのだ。
しかし、シュウは残念そうな顔一つせず、笑顔を見せた。
「早く終わらせて、ミュウツーを迎えに行かないとね」
「あ、うん……」
無理をしているのではないかと思ったエレブーだが、口には出さなかった。
買い物を終え、ミュウツーを迎えに行き、いざ帰ろうとした矢先、シュウはラプラスに頼まれていた物を買い忘れていたことを思い出した。
「ちょっと買ってくるから、そこで待ってて」
小走りに買いに走るシュウ。
二人は仕方なく、近くにあったベンチに腰掛けて待つことにした。
無言で待つ二人。
ふと、角の向こうの休憩所から声が聞こえてきた。
ユウキの声だった。
それが誰の声であるか知っていたエレブーは、ちょっとした暇つぶしのつもりで声に耳を傾けた。
「久しぶりに会ったってのに、付き合い悪いよなぁ、あいつも」
「しょうがないんじゃない?いきなりだし、それだけ、シュウにとっては萌えもんが大事なのよ」
「そうそう。そのぐらいじゃないと、チャンピオンにはなれないってことだよ」
初めて聞く女性と男性の声。恐らくは、話に出てきた二人だろうと推測する。
エレブーはそのまま、耳を傾け続ける。
「でもよ、久しぶりに会ったんだぜ?ちょっとぐらい付き合ったって罰当たらないだろう」
「まぁねぇ」
「あーあ、あいつにとって、俺は萌えもんより下かよ。ったく、友達止めるかな」
「そんな気ないくせに」
「へへ、まぁな。それにしても、もうちょっと付き合いよくなってくれってぇの。友達なくすぞー、なんつて」
巻き起こる笑い。しかし、最後の言葉が、エレブーの心に深く突き刺さっていた。
自分達の、自分の所為で、シュウが仲間外れにされるかもしれない。
そう思うと、どうしたらいいのか分からなくなり始めた。
シュウの元を離れたくないと思う。だが、それをすると、シュウが人間の間で一人になってしまうのではないか。
友達をなくしてしまうのではないか。
ぐるぐると廻る、答えの出ない問い。
エレブーは最後の頼みのように、ミュウツーに打ち明けた。
「………アタイ、どうしたらいいのかな?」
エレブーの話を黙って聞いていたミュウツーは、静かに言った。
「その答えは、わたしは出せない。正確には、わたしに答えを聞くべきではない」
「どうして?」
「それは、それぞれが出すべき答えだからだ。まぁ、これだけでは何だな。そうだな、一つ言えることは、お前のしたいようにすればいいんじゃないか?
シュウならきっと、そう言うはずだ」
「アタイは……」
「おーい、お待たせ」
そのタイミングでシュウが戻ってきた。
「いやぁ、地下が思いのほか広くてさ、探すのに手間取ったよ。ん~と、どうしたの?」
立ち込めていた空気を感じ取ったシュウ。
エレブーはこのタイミングしかないと思い、今まで考えていたことをシュウに話した。
「ねぇ、アタイ、邪魔かな?」
「え、どうして?」
「だって、アタイ達が、アタイがいるから、ご主人はあの人達とご飯に行かなかったんでしょ?アタイがいるから、色んな事、我慢しているんでしょ!?
だったら、アタイ、ご主人の邪魔、しちゃってる……。そんなの、嫌だよ………」
俯き、ギュッと瞼を閉じ、涙を溢れさせる。
何故、そんな考えに至ったのか。その原因が、ユウキとの会話にあったことは、すぐに察しが付いた。
エレブーは決して自棄になっている訳ではない。その心は、シュウのことを心配してのことだ。
それが伝わったシュウは、エレブーの耳元に口を近づけ、その頭を抱くように撫でながら言った。
「ありがとう、心配してくれて。でも、大丈夫。君は全然、邪魔なんかじゃない」
「だけど……」
「あれはね、ちょっとした嘘」
「え……?」
シュウは顔を離し、上げられたエレブーの顔、その瞳を真っ直ぐに見る。そして、苦笑いを浮かべながら話す。
「本当は、あんまり行きたくなかったんだ。だって、行けば必ず『何でチャンピオンを辞めたのか』って話になるから。それに、昔の話だってするだろうし。
僕、あまり昔の情けない自分の話は聞きたくないって言うか、思い出したくないって言うか。それで、断る口実にちょっと使わせてもらっちゃったんだ。ごめん。
だから、気にしないで、ね?」
「でも………」
「これも、我慢しているように見えちゃうかな?」
エレブーは無言で頷く。
シュウは苦笑いしながら、「そっか」と返し、微笑みながら言った。
「でもね、少しぐらい、我慢しても、それはお互い様、でしょ?だって、君達だって、我慢していることはあるでしょ?僕の至らない所を我慢してくれている。
だったら、僕だって、君達のために、何かを我慢することは当然だよ。自分にして欲しいことを相手にする、相手がしてくれた良い事を相手にする。
それは、とても大切なこと。僕はそういう人間でありたいと思うんだ。そして、君達にも、そうであって欲しいと思う。きっと、そうであると信じている」
「ご主人……」
まだ泣いたままのエレブー。
優しさから言ってくれたことが何より嬉しく、愛おしくなったシュウは、もう一度、エレブーを抱きしめ、頭を撫でる。
「優しいなぁ、エレブーは。ううん、エレブーだけじゃない。み~んな、僕と一緒にいてくれる子は、み~んな優しい。それが、僕はとっても嬉しい。
だから、もう泣かないで、ね」
「………うん」
シュウはそのまま少しの間、エレブーを抱きしめ続けた。
エレブーの顔は涙で濡れていたが、その表情は幸福感に満ちたものだった。

センターへの道すがら、エレブーはシュウに昔の話を聞いた。
「ねぇ、ご主人。ご主人は昔、どんな人だったの?」
「え?昔の話?うぅん、そうねぇ。他の皆には秘密だよ?ミュウツーもね」
聞き耳立てていたミュウツーにも釘を刺す。
ミュウツーは返答せず、ただ前を向いて歩き続けていた。
シュウは恥ずかしそうに言った。
「とにかく、泣き虫だった」
「え、ご主人が!?」
「うん。ちょっとのことでも泣くような子供だったね。よく泣いていたよ。何か、泣いていた思い出しかないぐらいにね」
「へぇ~」
「そういうわけだから、皆には内緒、だよ?」
「うん!」
満面の笑み。
自分(とミュウツー)だけしか知らないシュウの秘密が出来たことが、エレブーには嬉しかった。
一人先に走っていき、振り返って言った。
「早く~」
すっかり元気になったエレブーに安心するシュウ。
「はいは~い」と返事をしながら、小走りに走り出す。
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。